DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
世界は混迷の中にあり、至る所でいざこざが起きていた。
そして、俺が今立っているのは市街地の戦場。
「
前方の異形の悪魔に向かい、俺は光線を放つ。
そして、俺の後ろでは鈴谷冬夜…デビルマン・ニクスが周囲のデビルマンに向かって氷柱の雨を音速の速さで降らせる。
「オーロラ・ガトリング‼」
互いに目の前の敵を殲滅すれば、変身を解除して辺りを見渡す。
倒れた悪魔たちは、デビルマン軍団の
「こんな小競り合いが、いつまで続くんだろうな……」
冬夜が小さく息を吐き、そんな言葉を口にする。
「奴らとの決戦まで、もう2週間足らずしか残されていない。俺たちは、俺たちにできることをするしかないんだ」
「……そうだよな。今できることと言ったら、目の前の敵を倒すことだけだもんな」
少し弱音は吐いていたが、すぐに気を取り直して背筋を伸ばしていた。
「こんな世界になってさ……顔見知りの仲間も、何人死んだかわからない。そんな中で、おまえが変わらずに生きていてくれることが嬉しいよ、明人」
「急に何だよ?気持ちわりぃな」
顔を合わせずに悪態をつけば、冬夜は「ひっどいな」と言い返してくる。
「これでも、内心心配してたんだぜ?おまえとは最近、別働隊として動いていたし、こんな世の中じゃいつ会えなくなるかもわからないんだからさ」
確かに、冬夜とは共に戦う機会は少なくなっており、こうして言葉を交わすのも久しぶりだった。
今日、この場で合流できたのも単なる偶然だ。
「おまえが飛鳥代表と一緒に、世界の命運を賭けた戦いに挑もうとする中で、俺たちは悪魔の力を持ちながらも目の前の敵と戦うことしかできない。……正直、やるせない気持ちがあったんだ」
「冬夜……」
俺は直近まで、甲牙やダンテなどの特異点と呼ばれる存在と共に戦うことが多かった。
それは神の定めた運命を打ち破る、その戦いに向けた戦士に加えられているがために。
「おまえは俺よりも強い……と言うか、ほぼ全ての悪魔を越える存在だと思ってる。だけど、だからこそ、心配なんだよ……。おまえが、何でも1人で抱え込まないかってな」
付き合いが長い冬夜には、俺の性格などお見通しなようだ。
白藤からの宣戦布告を受けて、確かにこの身に背負っている責任の重さを感じている。
「おまえは、1人じゃない。何でもかんでも背負わなくても良い。また、おまえが悲しみに飲まれていくなんて展開は、御免だ」
「……そうだな。おまえの言う通りだ」
友の心境を聞き、少しだけ心が楽になったような気がする。
ここでの戦いも終わり、帰還しようとした瞬間―――。
「悪魔の力を得、人間の知恵を有する者―――デビルマン。それは、神によって禁じられた存在のはずだった」
その声はどこからともなく聞こえてきた。
「誰だ!?」
周りを見れば、少し先の瓦礫の前に金色の髪をした男が立っていた。
男の顔を見た時、俺と冬夜は共に怪訝な顔を浮かべる。
その顔は、了と瓜二つだったからだ。
「了さん…なのか?」
「いや、そんなはずがない」
俺にはわかる。
目の前に居る男は、飛鳥了じゃない。
「おまえは……何者だ?」
人間とも、悪魔とも違う覇気を感じる。
それを一言で表すなら、
「私の名はミカエル。かつて大天使と呼ばれていた、翼をもがれし神の使徒」
神の使徒。
その言葉に、俺と冬矢は警戒しては互いにベルトに手をかける。
「大天使様が、わざわざ地上に堕ちてきてまで何の用だ?」
聞くまでもないことだが、そう問いかけずにはいられなかった。
ミカエルは懐から、鎖を巻きつけた南京錠のようなベルトを取り出す。
「この私が神への忠誠のためとはいえ、禁じられた技術を基にした力……セラフィックギア。このような
もはや、言葉での語らないは不可能な状況となった。
セラフィックギアを腰に当てれば、ベルトが巻き付かれては右側のレバーを下に降ろせば、鎖が解き放たれては南京錠が左右に開いた。
その瞬間、両翼を広げた天使のエンブレムが解き放たれ、全身を黄色と黒が混じった光が包む。
光が収まった時、姿を現したのは黒いアンダースーツに黄色の拘束具のような鎧と天使の兜を装着した者。
「あれは……デビルマン、なのか!?」
「……いや、それにしては悪魔の気配がしない」
見ただけで、直感した。
こいつは、俺たちとは対極の存在だ。
「この鎧の名は、セラフィックレイザー。デビルマンの力を分析し、私の天使の力を適合させた神聖なる鎧。この力、おまえで試させてもらおう」
向こうは臨戦態勢に入り、俺も「デビルっ‼」と掛声をあげると共にデビルマン・ゼロへと変身する。
「選択者の特異点、内海明人‼神の意志を遂行するため、おまえを粛清する‼」
その手には洋弓を所持しており、その両端には鋭利な刃が付いている。
「セラフィック・ボレー‼」
矢は放たれると同時に、破裂しては無数の光線が迫る。
それなら、こっちも物量戦法で対抗する。
「ブラックフェザー・ナイフ‼」
漆黒の翼を広げ、無数の羽根を飛ばして撃ち落とす。
「冬夜‼相手は天使だ、救援要請を頼む‼」
相手は大天使。
たった2人のデビルマンで勝てるとは思えない。
しかし、それがただのデビルマンであればの話だ。
