※この作品はR-18です。

DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~   作:カナト

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運命を変える合体

 状況はツバサにとって、絶望的と言えるものだった。

 目の前に居るのは、彼女がこの世界で1度も勝てなかった戦士の幻影。

 

 内海明人…デビルマン・ゼロ。

 

 その力がどこまで再現されているのかはわからないが、最悪の場合は彼の最強形態であるヴァイスゼロに変身することも可能であろう。

 しかし、それでも勝たなければ、彼女も東大寺もここで死ぬことになる。

 

 ツバサは右手を前に出し、肘から下を悪夢のゼロに向かって飛ばす。

 

「ブーストクロー‼」

 

 技を放てば、それを敵は正面から両手を交差させて受け止める。

 

『わかっているんだろ、シレーヌ』

 

 そして、そのまま弾いては距離を詰め、彼女の首を左手で掴む。

 

『おまえでは、この俺には勝てない。大人しく、運命を受け入れるんだ』

 

 力の差を見せつけ、敗北を認めるように迫る悪夢のゼロ。

 ツバサはその左手を掴み、強引に引き剥がそうと力を込める。

 

「んぐっ‼……そんな運命、私は認めない‼」

 

 その覚悟に呼応するように、遠くから雄叫びが聞こえてくる。

 

「グオオオォオオオオっ‼」

 

 それは偶然か、それともツバサの闘志が引き寄せたのか。

 デビルマン・カイム……東大寺翔琉が放電しながら2人に迫る。

 

「東大寺!?」

 

 その突進を受ける前に、悪夢のゼロはツバサから離れては距離を取る。

 声をかける彼女であるが、カイムはそれに反応することなく、目の前に居る敵にのみ集中する。

 

「内海明人ぉおおお‼あなたに、ツバサさんは渡さなぁああい‼」

 

 悪夢と現実の区別がついていないのか、東大寺は悪夢に囚われたままゼロに向かおうとする。

 

「やめろ、東大寺‼おまえが勝てる相手じゃない‼」

 

 制止しようとするツバサだが、その声は暴走するカイムには届かない。

 

「僕がっ…ツバサさんを守るんだっ‼そのために、おまえは消えろぉー‼」

 

 電撃を飛ばしながら迫るカイム。

 しかし、その突撃を悪夢のゼロは真正面から、巨大な2本角を掴んで押さえつける。

 

『おまえに何ができる!?消えろ、雑魚がぁ‼』

 

 力任せに突進するカイムでは、歯が立たないのは当然だった。

 そして、悪夢のゼロは後ろに放り投げる。

 

「ぐはぁああああ‼」

 

 背中から倒れるデビルマン・カイムの上に、ゼロは空中に飛翔しては急降下で蹴りを入れる。

 この時、東大寺は蓄積したダメージにより、カイムの変身が解除されてしまった。

 

『俺とシレーヌの邪魔をするなぁー‼』

 

 その蹴りを受ければ、カイムは戦闘不能になる。

 それを予感し、ビビカが不敵な笑みを浮かべる。

 

『アハハハッ‼これでカイムは終わりよぉ‼シレーヌ、愛する者の死をもう1度見るのねぇ‼』

 

 煽るビビカの声に、ツバサは目を見開きながら前世界の光景がフラッシュバックする。

 

 勇者アモンの力を持つ不動明に敵わず、もはや死ぬことが決定付けられた未来。

 その中で、カイムはシレーヌの勝利のために、その身を捧げた。

 

(私はまた……カイムを失う…‼東大寺っ‼)

 

 彼女の脳裏に浮かぶのは、この世界で見つけた愛すべき存在。

 カイム……いや、東大寺翔琉の笑顔だった。

 

「ツバサ…さん…‼」

 

 デビルマンの姿でなくとも、悪夢にうなされようとも、彼のツバサへの愛は変わらない。

 彼女を守るために戦うという覚悟は、なおも消えない。

 

「やめろー‼‼‼」

 

 ツバサは叫びながら、彼の前に立っては両腕を広げて悪夢のゼロの蹴りを受け止めた。

 

