DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
俺は燃えているゼノンに近づこうとするが、黒炎の壁に全方位囲まれてしまう。
殴って壊そうとすれば、白藤の嘲笑が聞こえた。
「止めときなよ。その黒炎の苦しみは身を持って味わっただろう?自己犠牲で助けるなんて、どれだけ偽善者ぶるつもりなんだ?君は」
「白藤っ…!!ゼノンの黒炎を消せ、奴にはもう戦う意志はないんだぞ!?」
訴えるも、白藤はただ宙に浮いているケルベロスに乗って見下ろすだけで消そうとしない。
「純粋すぎるね、内海明人。さっきまで戦っていた悪魔の王を助ける気なんだ。尊敬するよ、君は敵である者まで救おうとするんだねぇ……。本当に、その姿勢にはつくづく……反吐が出る」
白藤が指を鳴らすと黒炎は舞い上がり、ゼノンの身体が徐々に灰になっていく。
<ガァハ!!…あぁ……ぐぎゃあああ>
苦しむゼノン。それを俺は見ていることしかできない。
「さぁさぁ!君の偽善で助けられるものなら助けてみせなよ。あの時の力を使ってさぁ!!」
「……ゼロの力を、ここで使えと言うのか!?」
破壊皇ゼロの本来の力を使えば、確かにこの黒炎を消すことができることはわかっている。
しかし、あの力は制御が難しく、1つ1つの技の威力が想像を絶するほどに凄まじい。
最悪の場合は、下に居る人々や仲間のデーモンたちに災害レべルの被害が及んでしまう。
空中だからと言って、安全圏じゃないんだ。
もしも、ここから抜け出すことができたとしても、ゼノンを救おうとゼロの力を行使すれば、彼を殺してしまうのだ。
それを知っていて、白藤は使うように促しているのか。
<内海明人……>
ゼノンは黒炎に苦しみながらも、俺に何かを訴えようとしてくる。
<我のことは……良い。……これは憎悪に囚われた者の業だ……。憎しみによって起こされる行動の結果は、自らの身に返ってくる……。んぐっ!!……だから……この憎しみの犠牲の連鎖を……貴様とサタン様が終わらせてほしい!!視るのだっ!!これが……憎悪と怒りのみを糧に生きてきた者の最後!!なんと醜い!!目に余る醜態!!これは……終わらせなければならない
自身の命を捧げたゼノンの訴えを、俺は胸に手を当てて噛み締める。
しかし、それは白藤には届かない。
「うざいなぁ、さっさと消えなよ」
白藤が払う動作をすれば、ゼノンの全身が一瞬で灰になって風に流される。
悪魔の王が、闇の帝王の炎によって葬られたのだ。
「白藤ぃいい!!」
「何!?怒ってるの!?良いよ、もっと怒れよ!!そうすれば、この世界を俺の望んだ光景に染めることができる!!」
「うるさい!!」
黒炎の苦しみに耐えながら壁を突き破り、白藤の顔面に拳を叩きこもうとするが、その瞬間に奴の背後から一体の悪魔が現れて俺の拳を両手で受け止める。
その姿は黒い鎧に紫色のラインが入っている。
そして、マスクは翼を広げたコウモリの形をしていた。
そう、似ているのだ。
あのデーモン族の勇者に。
「おまえは……!?」
「俺の名はデビルマン・ゴッド。勇者アモンを超えた存在だ!!」
そのまま腕を掴まれ、下に振り落とされる。
「ぐぅううっ!!」
急降下で翼を思うように広げることができず、グラウンドの地面に落ちてしまい、地震が起こる。
両方の勢力が、その地面の大きな揺れで動きが止まる。
ゼノンとの闘いに力を使い過ぎたか。油断していた、まさかアモンと同等の力を持ったデビルマンが居るだなんて。
「やってるねぇ、悪魔の力を持ちし者たちよ。戦争ごっこは楽しいかい?」
白藤たちが屋上に降り立ち、グラウンドに居る俺たち全員を見降ろす。
まるで豚でも見るような目をして。
「白藤、おまえの目的は何だ!?デビルマンによる支配の先に、一体何がある!?」
俺はずっと、奴と会った日から考えていることがあった。
同じデビルマンの1人として、デビルマンが支配する世界の先に何があるのか。
