※この作品はR-18です。

DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~   作:カナト

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決意

 美佐樹はゼロの中を進み続けるが、一寸先はずっと暗く、寒い。

 肌の上に白装束1枚なので、彼女は身震いしながらも先に進む。

 裸足で歩いているため、床を踏むたびに生肉の感覚が直に伝わってくる。

 壁を伝っていき、どれだけの時間歩き続けてきたかわからない。

 しかし、しばらく休まずに歩き続けていると、やっと小さな白い光が見えてきた。

 

「あれは……もしかして」

 

 光に向かって進んでいくと段々と輝き強くなっていき、温かさをを感じる。

 まるで、太陽のような温かさだ。

 そして、光の元に到着すれば、暗かった洞窟のようだったのに真っ白な空間に変わる。

 

 その中では制服姿の明人が横になっており、目を閉じたまま動かない。

 

「明人……明人ー!!」

 

 美佐樹はすぐに彼に駆け寄り、しがみつくように抱きしめるが……何かがおかしい。

 明人の白くなっている顔、手を触ってみると、美佐樹は目を見開いてしまう。

 身体が冷たいのだ。死んでしまったみたいに。

 

「ダメよ……そんなの嫌ぁ。やっと……やっと、目の前に本当のあなたが居るのに……。明人ぉお!!」

 

 必死に呼びかけるが、明人に反応はない。

 ただ、そこにあるだけのように、彼は目を覚まさないのだ。

 

「……死なせない、絶対に。あたしのことを守ってくれた、助けてくれた明人を……今度はあたしがっ…!!」

 

 美佐樹は着ていた白装束を脱いで全裸になり、明人の制服の前を開けて肌を合わせて擦りつける。

 

「死なないで……明人。あたしの生きる未来には、あなたが居ないとダメなんだから」

 

 美佐樹は涙を流しながら愛しい男の顔に自身の顔を近づけ、冷たく乾燥している彼の唇に唇を重ねた。

 すると、美佐樹の身体に異変が起こる。

 あの湖と同じ感覚。

 精神が……身体から離れていく。

 

(これは……また、違う所に行くのね。でも、これは多分……)

 

 抗わず、慌てず、静かに精神が違う空間に飛ばされる。

 そこは元居た空間と同じく、白い空間だった。

 しかし、違うのは下にドス黒い海のようなものが広がっている。

 

「何なの……これは一体……」

『これは内海明人の絶望だ。加藤美佐樹よ』

 

 後ろから声をかけられて振り向けば、そこには白いカラスの虚像が居た。

 声はこれから聞こえたのだろう。

 

『私はゼロ。破壊皇と呼ばれており、内海明人の中に宿る者だ』

「破壊皇……ゼロ。明人が今死にそうなんです!どうにか、助けることはできませんか!?」

『私が手を貸すことはできない。これは試練だ。内海明人が絶望を乗り越え、貴様の居る世界に戻るたための試練なのだよ。彼が自身の意志でこの絶望の海を上がってこなければ、意味はない』

「戻るための……試練?」

 

 黒い海を見るが、明人が上がってくる気配はない。

 

『貴様の世界の時間軸で言えば、3日前からこの状態だ。このまま、飲み込まれたままならば……現実の内海明人の身体は死に絶えるだろうな』

「そんなっ……!!」

『それが試練だ。彼の身体が死に絶える前に、この絶望の海を上がって世界に戻る意志を示さなければ、全てが終わりだ』

 

 自分は何のためにこの場所に来たのか。

 美佐樹は無力な自分に悔しさを感じながら、黒い海を見る。

 すると、ゼロが口ばしを開けてボソッと呟く。

 

『私が手を出すことは許されない。しかし……彼がずっと求めている貴様ならば……』

「あたしが明人を助けにいくことは、許されるんですか!?」

『良かろう。しかし、あくまでも内海明人が自身の意志でこの絶望の海から出ることができなければ、それは意味はないと知れ。……時間は残りわずかだ。早急に行くがよい』

 

 ゼロの声に頷き、美佐樹はすぐに絶望の海に勢いよく潜っていった。

 

(待ってて、明人……今、本当の意味であなたの元に行くわ!!)

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 俺は無力だ。

 今まで、何のために戦ってきた?

