DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
1時26分に家に着くと、当然ながら誰も居なかった。
生意気な弟のシローは今は小学校で良い子で勉強し、爺ちゃんはどこかの研究所でまた研究に集中していることだろう。
自室に戻って荷物を降ろせば、家を出てヘルメットを被ってバイクにまたがる。
「俺にはこれがある……バイクに乗ることさえできれば、それで良いさ。それだけで……良い」
アクセル全開にし、周りへの騒音を気にせずにバイクをかっ飛ばす。
すぐに街を抜け、風景が自然中心に変わる。
風の音、川の流れる音、鳥の鳴き声などの全ての音を置き去りにし、バイクで爆走する。
後ろからパトカーが赤いランプを点滅させながら近づいてきて隣の道路を走る。。
「そこのバイク、止まりなさい!!スピード違反ですよ!!」
警察か、ご苦労なことで。
わざわざ俺のために貴重な労働時間を削ってくれているところ申し訳ないが、俺はバイクの速度を落とさずに走行し続ける。
「うっぜぇな……ただの公務員のくせによぉ」
「聞こえたぞ、今の一言!!大人に対して、何て口の利き方をするんだ!?」
「大人ってだけで目上だと思ってんの?そう思ってる奴ほど、底が浅いんだよなぁ」
「く、口の減らないガキがぁ……おい!名を名乗れ!!」
無視して走行を続けていると、警官のおっさんが「名乗りなさい!!」と催促してくる。
うっとうしい。
名前を言わないのは、俺が同情しているからだということに気づけよ、こいつ。
この心の声に気づくはずもなく、警官は俺にずっとガミガミと言ってくる。
前を見てないのに、よく運転しながら説教ができるなんてどんなテクニックだよ。
俺は深い溜め息をつき、言いたくなかったが名乗っておいた。
「……甲牙、これが俺の名前。これで満足か?」
「そんなわけないだろ!?苗字を名乗りなさい、苗字を!!君の家族に、どんな教育をしてるんだって言いつけてやるんだからな!!」
……面倒臭い。
この際、この警官がどうなろうと関係ないか。
「兜だけど……ちなみに、家族は弟と祖父だけ。祖父の名前……知りたいか?」
「か、かか、兜!?も、ももももももしかして……その祖父というのは、あのっ……!!」
「兜十蔵ですけど、何か?」
警官が「か、兜博士ぇええ!?」と驚きながらパトカーが減速していき、そのまま俺は振り切る。
大抵は爺ちゃんの名前を出すと、法律違反をしてもおとがめは無しになってしまう。
政治家ではないが、天才科学者ともなると周りに……日本に与える影響は大きいようだ。
人間国宝になっているという噂もあるぐらいだからな。
俺は「さいならー」と言いながら再度アクセルを回して加速する。
そして、いつも着ている森の湖に到着した。
いつも、イライラしたり心が沈んだ時、俺は大きな湖に着て孤独になり、心を癒す。
人間関係なんて疲れるだけだ。
特に、大人なんてうんざりする。
誰かを自分のために利用することしか考えておらず、そのためなら何でもするのが大人だ。
女も使う、金も使う、人質も使う。
使えるものは全て、壊れてボロ雑巾になるまで使ってくる。
それが、汚い大人の世界だ。
俺は芝生に寝転がり、改めて青空を見上げて右手を伸ばす。
「……もしも……もしも、俺にこの世界を変える力があるなら……俺は……」
爺ちゃんなんて関係ない、世界のあらゆる問題を解決する救世主になるか。
それとも、今の世界なんて完膚なきまでにぶっ壊す悪魔になるか。
「……どっちもないな。現実的じゃない」
くだらない夢は見ないと決めた。
俺は英雄になることはできないし、誰かを救える正義の味方にもなれない。
なら、爺ちゃんと同じ科学者になるか?
無理だ、俺は爺ちゃんのような天才じゃない。
科学者になったところで、何の成果もあげられない。
俺の未来は、子どもの頃に描いたものとは違って真っ暗だ。
「もう……どうでも良いよ、俺の人生なんて」
本心ではなく、無意識にそう呟いた。
それが間違いだったと、次の瞬間に知らされることになる。
<ナラ……俺ニオマエノ命ヲ寄コセェ……>
どこからか声が聞こえてきた。
そして、それは湖から飛び出して俺の頭上を越えた。
「……ありえない」
その異形の未知の存在を見た最初の一言はそれだった。
首元から頭が2つに分かれている怪物が、よだれを垂らしながら俺のことをギラギラした目で見てくる。
『これが何なのか?』とか、『どんな生き物なのか?』という疑問がないわけではなかった。
しかし、生命の危機が身体を起こさせ、両足を動かして全速力で走らせた。
森の中を走りながら、さっきの未知の怪物の姿が頭から離れない。
「あれは何だ!?命を寄こせって言っていた!!……殺されるのか!?俺は……あんな化け物に」
全速力で走っているが、振り切ることができずに背後から怪物の声が聞こえてくる。
<逃ゲラレルモノカ!!オマエハモウ、コノ『ダブラサウ』ノ獲物ダァアア!!>
両方の頭の首が伸び、俺に食らいつこうとする。
その時、俺はあまりにも理解不能なことに取り乱してしまい、腰が抜けてしまった。
「な……何なんだよっ!?俺が何かしたのかよ!?……誰か……誰かっ!!助けてくれぇええ!!!」
悲痛な叫びをあげ、その後に一瞬だけ時が止まったような錯覚を覚えた。
しかし、一瞬だけだ。
その一瞬の間に、またも理解不能な出来事が起きた。
俺は転んで正解だったのか、背後から黄色い光線が飛んできて怪物がそれに直撃する。
<ギシャァアアア!!!熱ィイ!!何ダ……何ナノダ、コノ力ハァアア!!>
無残な奇声を発しながら、怪物は粒子状になって消えていった。
これは夢だったのか?
すぐにそう思ったが、何かの気配を感じて後ろを振り返れば、そこに何かのコスプレかと思うような派手な見た目をした白髪の女が無表情で立っていた。
「あなたは……兜甲牙さん……ですか?」
いきなり名前を呼ばれ、俺は下がりながら目を細める。
「どうして……俺の名前をっ!?」
警戒したのを察したのか、女は無表情のまま右手を前に出して横に振る。
「警戒を解くことを推奨します。私はあなたの命を奪おうとした怪物……デーモンではありません」
「デー……モン?」
この日は、今思い返せば俺の人生の分岐点だったんだと思う。
デーモン族の存在を知ったことが、俺の人生を大きく変えた。
そして、彼女との出会いもそうだ。
白髪の女は自身のその豊満な胸に手を当てた。
「自己紹介が遅れました。私はミネルバX。あなたのおじい様である、兜十蔵博士によって作られたサポート用アンドロイドです」
展開が早いですが、甲牙くんがデーモン族と接触しました。
そして、あの……あのミネルバXとも!!
この先、彼女は重要な役割を果たします。
ここから甲牙の物語は少しずつ加速していきます!!