DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
言わば、デビルマン側から人間側に変わるという事です。
しかし、この物語がデビルマンの物語であることは変わりませんのでご安心ください。
正義の味方、ヒーローに憧れたことが男なら誰でもあると思う。
悪を挫き、弱気を助ける者。
そんな存在を夢みて、子どもの頃はヒーローごっこをしたものだ。
そして、将来ヒーローになるために勉強を頑張って学年1位を独占。
ヒーローになるために、身体を鍛えて学校の不良を成敗したこともあった。
しかし、それは可愛い子どもの夢であり、実現することは決してない。
テレビのアニメや漫画のように人類を脅かすような宇宙人や怪物は現実には存在しないし、そんなものが存在しても人類に対抗する手段はない。
宇宙のテクノロジーに、地球のちっぽけな技術が通用するはずがないんだ。
その悟りに辿りついた途端、俺は今までしていた勉強や鍛錬などの努力を全て止めた。
そして、今では夢も希望もない1日を日々過ごしながら、最近は趣味のバイクで風を切って走ることだけを楽しみに俺は生きている。
この先の人生、普通に高校を卒業して、普通に就職して、普通に結婚して、普通に老後を生きて死んでいくんだろう。
この先の平凡さに絶望しながら、昔ヒーローを夢みていたバカ……この俺、
入口の上での転がって気持ち良く吹く涼しい風を感じながら、俺は下でうるさく騒いでいるアホ3人組を見下ろす。
見る限りだと、十数枚の写真を持っているのがわかる。
「……またあの家のご令嬢様の写真を撮ったのか?ボス、ヌケ、ムチャ」
大柄な男1人と、その子分のヒョロヒョロな細い身体をした2人に声をかけると、3人は急いで俺から写真を隠そうとする。
もう見られているから遅いというのに。
ボス、ヌケ、ムチャは俺の幼馴染で、バカだと思っているが友達だと思っている。
特にボスとはよく衝突するが、いざというときは頼れる奴だ。
「か、兜、てめぇー!!そんなところで見下ろしてないで降りてこいやー!!」
「あぁ?んだよ、面倒臭ぇなぁ」
ここで嫌だって言ったらまたくだらないことで喧嘩になると思い、やる気がないながらも脚立を降りて3人の元に向かう。
そして、下から目線で睨んでくるボスを無視して鼻水を垂らしているヌケに手を出して言う。
「ヌケ、写真を見せてくれ」
「あ~、はいはい」
何も考えずにヌケは写真を3枚渡してくれたので、それに目を通す。
それには茶髪の長髪でピンク色のカチューシャを付けた、巨乳で発育のいい抜群のプロポーションをお持ちの有名な家のお嬢様が写っていた。
制服姿にスク水姿、そしてテニスのユニフォーム。
「おい、これって本人の許可を取ってるのか?盗撮は犯罪だぞ」
「て、てめぇには関係ねぇだろぃ!!」
写真をボスに取り返され、俺はたまらず溜め息をついた。
「確かに関係ねぇけどよぉ……まぁ、ほどほどにしとくんだな。武士の情けで本人と先公には黙っててやるよ」
呆れてこれ以上言うことができず、3人がうるさくて昼寝もできなくなったので屋上を後にした。
あいつらが羨ましいと思う気持ちが、ないわけじゃない。
毎日、バカみたいなことではしゃいで、1日1日が充実しているように見える。
俺もあそこまで頭を空っぽにすることができれば、毎日が楽しくなるんだろうなって思うことも多々ある。
バカになりたいって思う事があるのは、おかしいかな……父さん、母さん。
両親は小さい頃に研究中の事故に巻き込まれて死んで、父親の方の祖父に俺と弟のシローは育てられた。
祖父の兜十蔵は科学者で、次世代のエネルギーについて研究している。
そのエネルギー研究については何も聞いてないし、興味もない。
周りからは天才科学者と呼ばれているが、俺たちにとっては孫バカな爺ちゃんでしかないからな。
最近は研究に入れ込んでいて、どこかの研究施設にこもっているので爺ちゃんとは会っていない。
時々家に帰ってきても、思い詰めた表情で何かの計算式を自室にこもって書いているのを見るだけだ。
しかし、科学者の孫としての直感だろうか、爺ちゃんの今の研究が世界にとって最も重要なものであると思えてくる。
だから、邪魔することができない。
玄関に着いて靴を履き替えて帰ろうとすると、後ろから女の声が聞こえてきた。
「ちょっと、あなた。まだ授業中でしょ。もう帰る気なのかしら?」
……噂をしたから何とやらか、よく知っている生真面目な女に見つかってしまったようだ。
無視して帰ることもできたが、逃げるようで嫌だったから振り向いて対面する。
「俺が退屈な授業をバックレようが、おまえには関係ないだろ。……弓さやか」
名前を呼ばれると、弓さやかは茶色い長髪をなびかせながら胸の下で腕を組んで近づいてくる。
弓さやか。
日本有数の財閥である弓家の長女。才色兼備という言葉を表すように、テストを受ければ学年1位、スポーツ万能と、文武両道で誰からも慕われる美少女。教師は目に見える待遇をいろいろと彼女に与えている。
爺ちゃんと彼女の父親が知り合いということもあり、俺とは少なからず話せる関係だ。
「授業を受けて勉強をするのは、学生の権利よ」
「権利であっても義務じゃない。受けるかどうかは俺が決める。……現に、おまえだって今は授業中だろぉが」
「おまえ呼ばわりしないで。私はとっくに高校までの知識を身に着けているから関係ないわ」
「思いっきり矛盾してないか?それ」
また溜め息をついてしまうと、アホらしいと思ってしまう。
それが顔に出ていたのか、弓さやかの顔が不機嫌になる。
「その人をバカにした顔、やめてくれない?不愉快よ」
「……別にそんなことしてねぇし」
「いいえ、してるわ。私、わかってるのよ?あなたは本当なら私よりもできる人なのに、その実力を発揮しようとしない。だって、甲牙くんはあの兜博士の―――――」
「爺ちゃんは関係ない!!……俺は俺だ」
さやかの言葉を遮り、怒声をあげてしまう。
それに驚いてしまったようで、さやかは目をそらして「ごめんなさい」と言った。
「俺は……兜十蔵じゃない、兜甲牙だ。そういう期待、もう……うんざりなんだよ」
そう言葉を残し、俺は怒りを隠して学校を出た。
俺がヒーローの夢から覚めた……冷めた理由は、精神的に大人になったからだけじゃない。
『流石は兜博士のお孫さんだ』
『あの兜博士の孫なら、これぐらいできて当然だろ』
『兜博士のお孫様なら、将来は研究職で安泰でしょう』
……うざってぇんだよ。
俺が何かを成したとしても、周りが視るのはその背後にある兜十蔵だ。
俺じゃない。
きっと、俺が仮に世界を救う救世主になれたとしても、それも兜十蔵の孫だからだって思われるに違いない。
結局、ヒーローになるのは俺の背後に居る爺ちゃんなんだ。
だから、俺はもう……未来に希望を持つのをやめたんだ。
これで本当の新章開幕です。
明人くんは少しの間お休みです。
甲牙くんの活躍はどうなるのか、そしてそれがデビルマンである明人くんとどう交錯していくのか、期待して呼んでくれると嬉しいです。