「耐えろよ、明人‼」
冬夜も再度デビルマン・ニクスに変身し、空中浮遊してはその場を離れる。
「たった1人で、私を相手にできるとでも?」
ミカエルは仮面の下で、不敵な笑みを浮かべている。
「翼のない堕ちた天使だろ?俺1人で十分だ」
挑発をしながらも、俺はゼロドライバーにヴァイスロックを装着し、インパルスジャックの鍵を差し込んで回す。
ドライバーから紫と緑のオーラを展開し、ヴァイスゼロへの変身を完了する。
その手には、波打つような刀身のサーベル…インパルスジャックが握られている。
「それが、レクスを倒したとされる力か」
「こっちの情報は筒抜けってことかよ。それでも、敗けるつもりはねぇけどなぁ‼」
翼を広げ、インパルスジャックの刃をミカエルに向けて突撃を仕掛ければ、奴は弓矢で受け止めて衝突する。
緑と紫の混じったオーラと、黄色のオーラが拮抗する。
「くっ‼この私の力と、互角とはっ…‼」
大天使と呼ばれる存在とも、今は対等に戦うことができる。
それほどまでに、俺は今までの戦いの中で進化を遂げてきたんだ。
「おまえの言う、くだらねぇ神の意志って奴をぶっ壊すために、死に物狂いで戦ってきたんだからなぁ‼」
俺とミカエルは同時に距離を取り、相手の出方を見る。
「本当に、神の意志に抗うことができると思っているのか?悪魔の力を手に入れただけの、愚かな人間がっ」
大天使様は、なおも俺を見下した物言いをしながらも問いかけてくる。
だからこそ、俺もそれにこう返す。
「それを恐れているから、おまえは俺を殺しに来たんだろ?」
「恐れ…?」
ミカエルは俺の言葉を復唱し、肩を震わせる。
「神の使徒である私が……悪魔に…人間ごときに……恐れだと…?」
その震えは全身に広がり、再度俺に弓矢を向ける。
「ふざけるなぁ‼人間に‼悪魔に‼恐れを抱くことなど、あるわけがない‼」
仮面の下で、奴が憤慨しているのが伝わってくる。
「神は完全無欠な存在‼そして、神より生み出されし私もまた、完璧な者なのだぁ‼不完全な者であるおまえたちに、神に
怒声を飛ばしているが、それは俺に言っているようで、自分に言い聞かせているように感じた。
そして、怒りのままに弓を引いては光の矢が放たれる。
それをインパルスジャックで弾きながら、俺はミカエルに向かって歩を進める。
「神が完全無欠なら、その完璧な存在によって生み出された運命を壊す存在……特異点が生まれるのはおかしいと思わないか?結局、おまえたちは絶対なる神という妄信を守るためだけに、戦っているに過ぎない。はっきりと言ってやる、神は完全じゃない‼」
「黙れぇええええっ‼」
大天使は何度も矢を放たれ、今度は真正面から受け止める。
天使の矢を受けながらも、足を止めずにミカエルに近づく。
「何故だ‼何故、効かない‼何故、膝をつかない‼何故、倒れない‼おまえたちは、ただ神の掌の上で
「その蟻1匹も倒せないのが、今のおまえの限界だ」
もはや、俺たちの間合いはインパルスジャックが届く距離まで近づいた。
そして、その刃を奴の首筋に向ける。
「ミカエル。いつまで、現実から目を背けるつもりだ?」
そのまま少し刃を引けば、首を
奴は全身を
「か、神は偉大だ…‼おまえが今、私を討とうとも……おまえたちが、神に勝つことはない‼」
マスク越しでもわかる。
虚勢を張っているが、ミカエルは俺を恐れている。
「そうかよ。だったら―――」
もう話すことはないと思い、インパルスジャックで切り捨てようとした瞬間―――。
『待て、明人。そいつには、真実を語らせる必要がある』
その声が聞こえた瞬間、頭上から紅い光弾が飛んできてはミカエルから離れて回避する。
しかし、大天使には直撃したようで「ぐぁあああああ‼」と悲痛な声が響く。
砂煙が舞い、それが晴れればミカエルの変身が解除されていた。
『その力、修正者の1人……雷沼虎之介の技術か。人間の力に
頭上を見上げれば、そこには紅の鎧を
「アモン!?」
アモンは俺とミカエルの間に立つように、地上に降り立つ。
「勇者アモンか…」
ミカエルは地に膝を付きながら、アモンと俺と睨みつける。
それを正面から受け止めながら、アモンは一瞬だけ俺の方に視線を向けた後で口を開いた。
『神のシナリオ、大天使、修正者……。これらは、この世界を黙示録に導くために、神が用意した道具だ。そして、俺たちはおまえたちの存在によって、今まで惑わされていたようだな』
静かな口調で、勇者はミカエルに語り掛ける。
『大天使ミカエル。おまえは今まで、神の代行者として、神のシナリオ通りに運命が進むように管理していた。そして、神のシナリオは今、白藤隆一という異分子に渡ってしまった。その時から、歯車は狂い始めた。あの本を手に入れた白藤自身は、もう知っているんだろ?そして、俺もおまえたちがひた隠しにしていた真実に辿りついた……至高天に行くことによって』
至高天?
初めて聞く言葉に仮面の下で眉をひそめるも、アモンは話を続ける。
『世界の運命を決めるシステムである、至高天は空白だった。そこに居るはずの真の管理者が居なかったのだ。それが意味することは、たった1つ……』
そこで言葉を区切っては、これまでの前提を覆す言葉を口にした。
『おまえたちの言う神……創造主は、もう存在しないんじゃないのか?』