DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
また、この状態に逆戻りか。
時間は夜、病室のベッドの上で横になり、治りかけていた身体に鞭を打ったせいで身体が思うように動かない。
結局、ミネルバには研究所に戻ると同時に怒られてしまった。
無理をして身体をまた壊してしまったことや、マジントリガーの試作機を壊してしまったことなど、いろいろと言われたい放題だった。
反省はしているけど、必要以上に怒られたような気がする。
最終的には、人格まで否定された気分だった。
爺に関しては、見舞いにも来ずに研究室にこもりっきりだった。
何を考えているのかは知らないが、俺のことはどうでも良いってことなんだろう。
結局、様子を見に来たのはミネルバとシロー、そしてボスたちだけだった。
ボスに関しては、鼻水を垂らしながら泣きながら「バカ野郎!!無茶ばっかりしやがって!!」て怒られたっけ。
そして、怒られながらもさやかの様子を聞かされた。
さやかは医療室で精密検査を受けたが、以上は無かったそうだ。
ダークネスは一切、さやかに手は出していなかったってことだ。
それでも、これで心配事が全て晴れたわけじゃない。
俺の身体は、今回の戦いで確実に魔神化が進行した。
それが1%なのか、それとも10%なのかはわからない。
いや、もっと進行している可能性もあるな。
「それでも、俺はマジンカイザーとして戦うことを決めたんだ。みんなを……護るために」
『その覚悟が本物かどうかは、この先の戦いで試されることになるだろうな』
カイザの声が頭の中に流れ、棚の上に置いてあるブレスレットを見る。
「カイザ……マジントリガーを使っての魔神パワーの解放だと、進行はどれほど防げたんだ?」
『本来、1つの魔神パワーを解放するだけでも、身体のほとんどが魔神化してもおかしくはない。しかし、おまえは2つの魔神パワーを使ったが、進行はそれほど進んでいない。精々、数値で表せば、3%と言ったところだ』
「そうか……思ったほど、進んでないんだな」
『安心している場合ではない。魔神化は進行し、奇跡でも起こらない限りは元には戻らない。進行するにつれて、私の力に飲み込まれる危険度が高くなることを忘れるな』
「……そうだな」
魔神化が進行すれば、俺が俺でなくなるリスクが高くなる。
そんなこと、言われるまでもない。
それなら、やるべきことは決まっている。
「俺が完全に魔神になる前に、この戦いを終わらせる」
『何をもって、おまえの戦いは終わりを迎えるのだ?また、悪魔の全滅か?』
「そんなんじゃない。そんな考えは、2度としない」
『ならば、どうする?』
カイザは俺に答えを求める。
俺が魔神の鎧を装着して戦える時間は限られている。
あとから考えるじゃ遅いんだ。
だから、今決めた。
「人間と悪魔の2つの命が共に生きる世界を作るのは難しい。だけど、あの男はそれを目指しているはずなんだ。俺にはできないが、あの内海明人ならば、ゼロから世界を変えることができるかもしれない。だから、俺は俺にできることをする」
『おまえにできることとは?』
「護ることと、敵を倒すこと……そう、マジンカイザーは戦うことしかできない。だから、その役割を果たすために……人間と悪魔が争わなければならなくなった元凶を……討つっ!!」
俺の新たなる覚悟に、カイザはフッと笑う。
『それは、創造神に挑むということか?人間を生み出したのも、悪魔を生み出したのも、神だ』
「例え神が相手だろうと、俺は戦う。大切な者を護るために」
『……良い覚悟だ』
その後、カイザは静かになり、部屋は無音に包まれる。
目を閉じて眠りにつこうとすると、突然ドアが開いた。
今更爺が来たのかと思ったが、すぐにそれは違うのだとわかった。
「甲牙くん、起きてる?」
さやかの声だったからだ。
寝たふりをすることもできたが、俺は「おう」と返事をして顔を向けた。
「どうしたんだよ?もう9時回ってるぜ?」
「……消灯時間だから、来たのよ」
さやかはベッドに近づき、そのまま座ってきた。
俺が顔が見えないから一応電気をつけると、「あっ、ダメ!!」と言ったさやか。
だが、もう遅かった。
明かりが付くと、さやかの顔が真っ赤になっているのがわかった。
そして、小刻みに震えているのも。
「……さやか?」
「ご、ごめんなさい。やっぱり、何でもないからっ…!!」
何故か涙目になるさやかはすぐにベッドから立ち上がって部屋を出ようとするが、その前に俺は彼女の手を掴んだ。
「何か用があったんだろ?俺で良かったら、話相手になるぜ?」
「……っ、甲牙ぁ!!」
さやかは振り向き、涙を流しながら俺に抱き着いてきた。
それを受け止め、腰に軽く手を回す。
