DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
俺がゼロと共に見てきた世界の中で、神を倒すことができた世界は存在しなかった。
全てが神の思う通りに動いている。
操られている。
神の気まぐれで救われた世界もあれば、滅んでしまった世界も存在する。
しかし、並行する世界の中にはまだ神の審判が降りていない世界もある。
それが俺が……内海明人が存在する世界だ。
「今の世界だけが、神の定める結末を迎えていない。一体、どうして……」
『それは、貴様のような特異点が存在したからだ』
「……特異点か。俺の選択次第で世界は変わると了さんやアモンは言っていた。だけど、どうして俺なんだ?他にも適任者は居ただろうに」
今の俺は何もできない。
ただ、多くの世界を見ることしかできないんだ。
たった1人の恋人すらも救えない。
俺は無力だ。
それこそ、了さんやジュンさんの方が……。
『サタンにとって、特異点の力は神々と戦うための切り札だった。神々に攻撃を仕掛けようとしたサタンに対し、神々は世界の運命を捻じ曲げた。決して交わるはずの無かった世界。生まれるはずの無かった世界を生み出したのだ。それが、悪魔と人間の双方が存在する世界。黙示録の結末を迎えた世界だ』
「それが……不動明や美樹さん、了さんの居た世界か」
『その通りだ。神は特異点の力を恐れた。特に選択者の力を』
「選択者……?何のことを言っているんだ?」
『おまえの持つ特異点の力、それは選択者の力である。他にも特異点は存在するということだ』
「俺以外にも……特異点が!?」
目を見開いて驚くと、ゼロはその頭上にイメージ映像を浮かび上がらせる。
その映像の中に、美佐樹の姿が。
『特異点の力を持つ者は他に3人。その中には、加藤美佐樹も含まれている』
「美佐樹にはデビルマンの力はないんだぞ!?どうして、彼女に!?」
『特異点の力を与えたのは、不動明自身だ。彼は牧村美樹の転生者である彼女に生き延びてほしいという思いを込め、抑制者の力を与えたのだ』
「……美佐樹だけは、苦しませたくなかった。なのに……」
『悔いたところで結果は変わらぬ。今は未来のために、特異点の真意を知らなければならない』
「特異点の……真意?」
ゼロは翼を広げ、球体の形をした平行世界を一直線上に並べる。
『生物は皆、神によって定められた運命に向かって進んでいく。そして、それは世界もまた同じ。世界の運命を決めるのは神。他人の決めた運命に抗うことはできるかもしれない。しかし、絶対なる力を持つ神の定めた運命に抗うことは何者にも不可能。しかし、神の定めた運命の影響を受けない者を作り出すことはできる。それが特異点である』
「神の定めた運命の影響を受けない?そんなことが可能なのか!?」
『現に特異点の力を持つ貴様は、神のシナリオには組み込まれてはいない。特異点の中でも選択者の貴様を中心に、運命は変わり始めている』
「……運命は変わっているかもしれない。だけど、俺は世界には本来現れるはずの無かった存在だ。白藤が言っていた。世界にとって部外者である俺がすることは無意味だとな。そんな俺が特異点の力を持ったところで……何も変わらないんだよ」
目を閉じて思い出すのは、美佐樹を目の前で弄ばれた光景。
俺にもっと力があれば、俺が不動明だったのなら。そう思って止まない。
「どうして、不動明は俺に特異点の力を残したんだ……それも、世界を左右する選択の力なんて」
『それは私にはわからない。しかし、不動明……今の世界ではバイオレンスジャックと名乗っている彼は、自身の生まれ変わりである貴様を特別視しているわけではない。力を与えたのは、それ相応の理由がある』
「バイオレンスジャック……彼が今も存在するのであれば、俺の特異点の力をあの人が持った方が良いだろうに」
『それは叶わぬ夢だろうな。彼はもう死んでいる。精神体として復活したようだが、それでも不動明ではない。不動明の魂を持つのは、貴様なのだ。内海明人よ』
ゼロの言葉は重く、俺に責任を感じさせる。
「ゼロ……俺はいつまで世界を巡れば良い?真の敵はわかった。特異点の真意が神に抗うための力だと言う事も……。元の世界に戻れないのか?」
『貴様が真にそれを望むのならば、な』
「どういう意味だ?俺は今すぐにでも、あの世界に戻らなければならないんだ」
『それは貴様の本心ではないな。内海明人……今の貴様が元の世界に戻ったところで、今回のようなことがもう1度起こるだけだ。臆病者の貴様では』
「何?……俺が臆病者だと!?」
怒りを覚えてゼロに迫ろうとするが足が動かない。
身体が震える。
『ハーデスの力を持つ者に敗北し、恋人である加藤美佐樹を目の前で犯され、今、貴様は元の世界で多くの者の命を奪っている。薄々、気づいているのだろ?』
ゼロが翼を広げれば、元の世界の映像が流れる。
巨大な白いカラスが街を破壊して火の海と化し、衝動に任せて命を奪い続けている。
『これが、今の世界の貴様の姿だ。絶望による暴走が起こした結果だ。これを見てなお、戻ろうと思えるのか?』
「……これが……今の俺……!?」
『私は貴様が真に世界に戻ろうと強く願わなければ、これまでのあらゆる絶望を乗り越えることができなければ、元の世界に精神を戻すことはできない』
これまでの……あらゆる絶望。
俺に今、試練が与えられようとしている。
元の世界では明人を巡り、多くの者の思いが交錯している。
そして、精神世界では明人自身に大きな試練が。
世界を、愛する者を救うために動く者たちの思いが交錯する中、ついに人間たちの白カラス討伐作戦が執行される。