「ぐがふぁああああああ‼‼‼」

 

 その威力は彼女の限界値を越え、後ろに吹き飛ばされながらも変身が再度解除される。

 

「はぁ…はぁ…ぐはぁ‼」

 

 仰向けに倒れ、吐血しながらもツバサは横に居る東大寺に目を向ける。

 

「東大寺っ…」

 

 このまま、終わってしまうのか。

 歴史は繰り返されるのか。

 

 そんな弱気な気持ちが芽生える中で、「それは違う」と訴える経験がある。

 

(そうだ……。私は知っている…‼)

 

 世界に刻まれた歴史……前世からの運命。

 それを覆した、友の存在を。

 

『シレーヌ、カイム!これで終わりよぉ‼』

 

 ビビカの号令に合わせ、悪夢のゼロが右手にオーラを溜める。

 

『シレーヌ……おまえの目を覚まさせる。そのために、カイムを……殺す‼』

 

 強い殺意を向けながら迫るゼロ。

 それを睨みつけながら、ツバサは身体を起こす。

 

「東大寺……いつまで、悪夢なんかに囚われているつもりだ?」

 

 語り掛けようとも、東大寺の目は幻覚の闇に囚われたままだ。

 そんな彼の頬に触れ、顔を近づけるツバサ。

 

「私はここに居るぞ!目を覚ませ、東大寺…翔琉ぅ‼」

 

 一か八かの賭けだった。

 ツバサは彼の唇に吸いついては、電気が走るような感覚に襲われた。

 

 そして、その意識は彼の精神世界へ―――。

 

 

 ーーーーー

 

 

 そこは監獄の中だった。

 周囲を見渡せば、そこには全裸の東大寺がうつ伏せに倒れていた。

 

「東大寺!?」

 

 駆け寄って抱き起こそうとするが、その前に違和感に気づく。

 現実と同じく、目は開いているが焦点は合っていない。

 放心状態になっている。

 

『まさか、おまえがここに来るとはな』

 

 その声は監獄の外から聞こえ、ツバサは顔を上げる。

 

「おまえはっ…!?」

 

 声に聞き覚えがあった。

 それも、そのはず。

 何故ならば、ツバサの前に居るのは、もう1人の彼女自身なのだから。

 

『私は、おまえだ。本来のあるべき私……内海明人と結ばれ死、真の如月ツバサだ』

 

 その言葉を受けて、ツバサは東大寺を見る。

 

 ここが彼の悪夢の中だと言うのであれば、これもまた、東大寺が生み出した恐怖の証。

 そのことに気づき、ツバサは切なげな表情で彼の頭を撫でる。

 

「バカな奴……。おまえはずっと、こうなることを恐れていたのか?」

 

 東大寺の抱える恐怖が、彼女に伝わってくる。

 前世界の記憶による、運命の柵(しがらみ)。

 それから解放されなければならない存在が、ここにもう1人居たのだ。

 

 監獄の向こうで、先程の悪夢の明人が姿を現し、もう1人のツバサの傍らに立つ。

 

『その男は運命の前に敗けたのだ。おまえと俺が愛し合うという、定められた運命にな』

 

 そう言って、悪夢によって生み出された2人は抱き合い、悪夢のツバサは明人の反り立つ巨根を握って扱く。

 

『明人の一物を味わったのなら、わかるはずだ。その男とは、比較にもならない悦を得ただろう?』

 

 まるでこちらに来いと言わんばかりに、見せつけるツバサ。

 

『素直になれ。もう1度、あの悦楽を味わおうじゃないか』

 

 檻に歩み寄り、もう1度巨根の亀頭を向ける悪夢の明人。

 それに対して、ツバサは2人を見上げながら不敵な笑みを浮かべた。

 

「おまえじゃ、私の欲望を満たすことはできないさ」

 

 そう呟いては、ツバサの全身から白いオーラが放出される。

 

『な、何だっ…‼この力はぁ…!?』

『こんな力…‼私に……シレーヌにあるはずが無い‼』

 

