DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
勇者アモンの語る真実に、ミカエルは動揺を隠せなかった。
「バカな‼ただの悪魔に、至高天に向かう資格があるはずがない‼神が存在しないなど、デタラメだぁ‼」
彼の言葉を否定する大天使ではあるが、感情が乱れているのがわかる。
『かつての聖戦から、前提は間違っていたのかもしれん』
アモンは激昂するミカエルに取りあうことなく、話を進める。
『今までの世界の歴史に刻まれた伝承では、こう記されている。人間が誕生する前、神と悪魔の戦争が起きた。悪魔を排除しようとした神に反逆した、当時の大天使ルシファー…サタンが率いた悪魔の軍勢は、神との戦争に勝利した。そして、次の神との戦いに備えて眠りについた…と』
そこから、アモンの語る歴史はこうだ。
2000年の時を経て、サタンが目覚めた時に見た地球は人間に支配され、汚されていた。
それに激怒したサタンは、神に挑む前に人間を滅ぼすことに決めた。
その中で、誤算として生まれたのがデビルマンだった。
そして、デビルマンとデーモンの最終戦争…アーマゲドンが起きた。
その結果、デビルマンもデーモンの戦いは不動明の死によって終焉し、地上に降り立った天使たちの放つ光にサタンや地上は呑まれて行った。
これが黙示録を迎えた世界の結末だった。
その後、サタンは何度も世界をやり直しては、人間の可能性を探る、あるいは神との決戦に挑んでいた。
そして、あらゆる輪廻の先に、今のこの世界が存在する。
『悪魔が神に挑んだ結果、必ずその世界は終焉を迎える。俺たちは今まで、それが神に敗北してきたが故だと認識していた。それはサタンとて、同じだろう。そして、この世界においても、今度こそ勝つことを目的としている。しかし、もしも悪魔を率いたサタンたちが、その最初の聖戦で神を討ち倒していたとしたら?』
そうだ。
俺も了さんも、今度こそ神の運命に抗うことを目的として戦っている。
『神を討つという運命も、その神が居なければ
神が存在しなければ、神を討つための物語は成立しない。
成立しない物語は、完結することは無い。
それは途中で切り捨てられた連載漫画も同然だ。
創造主が居なければ、物語の未来は描かれないのだから。
『サタンは何度も存在しない神に挑み、至高天に辿りついたことだろう。しかし、その至高天は空白だった。倒すべき神が居なければ、悪魔たちにその先の目的は無く、虚無だ。そして、悪魔
今まで、何度も繰り返された世界の事実が、俺の中で書き換えられていく。
今までの前提が、覆されて行く。
俺たちの神に挑むという運命は、最初から破綻していた。
そして、その真実を隠すために、失われた運命を何度も繰り返してきた。
アモンの言葉を聞きながら、俺は今、真実に向かおうとしていることだけを確信する。
『神が討たれた後、地上に人間が生まれた。それは何故か……。この世界の意志が、神無き世界で失われた運命を紡ぐため、新たな世界を創世するために神に変わる存在として生み出したからだ。人間は、神の形を模倣して生まれた存在。その身には神の知恵を有している。そして、悪魔は神によって生み出されたが、その力だけを有し、知恵が無いが故に神の成りそこなった存在。ここまで言えば、おまえがどういう存在なのか……わかるだろ、明人?』
神を模して、知恵を持って生まれた人間。
神によって、その力を持って生まれた悪魔。
知恵と力。
その2つが合わさった存在が、デビルマンなのだとしたら―――。
「まさか、デビルマン……俺たちの存在は…‼」
アモンの言葉が全て真実なのだとすれば、結論は1つに導かれる。
『おまえたちは、世界を創世する資格を有している。言わば、世界を創り変えることができる、神にも近い存在なのだ。そして、神を秩序とした世界を維持するために、おまえたち天使は神の意志を模倣したシステムである『神のシナリオ』を用意し、黙示録の未来を記した。人間を滅ぼし、創世を阻むために』
ただ、悪魔の力を持った人間というだけでは無かったのか。
だからこそ、天使たちはデビルマンの生まれた世界を消滅させてきたのか。
今、全ての事実が1つに終結したような気がした。
「アモン…‼」
ミカエルは、ただアモンの語る真実を黙って聞いていることしかできなかった。
「何故だ…何故!?おまえは、ただの悪魔のはず…‼それが何故、そこまでのことを…‼」
もはや、地に落ちた大天使に彼の言葉を否定する精神力は無かった。
『俺は観測者の特異点だ。俺は今まで、世界の真実を知るためにあらゆる事象を観測していた。そして、その過程で神への道に辿りつくことができた。それによって、至高天を観測し、全てを知ったわけだ』
「バカな‼サタンのような大天使の地位を持つ者でなければ、この世界のものが至高天に到達できるはずがない‼ましてや、ただの悪魔に―――」
『ただの悪魔……か。おまえも、薄々気づいてるんじゃないのか?この俺が、どういう存在なのかを』
アモンは顎を上げ、ミカエルを見下ろす。
『俺もデビルマンだとすれば―――話は違ってくるだろ?』
アモンが…デビルマン!?
