※この作品はR-18です。

DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~   作:カナト

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創世の種

「至高天…か」

 

 地獄の魔王城にて、白藤隆一は神のシナリオを見つめながら呟く。

 

「新世界を創るためには、至高天に辿りつく必要がある。しかし、辿りつくだけでは意味がない。悪魔の力と人間の知恵を持つ者が創世の種に覚醒し、至高天にて女神と交わることで新世界を生み出し、創世を果たす。重要なのは、女神の存在…か」

 

 彼が加藤美佐樹に固執していた理由は、そこに在った。

 神のシナリオを手に入れ、この世界を創世に導く女神が彼女なのを知っていた。

 そして、神はもう存在しないことも。

 

 言わば、この『神のシナリオ』は神の意志のバックアップ。

 何度も黙示録の未来に進ませようとしていたのは、新世界の創世を阻むため。

 悪魔と人間を潰し合わせていたのも、デビルマンを生み出すことと、創世の種への覚醒を防ぐため。

 

 しかし、この世界には既にデビルマンは生まれてしまった。

 

「あとは、創世の種へと覚醒するのみ…か。そのためには、覚醒した女神の力を得なければならない」

 

 白藤は何度も美佐樹に接触しているが、彼女が女神に覚醒することは無かった。

 しかし、兆しは見えている。

 

 そのための道具は、既に用意してある。

 

「美佐樹、おまえを女神として迎え……神無き世界に創世を果たす。この俺が目指す新世界を、実現させるために」

 

 玉座から立ちあがり、神のシナリオを開いては手をかざす。

 すると、周りの景色が変わっては宇宙のような空間が広がり、彼の目の前には大樹がそびえ立つ。

 そして、その前に立つのは肩までの長さをした黒髪の女性。

 その姿は一糸まとわぬ全裸であり、彼女のことを認識して歩み寄る。

 

「今は亡き神が定めた秩序は、もはや意味を成さない。俺が求める新世界では、人間は神や悪魔、天使の道具ではない。全ての人間が悪魔と交わり、デビルマンへと覚醒を果たす。その時、人間と悪魔は真の意味で、神の支配から脱却して自由になることができる」

 

 失われた運命からの脱却。

 白藤の目的は、人間と悪魔に真の自由を与えること。

 

 そして、そのために創世を求める。

 

「俺の理想のために、おまえには創世の女神となってもらうぞ……美佐樹」

 

 語り掛けたところで、彼女は反応しない。

 何故なら、彼の目の前に居る彼女の姿をした者は、ただのイメージに過ぎないのだから。

 

「レクス」

 

 幻想に浸っていた中で、彼は声をかけられれば意識が現実に戻る。

 

「ヒミコか……」

 

 白藤の後ろには、タキシードに身を包んだ女が立っていた。

 

「彼女と接触することはできたのか?」

「はい。加藤美佐樹……彼女は間もなく、その運命を受け入れることでしょう。あなたの求める、創世を果たすという使命を」

「創世の女神……。俺にとって、それは美佐樹以外にはありえない」

 

 あくまでも、美佐樹に固執する白藤隆一。

 それもまた、修正者として生み出された彼に定められた運命か。

 

「全ての人間をデビルマンとし、神の秩序を破壊する。その先にある、真の自由を掴むために」

 

 新世界の創世を求める者は、既に動き出していた。

 神無き世界の秩序の崩壊。

 

 この世界での戦いは、もはや神と生きとし生ける者たちとの戦いという運命から脱線した。

 これから先に始まる最終戦争(アーマゲドン)は、新世界を求める者たちの戦いとなる。

 

 

 ーーーーー

 

 

 場所はマンションの一室。

 俺が部屋に戻った時、明かりは付いているが美佐樹の姿は無かった。

 音を聞くと、シャワーの音が聞こえることから入浴していることがわかる。

 

 今日は流石に疲れた。

 いつもなら、彼女が上がるまで待っているが、疲労感から耐えられずに寝室に向かってはベッドに横になる。

 

 目を閉じると、先程のアモンの言っていた真実が呼び起こされる。

 

 アモンの語った真実を聞き、その衝撃はあまりにも強かった。

 これまでの前提を覆されるような感覚に、精神的な疲労も大きい。

 

 この世界に置いて、もはや神は存在しない。

 全ては天使たちが神のシナリオを利用し、今ある秩序を維持するための輪廻。

 失われた運命の中で、俺たちは存在しない神の存在に踊らされていた。

 

 俺たちの戦いにおいて、本当に望むべき結果は神を討つことでは無かった。

 

