DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
家に帰ろうとはした。
けれども、了さんは俺を強引にカフェに連れていったので、そこでお茶をすることになってしまった。
「学校帰りだからかな。学生が多いね」
「あ、あの……」
「俺も学生時代はこうやって、カフェやファーストフード店で時間を潰していた。1人、寂しくね」
「すいません。どうして、俺はあなたとお茶をしているんですか?」
強引に噛み合っていない会話を終わらせるために聞けば、了さんはコーヒーを飲んでから俺を見た。
「そうだね。君は知る権利がある。でも、まずその前に俺の話を聞いてほしい。俺は考古学を研究しているが、その中でもある存在に興味をそそられるんだ。なんだと思う?」
「いきなりそんなことを聞かれても……俺は歴史とかに興味は無いんで」
「そうだな。ならば、ヒントをあげよう。古代から存在していたとも、本当は存在していないとも言われている存在だ。聖書にも出てきており、歴史上の偉人が従えていたと言われている」
「聖書……天使ですか?」
思い当たる言葉を言えば、了さんは笑って首を横に振る。
そして、テーブルに両肘をついて手を組み、表情が引き締まる。
「悪魔。俺はその存在を追究している。俺はね、悪魔はこの人間社会に潜んでいるのではないかと考えている」
「悪魔なんて、居るわけがないじゃないですか。漫画やアニメの見すぎですよ」
「居るわけがない。どうして、そう言いきれる?」
了さんは挑発するような笑みで聞いてきた。
「これまで、存在を証明されていないからですよ。そうかもしれないって思ったものも、全てが嘘情報だったり偽物、合成映像だった」
「それは早計だな。そういうものは悪魔では無かったというだけで、悪魔が存在しないという理由の証明にはならない」
「……悪魔の証明ですか?」
「そう、テーマが悪魔だけにね」
そう言って、了さんは3枚の写真をコートのポケットから取り出して見せてきた。
そこには、古い壁画が写っている。
1枚目は人間、2枚目黒い異形の何かが描かれており、3枚目はその異形と異形が向かい合っている。
「これを見て、君はどう思う?何を感じる?」
「どうって言われても……俺、想像力がそんなに無いんですよ。人間と……この黒い生き物が一緒に生活して――」
違う、そうじゃない。
もっと……もっと、真実は残酷だ。
また、口が勝手に動いてしまった。
「人間が、デーモンになったんだ。そして、デーモン同士で本能のままに戦っていた」
了さんは俺の今の一言を聞くと、目を細めた。
「ほぅ……どうして、そう思ったんだい?」
「思ったって言うか……そうとしか考えられない、何か確信めいたものが頭の中にあって……」
「そうか。…君がそう感じるのならば、この絵の写真も見てもらえるかな」
次に出されたのは、大きかったからか2つに折り畳まれており、それを広げて俺に見せてくる。
それを見たとき、頭に衝撃が走ったと同時に激しい頭痛が起きた。
12枚の羽を広げている白い天使と2枚の羽を広げている黒い悪魔、そして、その2人を黒い異形が囲むように描かれている。
「これは……」
「戦争だよ。それも、純粋な人間が関与していない戦争だ」
「純粋な人間?何を言って…」
「君はさっきの3枚の写真を見て、人間がデーモンになったと言ったね。そのデーモンは人間の意識を飲み込み、その身体を自身のものにするのがほとんどだ。しかし、例外も多数存在していたことがある文献からわかった」
「……もしかして、乗っ取ろうとしたデーモンの意識をねじ伏せて、自我を保ったままデーモンになった者が居るってことですか?」
俺の予想は当たったのだろう。
了さんは笑みを浮かべている。
「そうだ。しかし、彼らについての資料は少なくてね。私は仮に、デーモンの力を宿したまま人間であり続けている彼らをこう呼ぶことにしている。『デビルマン』とね」
「デビル…マン……。それで……話を戻しますけど、どうして俺を……」
悪魔とかデビルマンとか、途方もない話にはついていけず、話をそらす。
すると、了さんは一息ついて腕を組んだ。
「ここ最近でこの街で起きている行方不明事件、そしてバラバラ死体事件。……何か変だと思わないかね」
「何か……って、何がですか?」
「まるで神隠しにあっているかのように、何の手がかりも残さすに消えていく人々。バラバラに、切られたのではなく、千切られたような跡のある人々の死体。これが、人間の為せる技だと思うか?」
了さんの言いたいことが、何となく…いや、確実に伝わってきた。
しかし、そんなことがありえるのか?
「本当に……あなたの言うとおり、悪魔が…デーモン族が存在するのなら、人間は……」
「食い尽くされる可能性があるな。今の人間に対抗する手段はない。奴らの皮膚は硬く、人類の兵器では傷1つ付けることはできないだろうさ」
「なら……どうしたら、デーモンと戦えるって言うんですか!?」
俺が焦っているのに対し、了さんは冷静だ。
「アキトくん、君は先程から悪魔のことをデーモンと呼んでいることに、自身で気づいているかな?」
「えっ……デーモン?そう言えば、さっきから……悪魔って呼ぶよりも、そう呼んだ方がしっくりくるっていうか……どうしてだ?どうして、俺は……」
今日は本当におかしい。
俺は一体、どうしてしまったんだ?
知らないうちに、自然と流れるように知らない言葉を発している。
俺が混乱していると、了さんは再度先程の戦争の壁画を見せてくる。
「この絵は、デビルマンとデーモンの戦争を描いている。君は白と黒、どちらがデビルマンでどちらがデーモンだと思う?」
改めて壁画の中の白い天使と黒い悪魔を交互に見る。
この天使…夢の中に何度も出てきた。
確か、了さんと同じ名前を俺は呼んでいた。
そして、この天使は俺のことを明って呼んで…。
ただの勘だった。
誘導されているようだった。
俺は右手の人差し指で黒い悪魔をさした。
「多分……これが、この黒いのがデビルマンだと……思います」
「そうか。……やはり、君には素質があるようだな」
了さんは写真をすべてしまってコーヒーを飲み干した。
そして、メモ帳を取り出して殴り書きで何かを書く。
「明日の夜6時に、この教会に集まろう。おそらく、俺の理論の真偽はここで明かになる。その時に君は、重大な選択を迫られることになるだろう」
そう言い残し、了さんはカフェを出てしまった。
『明……』
『了……』
俺はこの時、知らない何かに踊らされているような気がしてならなかった。