力による支配の先にあるのは、より大きな力による崩壊だ。
白藤と言う男が、その未来が見えていないとは思えない。
俺の問いに、白藤はそれを待っていたかのような悪い笑みをする。
「我らによる支配の先……それは永久の平和だよ。デーモンも人間も、力を持ち過ぎた。それが争いを生んできた。だから、全ての力を奪い、我らが世界を正しい方向に進むために有無を言わさず管理する。我らに歯向かう者は、徹底して排除する」
「それは平和じゃない。デビルマンのためだけの世界にしかならない!!力による恐怖を与えて、それで何になる!?」
「恐怖でしか世界は支配できないんだよ。恐怖だけが、この世界を正しい方向に進めることができる。生まれるはずのなかった
生まれるはずがなかった……部外者。
確かに、この世界の俺は本来『不動明』という人間になるはずだった。
この世界に、本来は存在しない者。
俺と言う存在は……この世界には……。
白藤はさらに畳みかける。
「君はこの世界には本来存在しない。君がどう足掻こうが、この世界が辿る正史に介入することはできないんだよ。無駄な抵抗だ。世界の部外者が起こした変化も、違う形で書き換えられる。時間稼ぎにしかならないんだよ。特異点と言っても、君に世界を変える力はない……必要ないんだよ、この世界に」
その言葉が、俺の心を握り潰すように苦しめる。
否定することができない。
だけど、それならアモンと了さんの言葉はどうなる?
俺の選択によって、世界が変わるというあの言葉は。
俺は一体……どちらの言葉を信じれば良いんだ……!?
白藤は右手を挙げ、号令するように勢いよく下す。
すると、グラウンドの至る所の空間が割れ、そこからデビルマンの鎧を装着した者が何体も現れる。
「今から、『恐怖』の力を見せてやるよ」
ケルベロスに視線を送ると、3つの頭が遠吠えをする。
すると、デーモン、デビルマンを問わず、デビルマン軍団に属する者以外は全て、重圧で地面に押しつぶされる。俺も例外じゃない。
「恐怖には誰も逆らえない!!これが力だ、それによる支配だ!!さぁ、特異点の1人よ、これに抵抗できるものならしてみるがいい!!」
白藤は高らかに両手を広げて辺りを見渡す。
すると、屋上で震えている影が視界に入った。
そこに威圧する視線を送れば、そこから白い糸玉を背負ったラズバが姿を現した。
<ナ、何ダ……身体ガ……勝手ニっ!!>
「へぇ……面白い物を持ってるねぇ、ラズバくん。それの中身は知ってるんだ、だから、譲ってくれないかな?」
<貴様ハ……デビルマン・レクス!?何故……スラムキング様ハ!?>
「彼は死んだよぉ……残念だったねぇ……君も同じ所に送ってあげるよ」
ケルベロスから降りて動けないラズバに近づけば、背中の糸玉を見て悪い笑みをする。
「この時を待っていた……ミカエル、君のシナリオ通りにはさせないよ」
糸玉に熱を加えると、すぐに溶けていく。
その熱に巻き込まれてラズバに黒炎が引火して全身が燃える。
<ギァアアアア~~!!!>
ラズバの断末魔の叫びは耳に入らず、糸玉から出てくる美佐樹を片手で抱きかかえる。
「これで、俺のシナリオ通りだ」
美佐樹をかかえたまま俺たちを見下ろす白藤。
何をする気なんだ……あの男は。
「ここまで上がってこい、内海明人。大切な恋人を取り返したかったらなぁ!!」
そう言うと同時に、白藤は美佐樹の服と下着を燃やして全裸にする。
「早くしないと、この女は俺がいただくぞぉ!?」
「白藤…!!貴様ぁあああ!!!」
白藤は不適な笑みを浮かべ、俺を見下ろしながら一瞬だけ美佐樹のことを見る。
(そうだ、怒れ。俺に憎悪を向けるが良い。特異点……その力の本当の意味を教えてやるよ。このもう1人の特異点、加藤美佐樹を使ってな……)
中途半端ですが、これで『学園総攻撃』は終わります。
あくまで、デーモンの総攻撃って意味でしたので。
次の話は胸糞展開ですが、それでも大事な話だから読んでほしいです……!!