DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
バイオレンスジャック。
彼は内海明人の意識の中の中に居ながら、影で行動を起こしていた。
最初は勇者アモンとの接触。
明人がデビルマンとして覚醒する前のこと、前世の記憶を自覚する前、ジャックは極寒の氷山でまだ目覚めていなかったアモンの意識に語り掛けていた。
『勇者アモン……目覚めの時は近い』
『……何だ?この俺に……誰が話しかけていやがる』
『目覚めの時は近い。そして、世界はおまえの力を必要としている』
『俺は俺のやりたいようにするだけだ。戦いたいときに戦い、殺したい奴を殺す。それがデーモンの本能だからな』
『そうだ。おまえは己の欲望に忠実な、デーモン族最強の戦士。しかし、今のおまえでは人間に意識を乗っ取られるのが落ちだな』
『何!?この勇者アモンが、人間ごときにだと!?』
『おまえには、強靭な意志が必要だ。そして、その気高き意志を支えるために、俺の力を授けよう……』
アモンの意識の中に人間の男のイメージが流れ、彼は手をかざしている。
『おまえの屈強なる精神が、この特異点の力を増幅させる。傷つきながらも、何者にも屈しないその魂。その勇ましさを力に変えるのだ。アモン……勇者アモンよ』
アモンの魂が、紅のオーラをその身に纏いながら具現化していく。
デーモンでありながらデビルマンと同等の強度を誇る鎧を装着し、現代世界に再誕するデーモン族最強の戦士。
そして、頭の中に大量の情報が流れてくる。
前世界の勇者アモンの記憶だ。
不動明に精神を乗っ取られたこと。その原因を作ったのが大魔神サタンであること。
そして、他の世界の記憶も……。
『その鎧は、おまえの存在を奴らから隠す力を備えている。いずれ、おまえの前に同等の力を持った者が現れる。彼を導くために、アモンよ。おまえには彼の高き壁になってもらいたい』
『……おまえの言う通りにすれば、サタンと戦えるのか?』
『何?』
『サタンめぇ……俺を……この勇者アモンを、人間なんぞにぃいいい!!』
怒りで覇気を発し、周りの氷を破壊する。
(何という力だ!?やはり、アモンに特異点の力は適している。奴らの脅威に備えるために……そして、内海明人を導くためにも。そして……もしもの時、サタンを止められる力となるやもしれん)
『良いだろう。俺の言う通りにすれば、サタンと戦う機会を与えることを約束しよう』
『……本当だろうな?』
『本当だ』
頭の中のジャックは頷き、アモンはしばらくの間沈黙する。
そして、意を決したように片膝をついた。
『それならば問題はねぇ。おまえの言う通りに動いてやる。……おまえの名は何だ?』
『俺の名はふど―――』
ジャックはここで考えた。
アモンには既に前世界の記憶がある。つまり、不動明の記憶も当然あるわけだ。自分の意識を乗っ取った相手に、アモンが従うとは思えない。
よって、自身の記憶を辿ってこう名乗った。
『ジャック……バイオレンスジャックだ』
記憶が無かった時に名乗っていた名前だ。
今の彼の存在は、奴らに気づかれるわけにはいかない。
あくまでも、彼は前世の存在。
この世界の内海明人に、希望を託すしかないのだ。
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加藤家がデビルマン・ニクスによる襲撃を受けた夜。
美佐樹が明人が人間ではなくとも愛していることを確認した後、彼女が就寝している間の話だ。
夢の中、美佐樹は全裸で不思議な白い空間の中に居た。
明晰夢だろうか、これが夢だとすぐにわかった。
「これは夢……?あたしは一体……」
『ここは、おまえの夢の中だ。加藤美佐樹……美樹の転生者よ』
美佐樹の前に巨大な身体をした男が半透明の状態で現れる。
その姿を見て、彼女は目を見開く。
「あ、あなたは……どうして?明人に似ている気がする」
『俺の名は……バイオレンスジャック。これは夢だ。現実には俺は存在しない。おまえは、内海明人が人間ではないと知っても、彼のことを受け入れた。その心に偽りはないか?』
ジャックの目は、どこか美佐樹のことを悲しい目でとらえている。
それは、彼女のことを最愛の人と重ねて見ているからであろう。
美佐樹はジャックの言葉に静かに頷く。
『明人は人間の心を持ちながら、絶大な力を持った悪魔の力を宿している。その衝動は尋常な精神で耐えられるものではない。このまま変身を続ければ力に飲まれてしまい、明人の精神は崩壊することだろう。誰かの支えが必要なのだ』
「……あたしは、どうすれば良いんですか?」
『俺が今持つ力を、おまえに授けよう。……君には、この戦いの先も生きてほしい。そのための力でもある』
ジャックが手をかざせば、美佐樹の身体を緑光が包む。
『これは戦うための力ではない。おまえが愛する者を支え、憎む者を抑するための力。抑制者の力。……どうか、君は美樹の分まで……生きて……』
「待って!!美樹って……あなたは一体っ……!!」
美佐樹の意識は、ジャックの悲しそうな顔を最後に人目見て覚めてしまった。
その夢の記憶は美佐樹にはない。
しかし、特異点の力は確かにジャックから託された。
すべては、定められた黙示録を止めるために……。
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内海明人には、世界の運命を左右する選択者の力。
アモンには、その屈強な精神で何者をも恐れずに立ち向かう勇者の力。
加藤美佐樹には、その愛で大切な者を支え、抑するための抑制者の力。
3つの特異点の力。
これは、前世界のアーマゲドンの後に大魔神サタンが死に際の不動明に授けた絶対の力だった。
そして、残り1つ。
選択者と同等に重要となる守護者の力を授ける者を定めようとした時、ジャックの意識に語り掛ける何かがあった。
『……異端の者よ。答えよ、異端の者よ』
声はとても低く、重みを感じる。
『誰だ?この俺の意識に語り掛ける者は。姿を現せ』
ジャックが言えば、彼の目の前に黄金の粒子が集まって人の形を成した。
『我が名は、魔神カイザ。そなたと同じく別世界の者だ』
『俺と同じ……だと?その魔神が何の用だ?』
人のシルエットをした魔神は、ジャックに歩み寄る。
『そなたの持つ絶対なる力の最後の1つ。それを私に預けてはもらえないだろうか?』
明人たちの知らない所で、影ながら動いていたバイオレンスジャック。
同じ魂を持つ者が2人。
これは世界の摂理に反している。