DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
今は使われていない廃墟の工場。
その中に居るのは2人の男女。
1人は両手を柱で縛られて不機嫌な表情をしており、もう1人は机の上に足を組んで座っては無表情で目を閉じている。
「私を連れ出して、何をするつもり?」
「貴様をどうこうするつもりは毛頭ない。俺はただ、戦士として本来の魔神に挑みたいだけだ」
冷静に願望を言う剣鉄也からは、感情があるようには見えなかった。
ただ純粋に戦いを望み、そのために手段は選ばない。
そんな彼に、さやかは嫌悪感を覚えた。
「何のために甲牙くんと戦うの!?彼はもう、前のゼロとの戦闘で十分に戦った。これ以上、甲牙くんを――」
「貴様の意見はどうでも良い。俺はただ、強者との戦いを望むだけだ。己が高みに達するためにな」
鉄也は左手に持っていた刀を鞘から抜き、刀身を凝視する。
「力こそが真理。弱き者に価値はない」
「強いとか弱いとか、そんなことで価値を決めるのは間違ってる」
「どうだろうな。今の世界を見れば、1つの言葉に辿りつく。弱肉強食。悪魔と人間が、生存競争を生き抜くために血で血を洗いあっている。強き者が生き残り、弱き者が滅ぶだけだ」
「……そう言うあなたは、どっちなの?」
さやかは見た、鉄也の姿が異形に変わる瞬間を。
あれは今まで戦ってきたどのデーモンとも違うオーラを放っていた。
まさに対極。
今までのデーモンが獣の本能を荒ぶらせていたのであれば、鉄也はどこまでも冷たく、深い闇を感じさせた。
鉄也の口角が上がると、彼の影が大きく伸びてはその異形の形になった。
「どっちなんだろうな……俺は」
刀を鞘に戻せば、鉄也の周りに暴風が起こった。
そして、物陰から数十体のデーモンが風圧に押し出されて姿を現した。
「デーモン!?」
「女の匂いに吊られてきたか」
鉄也は静かに机から降り、そのままデーモンの群れを見据える。
奴らの視線の先は、身動きが取れないさやかに集中する。
「その娘をおまえたちにやるわけにはいかん。下劣な獣欲を向けるのであれば、他に当たると良い。そうでなければ、俺がおまえたちを殺す」
鉄也が忠告するが、デーモンはゆっくりと2人に歩みよってくる。
彼の言葉を聴く気はなく、ただ衝動に任せてさやかを見ては汚くよだれを垂らす。
それを冷静に見れば、鉄也は刀の柄を握り、デーモンの群れに突撃しながら抜刀する。
すれ違いざまに、5体の虫型のデーモンの身体が微塵になった。
鞘に刃をゆっくりと戻し、残りのデーモンに目を向ける。
「雑魚が……。死の覚悟はできたか?」
鉄也の冷たい瞳が、赤く光った。
その後1分もしない内に、さやかの目の前にデーモンの肉片が散らばった床が血に染まっていた。
剣鉄也は返り血を浴びながらも、終始無表情に雑魚の命を奪い取っていた。
「わかっているぞ。貴様は来る……そして、俺と戦う。さぁ、早く来い……マジンカイザーっ…!!」
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「危険です、甲牙さん!!その身体ではっ…!!」
案の定、ミネルバには止められた。
俺はさやかを助けに行く決意を固めた後、例の物をもらいに研究室に向かった。
爺が居なかったから彼女に事情を話すが、当然納得はしてくれない。
「魔神化が進行することはわかってる。それでも、俺はさやかを助けに行く」
「甲牙さんだけでは危険です。ボスさんたちや悪魔特捜隊を招集して……」
「あいつらはデーモンの襲撃に備えておいた方が良い。今動けるのは、俺しかいないから」
「それなら、私がマジンガーを使って助けに行きます。甲牙さんは、ここに居てください。無理をしたら、人間に戻れない可能性だってあるんですよ!?」
「ここで無理をしなかったら、俺はもう2度と戦う勇気が持てないんだ!!」
大声で言ってミネルバを黙らせる。
拳を握り、大きく深呼吸をする。
「俺はデビルマンに負けたあの日から、自分の中の戦う理由が見えなくなってしまった。おまけに、身体が魔神なるかもしれないって言われて動揺もした。それでも、俺は誰かを……さやかを救うためなら、身体のことなんてどうでも良いって思ったんだ。ここで戦わなかったら、俺は自分の心に嘘をつくことになる。そんなことは、例え死んでもしたくない」
ミネルバは一瞬目を見開き、小さく溜め息をついては1つのアタッシュケースを俺に渡してきた。
「例の武装の試作機です。これなら、完璧にとは言いませんが、多少は魔神化の進行を止めることができるはずです」
「ミネルバ……ありがとう」
「甲牙さんが頑固なのは知っています。止めても無駄なのはわかっていました。でも、心配していることは理解してほしかったのです」
「わかってるよ。いつも、心配かけて悪いな」
「私よりも、さやかさんの方が何倍もあなたのことを気にかけていますよ?」
「それも……わかってる。助け出したら、ちゃんと謝るよ」
「謝罪よりも、もっと言わなければならないことが在るのではないですか?」
「……それは、考えとく」
ミネルバには見透かされてるのか。
でも、今の俺にはその言葉を伝える資格はない。
言うかどうかは、助け出した後に考える。
「それなら、俺は行くよ。カイザースクランダーの発信準備を頼む」
「了解しました。甲牙さん、くれぐれもお気をつけて」
「ああ。必ず、さやかと一緒に帰ってくる」
次回、甲牙と鉄也が邂逅する。
甲牙は魔神の力を制御できるのか、そして鉄也の正体とは……!!