DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
俺はデビルマンになった。
これから先は、了さんがデーモンが関わっているかもしれない事件の情報を集めて、その結果によって俺が動くかどうかを決めるのだそうだ。
あの日の夜、加藤の家に帰ると玄関で腕を組んで仁王立ちをしている美佐紀と鉢合わせになってしまい、あっちは一方的に「遅い!!」とか「何してたの!?」と怒っていたが、全て無視して自分の部屋に入って鍵をしめて寝た。
あとから聞いた話だと、あの夜はおじさんたちは寝ていたが、美佐紀だけずっと起きて待っていたらしい。
あいつは他人を心配し過ぎだ。
あれから3日経ったが、今日の朝もまだ美佐紀は怒っていたようで、一応挨拶はしたけど頬を膨らませてプイっとそっぽを向かれてしまった。
学校は今日休みで、1日中家に居ることになるのに気まずい。
昨日は冷たくし過ぎたか。
少しは気の効いた言葉、例えば『心配してくれてありがとう』とか言えれば良かったか。
残念なことに、俺はそんなキャラじゃない。
朝食を終え、俺は1人玄関に向かう。
「あれ?明人兄ちゃん、出かけるの?」
「あぁ、最近知り合った人が居てな。その人の所に行ってくる」
「それって……もしかして、女!?カァー、無愛想な兄ちゃんにも遂に春が来ましたってかー。姉ちゃんもグズグズしてると取られ――」
ポコンッ!
「イッターイ!!」
「あんたが調子乗るから悪いの」
美佐紀が孝太郎にげんこつ制裁をして泣かしてしまうが、それは苦笑いで流す。
「コウちゃん、残念ながら女じゃなくて男だよ。考古学者なんだ」
「ほぉ、明人くんは考古学に興味を持つようになったのか?」
「え、えぇ……まぁ」
おじさんにぎこちなく返事をし、姉弟のケンカをスルーして玄関を出た。
そして、美佐紀は明人が食べ終わった朝食の皿を見て首を傾げる。
「あれ……明人くん、今日も肉だけ残してる」
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住所は間違いないはずだ。
超高層マンションの最上階。
フロアを全部買い取ったと言っていた。
玄関前のインターホンを押して名前を言えば、了さんの声で「入ってくれ」と聞こえてきて、ガチャッと鍵が開いたので恐る恐る入った。
中は家具や雑貨が白で統一されており、日の光の反射で少し眩しい。
了さんはソファーに座っており、向かえにあるもう1つのソファーに座るように手で俺に促してきたので座った。
「よく来てくれたな、アキトくん。デビルマンになった日から数日経ったが、身体に変化はあるかい?」
「少しだけ。肉が食べられなくなったのと、時々…どうしようもなく暴れたくなるくらいで」
「暴れたくなるのは、戦いを求めるデーモンの本能だろう。しかし、肉を食べれなくなるとは……どういうことだ?」
「肉を見ると無性に食欲がなくなるんです。頭の中に、何十、何百という人間や怪物が内臓をぶちまけて死んでいく映像が流れてきて…気持ち悪くなる」
頭を片手で押さえながら説明すると、了さんはパソコンに内容をまとめる。
「それはおそらく、君特有の反応だろう。前世の記憶が、デーモンの本能をできる限り抑制しているのかもしれないな」
「前世の……記憶!?」
了さんは真面目な顔で言っている。
この人の人柄として、この顔をしている時は冗談を言わないはずだ。
ならば、俺の前世とは……。
「アキト、君は生まれ変わりという言葉を信じるか?」
「……前世とか生まれ変わりとか、俺にはさっぱりですよ。信じるかどうかって言われても……まさか、俺が前世もデビルマンだったって言いたいんじゃないでしょうね?」
ありえないと思いながらも、確認をとるように聞いてみる。
すると、了さんは顔の前で手を組んで俺をじっと見る。
「アモンという悪魔が、俺のことを何と呼んでいたかを覚えているか?」
「それは……」
覚えている。
アモンは、了さんのことを大魔神サタンと呼んでいたのだ。
サタンとは悪魔の頂点の名。
それが了さんだと言うのなら、彼は人間ではないということになる。
「了さん……あなたは人間ではないんですか?」
「そうだ。俺は人間ではない。しかし、デーモンでもデビルマンでもない存在だ」
