DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
デビルマンに変身した俺は、一歩踏み込んだだけでトカゲのデーモンに一瞬で距離を詰める。
すると、トカゲのデーモンは舌を俺に向かって伸ばしてくる。
〈コノ『リザーデ』ノ舌ハ全テノ物ヲ溶カス!!ソノ鎧ヲ全テ溶カシ、オマエノ肉モ食ッテヤルゾ!!〉
「……そうか、おまえの武器はその舌なんだな。ならば!!」
リザーデの長い舌を掴み、強く引っ張る。
すると、リザーデの体がこちらに接近してきたので、俺は拳を握り、顔面に強い一撃をくらわせる。
〈ソ、ソンナバ――〉
最後まで言うことなく、リザーデの顔面は俺の拳の一撃だけで消滅した。
あっけない、一撃で死んでしまったのか。
リザーデはデビルマンの超能力を使うまでもなかった。
アモン以外が相手だと、ここまで俺は強いのか。
物足りない。
俺の中に宿るデーモンの本能が、まだ暴れ足りないと訴えているのだ。
しかし、敵が居ない。
トンネルを壊すか?
ダメだ、そんなことをすれば俺の存在が世間に知られてしまう。
それがアルマゲドンへと繋がる引き金となると、了さんは言っていた。
周りの人間に知られないように、俺のこの衝動を収める方法。
道路の上で全裸のまま倒れている女性を見ると、俺の中の抑えられない衝動が駆り立てられる。
変身を解除すれば、彼女に近づいて仰向けにさせ、胸を触ってみる。
柔らかい。
女の胸とは、こんなに柔らかいものなのか。
獣の本能が、彼女の胸を揉む手を激しくさせる。
しかし、どうしてだろう。
そこから先に向かわない。
己の性欲のままに、この女の陰部の中に俺の性器を突っ込み、欲望のままに女を使って暴れることができない。
そうしようとしても、身体がそれを拒むのだ。
頭の中に美佐紀の顔が浮かび、人間としての理性を戻してくれる。
「そうだ……欲望のままに、本能のままに動くのはデーモンと同じだ。俺は違う……身体は悪魔になっても、人間としての精神は残っている。だから…!!」
俺は女性を両手で抱きかかえ、トンネルを後にした。
最後まで人間の理性で、デーモンの本能を抑えたままで。
女性はその後、了さん…サタンの部下のデーモンが記憶操作ができるらしく、その能力でデーモンに関する記憶を消したらしい。
デーモンが起こした1つの事件は終わった。
それでも、俺の中の暴れたいという衝動は、理性で押さえ込んだに過ぎない。
どうすれば良い?
どうすれば、この俺の中の物足りなさは解消されるんだ。
敵が欲しい。
俺のこの高まる衝動を解き放てるだけの強い敵が。
もしくは…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
加藤の家に帰ると、おじさんとおばさんの車が無かった。
出かけたみたいだな。
夜も遅いから、みんな今日は外食か。
家の鍵を開けて中に入れば、やはり暗くて周りが見えない。
部屋の明かりをつけてリビングに行くと、テーブルの上にカレーライスがラップをして置いてあり、その隣には『暖めて食べてね』と書いてある紙、そして、ソファーでは美佐樹が私服のまま横になって寝ていた。
美佐樹……俺のことを待っていたのか。
おじさんたちが居ないところから、1人でずっと…。
昔からそうだ。
俺がどれだけ素っ気ないしようとも、俺に構ってくる。
俺がどれだけ怪物呼ばわりされても、それを気にせずに一緒に居てくれる。
いつも、自分のことのように俺のことを心配してくれる。
そして、いつも『家族だし』と言うのだ。
それを聞くたびに、俺は底知れぬ焦りと絶望感にさいなまれる。
何故なら、俺は美佐樹を家族としては見ていないからだ。
美佐樹、俺にとって……。
「美佐樹、俺は……っ!!」
頭が急に痛くなってきた。
これもまた、前世の不動明の影響なのか?