 それはまるで悪夢の明人たちを拒むように強く輝いては、後退りさせる。

 

「私は如月ツバサだ‼そして、東大寺翔琉を愛している‼私の望みはただ1つ。この世界で東大寺と共に、家族となって生き抜くことだ‼」

 

 そして、その覇気に圧され、悪夢の象徴たちは吹き飛ばされる。

 

『『ぐぁあああああああああああああああ‼』』

 

 そのオーラに包まれ、東大寺は目を覚ます。

 

「ツバサ……さん…?」

 

 視界の中に愛する人を捉え、名前を呼ぶ。

 

「やっと、起きたのか?私が明人に寝取られる所を妄想するとは、おまえも特殊な性癖を持っていたようだな」

 

 冗談を口にしながら、彼の顔を乳房に埋める。

 

「んぶっ!ツバサさんっ…‼息がっ、苦しいです…‼」

「いい気味だ、このバカ。私はな、もうおまえ以外の男に抱かれるつもりなんて無いんだ、バカ。私が惚れた男である、東大寺翔琉以外にはな」

 

 顔を上げさせ、狼狽えている彼の口に吸いつくツバサ。

 

「んちゅっ‼んんっ、れろっちゅ、んむっちゅ!」

 

 舌を絡める濃厚なキスをし、糸を引かせながら離れる。

 

「ツバサさん……。僕、本当に……恐かったんです。いつか、また……ツバサさんが、明人さんのことを求めるんじゃないかって……。僕は弱いから……僕よりも強い、あの人の方が、あなたを守れるんじゃないかって…‼」

 

 自身の弱さを嘆き、その絶望に呑まれて見た悪夢。

 東大寺の本心を聞き、ツバサは彼を支えながら立たせる。

 

「東大寺、おまえは弱くない。むしろ、おまえの強さが私を救ってくれたんだ。それでも、おまえが戦うための強さを求めるのなら……」

 

 彼と視線を合わせ、微笑みを向ける。

 

「私はおまえと、共に強くなりたい。おまえと共に生きる未来を、勝ち取るために」

「ツバサさん……」

 

 ツバサは東大寺を抱きしめ、互いの温もりを感じ合う。

 

「もう2度と、おまえを犠牲にする未来など見たくない。私の未来には、おまえが……翔琉が必要なんだ…‼」

 

 彼女の目からは涙が零れ、その瞳は愛しい人の顔を見上げている。

 そして、東大寺もまた、ツバサを強く抱きしめた。

 

「ありがとう、ツバサさん…‼僕は戦う‼ツバサさんとの未来を、一緒に生きていくために‼」

 

 それは2人にとっての新たな誓い。

 運命を越えるために、共に戦うという決意と覚悟。

 2人の心が混ざりあった証。

 

 そして、それは今までの世界には無かった、新たな可能性を切り開いた―――。

 

 

 ーーーーー

 

 

 場面は現実世界に戻り、ビビカの目には眩い光が見える。

 

『な、何だ、これはぁ…!?』

 

 悪夢のゼロも歩みを止め、両手を交差させて防御姿勢に入る。

 

 白い光はツバサと東大寺を包み込み、その光が収まった時―――2人は1つに交じり合っていた。

 

 

『あれは……まさか、合体したのか!?』

 

 デーモン同士の合体。

 それは一方の命を犠牲にし、もう一方の悪魔に力を与える技。

 

 しかし、2人の姿はそれとは異なる。

 

「ツ、ツバサさん……これは!?」

「これが、運命を越えた証拠……なのかもな」

 

 デビルマン・カイムの背中に、シレーヌの上半身が繋がっている。

 差し詰め、人馬一体とでも言える姿だ。

 

 デビルマン・カイムシレーヌ。

 

 その姿は前世界とは異なり、2人の魂はどちらも残っている。

 

『まさか、このようなことが!?』

 

 悪夢のゼロも戸惑いが隠せず、状況が飲み込めないままに突撃をかける。

 

『シレーヌぅううう‼』

 

 迫るゼロを、デビルマン・シレーヌはキッと睨みつける。

 