さやかの身体の震えが、直に伝わってきた。
「甲牙っ……私っ……私……怖かったのっ!!ずっと……怖くて怖くて仕方なかったっ!!」
おそらく、ダークネスに捕まった時のことを言っているのだろう。
当然だ、電波塔の時とはわけが違う。
バトルスーツを着ていたわけではなく、武器も持っていなかったのだから。
恐怖がないわけがないんだ。
「大丈夫だ、さやか。……もう怖がることはない。俺が側に居る」
「うんっ……」
俺とさやかは視線を合わせ、互いに変な空気になってしまう。
こっちが先に目を逸らそうとすると、さやかに両手を顔を固定されてしまった。
「逸らさないで」
「……悪い」
さやかはさっきの怯えたものから一転し、真剣な目をしている。
「さっきの…剣鉄也との戦いの時に言ったこと……どういう意味だったの?」
「……な、何のことだ?」
ダークネスとの戦いでは、気持ちが手一杯で何を言ったのかをほとんど覚えていない。
聞き返すと、さやかは不機嫌な顔をして俺を押し倒した。
「おい、さやか!?」
さやかは俺に顔を近づけ、口と口が重なるかもしれない距離になる。
「私、さっきからずっと気にしてるんだけど?」
「だから、俺が一体何を言ったって言うんだ?」
再度聞くも、さやかは怒りの表情のまま耳まで赤くなっている。
「言ったじゃない。私のことっ………だって」
「……ん?」
肝心な部分が聞こえない。
こんなに至近距離なのに。
さやかは俺の上に馬乗りになったまま身体を起こし、両手で顔を隠して再度言った。
「だからっ……私のこと、俺の女って言ったでしょ!?」
「……はぁ!?俺が!?」
「そうよ!!忘れるなんて酷い!!最低よ!!バカッ!!」
フンっと言って不貞腐れてしまうさやか。
あの時は必死で、そんなことを言ったような気もするし、気のせいのような気もするし…。
それでも、これは良い機会かもしれない。
魔神化で身体が人間じゃなくなっている俺には、時間が無限にあるわけじゃない。
やらない後悔よりも、やった後の後悔の方が良い。
俺は身体を起こし、怒っているのは承知でさやかを抱きしめた。
「ちょっと、甲牙っ!?」
驚いたのか彼女はジタバタするけど、すぐに止まって背中に静かに手を回された。
「いや、だったか?そんな風に言われて」
「……ううん、そんなことない」
「俺、本当にさやかの言う通りバカだからさ。目先のことで精いっぱいで、周りが見えなくて、さやかに心配ばかりかけてるし…。この先、世界のこともそうだけど、俺自身のことでも迷惑をかけることがあると思う。でも……俺には、さやかが必要なんだってさっき気づいたんだ」
さやかが居なかったら、俺はダークネスとの戦いに勝てなかった。
あの時、自覚したんだ。
俺の心の支えになってくれたのは、弓さやかなんだって。
だから、俺の素直な気持ちを、ありのまま隠さずに言葉にできた。
「世界はさやかを必要としているし、戦いが終わった後もいろいろと忙しくなると思うけど……さ。これは俺の目的以上の我が儘だ。この先、俺の女として一緒に居てくれ」
さやかは俺の告白に目を見開いたけど、すぐに目に涙を浮かべて静かに返事をしてくれた。
「…はい……」
俺たちは互いにタイミングを計るように徐々に顔を近づけあい、唇を重ねた。
しばらくして唇を離し、額を合わせて目を再度閉じる。
「好きよ……甲牙」
「そ、そんな恥ずかしいことをよく平気で言えるよな」
「これまで言えなかったんだから、溜まって多分たくさん言ってあげるわ。好き、大好き」
さやかの口を塞ぐためにもう1度キスをし、そのままベッドの上に押し倒す。
「あっ!……甲牙!?」
「いや、そのっ……悪い。俺も男だし、さやかは女で……いや、さやかが嫌ならっ!!俺は強引にするつもりはねぇんだけど……」
俺の意図を察したようで、さやかは目が泳いでしまう。
時間は夜で、もう誰もこの部屋には来ない。
そして、ここに居るのは2人の恋人同士のみ。
付き合ってすぐにすることなのかはわからないけど、男としての本能がさやかを求めてしまう。
さやかはしばらく視線を合わせてくれなかったけど、俺の首の後ろに腕を回して目を見てきた。
「私のこと……そんなに欲しい?」
「欲しいっ……けど、さやかの意志は尊重したいっていうか……」
いろいろと動揺を隠せない俺の頬に右手を添わせ、優しい顔で言った。
「良いわ。今日、助けてくれたご褒美よ」
「さやか……」
俺はたまらずさやかに顔を近づけ、口づけを交わす。
そして、彼女の来ているT—シャツの下に手を入れた。
どんどん、甲牙くんが主人公になってきてる。
まぁ、良いか。あと数話で今回の甲牙編も終わるし。
さてさて、次の話は……どうしようかぁ、この続きを書くべきか、時系列を進めて事後にすべきか……。