 守るためだ。人間でもデーモンでも関係なく、俺は俺の守りたい者を守るために戦ってきたんだ。

 それなのに、何も守れてないじゃないか。

 

 何が守ると誓うだ。

 何が運命を変えるだよ。

 ふざけるな。

 俺は自分の力が怖くて、美佐樹1人守れなかったじゃないか。

 今だって、俺の意志とは関係なく衝動のままに意味もなく破壊しているかもしれないんだ。

 

 俺は……人を危険に巻き込んで不幸にする。

 本来は存在しないはずの、世界の部外者なんだ。

 だから……俺なんて存在しない方が良い。

 

 いっそのこと、このまま絶望に落ちて消えてしまい―――

 

「……っと、聴こ……あ……と……」

 

 何だ?どこからか声が聞こえてくる。

 

 暗闇の中、周りを見ると遠くから白い光が近づいてくる。

 その光からは安らぎを感じる。

 そして、その声ははっきりと聞こえた。

 

「明人……内海明人!!」

 

 それが人の形をし、ずっと会いたかった女の姿をしていることに気づいた時、自然と目を見開いた。

 これは夢か?幻なのか?

 ありえない。

 

 しかし、その名前を口にしていた。

 

「美佐樹……なのか!?」

 

 美佐樹は俺の前に立ち、全裸の姿で抱き着いてくる。

 それを受け止め、強く抱きしめる。

 

「会いたかった……ずっと、会いたかったわ、明人っ…!!」

「美佐樹……俺もだ。ずっと……ずっと、君と会いたくて仕方がなかった」

 

 2人はしばらくお互いの温かさを確かめ合い、美佐樹が俺の顔を見上げてくる。

 

「一緒に戻りましょう?みんな、あなたの帰りを待ってるわ」

「……それは……できない」

 

 美佐樹を離し、目を伏せながら背中を向ける。

 こんな俺のために、美佐樹はどういう方法を使ったのかはわからないが来てくれた。

 しかし、俺が元の世界に戻ったところで何の意味もない。

 

 俺はこれ以上、美佐樹を苦しめたくないんだ。

 

「俺は戻れない。俺のせいで、多くの人を苦しんできたんだぜ?今までのことを全て思い出したんだ。俺と関わった人は、俺が原因で苦しむ。不幸になる。……ダメなんだ。俺と居たらダメなんだよ」

「何を……言ってるのよ!!」

 

 美佐樹は俺の前に回り、涙目になって頬に平手打ちをしてきた。

 音は空間全体に響き、頬に痛みが走る。

 俺が目を見開いていると、美佐樹はまっすぐに俺の目を見てくる。

 

「そうやって、関わる人全ての不幸を背負うつもり?全部が全部、明人のせいなんてことはありえないわ!!」

「全部じゃなくても、俺が人を不幸にしていることは確かなんだ!!美佐樹のことだって……俺は……」

 

 今まで何度、美佐樹を俺のことが原因で危険に巻き込んできたかわからない。

 それでも、必ず守ると決めたから、その思いで繋ぎとめてきた。

 だけど、白藤の襲撃の時に俺は美佐樹を守れなかった。

 

「俺は君のことを守れなかったんだ。俺の存在が、美佐樹のこと苦しめ———んっ!」

 

 言葉の途中で腕を引かれ、美佐樹に唇で口を塞がれる。

 俺たちはそのまま静止し、唇が離れると美佐樹は俺の首の後ろに両手を回して見つめてくる。

 

「結果的に、あなたが原因で不幸になってしまった人が居るかもしれない。だけど……明人のおかげで幸せを感じている人も居ることを忘れないで。あなたが戦ってきたから、今も生きている人が居るの。……明人に生きてほしいと思う女が、ここに居る」

「美佐樹……」

「忘れたちゃった?あたしの前から居なくなるわけがないって言ったじゃない。あれは嘘だったの?」

 

 俺の頭を前に傾けて、目を閉じて額を合わせてくる美佐樹。俺も目を閉じると、涙が流れ落ちた。

 

「あたしね……明人に会うことができたら伝えたいことがあったの。聴いてくれる?」

「……ああ」

「確かに、あたしはあなたの前で白藤くんに犯された。あの時は絶望的な気持ちになったわ。だけど……それでも、あたしの中で明人が好きと言う気持ちは変わらなかった。今でも、明人のことが大好きよ。でも……あなたはあたしのことを―――」

「嫌いになるわけないだろ!!」 

 

 美佐樹の両肩を肩に手を置き、そのまま自分の胸に近づける。

 

「俺は美佐樹のことを今でも想っている。だけど、俺のせいで君は苦しんだ。できることなら、ずっと俺の側に居てほしかった。ずっと隣に居たかった!!それでも……俺のせいで美佐樹が苦しむ姿は……もう見たくないんだ!!」

「あたしは、明人が思ってるほど弱い女じゃないわ」

「っ……!?」

 

 言われていることがわからず、俺は美佐樹から一歩後ずさってしまう。

 しかし、すぐに美佐樹が一歩詰めよってくる。

 

「さっきから、あたしを守りたかったとか、あたしを苦しめているとか、そんなの明人だけの思いじゃない!!あたしは言ったわ。あなたと一緒に居られるなら、どんなに苦しくても構わないって。それよりも、明人と一緒に居たいって」

 

 美佐樹は俺の背中に優しく手を回し、右手で頭を撫でてくる。

 

「あなたが選んだ女は意外と強いってこと……わかってくれた」

 

 俺は本当に、美佐樹の側に居ても良いのか?

