DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
……ここはどこだ?俺は…一体……。
見えるのは、白い世界。
その世界に俺は1人。
立っているのか、横になっているのかもわからず、ただそこにあるだけ。
そして、そこで俺の視界に入るのは外の世界の光景。
焼き尽くされた街、災害によって死んでいく人々、そして俺に迫ってきては何もしていないはずなのに爆発して死んでいく。
これは……夢か?
最後に覚えているのは、美佐樹が白藤に犯されている場面。
それから目を逸らしたくて、それもできなくて、突きつけられる現実に対して、拒絶したい、破壊したいという思いが大きく膨らんでいった。
その思いが俺の全身に行きわたり、限界を超えた力が溢れてきては、それに身を任せてしまった。
今、世界はどうなっているんだ?
美佐樹は……みんなは……!!
『内海……明人……』
この空間全体に、声が響く。
この声……聞き覚えがある。
『おまえは少し休むのだ。この先の戦いのために』
……この先の……戦い?
『この人間と悪魔の混沌とした戦争の先……生きとし生ける者すべてを救うための戦いに備えるため、おまえは前世界の歴史を……滅びの歴史を知らなければならないのだ』
滅びの……歴史?
『不動明の転生者よ。おまえの意識を前世界に誘おう。そして、知るのだ。『上』が何を恐れていたのかを……』
俺の意識が、白い空間から突然発生した黒いブラックホールのような穴に吸い込まれる。
その先に広がるのは、力と恐怖の歴史。
人間とデーモン族の歴史。
そして、救いのない悲しみの歴史だった。
『おまえが今知る真実から、歴史を顧みるのだ。さすれば、特異点が存在する真の理由を……。それまで、俺がおまえの代わりを務めよう……時が来るまで』
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森の奥の1つの集落。
そこは魔将軍ガーラがデーモンの子どもと共に密かに暮らす場所だった。
そして今は、力の弱いデーモンを守るための避難所の役割を担っている。
白カラスの怪物の起こした災害のために苦しんでいるのは、何も人間だけではないのである。
ガーラは集落中央の大きな住処の一室に居り、デーモンの手当てをしていた。
それがひと段落すると、犬の頭をしたデーモンの子どもが夕食を持ってきてくれた。
<先生、ごはん持ってきたよ>
<ありがとう。しかし、私のことは良い。奥の部屋の娘に渡してきなさい>
<えっ……あの人間のお姉ちゃんに?>
<そうだが……やはり、まだ人間は怖いか?>
心配して聞いてみれば、子どもは頭を横に振る。
<ううん。あのお姉ちゃんは明人兄ちゃんみたいに優しいから、全然怖くないよ!>
そう言って、笑顔で奥の部屋に行ってくれた。
ガーラはそれを見送り、また別の部屋に向かい、客間の襖を開ける。
中には、紅の鎧を全身に装着している悪魔があぐらをかいて座っていた。
<貴様は、何時までここに留まるつもりだ?アモン>
『……時が来るまで……らしい』
<らしい、だと?まるで、誰かにそうするように言われているという物言いだな>
『別に良いだろ、今のおまえには関係ないことだ』
<今は……か。貴様のその秘密主義な所は相変わらずだな。あの娘を連れてきた時もそうだが、おまえの考えは前からわからない>
『……俺には、やらなければならないことがある。それだけだ』
<それは、サタン様への挑戦か?>
大魔神サタンの名前を出すと、アモンの周辺の空気が変わった。
殺意と怒りが全身から放たれる。
『俺がサタンを殺す。それを止められるかどうかは……あの殻に籠った坊主の選択にかかってるだろうな。あいつが目覚めた時、サタンに就くか俺に就くかで、俺の役割は変わってくる』
