DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
デーモンとか、デビルマンとか、今の世界にデーモンが潜んでいるとか、普通じゃ到底理解できない話だ。
だけど、俺には妙な説得力があり、否定することがでにない。
「明日の夜……教会か」
自分の部屋でベッドに横になって寝ようとすると、頭の中に残っている壁画の写真が思い出されてしまう。
「どうして、あの壁画は天使と悪魔じゃなくて、悪魔と悪魔人間の戦いだったんだろう。デーモンの力を宿した人間デビルマン……毒をもって毒を制す。悪魔には悪魔の力をってか」
本当にデーモンは存在するのか。
そして、もし存在するとしても、人間は生き残ることができるのだろうか。
もしも……もしも、俺がデビルマンになれるのなら、どうやって生きていくのだろうか。
1人で現実味は無いが起こりうるかもしれない仮定を考えていると、部屋のドアが開いて誰かが入ってきた。
「明人くん、まだ起きてる?」
「美佐樹……人の部屋に入るときはノックしろよ。あと…はぁ、その見た目も何とかしろよ」
美佐樹の見た目は、黒いタンクトップに白のショーツという無防備な姿だった。
これで誘惑していないと言うのなら、この女は天然級の歩く性犯罪者製造機になるだろう。
彼女は「ごめんごめん」と平謝りし、ベッドに座ってきた。
「さっき夕飯もほとんど残してたから心配なんだぜ?明人くんが何か悩んでいるときって、いつもそうでしょ。あたしにできることなら、何でも言いなよ?あたしたち、家族なんだし」
「……居候と居候先の娘だろ、家族じゃない」
「クールだねぇ。じゃあ、幼なじみにだったら話せる?」
「話した所で意味ねぇんだよ」
寝返りをうって美佐紀に背中を向けると、彼女も勝手にベッドに横になって俺の背中に両手と胸、頬を押し付けた。
「……少しは頼れよ。強がるのが男の美学なんて思ってるなら、時代遅れだぜ?」
「うっさいな!ほっとけよ!!」
怒りの形相で睨みながら強く言うと、美佐樹は俺から離れて、怒った表情でベーっと舌を出す。
「何さ、人がせっかく気を使ってやったら逆ギレしやがってぇ。すぐに女子にキレる奴はモテないんだかんな!!」
そう言って美佐樹は不機嫌な表情のまま部屋を出ていった。
……さすがに大人げなかったか、まだ高校生だけど。
深い溜め息をつき、横になって白い天井をぼんやりと見る。
「俺って、本当に不器用だなぁ…」
背中にまだ、美佐樹の身体の柔らかい感触と温もりが残っている。
彼女のことを嫌っているわけではない。
嫌いになんて……なれるわけがない。
あいつは……美佐樹は、こんな異常な俺のことを受け入れてくれる、かけがえのない女なんだから。
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次の日の夜。
加藤の家族には少し帰りが遅くなるとメールし、了さんの言っていた教会に向かった。
街外れの樹海の中にある、もう使われていない古びた教会。
中に入ると、床を歩くだけでギシギシと音がし、キリストを象った十字架に近づくと、ステンドグラスが割れていて月明かりに照らされているのが見える。
「1度神と崇められた男…イエス=キリストか。1度死に、数日後に蘇ったという話だが……」
「それも、神が人間に自身の存在の信憑性を植え付けるためにしたのかもしれないな」
後ろから声が聞こえて振り返ると、そこには了さんが立っていて白いコートのポケットに両手を入れていた。
「キリストは悪魔と接触したことがあるそうだ。そして、その近年に弟子に裏切られ、十字架にかけられた。もしかしたら、弟子に裏切るようにそそのかしたのは、人間に化けたデーモンだったのか。それとも、弟子の身体を奪い取ったデーモンが裏切ったのか…。今はどちらでも構わない。しかし、本当に人間とは……」
了さんは十字架の前で右手を使って十字を書いて頭を下げる。
そして、懐から拳銃を取り出すと怒りの形相で十字架のキリストに銃口を向けてバキューンッと発砲した。
キリストの頭が粉々に崩れる。
「愚かだな。人間は神の傲慢さも身勝手さも知らずにその存在を崇める。ギリシャの古文書によれば、悪魔を生み出したのは神自身。人間が悪魔に苦しめられる元凶は、神だったのだ」