 また、彼女を苦しめてしまうんじゃいのか?

 そういう負の感情が、まだ微かに残っている。

 

 すると、美佐樹は俺の迷いを見計らったようにこう言ってくれたのだ。

 

「もしも、あたしを苦しめるんじゃないかって思っているなら、それ以上にあたしに幸せを感じさせて。あたしの幸せは、明人と一緒に居られることなんだから」

 

 俺は再度美佐樹を抱きしめ、涙を流しながら問う。

 

「俺は……君の側に居ても良いのか?」

「あたしが、明人の側に居たいの」

「……この先も、俺が原因で危険に巻き込んだり、苦しむことがあるかもしれない。それでも……俺と共に生きてくれるか?」

「当たり前でしょ。そんなことを言うなら、もうあたしが犯されたくらいで暴走なんてしないでよ?あたし……もう汚れちゃってるけど」

 

 悲しそうな笑みをする美佐樹に、俺は覚悟を込めた目を向ける。

 

「汚れてるかどうかなんて関係ない。もしも、汚れたって思うなら……俺がその上から、また美佐樹を汚してやる。何回も、何十回も、何百回もな」

「フフフっ、最低なフォローだよ?人間の言う事じゃないと思う」

 

 冗談みたいに言う美佐樹に、俺は笑みを向けてこう言うんだ。

 

「当たり前だろ?俺はデビルマンだからな」

 

 決心はできた。

 俺は生きる。

 美佐樹と共に生きる。

 俺が壊してきた世界で、大切な者を守るために。

 

 どれだけ残酷な運命だろうと、俺が変えてみせる。

 どれだけ傷つこうが、苦しもうが、俺はもう取り乱さない。暴走なんてしない。

 

 決意を固め、美佐樹を両手で抱えて背中から漆黒の翼を広げる。

 

「帰ろう……俺たちの生きる世界に」

「……うん」

 

 上に向かって高く飛ぶ。

 絶望が巨大な黒い手の形をし、俺を下に押さえつけようとする。

 

「俺は自分を否定しない!!誰がなんと言おうと、俺は存在する!!もう部外者なんて言わせない!!認めてくれる者が居る限り……俺は守る、変えて見せる!!俺がもう……絶望に負けることはない!!」

 

 腰にデビルマンのベルトが出現して巻き付き、片手でマークを回転させて奥に押し込む。

 

「デビルっ!!」

 

 俺の身体を、純白の鎧を装着する。

 

「破壊者の拳(クラッシャー・ナックル)!!」

 

 右拳で巨大な手を粉砕する。

 そして、翼をはためかせて高く飛び続け、絶望の海を美佐樹と共に浮上した。

 

 白い空間に脱出すれば、ゼロが待っていた。

 

『戻ってこられたか、内海明人、加藤美佐樹。……迷いはもう無いのか?』

 

 ゼロの問いに、俺は静かい頭を横に振る。

 

「……迷いが無くなることは、この先もずっとないと思う。俺の選択で世界が変わるなら、誤った選択もするかもしれない。それで後悔もするかもしれない。だけど、それでも俺はあの世界で生きたいんだ、大切な者のために戦いたいんだ。だから……そのための力を、これからも貸してくれるか?ゼロ」

 

 白いカラスはしばらく無言だったが、フッと笑う声がした。

 

『良かろう。この破壊皇ゼロ、内海明人の意志を全面的に尊重すると約束しよう』

 

 俺が笑顔を向けると、ゼロは咳払いをして話を戻す。

 

『そろそろ、貴様の身体も限界を迎えるかもしれぬ。早々に本来の肉体に戻るが良い』

 

 俺と美佐樹を囲むように、透明な球体ができる。

 

『内海明人……何故、不動明が貴様に特異点の力を与えたのか、私はわかったぞ』

「えっ……それは――」

 

 聞き出す前に、目の前が白い輝きで眩しくなる。

 そして、白光の中に意識が吸い込まれていった。

 




明人くんが復活だぁー!!!
やっと、本格的に主人公の視点に戻れるよ~~~!!!
良かったよ~~~!!!
美佐樹ちゃん、健気だよ~~~!!!

次回、復活して早々に夢の対決……かも?
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