DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
これはデビルマン・ゼロが暴走する前の、まだ平和と呼べる世界だった時の話。
凶悪なデーモンを狩り続けていた日々の中、了さんから何の仕事もない与えられていない夏の休日。
俺は加藤の家族と一緒に海水浴に来ていた。
水着に着替えたは良いが泳ぐ気が起きない。
砂浜でぼんやりと海を眺めていると、横から冷たい水をかけられる。
「こらっ、海に着て泳がないなんてもったいないぞ~」
「そうだぞ、明人兄ちゃん!」
赤と黄色のワンピースの水着を着た美佐樹と、海パン姿で水鉄砲を持ってる孝ちゃんを見ると、軽く溜め息をつく。
「2人で泳いで来いよ。俺は気分が乗らないからさ」
苦笑いしながら言えば、美佐樹が腰に手を当ててジト目を向けてくる。
「そんなこと言って、水着の女を見たいだけだったりして~」
「な、何だよ、それ。……えらく疑われてるな」
まぁ、好意ゆえと思えば、鬱陶しくはないか。
「わかった。とりあえず、2人で行って来いって。俺は飲み物を買った後で行くから」
「……ちゃんと着てよね?」
美佐樹は最後まで不満そうな顔をしていたが、孝ちゃんと一緒に海水に浸りに行った。
俺は3人分の飲み物を買いに行き、海の家に居る麦わら帽子を被っている老人に話しかける。
「おじさん、コーラ3つ」
「あいやー、300円ねぇ」
金を払って老人と目が合うと、ニコニコとした顔を向けられる。
「お兄さん、1人かい?」
「いや、連れが2人。海に泳ぎに行ってるんだよ」
「あいやー、それは心配ねぇ。お兄さん知ってる?最近、この辺りの海を泳いでいたら神隠しにあうって噂があるよ~」
「……神隠し?」
「あいやー。何でも若い女の人が消えているらしいね。1週間前だって3人は行方不明になって近くの海水浴場が閉鎖になったぁよー。ここも、もうじき危ないかもねぇ」
俺はその話を聞き、血相を変えて走った。
とてつもなく嫌な予感がする。
立てておいたパラソルに行くと、そこにはタオルで頭を拭いている孝ちゃんが居た。
「孝ちゃん!美佐樹は!?」
「えっ……姉ちゃんはまだ泳いでるよ?何で」
「っ!!何でもない。良いか、ここから離れるんじゃねぇぞ!!」
俺は置いてあるリュックの中にあるベルトを取り出し、急いで海に向かう。
人間の限界を超えた速さで砂煙を起こしながら走り、ベルトを腰に巻いて海に飛び込んだ。
待ってろ……2人とも!!
潜りながら美佐樹と孝ちゃんを捜していると、沖の方で赤と黄色の水着が見えた。
そして、その前には巨大な黒い影が見える。
あれが隠しの正体か!?
俺は海面に浮上し、前に居る美佐樹に声をかける。
「逃げろ、美佐樹!!」
「え!?」
彼女が後ろを振り向いた瞬間、海面に竜巻が渦が発生する。
渦は美佐樹を巻き込み、巨大な海竜が姿を現した。
「きゃぁああああ」
海竜は美佐樹の脚を掴んで逆さにし、彼女は気絶してしまう。
<今日モ獲物ガ寄ッテキタワ!!若イ娘ヨ、我ガ血ト肉トナルガイイ!!>
「待て、デーモン!!」
奴は美佐樹の脚に噛みつこうとしたが、その前に俺の存在に気づく。
<貴様ハ、内海明人……?デビルマン・ゼロか。噂ハ聞イテイルゾォ?デハ、コノ娘は貴様ノ弱点ト言ウワケダナァ……。クククッ、ソレニシテモ、貴様ハ何時、コノ娘ヲ食イタクナルノカナァ?>
「……何をバカなことを言っている!?身体は悪魔だが、俺の心は人間だ!!美佐樹を食おうなどと思うはずがない!!」
<ソレハドウカナァ?貴様モ我ラデーモント同ジ細胞ヲ持ッテイル。人間ヲ襲イタクナル衝動ニ駆ラレル時ガ来ルデアロウ?>
海竜は水着越しに美佐樹の身体を足先から舐め始め、股間から胸までの間を上下に舌でなぞる。
<ケシカランナァ、コノ柔肌ハ!!犯シタクテ溜マランワ。貴様ノ目ノ前デナァ!!>
その鋭い爪で美佐樹の水着を破って全裸にし、おぞましい顔で笑う海竜。
「てめぇええ!!俺の女に手を出すなんざ、100億年早いぜ!!……デビルっ!!」
俺はベルトに手をかけ、純白の鎧を装着してデビルマンに変身して漆黒の翼を広げて空を飛んで上空から攻める。
海竜は美佐樹を海に投げ捨て、4本の手を広げて臨戦態勢に入る。
<来ルカ!!貴様ヲ食ライ、我ガ糧トシテヤロウゾ!!>
「ごめんだな。海の平和のため、てめぇの死体を魚の餌にしてやるぜ!!」
両腕から3枚の黒い刃を出し、海竜に向かって突撃をかける。
一瞬で身体を3つに切り裂くが、何かがおかしい。
奴の切った部分から、触手が伸びてきて俺の身体に巻き付いた。
残りの部分は海竜の形を成す。
「何!?」
<ハハハハっ、コレガ我ガ能力ヨ。コノママ海ニ引キズリ込ミ、溺レ死ニサセテヤルワ!!>
海竜が潜っていき、俺を海に引きずりこもうとする。
「おまえの能力はわかった……それなら、塵も残らずに消滅させてやる!!」
全身から光線を発射し、海竜を焼き尽くす。
「クラッシャー・ビームっ(破壊者の光線)!!」
ぐぁあああああ!!!と断末魔の声を出し、海竜は消滅した。
海面に浮かぶ美佐樹を抱きかかえ念動力で水着を元に戻し、変身を解除する。
タイミング良く彼女は意識を取り戻し、目を開けて俺の顔を見る。
「明人?……あれ?あたし……」
「ちょっと波に巻き込まれて気を失ってたんだよ。もう大丈夫さ」
「そっか……助けてくれたのね」
美佐樹はフフっと笑って俺の首の後ろに両手を回してきた。
それを受け止めながら、さっきの海竜の言葉を思い出す。
俺が美佐樹を襲おうとするなんてこと、あるはずがない。
そう思いながらも、内なる自身への恐怖はぬぐえなかった。
今回の話を書いた理由。
ただ明人くんに「デビルっ!!」と言わせたかっただけ