了さんはソファーから立ち上がり、大きな窓の向こうに広がる街並みを見る。
「この世界は美しい1面を持っているが、醜さも持ち合わせている。この世界を美しくしているのも、汚しているのも人間なのだ。そして、サタンは……後者は理解しても前者を理解できなかった。サタンはデーモンを使い、人類を滅ぼそうとした」
窓のカーテンを閉じて部屋を暗くすると、上からスクリーンが降りてきて、そこに大きな壁画の絵が映る。
俺が夢で見た、白く美しい天使の絵だ。
「それがサタンだ、大魔神サタン。自らの身勝手のために、デーモンを滅ぼそうとした神という存在に反旗を翻した堕天使だ」
スクリーンの絵が変わり、次は黒い悪魔になる。
コウモリのような頭をした、威厳のありそうな風格をした悪魔だ。
「サタンは神との戦いで力を失い、数千年の眠りについた。そして、目が覚めた時、自身の中から怒りが生まれた。人間が、我々が生きていた地球を汚したからだ。それが許せなかったのだ。そして、サタンは人間の弱点を知るために、自身の記憶を消して1人の人間『飛鳥了』として生活した。それが、サタンにとっての運命の分かれ道だったのかもしれない」
了さんはスクリーンに映っている黒い悪魔を見ると、その黄昏ている表情からこの悪魔を愛しく思っているのが伝わってくる。
「飛鳥了は1人の人間と出会った、名前は不動明。了は明と友になり、復活したデーモン族を倒すためにデビルマンにした。しかし、それはサタンの意志では、デーモンが再び地上を支配する新世界で彼が愛してしまった明を生き延びさせるためだったのだ。しかし……明は他のデビルマンを率いてデーモン軍と戦った。そして、サタンは明を殺してしまったのだ」
話ながら、了さんの目から涙がこぼれた。
それは後悔の涙。
了さんはやはり、サタンだったのか。
「サタンは……私は明を殺してしまったことを後悔した。そして、新たなる世界を創造し、彼を死なせないようにした。そう、何度も……何度も私は世界をやり直したのだ。しかし、結末は同じだった。どんな選択をしても、デビルマンとデーモンの最後の戦い『アルマゲドン』は起こってしまった」
画面は変わり、あの悪魔と天使が向かい合っている壁画になる。
最終決戦アルマゲドン。
あの壁画は、その決戦の光景を表していたのか。
「何度目かの再起かは覚えていない。しかし、私はある世界のやり直しの中で違和感を覚えたのだ。果たして、この私の人間に対する怒りは、本当に私自身の怒りなのかっと」
「……それ、どういうことですか?」
「どこの世界でも、私は明を救いたいという願望を叶えるよりも、人類を滅亡させるという怒りの本能を優先させてしまう。それがアルマゲドンを引き起こす結末を導いてしまうのだ。私は、自身で自身を制御できていない。大魔神サタンが本当に向けるべき矛の先が、その相手に向かないのだ」
何となくだけど、了さんの言っている意味がわかってきたような気がする。
「1度だけ……私はたった1度だけ、明をこの世に蘇らせ、彼と共に神に挑んだことがあった。しかし、あの世界の後は……何度も繰り返すのだ、あの地獄を、悲しみを、私の手で!!」
了さんは頭を両手で抱えてうずくまると、苦しそうに唸る。
「教えてくれ、アキト!!私は今、自分の意志で生きているのか!?それとも、見えない運命に操られているのか!?」
「了さん……」
「私は……この世界で運命に終止符を打つため、あることを決行した」
「あること?」
復唱すると、了さんは俺を指さした。
「私は不動明と戦うことになる運命を壊すため、魔神の力を死ぬ寸前の彼に与えた。不動明というデビルマンに、宿敵であるサタンの力を授けたのだ。すると私の予想を超える出来事が起きた。なんと、次にやり直したこの世界には、不動明という人間は存在しないのさ」
不動明が存在しない!?
ならば、この世界は一体…。
「その代わり、その穴を埋めるように人間離れした身体能力を持ち、奇妙な経験をする1人の男の子が誕生した」
「それって……まさか!?」
本当に、それが真実なのか!?
了さんの言っていることが本当だとすれば、俺は……俺という存在は…!!
「内海明人。君は、この世界にサタンの力を持って転生した、不動明の生まれ変わりなのだ!!」