 新世界の創世。

 そのために、美佐樹は創世の女神として選ばれた。

 

「俺は、どうすれば良いんだろうな……」

 

 これまでの前提を覆され、目的が見えなくなっている。

 この戦いは、いつになったら終わるのだろうか。

 神を討てば、俺たちはその定められた運命から脱却することができると思っていた。

 しかし、実際はそんな単純な話では無かった。

 

 俺は一体……。

 

『我が声を聞け。選択の力を持つ特異点よ』

 

 その声が聞こえた瞬間。

 俺の意識は、別の空間に飛ばされた。

 

 

 ーーーーー

 

 

 そこは宇宙のような空間であり、周りには無数の星が広がっている。

 俺はそこに、全裸の状態で立っている。

 

「ここは……」

 

 初めて見る世界に、ここがいつものような精神世界ではないことがわかる。

 

『ここは天と地の果てる場所。ここに至ることができるのは、創世の種となる器を持った者のみ』

 

 その声は、今度は空間全体から聞こえてきた。

 

『この世界の真実を知った汝(なんじ)は、神の秩序から逸脱した存在となった。だからこそ、我の言葉が届いたのだ』

 

 空間の中に、巨大な何かが現れる。

 6枚の悪魔の翼を広げた、金色の髪をしている2本の角の生えた巨人。

 それは天使の様でもあり、悪魔の様でもあった。

 

「おまえは……一体…!?」

 

 その存在を問いかけた時、奴は俺を見下ろしながら答えた。

 

『我が名は、創造主ゴウ。この世界の理の外にあり、その秩序を監視する存在』

「創造主…ゴウ…?」

 

 自らを創造主と呼ぶ存在に、俺は訝し気な目を向ける。

 

『汝らは、神のシナリオから脱却することを目的としているようだな』

 

 神のシナリオのことを知っている…?

 それなら、この巨人はまさか…。

 

「おまえは、まさか…神!?」

 

 アモンは神はもう居ないと言っていた。

 しかし、この創世主ゴウが俺たちの目指していた存在なのだとしたら、話が変わってくる。

 

『汝らが神と呼ぶ存在は、既に討たれた。我はただの事象、この世界の創世を望む者』

「……それなら、神じゃないってことか?本当に、神は存在しないのか?」

『神はもはや、その機能を失った。大魔神サタンが神を討ったことで、世界は新たなる創世を迎えることを望み、輪廻を繰り返してきた。しかし、今は亡き神によって創造された天使たちは、それを良しとはしなかった。神の秩序を守ることが、天使の使命だからだ』

 

 ゴウが軽く手を払う動作をすれば、周りの景色が変わる。

 黄色い空が広がる世界。

 そこでは、天使と悪魔の聖戦が行われていた。

 

『神の支配からの脱却を望む悪魔と、秩序を維持することを望む天使たち。天使たちは神の定めた運命を遂行するために、神の意志を宿したシステム『神のシナリオ』を生み出した。そして、そのシナリオに定められた運命は、世界の破壊と再生。神の秩序を維持するという、目的のために』

 

 世界が望む創世と、神の秩序の維持の反発。

 それだけのために、何度も世界は繰り返されてきたのか。

 

『しかし、神のシナリオは既に悪魔の力と神の知恵を持つ人間の手に渡った。これからは、真に創世のための戦いが始まるのだ』

 

 創世のための戦い。

 その言葉に、俺はこれから先に起こるデビルマン軍団との戦争を想起させた。

 

「白藤隆一は、既にこの事実を知っているのか…?」

『あの男は既に、この世界の真実を知っている。そして、新世界を創世するための準備を進めていた。加藤美佐樹……かの娘を手に入れようとしたのも、女神となった後に創世を果たすため』

 

 全ての点が、線で繋がった。

 奴の目的は、新世界の創世だった。

 

『しかし、奴はまだ創世の種には覚醒していない』

「創世の種…?」

『新たな世界を創世するためには、悪魔の力と神の知恵を持ち、女神の導きにより創世の種に目覚めなければならない。女神が選定した者でなければ、創世の種に至ることはあり得ない』

 

 ゴウは俺を指さし、語り掛ける。

 

『内海明人よ。おまえは古き神の秩序から脱却し、新世界を創世するに足る存在なのだ。かの娘が女神として目覚めた時、創世の道が切り開かれるであろう……』

 

 創造主の身体と、周りの空間が粒子化していく。

 

『その時、おまえがどのような世界を創世するのか……。見定めさせてもらおう』

 

 その言葉を最後に、俺の意識は現実へと戻って行った。

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