そして、抑え込んだ衝動がまた暴れたいと騒ぎだす。
デビルマンの能力だろうか、美佐樹の身に付けている物が透けていき、全裸に見えてくる。
頭から首筋、大きな乳房、ピンク色の乳首、へそ、陰部、足と見ては、俺の中の獣が今にも美佐紀に襲いかかろうとする。
獣欲のままに、美佐樹を犯したいと叫んでいる。
俺の中の男が、性器を膨張させる。
美佐紀の魅力的なおっぱいに右手を伸ばし、鷲掴みにしてしまう。
すると、彼女の体がピクッと震え、表情が曇る。
「んっ……んぅ…」
まだ起きないようだ。
俺は彼女の大きく柔らかいおっぱいから手を離すことができず、掴むだけでなく揉み始める。
「んんっ…あっ……」
美佐樹は頬が赤くなり、俺から逃げるように横に寝返りをうつ。
すると、寝言で俺の名前を呼んだ。
「明人…」
その言葉で目が覚め、すぐに美佐樹のおっぱいから手を離す。
「はぁ……はぁ…俺は…何てことを……!!」
美佐樹の身体を抱きしめ、改めて彼女の温もりを感じる。
「俺は必ず、デーモンからも…人間からも、美佐樹のことを守って見せる」
どうして人間を含めたのかは、この時の俺にはわからなかった。
それでも、そう言わずにはいられなかったのだ。
彼女のことを強く抱きしめていると、流石に起きてしまったのか、モゾモゾと身体が動く。
「明……人?」
「美佐紀……起こしてしまったか」
「えっ…えー!?あ、明人、どうして……!!」
俺が抱きしめていることに気づいて慌てる美佐樹を、さらに強く抱きしめる。
「美佐樹、聞いてくれ。……もしも、もしもだ。俺が人間じゃなくなったとしたら、おまえは俺を嫌いになるか?軽蔑するか?」
「そ、そんなこと、急に聞かれても……」
「頼む。今……答えを聞きたいんだ」
「明人……」
美佐樹は俺の顔を見るために1度離れると、じっと目を見てくる。
「明人は、あたしが人間じゃなくなったら嫌いになるの?」
「そんなことないだろ!俺はおまえがどうなってしまっても、ずっと……」
ここから先の言葉が出ずにいると美佐樹は安心したような笑みを浮かべて俺の胸に顔を埋め、背中に両手を回したきた。
「なら、あたしも同じだよ。例え明人が悪魔に成ったとしても、あたしはあなたを嫌いになんてならないわ。だって……あなたは、あたしにとってかけがえのない――んっ!」
俺はもう、自分の中の獣とは違う本能に耐えられず、美佐紀の顔を後ろから抑えて唇を奪った。
彼女は初め目を見開いて驚いたものの、俺の背中にしがみつくように抱きしめてきて、目を閉じて意識を唇に集中した。
「んむっ……んっ…んちゅ……んんっ!」
右に左にと頭を動かし、お互いの唇の感触を確かめあう俺と美佐樹。
1度、お互いに頃合いを見計らって唇を話してお互いの顔を見る。
美佐樹の顔は、頬を赤く染めていて、少し恥じらっているように見える。
その表情がとても、いとおしく思える。
「こんなことして……もう『家族だから』なんて言い訳できないじゃない」
「……あれ、言い訳だったのかよ?」
「だって……あなたのことが好きだからなんて言っても、信じてくれなかったでしょ?」
「そう……だな。でも、いまの俺なら信じられる気がする。……俺も、美佐樹のことがずっと…」
そう思っていたから、俺のことで巻き込まないように素っ気ない対応をしていた。
そう思っていたから、俺は美佐紀を遠ざけようとしていた。
そう思っていたから、俺は彼女を自分から離そうとする度に心が痛くなったんだ。
でも、もうそんなことは考えられなくなった。
俺は美佐樹を守る。
美佐紀と共に生きたい。
デーモンとか人類とか、そんなものはどうでも良い。
ただ、俺は……今目の前に居る大切な美佐樹だけを守りたい。
「美佐樹……俺は、ずっとおまえが好きだった」
「あたしもだよ……明人のことが好き」
俺たちはもう1度熱いキスを交わした。
その時、俺の頭の中に声が流れてきた。
〈そうだ。俺もそうすれば良かったのだ。醜い人類の全てを守ろうなどとは思わず、美樹1人を……大切な人だけを守り続けていれば……何もかもを無くすことにはならなかった〉
原作のデビルマンの不動明は、人類全てを守ろうとして全てを失った。
この話、デビルマンリボーンの内海明人は幼少の頃に差別を経験し、美佐樹を始めとした大切な人だけを守ることを選んだ。
この選択に救いはあるのか……。
ちなみ、早期に明人と美佐樹を恋人同士にしたのは、彼にとってのかけがえのない者が何なのかを、あの悲劇が起こる前に気づかせるためです。
これによって、結末は変わるのか……。