DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
不動明の転生者。
そう言われても、俺にはピンと来なかった。
俺は俺だし、それ以外の何者でもないと思っていたからだ。
しかし、了さんの話に対して妙な信憑性を感じるのも事実。
デビルマンになってから……いや、その前から俺は人間じゃなかったのか。
俺は内海明人なのか、それとも不動明なのか…。
その答えは俺自身はおろか、了さん……サタンにもわからないようだ。
俺は……本当に俺なのか?
悩んでいるが、それを気にせず了さんは話を進める。
「少しずつの違和感ではあるが、この世界は君の存在を中心に以前の世界と運命のズレが生じている。それを実感したのは、あの夜に接触した悪魔アモンを見た時だ」
「アモンを…それはどうして?」
「勇者アモンは、他の別世界では不動明と合体した悪魔だからだ。それも、そういう運命のように必ずね」
「なら、アモンと合体しなかったケースはこの俺が居る世界が初めてってことですか?」
了さんは頷き、目を細める。
「正直に言おう、今君が合体している悪魔が何なのかは俺にもわからない。サタンの力を宿した君の身体に適合したのだから、アモンを超える力を持っているの間違いない。しかし……何も感じないのだ。君の中に眠っているはずのデーモンの意志を感じないのだ。これが物凄く奇妙に思えて仕方がない」
「……そうですか」
了さんの中では、俺に関することはわかっていないことが何個もあるようだ。
本当に俺という存在は、この世界ではイレギュラーなのだろう。
この話が真実ならば、本来居るはずだった人ではないのだから。
しかし、当の本人である俺からしたら、やはりデーモンの話をされたときと同じで途方もない話で、 今まで体験してきた異常な現象がそれを裏付けているのだが、それを素直に受け入れられない自分が居る。
当たり前だ。
この話が本当ならば、俺という存在を全否定されているように感じるのだから。
「君の周りには、これからも前世界と同じこともそうだが、違う異変も起こることだろう。その時、君の選択によって運命は変わる。舞台を用意したのは私だが、そこに生きる人々はそうなる選択をしてそうなっている。いずれ、君は大きな選択をすることになるだろう。その時は、悔いのない選択をしてくれ」
了さんの話は大きすぎて、今理解するのは難しい。
それでも、彼の言っている言葉は心に伝わってくる。
悔いのない選択…今までの世界にはない異変。
俺はこの世界に起こる数ある危機を乗り越えることができるのだろうか。
そして…。
頭の中に美佐紀の笑顔が過る。
「俺は美佐紀を……加藤の家族を、そして俺の家族を守ることができるのだろうか」
「君には守りたい者があるようだな。ならば君自身が強くなるか、その人たちをデビルマンにして危機に備える他ないな」
美佐紀たちを……デビルマンに?
デビルマンになるためには素質が必要だ。
それが無ければ、体をデーモンに乗っ取られてしまう。
そんな危険を犯すのは、俺1人で良い。
「その必要はないですよ。俺がデビルマンになったのは、俺が大切な人たちを守るためなんですから」
どこか胸の辺りに焦りを覚えながらそう言えば、了さんは小さく微笑んだ。
「ならば、その力を試そうじゃないか」
彼はパソコンの画面を俺に見せる。
そこには、あるトンネルで時々起こる行方不明事件について書かれていた。
「これにデーモンが関わっていることに確証は取れている。アキト、君にはこれに対処してもらいたい」
「……その前に1つ、俺から確認したいことがあります」
俺は顎を引いて目を細め、威圧するような上目遣いをする。
「今の了さん……いや、サタンは俺の味方ですか?」
その問いに対して、了さんは俺の目を受け止めて答えた。
「もちろん、俺は君の味方だ。そして、今は人類のことも存続させようとしている。しかし、デーモンがそれを許さないだろう。今のデーモンの中には私に従う者も少なからず存在するが、私の意に背く者も居る。こんなこことも、今までの世界では無かったことだ」
「それなら、今のデーモンを統率しているのは一体何者なんですか?」
「わからない。しかし、サタンと同等かそれ以上の何者かであることは確かだ。デーモンを倒していけば、そいつが姿を表すかもしれん」
了さんの額から汗が流れる。
その存在が何をしようとしているのかはわからないが、そいつがデーモンを操り、俺の大切な人たちを殺すかもしれないのなら、選択の余地は無かった。
「誰が相手でも関係ない。俺はデビルマンの力を使い、俺の敵からみんなを守るだけですから」
この時、俺の中に戦いのための確かな覚悟が芽生えた。
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暗い、普通のトンネルよりも長くて暗いトンネルの中で、女性の行方不明事件が起きている。
死体は出ていない。
しかし、デーモンが関連しているのならば、生存している可能性は皆無だ。
そのトンネルの中に、1人の成人した女性が入っていく。
何の警戒もせずに、これから1秒後、1分後、そして1時間先も生きていくのだと信じて疑いもせずに平然とした顔で歩いている。
すると、彼女の耳に不気味な声が聞こえてきた。
〈コレハ、イイエサガキタモノダナ〉
後ろから聞こえてきたので振り返るが誰も居ない。
怖くなって小走りでトンネルを抜けようとすれば、彼女の体をヌメッとした何かが巻いて上に吊るす。
それは舌だ。
長く延びている舌は、そこから服や下着を溶かして全裸にする。
「キャぁあああ!!!」
理解を越えた現象に悲鳴をあげ、彼女は気を失ってしまった。
すると、天井に上がっていき彼女の体を異形の者が上から下まで触る。
顔、乳房、腕、腹、陰部を触り、口からヨダレを垂らす。
〈ワカイオンナハ、ニクガジューシーデスキダ。ナメマワシナガラアジミシテ、コロシ――〉
「殺されるのはおまえだ、デーモン!!」
俺は道路から跳んで異形を蹴って道路の上に落とした。
今は了さんが情報操作し、警察を使ってトンネルを通行禁止にしてもらっている。
全裸で気絶している彼女だけが間に合わなかった。
デーモンの姿が、トンネル内のライトで照らされて現される。
トカゲのような見た目をしており、舌を出している。
〈オマエ……ナニモノダァ?〉
首を傾げて間抜け面で聞いてくるトカゲのデーモンを、俺は腰にベルトを巻きながら睨み、突出しているマークに手をかける。
「おまえのように、ただ本能に任せて人間を殺すデーモンを狩る者、デビルマンだ。……デビルっ!!」
かけ声をあげて変身し、俺はトカゲのデーモンに突撃した。