「おまえは、明人ではない…‼私の友を、愚弄するな‼やるぞ、翔琉‼」

「はい、ツバサさん‼」

 

 カイムが駆けながら全身から放電しては、それをシレーヌが念動力で2つの角にエネルギーが集中する。

 

「おまえは力を解放し続けろ‼私がそれを、制御する‼」

「わかりました‼」

 

 シレーヌとカイムの、一心同体のコンビネーション。

 その新たな可能性によって開かれた戦闘スタイルは、カイムの有り余る力をシレーヌの技を組み合わせるものとなる。

 

「「エレクトリック・ホーン‼」」

 

 双角とゼロの拳が衝突し、力は拮抗―――。

 否、2人分の力が上乗せされている、カイム・シレーヌの方が押している‼

 

『ば、バカなぁ‼この俺がっ…‼』

 

 神のシナリオには無い、シレーヌとカイムの新たなる姿に悪夢のゼロも対応できていない。

 

「このまま、押し切ってやる…‼」

 

 そのまま突き飛ばされては、ツバサが両手を前にして鷲(わし)の腕を放つ。

 彼女の腕には、カイムの電撃を纏(まと)っている。

 

「「エレクトリック・ブーストクロー‼」」

 

 左腕は悪夢のゼロの胴体を貫通し、右腕は顔面を掴んでは電流を流す。

 

『ぐがはぁああああああああああああああああ‼‼‼』

 

 それは自身が偽物であり、幻覚であることを証明するかのように、ダメージに耐えかねて粒子状に消滅した。

 

『あ、ありえない‼このような結末が、あってたまるかぁああ‼』

 

 悪夢のゼロの敗北。

 目の前の現実を受け入れられず、ビビカは両翼を羽ばたかせながら逃走を図る。

 しかし、それを許す2人ではない。

 

「逃がすかぁ‼」

 

 ゼロが居なくなれば、ビビカはもはや無力。

 デビルマン・シレーヌはカイムから分離し、飛翔してはすぐに追いつく。

 

『シレーヌ!?』

「よくも、私の男を弄んでくれたな!死をもって償え‼」

 

 両腕を戻し、爪を立てながら迫るシレーヌ。

 それに対して、ビビカは頭の目を開いて対抗する。

 

『死ぬのはおまえだぁ‼おまえも、悪夢に堕ちるが良い‼』

 

 その光を直視してしまうツバサだが、目を見開いては雄叫びをあげる。

 

「うぉおおおおおおお‼私は悪夢になど屈しない‼今を生きる私に、幻など必要ない‼」

 

 精神力だけで光を抑えこみ、そのまま目を掴んではパキーンっと握りつぶす。

 

『ぎぃぁああああああああああああああああああああああああああ‼‼‼』

 

 断末魔の声をあげ、ビビカもまた消滅したのだった。

 

 悪夢の元凶が散ったのを見届けた後、シレーヌは地上に降りては変身を解除する。

 

「翔琉……」

 

 デビルマン・カイム……東大寺も変身を解除しては、ゆっくりと彼女に歩み寄る。

 

「ツバサさん……。僕……」

 

 彼女は優し気な笑みを浮かべ、両手を広げては彼を抱き止める。

 

「よく頑張ったな。立派だったぞ」

「……ありが…とう」

 

 その賞賛の声を受けては、緊張の糸が切れたのだろう。

 彼はそのまま、ツバサの胸の中で意識を手放した。

 

「お、おい!翔琉!翔琉ぅ‼」

 

 名前を呼びかけるが、反応は無い。

 ただ寝息を立てているだけだった。

 肉体的にも、精神的にも限界が来ていたのは明らかだった。

 死んだわけではないとわかり、安堵の息をつくツバサ。

 

「……しょうがない奴め」

 

 彼の背中に手を回しながら、彼女はしばらく、そのままの体勢で東大寺の温もりを感じていた。




シレーヌとカイムの合体、その新しい形を解禁‼
ちゃんと有事の時以外は分離できるのは、良心的ですね。

これもまた、運命を越えた形の1つと言えましょう。
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