DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
思えば、俺はずっと人を不幸にして生きてきた。
生まれた時から、親以外からは不気味がられていた。
幼稚園に入ってからは喧嘩するたびに、最後には恐怖交じりの目で『人間じゃない』という声が聞こえてくるんだ。
先生だって、俺とは関わろうとはしなかった。内心、俺が故意じゃないにしても、関わった事柄は全てうんざりしていたのが伝わってきた。
同い年の子からは恐怖の象徴として、先生からは厄介者として、何度もその冷たい目を向けられてきたんだ。
それでも、孤独ではなかった。
俺には……美佐樹が居てくれたから。
親同士が仲が良かったから、幼稚園に入る前からお互いのことを知っていた俺たちは、2人で遊ぶことが多かった。
そんな中、周りからは美佐樹を『鬼の仲間』とか『化け物の嫁』だとか『魔女』だって声を聴くたびに、彼女は気にしないように振るまっていたが、それでも傷ついているのは伝わってきた。
俺なんかと一緒に居たがために、美佐樹から人は遠ざかっていった。
小学校に入ってからは、少しずつ美佐樹には友達が戻ってきたが、俺に友人ができることはなかった。
寄ってくるのは美佐樹に気があって、俺が気に入らない連中ばかり。
そいつらと喧嘩する毎日だった。
ほら……ここでも俺は人を傷つけている。
その度に両親にも迷惑をかけていたんだ。
それは中学にも続き、親の海外出張で加藤の家に居候することになった。
そして、それが原因で美佐樹を見る周りの目が少し厳しくなったのを覚えている。
いつも問題を起こす俺と一緒に暮らしているとなると、同級生や教師が彼女に向ける目もそうなるさ。
だから、俺はその頃から学校では美佐樹と関わらないようにし、彼女にも冷めた態度を取っていたんだ。
それでも……何も変わらなかった。
同じ高校に進学し、美佐樹とも距離を取ってバカな不良どもを蹴散らす日々。
そんな毎日を変えたのが、了さんとの出会いだった。
デビルマンの力に目覚め、そこからは俺は変われたと思っていた。
しかし、それがさらに加藤の家族を苦しめ、俺は自分の手で両親を殺した。
了さんに危険な変身をさせてしまった。
学園のみんなを巻き込んでしまった。
そして、恋人になってくれた美佐樹を……何度も危険に巻き込んだ。
そして、目の前で……。
俺がデビルマンだったばかりに、力が無かったばっかりに。
俺は大切な女を守ると誓った。
それなのにっ……!!
「何も……何も守れてないじゃないか!!」
頭の中に、今まで抱いてきた多くの後悔が、悲しみが、絶望となって俺を苦しめる。
「俺は何のためにデビルマンになったんだ……。何のためにっ……!!」
黒い絶望が俺を飲み込む。
その先には暗闇しか見えない。
美佐樹……俺は……君を……不幸にっ……!!
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(美佐樹……美佐樹ぃ!!)
加藤美佐樹の頭の中に、急に明人の声が響いた。
「今……明人の声が聞こえたような……」
彼女は今日も座敷の部屋に居り、外に出ることを許されていない。
明人のことを思い出すと、同時に白藤隆一のあのおぞましい顔も浮かんでしまう。
こんな状態で、彼に会っても良いのだろうか。自分にそんな資格があるのだろうか。
「あたしは……明人を裏切ってしまったのね」
明人を助けるためとはいえ、それでも自分から白藤から得られる性の快楽を求めてしまったのは事実だ。
あの時、明人はどんな顔をしていたのか。
どんな気持ちだったのか。
想像するだけで、美佐樹は心を痛めてしまう。
小さく溜め息をついてしまい、座敷に横になろうとする。
すると、戸が開いてアモンが入ってきた。
「アモンさん……」
『起きていたか、丁度良かったぜ。加藤美佐樹、喜ぶべきかどうかはわからないが、外に出てもらうことになった』
「えっ……本当ですか!?」
『ああ。人を食うデーモンもほとんど居なくなったからな。しかし、この森から出ることはできない。……暗い顔をしているな。悩み事か?』
「……そうですね。あたしに……明人に会う資格があるのかと思って……」
『それは、こんな狭い部屋で悩んで解決するものなのか?』
「そんなわけ……ないですよ」
重たい沈黙が流れ、アモンは美佐樹を立たせる。
『一緒に来い。いい場所に案内してやる』
「え、あのっ……ちょっと、アモンさん!?」
強引に手を引かれて外に出れば、アモンにそのまま肩に抱えられて低空飛行で移動する。
それを下からガーラが見ていたが、無茶はしないだろうと思い、そのまま子どもたちの相手をして遊んでいた。
「アモンさん!久しぶりに外出できるのは嬉しいですけど、あたしを一体どこに連れて行くつもりですか!?」
『黙って口を閉じていろ。舌を噛むぞ』
呆れながらも言われた通りにしていると、空を飛んで風を感じる。
体制は違うけど、あの月の夜に明人に抱きかかえられて空を飛んだことを思い出す。
(明人がデビルマンだと知った日……あの日、あの瞬間、あたしは彼の全てを受け入れて、支えになりたいと想った。今までずっと、1人で抱え込んでいた苦しみがあるのなら、一緒に背負いたいと……)
大切な日を思い出している間に、アモンは地上に降りて美佐樹を下ろした。
彼女の目の前に広がるのは大きな湖だ。
『ここは頭を空っぽにするにはうってつけの場所だ。ここで1度、余計なことを考えずに潜ってみろ。迷いが晴れるかもしれない。俺は向こうで見張っている』
「そ、そんなことを急に言われても――――」
『おまえは内海明人を救い出すための鍵を持っている。だが、今のおまえには使いこなせない。本当の奴にもう1度会いたいならば、今のうちに奴への気持ちを整理させておくんだな』
そう言い残して、アモンは森の中に入って行った。
1人残された美佐樹は湖を眺め、白装束を脱いで全裸になる。
「あたしの中の……明人への気持ち……」
静かに足から湖に入り、そのまま息を大きく吸って潜っていく。
水の中で目を開けると、差し込んでくる光が美しく見える。
不思議と時間が無限に感じられ、身体が浮かび上がらずに下に向かって沈んでいく。
すると、精神と身体が離れるような錯覚を覚え、そのまま意識が遠くなってしまう。
(何だろう……身体が急に軽く感じて………え?)
