DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
ミネルバXから敵意や殺意は感じなかった。
俺は彼女?に案内され、森を抜けて白くて大きなピラミッド状の形をした施設に連れてこさせられた。
「……本当に、ここに爺ちゃんが居るのか?」
「はい。兜博士は日夜、この研究所でデーモン族への対抗策を研究しています。そして、その対抗策の第一号として開発されたのがこの私、ミネルバXです」
「さっきの光線も、あんたが出したってことか……」
「はい。私にはデーモン族に有効な力、光子力が内蔵されていますので」
「光子力?」
「対抗策についての詳しい話は、博士本人からお聞きになるのがよろしいかと」
ミネルバXと共に研究施設の中に入れば、暗い廊下の奥に進む。
「爺ちゃんがここで……悪魔の研究を……。でも、一体どうして」
「日本国の首相は1年前、ある赤い悪魔と接触しました。その悪魔は血が入った小瓶を首相に渡し、『これを調べ、デーモン族の脅威に備えろ』と言ったそうです。そして、研究者がその小瓶に入っていた血を解析すると、人間にも動物にも存在しない未知の細胞が発見されました。それを国民には秘密裏に死刑囚に投与し、人間にどんな影響を与えるのかを研究したところ、当時の研究者たちの目の前で恐ろしい現象が起きました。その死刑囚の身体が突然変異を起こし、巨大なコウモリの怪物になったのです」
「コウモリの……怪物!?」
「それがデーモンの存在を認識した瞬間でした。その怪物は30分ほど暴れまわり、研究者を何人も食い殺しました。そしてその後、電池が切れたように絶命しました。その時の立会人の中は2人の天才科学者が居り、その中の1人は兜博士でいらっしゃいました。博士はこの脅威の細胞をデーモン細胞と名付け、人間生活に溶け込んでいるデーモン族を探り、捕獲して研究を始めたのです」
爺ちゃんがそんなことを……人類の脅威に打ち勝つために、身を捧げてたのか。
デーモン族。
人間を殺し、食らう存在。
そんな化け物が、俺たち人間の生活の中に潜んでいたのか。
きっと、デーモンに殺された人間は少なくない。
現実にこんなことが起きているなんて、今でも夢なんじゃないかと思えるが、さっき目にしたものが夢の産物とはとても思えなかった。
人間に恐怖と死を与える悪魔……デーモンを倒すために、俺にできることはあるのだろうか。
世界に潜む未知の脅威に対して不安を覚えながら、暗い廊下の奥から光が見えてくる。
そして、長い廊下が終わると、明るい所に出る。
周りを見る限りだと、研究室のようだ。
そこは当然ながら機械が多く、巨大なカプセルのような水槽の中に見たこともない生物が保存されており、そこから管が伸びていて中央の四角い大きな四角形の黒いキューブの中に繋がれている。
そのキューブの前には、1人の老人が立っていた。
ミネルバXは老人に話しかける。
「博士、甲牙さんをお連れしました」
「ご苦労じゃったな、ミネルバXよ。下がってくれ」
「はい。失礼します」
ミネルバXは言われてすぐに研究室から出ていき、俺と老人の2人になる。
「ずっと……こんな所で悪魔の研究をしていたのかよ、爺ちゃん」
「甲牙……」
十蔵爺ちゃんは俺の方に身体を向け、眉をひそめる。
「デーモン族に狙われたそうじゃな」
「あぁ、殺されかけたよ。……ミネルバが助けてくれなかったら、俺は死んでいた」
「そうか……それは、災難じゃったな」
孫の心配をするわけでなく、他人事のように爺ちゃんは言った。
この人は、愛なんてものを持たない。
そんなものを求めたことはないが、それでも血縁上は家族なのだから、少しは……。
