DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
悪魔特別捜査隊
白カラス……いや、デビルマン・ゼロ、内海明人が姿を消し、平和な日々が訪れた。
……などと言う者は、きっと居ないだろう。
人間にとってはデーモンが、デーモンにとっては人間が敵である状況は変わっていない。
かくいうこの俺、兜甲牙も、今だにデーモンに対する疑念は晴れない日々を送っている。
しかし、悪魔の力を持った者すべてが悪だという考えはもう無い。
取りついていた独善と言う名の闇は、既に消えている。
それならば、マジンカイザーとして、俺がこの世界を守るために倒すべき敵とは一体…。
そんなことを、ここ1週間リハビリをしながらずっと考えている。
全ての悪魔が悪というわけでも、全ての人間が善というわけでもない。
内海明人のその言葉が、心に刻み込まれている。
あのデビルマン・ゼロとの戦いは、俺にとって大きな痛みと共に気づくべき問いに気づかせるきっかけをくれた。
ちなみに、今更ながら俺の今の状態を説明しようと思う。
内海明人は本気で俺と戦ってくれた。それも容赦なく。
その結果、ありがたいことに身体を動かすだけでも激痛が走り、首を動かすだけでも一苦労だ。
研究所の病室でできることと言ったら、窓の外の景色を見ることだけ。
青い空と、その下に広がる森と、その向こうにある廃墟の街並みを。
「誰だよ……白カラスを倒せば世界が元に戻るって、本気で思っていた奴は」
変わっていない。
変わろうとしている兆しもない。
逆に、悪化の一途をたどろうとしている。
机の上に置いてあるファイル、その題名を見ると何度目かもわからない溜め息が出た。
『悪魔特別捜査隊について』
悪魔特別捜査隊。
今までは秘密裏にマジンカイザーを使って悪魔を狩っていたが、これからは国が総力を上げてデーモンを狩っていくらしい。
人間の中に隠れている悪魔を、光子力を使った量産型の武装で掃討するのだそうだ。
悪魔と人間の溝は、時間が進むにつれて広がっていく。
これを埋めるための術など、あるのだろうか。
考えにふけそうになると、病室の扉が開いてさやかと弟のシローが入ってきた。
「甲牙くん、起きてる?」
「見舞いにきてやったぞ、兄貴~」
2人に対して露骨に溜め息をつく。
「おまえらなぁ、俺に構っている時間も余裕も無いだろ?さっさと帰れよ」
「お見舞いに来たのに、その言い草は無いんじゃないかしら。シローくんだって、あなたのことを心配しているのよ?」
「うるっせぇなぁ……」
痛みに耐えながらも寝返りを打ち、2人に背中を向ける。
さやかの呆れたような息を吐く音が聞こえた。
「兜博士が言っていたわよ?甲牙くんは無理をし過ぎるって。身体を癒すこともそうだけど、心のケアも必要なんじゃない?」
「心のケア?誰に何ができるって言うんだ?」
「誰かと一緒に居るだけでも、心が安らぐってこともあるでしょ。だから、私たちが来ているんじゃない」
「余計なお世話をどうもありがとう」
皮肉を言ってやると、シローが俺の前に着て不安そうな顔を向ける。
「兄貴、俺たちが来たらダメだった?」
「いや、ダメってわけじゃないぜ!!……けど、今の俺は足手まといだろ。正直、ここに居てもなって思うし……」
「そんなこと言わないで。あなたの存在は、今生きている人たちに希望を与えているのよ?」
「俺じゃない……マジンカイザーだろ」
求められているのは、マジンカイザーであって俺じゃない。
誰でも良いだろ。
今の俺が変身したところで、今まで通りに戦える自信がない。
「あいつなら……デビルマン・ゼロなら、俺みたいな情けない男にはなってないんだろうな」
「はぁ……また、その話?もう何度も聞いたわよ。あれだけ悪魔を目の仇にしてたのに、自分と悪魔を比べるなんて―――」
「あいつは悪魔じゃない!!」
さやかの言葉を遮り、身体をゆっくりと起こす。
「デビルマン・ゼロはただの悪魔じゃない。悪魔の力を持ちながらも、人間の目をしていたんだ。心は……人間なんだ。そして、立派な戦士だ。戦ったからこそ、わかる。あの男はいろいろな想いを背負って戦っているんだ。戦い続けてきたんだ」
「それは、甲牙くんだって同じでしょ?」
気を遣ってか、さやかはそう言った。
だけど、その言葉は気休めにもならない。
「俺はただ、自分のために戦っていただけだ。何も背負ってなんかいなかった。独りよがりな正義のヒーローをしていたに過ぎないんだよ」
「そんなことないわよ!!」
さやかは声を張って否定し、俺の前に回りこむ。
シローは後ろに下がり、じっと俺を見ている。
「あなたが英雄になりたいと思う中で、その過程の中で救われた人はたくさん居るのよ?独り善がりなんかじゃない。あなたは今、多くの人の意志を背負っているわ」
「……それでも、俺がそれに答えられるかどうかは別問題だろ」
どうしても、自分を認めることができない。
こんな俺が、英雄になる意味なんてない。
さやかの言葉も届かずに自分を否定し続けていると、ドアが開いて1人の軍服の男が入ってくる。
「弓さやか殿、出動の要請があります。至急同行を」
名前を呼ばれ、さやかの表情が真剣になる。
「デーモン殲滅要請ですか?」
「はい。今回は我々、悪魔特捜隊も援護に回ります」
「よろしくお願いします」
男は敬礼して部屋を後にし、さやかもそれに続く。
部屋を出る前に、彼女は俺に笑みを向けてきた。
「行ってきます。すぐに戻ってくるから」
「……」
俺は何も答えず、目を逸らしてしまった。
今のさやかは、俺にとっては眩しすぎる。
「兄貴、俺も今日はもう帰るよ。ゆっくり休んでくれよな」
「ああ……構えなくて悪かったな」
シローを見送り、部屋は俺1人になる。
ベッド横の小さな棚の上に置いてあるブレスレットを凝視すると、過去の自分の愚かさを思い出されてしまう。
「俺の戦う理由……それは……」
見えてこない。
今の兜甲牙には、何の信念も無いのだ。
絶望から始まる、魔神再生への物語。