後ろを見ると、美佐樹は自身の身体がそのまま沈んでいくのが見えた。
そして、もう息を止める限界時間をとうに過ぎているのに苦しさを感じないのだ。
自分の身体を見ると、少し透けているのがわかる。
「あたし……幽体離脱してる!?」
辺りを見ると、急に暗くなって湖から黒い空間になる。
「ここは一体……」
誰も見えず、そこ居るのは美佐樹1人。
まるで、世界が彼女1人のように。
そこに突然、裸の明人の姿が現れる。
『美佐樹……』
「明人……明人なのね!」
駆け寄って抱き着こうとすれば、見えない壁に阻まれる。
「どうして!?あたしは明人の元に行きたいの!!」
『ダメよ。彼はあなたじゃなくて、あたしの明人なんだから』
それは美佐樹の声だった。
透明な壁の向こうに、もう1人の全裸の美佐樹が現れる。
そして、そのもう1人の美佐樹が明人の首の後ろに手を回す。
『明人……あんな他の男に身体を許しちゃう淫乱なあたしよりも、あなたにだけ身体を許すあたしの方が好きよね?』
『……ああ』
美佐樹の目の前で、もう1人の美佐樹と明人が口づけを交わす。
そして、明人はもう1人の美佐樹の身体をその場で横にし、両胸を揉みだす。
『ウフフ、そんなにあたしの身体を欲しがっちゃって……可愛い』
明人はすぐに膨張した肉棒をもう1人の美佐樹の陰部に擦りつけて挿入し、正常位でそのまま前後に腰を振る。
『あぁ~~んっ!!良いわぁ……気持ち良いぃんっ!明人ぉ!!』
『美佐樹……美佐樹ぃ!!』
交わる明人ともう1人の自分を見て、見えない壁を何度も叩く美佐樹。
「やめて!!明人……それは偽物なの。本物はあたしなのよ!!」
明人にその声は聞こえず、一点にもう1人の美佐樹の顔を見て腰を振り続ける。
『本物かどうかなんて関係ないんじゃない?あなたは、明人と会うことを躊躇っている。それなら、あたしが代わりにあなたになるから、あたしに明人をちょうだいよ』
「っ……!!」
『ほら、見てみなさい?彼はこんなにあたしを求めてくれてるわ。あたしも……あんっ!はっ!あぁ~んっ!とても気持ちいいのよぉ?あなたには、あの白藤隆一がお似合いじゃないのぉ?』
もう1人の美佐樹の視線が、美佐樹の後ろに向かう。
振り向くと裸の白藤隆一が立っており、下半身を見ると肉棒が反り返っている。
『さぁ、美佐樹さん……もう1度、俺と交わりましょう?気持ち良かったでしょう、俺のモノは』
近づいてくる白藤に対して、身体が動かない美佐樹。
「あぁ……あぁあ!!……やめて……来ないでぇ!!」
『どうしてですか?あの時、俺を求めてくれたじゃないですか。あなたは内海明人じゃなくて、俺を選んだんだ』
「違うわ!!あたしは明人を助けるためにっ……!!」
『それは言い訳じゃないんですか?だって、俺のことが忘れらないから、恋人に会いたくないのでしょう!?』
白藤は美佐樹の胸を揉みしだき、足を持ち上げて肉棒を陰部に擦りつけて挿入する。
しかし、彼女は抵抗できない。
「そんなんじゃない!!あたしは……あたしはっ……!!」
美佐樹の目から涙が流れ、後ろで別の女と交わっている明人を見る。
「あたしは明人に軽蔑されたくなかった……嫌われるのが怖かったのぉおお!!!」
そう叫んだ瞬間、美佐樹の居た漆黒の空間が崩壊した。
そして、白い空間に変わる。
彼女の前に居た3人の幻は消え、1人の巨大な人影が映る。
『その恐怖を……自身の中の真実を見失うな、加藤美佐樹よ』
シルエットが映っているのみだが、美佐樹はそれに向かって手を伸ばす。
「あなたは……誰?どうして?私……あなたのことを――――」
美佐樹が何か言おうとしたのを、人影が遮る。
『君の気持ちは変わらない。そのことを伝えるために、この悪夢は終わりにしよう……』
人影がそう呟くと、彼は強く発光する。
あまりの眩しさに目をつむってしまうと、美佐樹の意識は湖の中に戻る。
急いで上に向かって泳ぎ、顔を水面から出す。
(はぁ……はぁ……あたしは明人に会う……。明人に今の気持ちを全て伝えなきゃいけないんだ)
その目には確固たる意志を感じる。
美佐樹のことを遠目で見ていたアモンは、マスクの下で口元が笑む。
(これで……鍵は問題なさそうだな)
明人は絶望に沈み、美佐樹は希望を見出した。
彼を救うための鍵は、すでに美佐樹の中にある。