「死ななくて何よりだじゃったな。死ぬのなら、兜のDNAをより良い母体に刻み付けてからにしてほしいものだ」
「あんたっては……」
「兜のDNAを絶やすことがあってはならない。我々は選ばれた一族なのだからな」
「何が選ばれた一族だよ。世界に必要とされているのはあんた1人だけだぜ。俺やシローは関係ない」
「おまえも儂と同じく科学者となるべく生まれた。おまえは儂の所有物じゃ。おまえの未来のプランは、儂が描いてある。儂の言った通りにすれば良いのだ」
いつも、そうだ。
この人は天才の領域を脱しているが故に、心を持たない。
俺とシローはこの人にとっては物でしかない。
そして、死んだ父さんのこともそうとしか思っていなかったんだ。
このクソ爺にとっては、周りに生きるものすべては利用できる物でしかないのだ。
「俺はあんたの操り人形じゃっ……!!」
反発しようとしたその瞬間、施設の中から大きな爆発音が響き、建物内が少し大きく揺れる。
「うわっ!!な、何なんだよ、一体!?」
「……もしや、付けられていたのか」
爺ちゃんは冷静に呟き、俺に視線を送る。
「甲牙、おまえはこの奥にある脱出経路から外に出るのじゃ」
「外に出るって……爺!!あんたはどうするんだよ!?」
「奴らの狙いはこの儂じゃ。故に、儂が相手をする」
奴ら?……もしかして、またデーモン族が!?
「ミネルバよ!早急に甲牙を避難させるのじゃ!!」
爺ちゃんが叫べば、ミネルバが奥から出てきて俺の手を引く。
「了解しました、博士。甲牙さんの生存を最優先にします」
「ちょっと待てよ!?爺……おい、爺!!」
十蔵爺ちゃんは俺に顔を向けずに廊下をじっと見る。
爆発音が段々と大きくなり、研究室に2人の異形の姿をした者が入ってきた。
1人は鬼のような姿に日本の武士の甲冑をした白く長い髭を、奇妙な杖を持つ者と、もう1人は西洋の黒い騎士の鎧を身に纏っており、頭の他に腹にも顔がある者だ。
雰囲気だけでわかる。
こいつらはさっきのデーモンとは格が違う。
爺ちゃんは鬼の方に目を向けると、哀れむような眼を向ける。
「……変わったなぁ、旧友よ」
「人間の器を捨てた……と言ってもらおうか、旧友よ」
爺ちゃんと鬼は視線を合わせ、隣に立っている暗黒騎士が右手に持っている巨大な剣を構える。
「儂を殺しに来たか。しかし、そう簡単に殺されてやるほど、儂は甘くはないぞ……Drヘル」
「フフフフっ……懐かしい名前で呼んでくれるじゃあないか」
Drヘルと呼ばれた鬼は不気味に笑いだした。
「今の儂は闇の帝王の力を宿したあるお方の参謀役、地獄大元帥と名乗っている。そして、もう1つの名前を教えておこう……デビルマン・ヘルだ!!」
全身から青い雷を放ち、周りの機械が引火して爆発する。
そして、暗黒騎士が大剣を振るいながら爺ちゃんに迫る。
「我が名はデビルマン・ダークネス。兜十蔵……我が主の命により、生命を頂戴する!!」
「それは無理な相談じゃな」
爺ちゃんが指を鳴らせば、天井から2体の人型の機械が降りてきては大剣を受け止める。
「エネルガーZ、アイアンZ。デーモンやおまえたち、デビルマンに対抗するために開発したロボットの1つじゃ」
「……面白い」
デビルマン・ダークネスは、1度離れて構え直す。
そして、デビルマンとロボットたちが対面する。
俺の目の前で、人間の科学力と未知の悪魔との闘いが始まった。
いきなり大ボス級の敵が2人現れましたね。
この危機を乗り越えるためには、もはや従来の『あれ』ではダメかもしれませんね。
それなら……神をも悪魔をも超えるしかない。
次回の話、ご期待ください。