DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
部下には何も言わず、ベージュのコートに腕を通せばアジトであるマンションを出る了。
向かう場所は『共存の園』の本部。
確実に罠があることだろう。
しかし、彼には向かわなければならない理由がある。
サングラスをかけては愛車に乗り、昇り切っていない朝日をバックにアクセルを踏んで走り出す。
助手席には、ショットガンなどの銃火器を護身用に置いている。
そして、もしものための道具も持ってきてある。
「今の俺でどこまで太刀打ちできるかはわからない……。しかし、何が何でも成しとけなければならないことが、俺にはあるっ…!!」
しばらく車を走らせていると、カーブミラーに黒い数体の影が映る。
それが彼にとって良くない者であると気づくのに、そう時間はかからなかった。
<ヒャッハー!!コンナトコロニ命知ラズノ獲物ガ居ルゼ!!ドウスル、兄弟?>
<聞クマデモネェダロ兄弟!!速攻、狩ルニ決マッテルダロ!!>
背びれに刃があるトカゲのデーモンが前に回転し、2体が車に高速で迫ってくる。
了は不機嫌に舌打ちをし、左手でハンドガンを握っては後ろに銃口を向ける。
説得している時間はない、愚かなデーモンには血の報復を受けてもらう。
「急いでいるというのに……。くだらないことで時間を取らせるな!」
左手に意識を集中させると白く光りだし、ハンドガンの引き金を人差し指で引いた。
すると、発光した銃弾が銃口から飛び出しては2体のデーモンの身体を貫通した。
サタンの力を銃弾に集中させたのだ。
そのままデーモンは動かなくなったので、前を見て運転に集中しようとするが、次は前方に数十匹のコウモリ型の下級デーモンが現れる。
今の銃声で寄ってたかってきたか。
「面倒な…!!」
アクセルを踏んだまま両手にハンドガンを握り、コウモリどもに向かって乱射して真正面から突っ切る。
力が落ちているとはいえ、サタンの実力は健在。
その圧倒的な差を前に、愚かにも襲おうとしたデーモンは血の制裁を持って沈んでいく。
「早朝はまだデーモンの時間か……。黒崎はそれを計算して、こちらに連絡してきたと見て間違いないな」
直進していく先々で、目的地に近くなればなるほど、雑魚のデーモンから中級の悪魔に変わっていく。
了の進路を塞ごうとしていた所から、共存の園の信者だろう。
「まるでゲームをしているようだ。気分の良いものではないがな」
最後に巨大な蛇のデーモンの額をショットガンで打ち抜き、黒崎のアジトの正門に車を衝突させてぶち破り、内部に突入した。
ショットガンを両手で持ち、まだ薄暗いアジトの中を進んでいく了。
その中で、血と肉が腐ったような異臭がする。
そして、何か硬い物を踏んでボキッと折れる音が聞こえた。
足元を見ると、そこにあったのは白い骨と骸骨だった。
床には大量の血が所々に広がっており、バラバラになった白骨体が転がっている。
白骨化したわけではないのは、その付近に散らかっている肉片からわかる。
「これは……まさか!?」
額から冷や汗が流れる了。
(共存の園の実態は……。そういうことだったのか)
黒崎の言う共存は歪んだ思想の下にあり、了とは異なるものだったのだ。
血の跡を辿っていくと、下へと降りる階段を見つける。
「地下……。何故だろうか、俺はここを降りなければならない気がする」
身体が吸い寄せられるように地下への階段を降りていけば、長く伸びる影が見えてきては男の声が聞こえてくる。
「良い……良いよぉ……やはり、君は最高だっ……!!」
パンっパンっパンっと何かを打つ音が空間に響く。
了が階段を降り終えると、その音の正体がわかり拳を握って震えだす。
「……おまえも、そう思うだろ?アスカ欄……いや、飛鳥了?それとも、サタンと呼ぶべきかな?」
声の主……黒崎はこちらに身体を向ける。ジュンの身体と共に。
彼女の目に光はなく、流す涙も枯れ切ったかのように生気は感じない。
「俺はジュンを前の世界同様に愛している……。さぁ、目に焼き付けろ。俺とジュンの愛し合っている光景を!!」
黒崎は了の目の前でジュンを後ろから抱きかかえ、繋がっている肉棒とオマンコを見せつけるようにして腰を振り続ける。
「クククククッ、ジュンは俺のものだ。もう、おまえには渡さない!!」
絶望しているジュンの瞳は、了を映すことができない。
彼女の痛々しい姿を見て、了は2丁の拳銃を黒崎に向けた。
「……ジュンを離せ。俺の怒りがこれ以上増幅しないうちにっ…!!」
「断る。おまえには渡さないと言ったはずだ。……ふんっ!」
左腕を前に出して拳を握る黒崎。
その動作に合わせ、地面から巨大な尾のようなものが数本伸びては了に襲いかかる。
それを無表情で拳銃で射貫くが、すぐに修復して再度迫ってくる。
全て紙一重で回避して後ろに下がるが、その先には黒崎1人が居て腕を軽く振られただけで壁まで飛ばされてしまう。