<……私は今、中立の立場で貴様と言葉を交わしている。貴様にどのような考え、都合があろうと、私は貴様に肩入れはできない。しかし、あの娘のことは私が安全を保障しよう。誰にも手は出させん。……我が友である、内海明人に誓ってな>
アモンはその後無言になって動かなくなる。
眠りについたのだろう。
(アモン……貴様がその紅蓮の鎧で姿を隠す理由も私はあえて問わん。しかし……本当に貴様はあの勇者アモンなのか?私には……貴様が変わったように思える)
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加藤美佐樹はこの1週間、集落の中のデーモンと最低限しか接触しないようにし、1つの部屋で白装束姿で時を過ごしていた。
監禁されているわけではない。
周りの人間を食すデーモンから守るためである。
外界との接触はできず、四角い畳の部屋で過ごす毎日。
戸が開くのはご飯の時間と身体を拭くための湯と布、そして着替えの白装束を運んでくる時のみ。
その中でずっと募っていくばかりの思いがある。
「明人に……会いたい」
今、彼はどうしているのだろうか。
生きているのだろうか。
完全にあの怪物に意識を乗っ取られてしまったのか。
アモンはまだ助けることはできないと言っていたけれど、待っているだけでは不安が膨れ上がっていく。
部屋の中央で何をするでもなく座ってた黄昏れていると、襖が開いてデーモンの子どもが夕食を持って入ってきた。
<美佐樹お姉ちゃん、ごはん持ってきたよ>
「ありがとう……そこに置いておいてくれるかな」
子どもは言われた通りにし、てくてくと美佐樹に近づいていく。
<お姉ちゃん、明人兄ちゃんのこと……心配?>
「えっ……うん、そうね。明人のことも心配だけど、家族のことや友達のことも心配かな。世界が今どうなっているのか、今のあたしには……何もわからないから」
暴走したゼロの行動を、アモンもガーラも美佐樹に話してはいない。
彼の意志ではないにしても、世界を混乱させているのはあの巨大な白カラスである。
世界が彼を否定し、攻撃しようとしている様を伝えるのは酷と言うものであろう。
「アモンさんは何かを知っているみたいだけど……あの人、あたしと居るととても静かになるのよね。まるで、何か負い目を感じてるみたいに」
勇者アモンは、美佐樹に対しては慎重すぎるほどの対応をしていた。
何かを隠すように。
そして、罪悪感を感じているかのようによそよそしい。
<じゃあ、僕はもう行くよ。お姉ちゃん、ここから出たらダメだよ?怖~いデーモンのおじさんたちがいっぱい居るんだから!>
元気づけようとしてくれているのか、子どもはわざと変顔を作ってそう言い、美佐樹はそれを見て笑う。
「フフフっ。ええ、わかったわ。絶対に出ないから、もう行きなさい」
<うんっ!じゃあ、また後でね!>
手を振って見送れば、戸を閉めてまた表情が曇る。
人間の食に合わせてくれているのだろう。
魚を主菜とした夕食を食べ終わり、することもないのでまた考えにふけってしまう。
(見た目が違うだけで、あの子も人間の子どもと変わらない。明るくて、元気のある男の子。それなのに、何で……分かり合うことができないんだろう。あたしたちは……分かり合えてたよね、明人)
この状況が何時まで続くのかはわからない。
それでも、今の美佐樹にできることは何もない。
無力な自分を責めたくなる。
「早く……明人を助けにいきたい……あなたに……謝りたい」
自分で自分を抱きしめるように両腕を掴み、そのまま俯いてしまう。
残っているのは、他の男に抱かれた感触。
愛する男の目の前で犯された罪悪感。
それと同時に、会いたいという願望と共に自分に問いかけてしまうのだ。
「あたしに……明人に会う資格はあるのかな……」
美佐樹ちゃん、ナーバス!!
そして、明人くんの意識は何処に、声の正体は誰なのか!?
アモンと繋がっている人物は!?
次回、崩壊した世界を調査している飛鳥了と不動ジュンの前に、突如として『嵐』が現れる!!