DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
共存の園の本部の中に通され、客間に案内されるジュン。
そこには大きな長テーブルがあり、肘掛けの付いた椅子に座るように促された。
黒崎も対面するように座り、彼女に笑顔を向ける。
「会えて嬉しいよ、ジュン。5年ぶり……かな」
「……そうね。あなたが本当に私の知る『黒崎あおい』なら、5年ぶりになるわ。だけど―――」
「死んだと思っていたから、信じられない?」
思い詰めた表情をするジュンの言葉を先読みするかのように、黒崎は言った。
彼は召使いが置いたグラスの水を飲み、喉を潤す。
「大丈夫だよ、ジュン。俺はこの通り、生きている。ちゃんと、心は俺のままでね」
「……」
「昔のことを負い目に感じているなら、気にしなくても良い。君のおかげで、今の俺は居るんだから」
額から汗が滲み出てくるジュン。
彼女が感じているのは、過去の自分が犯したことによる恐怖。
目の前に居る存在に対する不信感。
「あおい……本当に、あなたはあおいなの?」
「見たまんまだよ。まだ信じてくれないのかい?あんなに、愛し合っていた仲なのに」
当時のことを思い出しているのか、黒崎は不気味な顔で唇を舐める。
ジュンはその顔に虫唾が走り、怒りの表情を見せる。
「愛し合った?私を騙して弄んだの間違いでしょ?」
「まだあの時のことを根に持っているのかい?俺は確かに君のことを愛していたよ。独占欲が強いんだ、知っているだろ?」
「わかっているわよ。あなたの悪魔のような本性をね」
悪魔と言うワードを聴き、黒崎は口を押えて笑う。
「クククッ、このご時世に悪魔という言葉が出て来るとはね。俺は悪魔のように人を殺したりはしないのに」
「あなたは人の心を殺してきた。その事実からは目を背けるつもり?」
「そんなつもりはないさ。俺はただ愛に飢えているだけ。心を愛で満たしたいだけなんだ。ジュン……君が一番、俺のその欲を満たしてくれたよね」
そう言って、黒崎は懐から数枚の写真を撮り出してジュンに見せた。
その瞬間、彼女は血相を変えて立ち上がって黒崎に迫った。
「あなたって人は、まだそんな写真をっ…!!」
怒りが抑えきれず、身体の形状が変わって服が千切れていき、デビルマンレディーの姿になり、爪を立てて黒崎を引き裂こうとする。
しかし、それは軽々と手首を掴まれて止められてしまった。
「なっ!?」
「懐かしいなぁ、その姿。……時々、古傷が痛むんだ。君と同じように悪魔の力を手に入れても、この傷だけは消さないようにしているんだ」
黒崎は上半身の服を脱ぎ、胸に残っている引っかき傷の痕を見せる。
それを見て、ジュンは絶句した。
「やっと、信じてくれる気になったようだねぇ。嬉しいよ。俺はどんな君でも受け入れる。君が悪魔になったのなら、俺も悪魔になる。それが……愛だろ?」
黒崎が右手をかざせば、ジュンは後ろに吹き飛んでしまう。
「んぐっ!!」
壁を足場にし、膝を曲げて力をためては黒崎に再度突撃するジュン。
身体能力で言えば、デビルマン状態のジュンの方が黒崎を上回っている。
しかし、突き出した拳は彼に人差し指で止められてしまった。
「どうしてっ…!?」
「こんなものじゃないだろ?あの時の君は、もっと俺に愛を刻んでくれたじゃないか!!」
ジュンの首を掴み、地面に叩きつける黒崎。
その腕は紫色に染まっており、鱗に覆われた剛腕になっている。
「がはぁあ!!」
「それとも、俺が強くなり過ぎたのかなぁ?」
首を徐々に強く締めていき、呼吸困難になるジュンは変身が解け始める。
「ぐぅ!あっ!がぁ!!……っ!!」
抵抗しようにも力が入らず、デビルマン状態から人間の全裸の女になり、ジュンは気を失ってしまった。
彼女を両手で抱え、黒崎は召使いに声をかける。
「『食事』の準備をしてくれ。久しぶりに運動をしたせいで、空腹なんだ」
「承知しました。1129番と4649番を用意させます」
意識を失ったジュンの頬を舐め、黒崎はそのまま奥の部屋に消えていった。
(やっと手に入れた……ジュン。もう、君をどこにも逃がさないからね)
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了は何か嫌な予感がして仕方が無かった。
時間はもう夕方を過ぎ、夜になろうとしている。
しかし、一行にジュンからの連絡が無いのである。
共存の園についてのデータに目を通しても、何も視えてこない。
本当に人間とデーモンの共存を実現させようとしているのか。
怪しい部分が見えないと言う事が、逆に不安を募らせる。
「それにしても、この数の変動が……妙なんだよなぁ」
冬夜が不意に呟いた。
「どうした?冬夜」
「了さん、教団の信者の数の変動の仕方……おかしくないですか?」
信者の数についてのデータを見せられると、了は目を細めた。
教団は1か月の上半期に信者を多く募り、その数は下半期には半分以上減っている。
それは何を物語っているのだろうか。
「信者が1か月以内に大量に減る……か。信仰を強要され、逃げ出したのか?」
「宗教ってそんな所ありますよねぇ。勧誘を断れなくて参加したってこともあるし」
「そうだな、しかし……。冬夜、サイコジェニー、他のデーモンやデビルマンと協力して、元信者の行方を追ってくれ」
「え!?そう言われても……」
<了解しました。お任せください>
困惑している冬夜の隣で、サイコジェニーが首を垂れる。
「え?え?ジェニーさん、何か手でもあるの?」
<私を誰だと思ってるんですか?こんなことは赤子の手をひねるより簡単です>
「えぇ……マジ?」
いまいち信用していない冬夜と共に、サイコジェニーは部屋を出て行った。
また精神操作や催眠術を使うつもりなのだろう。
了はスマホを胸ポケットから取り出し、ジュンに電話をかける。
しかし、彼女は一向に出ない。
「……ジュン……」
彼女に何か危険が及んでいるのであれば、了は何が何でも助けに行こうとするだろう。
だが、今の了にはサタンの力を使う余裕はない。
もしデーモンが相手ならば、人間の使う銃火器では通用しない。
了は机の下に置いてあるベルトを手に取り、じっと見る。
「かくなる上は……これを使う他ない……か」
それはデビルマンに成れる素質がある者のみが身に着ける物。
了の身体は人間の男性のものなれど、堕天使の力がそれを阻まないとも限らない。
「明……君は俺の覚悟を試そうとしているのか?」
親友の名を口にしながら、了は静かに目を閉じた。
捕らえられたジュンと、彼女を欲する黒崎。
了は彼女を救うことができるのか!?
そろそろ、了さんも準主人公に昇格なる……かも!!