DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
世界は崩壊した。
それは確かだ。
しかし、その崩壊の仕方が前のどの世界とも違う。
明人の、デビルマン・ゼロの力の暴走が世界に及ぼした破壊はどの世界よりも崩壊の度合いが大きい。
世界は白カラスの怪物に恐怖しながらも対抗策を考え、デーモンたちは姿を現しては自分たちだけの国を作ろうとしている。
その中には、サタン率いる穏健派が保護する地域があった。
白カラスの怪物が起こす災害やデーモンの襲撃から民間人を守るデビルマンやデーモンの自警団が存在し、飛鳥了はその組織のリーダーを務めており、参謀には不動ジュンが就いている。
高層マンションを避難所としながら救助活動を続けており、ジュンもそうだが、驚くべきことに了も率先して自分から参加していた。
「あなたが人間を助けようとするなんてって、驚いている声があるわよ?了」
「それはそうだろうな。今までの……前の世界の俺では考えられないことだ。人類を滅ぼすことだけを考え、そのために友を欺いた最悪の魔神。皆、そのイメージが強いだろう。しかし、今の俺は……」
表情が曇る了を見て、ジュンは彼の肩に手を置く。
「言葉にしなくてもわかってるわよ。今のあなたは違う。世界の運命を変えようと必死になって頑張ってる」
「ジュン……それだけじゃないんだ。俺は……いや、私は怒りのままに人類を滅亡させてしまった。それも、今や私の意志なのかどうかもわからない。そんな状態で多くの人間が死ぬ状況を作りだし、それを見て醜いと嘲笑っていたのだ。その償いとして、私は私の意志で、この世界の人々を1人でも多く救いたいんだよ」
「了……」
建物の瓦礫を退かせば、そこには男の子を抱きしめる女性が居た。
幸いにも、2人とも息がある。
おそらく、親子だろう。
「ジュン、この親子を避難所に。俺は周辺にまだ誰か居ないかを探す」
「わかったわ。気を付けて」
ジュンに親子を任せ、了は服や顔が汚れながらも救助活動を続けた。
配下のデーモンたちやデビルマンが率先して人間に協力し助け合う光景を見て、了は心の中で希望を感じると同時に、自責の念を感じていた。
(この崩壊した世界を作り出した原因は私にある。そして、人間とデーモンを衝突させるきっかけを作ったのも私だ。本当は、人間も悪魔も分かり合える存在だったのかもしれない。その可能性を壊したのは、紛れもなく……サタンだ。この世界を再生に導くためには、悪魔だけでなく人間の力も必要なんだ。もう同じ過ちを繰り返すわけにはいかない。しかし、明人を……暴走したデビルマン・ゼロを止めるためにはサタンの力を持ってしても力が足りない。破壊皇ゼロの力は強大過ぎる。大きな力が必要だ……ゼロに匹敵するほどの強力な力を持った者が)
果たして、今の明人……暴走した破壊皇ゼロを止められる存在が居るのか。
苦悩している了の頭に、どこか懐かしさを覚える声が流れ込んできた。
『諦めるのか?了。俺の知るおまえはどんな状況でも、全て想定済みと言った笑みで俺を動かす男だったはずだ』
(!?……何だ、今の声は……どうして……何故だ……ありえない、今のは俺の幻聴だ)
『幻聴とは酷いな。久しぶりに会ったっと言うのに』
足音が聞こえる。
こちらに近づいてくる。
太陽を背に、黒い巨大な身体をした男が。
それは人間のようにも見え、悪魔のような肉体にも見える。
筋肉はゴリラ!牙は狼!身長220メートルほどの巨大な身体からは、何者をも圧倒する気迫が感じられる。
ボロボロの服で首に黄色いスカーフを巻いており、腰のベルトには大きなジャックナイフがささっている。
『久しぶりだな、飛鳥了……いいや、大魔神サタン』
目の前に居る巨大な男を見て、了の目から涙が零れる。
「そんな…これは夢なのか……?君が……どうして、あき―――」
『止めるんだ、了。……その名で俺を呼べば、奴らに俺の存在を悟られてしまう』
男は真剣な顔で止め、了もすぐに自分で口を押える。
「では、俺は君をどう呼べば良い?」
男は腰から大きなジャックナイフを抜き出して見せる。
『これはいくつか前の世界の名残だが、この世界ではこう名乗ることにしている。バイオレンスジャックと』
「バイオレンス……ジャック。どうして、君が私の前に居るのだ?私の知っている君ならば、私を殺したいほど憎んでいてもおかしくないはずだ!!」
ジャックは焦る了を見て静かに目を閉じ、ゆっくりと冷静な表情で彼を見据える。
『俺はずっと、内海明人の中でこの世界を見ていた。彼の視点で、彼の成長を見守りながら、時には俺の記憶を彼に流し、彼の力を手にするための覚悟を試した。もちろん、おまえのことも見ていたのだ、了。今のおまえは、前の世界のおまえとは似て非なる者だ。殺そうとは思わない。俺はおまえたちの未来のために、協力するためにここに来たのだ』
「ジャック……ありがとう。これまでの私の行いを許してほしいとは言わない。それでも……君と会えて、嬉しいよ」
了は仲間たちに救助活動を続けさせながら、ジャックをジュンにも会わせた。
予想通り、彼女も了と同じように涙を流した。
「良かったわ……もう1度あなたに会えるなんて。あなたは私のことを覚えてないかもしれないけれど」
『そんなことはない、君のことを覚えているよ、ジュン、俺も君に会えて嬉しいよ。しかし、俺は前の俺ではない。この世界でのデビルマンの役割は、あくまでも『内海明人』という少年が担っている。この俺、バイオレンスジャックは破壊皇ゼロの暴走を止めるため、この後の本当の戦いために、特異点の力を持った最後の1人を集めに来たのだ』
「特異点の……力?それに最後の1人だと?ジャック、何故君がそんなことを知っている?」
了が問えば、ジャックは真剣な顔で右手の指を4本立てる。
『この世界には、特異点が4人存在する。その者たちはそれぞれ、『選択者』『勇者』『守護者』『抑制者』と特殊な力を持っている。内海明人は『選択者』の力を、アモンは『勇者』、加藤美佐樹は『抑制者』、そして最後の1人、その名は兜甲牙、またの名をマジンカイザー。最も繊細で、一歩間違えれば世界を滅ぼしかねない『守護者』の力を持っている』
「マジン……カイザー!?」
「守護者の……特異点!?」
バイオレンスジャック、またの名を……いや、彼の希望のために真の名を明かすのは止めておこう。
ジャックの存在によって、特異点の新たな事実が明かされる。
やっと、この物語オリジナルの設定を出すことができた~~~。
そして、ジャックを出すことができた~~~。
これで大きな伏線回収はしたつもり。