その真実に、ミカエルは目を見開く。
「ありえない‼おまえは、今まで不動明と合体することでデビルマンなった。しかし、この世界に不動明の存在はなく、その転生者である内海明人は目の前に居る‼おまえが、デビルマンになるのは不可能だぁ‼」
『そうだな。俺は
大天使は
『俺は勇者アモン。そして、この世界とは別の時空から引き寄せられた、不動明の肉体を乗っ取ったデビルマンなのだ』
彼の口にする真実に、俺は言葉を失った。
「アモン……おまえが…!?」
思わず口を挟んでしまい、それに反応して奴が後ろを振り向いた瞬間だった。
「ミカエル、下がれ‼」
その声と共に、雷鳴が轟いては俺とアモンに向かって落雷が降り注ぐ。
「んぐっ‼」
『小癪な真似を…』
そして、接近してきたのは特攻機であり、ミカエルに向かって手を伸ばすは黄金の鬼神。
「虎之助!?」
躊躇うことなく、大天使がその手を取っては空に向かって離れて行く。
「あれは……セイクリッドセイヴァーか」
『奴は修正者だ、大天使と手を組んでいてもおかしくはない……』
追撃しようとするも、既にその姿は見えなくなっていた。
「ミカエルを逃がしてしまったか…」
『今は良い。あいつの反応が確認できれば、それで十分だ』
アモンにしてみれば、ミカエルを取り押さえることが目的だったわけじゃないようだ。
しかし、俺としてはこの勇者に対して疑問が残る。
「アモン……おまえが、デビルマンだったとはな」
今まで、アモンが自分の存在について語ったことは無かった。
それも不動明の肉体を乗っ取った状態で、デビルマンになっていたとは思わなかった。
『神の真実を知った今、隠していても仕方がない。そして、俺のことに気を取られている場合か?』
アモンは両腕を組み、俺と目を合わせる。
『サタンにも伝えておけ。これから先は、神を討つための戦いではなくなる。俺たちが真実を知ったことで、敵はこれまでの秩序を維持するために、なりふり構わずに仕掛けてくるだろう。そして、加藤美佐樹をその手に収めようとするはずだ』
「美佐樹を…?」
また、彼女ばかりが狙われるのか。
「どうして、そうも美佐樹ばかりが狙われる!?特異点の力を持つからか!?そうだとしたって…‼」
感情のままに言葉を連ねるが、アモンは首を横に振る。
『彼女こそが、創世の女神だからだ』
「創世の…女神?」
俺の疑問に答えるように、彼は説明した。
『これから先は、創世のための戦いになる。そして、新世界を創世するためには、女神の存在が不可欠だ。女神とは、言わば新世界を生み出すための母体だ。至高天を観測したことで、その女神に美佐樹が選ばれたことがわかった』
新世界を生み出すための女神。
美佐樹が、そのための器。
もたらされる真実の数々に、もはや情報処理が追いつかなかった。
「俺はっ…‼アモン、教えてくれ……。俺は一体、どうすれば良いんだ!?」
そんな問いかけに、アモンはすかさずにこう返した。
『望む未来が視えていない者に、できることなどない』
彼は目と鼻の先まで顔を近づけ、視線を合わせては俺の瞳の奥を覗き見る。
『黙示録の先に進むためには、おまえも覚悟を決めるしかない。おまえは選択者なんだろ?だったら、選ぶしかない。この世界の行きつく先をな』
アモンはコウモリの翼を広げ、空へと消えていく勇者。
『おまえにその覚悟が固まった時、決着をつけてやる』
俺は勇者の背中を、見送ることしかできなかった。
その後、遅れて三者連合の救援部隊が到着したが、既に戦いが終わっていることに唖然としていた。
神が存在しないという真実。
デビルマンという存在の真実。
勇者アモンの真実。
そして……明かされる、創世の女神という存在。
全ての謎が明かされたことで、これまでの前提が覆されて行く。
その中で、俺がやるべきことは何なのか……。
選択者としての決断が、迫られている気がした。
ここに来て、どんでん返しの新展開‼
ここに来て、読者の皆様もこの物語の副題の意味をご理解いただけたかと思います。
あ、言うまでもなく、この解釈は作者のオリジナルです。