拳銃をコートの中に戻せば、俺に目を向ける。
「アキトくん、来てくれてありがとう。俺の言葉を信じてくれるんだな」
「信じるかどうかは別ですよ。本当にデーモンが存在するなら……俺には守らなきゃいけない人が居るから」
「デビルマンになるには、強い精神力が必要だ。君に守りたいという想いがあるのなら、それを強く保つんだ」
「了さん……。あなたも、デビルマンになるんですか?」
「デビルマンになるには素質が要るんだ。君には十二分に備わっているが、俺には…残念ながらそれがない。それはこの地下にあるもので判断できるのだ」
了さんが教壇の上に置いてある小さな聖母マリアの像を下に向かって押せば、教壇が下に沈んでいき、地下への階段が出てきた。
「ここから先にあるものは、全てがこの世界の真実だ。全てを知り、地獄に足を踏み込む覚悟はあるか?」
俺は今、この階段を見て引き返そうかどうかを考えていた。
しかし、誰も知らない恐ろしい真実が本当にあるのなら、俺は……。
美佐樹や孝太郎、おじさん、おばさん、父さん、母さんの顔が頭の中に浮かぶ。
そして、何度も見る夢のことも。
「……行きます。俺には行かなきゃいけない、知らなきゃいけない理由がある」
「では、共に進もうか。……ようこそ、地獄へ」
地下に向かって階段を最後まで降りていき、床に足を着ける。
暗闇の中をスマホのライトで照らすと、左右の壁に描いてある絵を見て目を見開く。
悪魔同士が戦っている絵の下に、黒い棒に串刺しになっている人間たちの生首の絵。
そして、あの壁画の写真にあった白い天使と黒い悪魔が戦っている。
「っ…!!うぅぁああ!!」
これを見ていると、激しい頭痛が起こって両手で頭を押さえる。
『了!!俺は、おまえと戦わずにはいられない!!地球上に残るのがデビルマンはデーモンか、ここで決着をつける!!』
『明……もう、この運命の流れは止められないんだね。この世界でも……』
これは何だ……初めて見る……頭の中に……直接流れ込んでくる!!
この壁の絵は、あの写真の絵の続きだ。
「……俺は……この戦いの結末を知っている。この戦い……デビルマンとデーモンの最後の戦いの結末は……!!」
頭の中に、静止画のように流れてくる記憶。
これが事実なら――。
ドガーンッ!!
いきなり、上から何か大きな音が聞こえてきた。
「了さん!!」
「慌てるな。ここに足を踏み込んだ以上、何かが起こることは想定内だ。前に進もう。何が起きても、対抗できる術がなければ死ぬだけだ」
了さんが先頭になって前に進むと、後ろからコツンコツンっと何かが降りてくる音が聞こえてくる。
『では、ここで死んでもらうぞ、飛鳥了』
了さんが名前を呼ばれて後ろを振り返り、俺もその声に反応する。
暗い地下の中に、俺のスマホのライトが反射して赤い光沢が光る。
そして、その姿を見たとき、自分の目を疑った。
大きな身体の全身が赤い鎧のような物に包まれており、それに所々に黒いラインのように獣毛が生えている。
そして、フルフェイスのマスクはコウモリのようだった。
どうしてだ……俺は、こいつを知っている。
こいつが……デーモンなのか!?
了さんは拳銃を取り出すと連続して発泡するが、それを全て右手で防がれてしまう。
『そんな貧弱な武器を使うとはな。力が衰えていると見えるぞ、飛鳥了……いや、大魔神サタンよ!!』
「サタン!?」
サタンと呼ばれると、了さんは苦い顔をして額から汗が流れる。
「アキトくん、今は話している時間がない。君は先に進むのだ。デーモンに対抗するための力を得るために!!」
「は、はい!!」
今は了さんの指示に従い、すぐに先に向かって走る。
赤い化け物は俺を追いかけようとせず、了さんと向かい合う。
『サタン……もう俺は、貴様の思い通りにはならんぞ』
「……輪廻の歪みは、定められた運命をねじ曲げるまでになってしまったか。ならば、この世界の運命はわからなくなったな」
了さんは危機的状況にあるにも関わらず、嬉しそうに笑い、コートの背中からショットガンを取り出した。
この襲撃してきた化け物の正体、そしてアキトの覚醒。第4話は、今までのデビルマンの常識を覆すことになる。