「うがっ!!……その攻撃、猫にできる芸当ではないな」
「私はもうノワールではない。もう、おまえに負けることはない!!」
黒崎あおいは、前の世界でデビルマン・ノワールとして戦っていた。
ノワールは猫の姿をしたデビルマンだったが、その能力は速さと身体能力を劇的に強化するものだった。
今のように地面から尾を出して襲うものではない。
ましてや、ここまで腕力があるがない。
地面から伸びている尾に身体を絡まれているジュンを見て、黒崎は狂気の笑みを見せる。
「愛するジュンのために、おまえはここで……殺す!!」
「ここで死ぬわけには……いかない!!」
ショットガンを構え、黒崎に向かって連射する。
それが全て当たる直前に、尾が彼を庇う。
(サタンの力が宿った弾を、完全に防いだ!?……力を使い過ぎて、威力が弱まっているのか)
黒崎を撃とうとすれば、尾がそれを防御する。
尾を先に駆除しようとすれば、自己再生してからの黒崎本人の攻撃に合う。
今の黒崎あおいは前の世界の取るに足らない悪魔の女ではない。
この世界では狂気に満ちた強力な悪魔にして化け物だ。
「私はジュンを愛するために、力を手に入れた。天使は祝福してくれたよ、私とジュンの愛をぉおお!!」
はぁあああっと身体から力を放出させる黒崎。
その姿は上半身は筋肉質な猫の身体になり、足は無数の猫の尾になった異形のものとなる。
「これが天使より賜りし我が新たなる肉体!!私はデビルマン・アトロシアスだ!!」
アトロシアス。
強力な悪魔として記憶している。
その戦い方も、本来の悪魔のそれと同じだ。
高らかに笑うアトロシアスは、数本の尾をジュンの身体に巻き付かせてはいたる部位を尾の先で愛撫でしていく。
「っ!!あっ!……あぁんっ!!んぁあ!!」
「どうだ!?ジュンの感じる所は私が一番わかるんだ!!愛の前に消えろ、サタン!!」
無数の尾が襲いかかり、それを銃で撃ち落としていく了。
しかし、尾は次々に再生しては増えていき、そのうち弾切れになった。
「しまっ――——がはぁあ!!」
尾が四肢と首を巻き付き、壁に押さえつけられる。
サタンの力を解放しようにも、先ほどの銃を使った攻撃の時に力を消耗し過ぎた。
今や了に自ら変身する力は残っていない。
アトロシアスが了に近づき、両手で何度も殴打してくる。
「がはっ!ぐぶっ!うぐっ!ぶへぁ!!あがぁ!!」
「天に変わり、私が罰を与える!!さぁ、殴殺刑だぁあ!!」
止まることを知らない怒涛の連撃を身体中に痛みを感じながらも耐える了。
意識が朦朧とするなか、目を開けるとある錯覚を覚えた。
(何だ、これは……動きが……ゆっくりと……している……?)
決して攻撃が避けられるわけではないが、アトロシアスの拳が迫る速度が段々とゆっくりに感じてきている。
そして、了の顔の前で止まった。
拳だけではない。
アトロシアスの身体や尾の動きが全て止まったのだ。
ジュンの動きも指先まで止まっている。
(……時間が……止まった?)
『その通りだ、サタン……いや、飛鳥了』
頭に声が響き、了の目の前、アトロシアスの背後に巨大な青く輝く歪な虚像が映る。
(おまえはっ……!!)
『飛鳥了、私はあなたの選択を待っていた。堕天使の力を持ちながら、あなたは人間の飛鳥了として生きる選択をした。その先にあるのは、新たなる可能性。選択者の特異点の存在が創り出した、新たなる未来。それが私を生み出した……』
虚像の形がはっきりとしだし、青い大きな獅子となる。
(俺の……新たなる未来……。おまえは一体……)
『私はバアル。神への反逆を決意したあなたが生み出した、原初の悪魔である。別次元より、可能性と選択の導きにより参上せしもの』
(バアル……そうか、俺が生み出した悪魔……)
『私の力をあなたに献上いたします。このバアル、あなたを守るための鎧となり、真の魔を撃つための剣となりましょうぞ』
獅子の虚像は姿を変えて彼の腰に巻き付きベルトの形となり、青く光りだす。
そして、尾を吹き飛ばすことで了を解放した。
時は動き出す。
「っ!?サタン……何故、我が尾の拘束が!?」
「……俺はまだ死ねない。償いはまだ、終わっていないのだから!!」
コートを翻し、中央に獅子の顔をした紋章があるベルトを出す。
そして、全身から白いオーラを発してはそれを自身の中央に集中させては消える。
「これで、サタンの力はしばらく温存できる……。もう人間と変わらないか……。明……これは俺への皮肉か?まさか、今度はおまえが俺をデビルマンにさせるとはな……」
友から受け取ったベルトの中央の獅子に手をかけ、口を開けて上下に回転させては口を閉じる。
「黒崎あおい……ジュンを傷つけたおまえを……俺は絶対に許さんっ!!悪魔の力よ、俺に力を貸せ……!!」
身体が青く発光し、背後に獅子の虚像が映って吠える。
「デビルっ!!」
了を青い風が包み、それを右手で払うと青い異形の鎧を装着する。
青く輝く鎧は人型の獅子であり、フルフェイスのマスクは頭から2本の角を出した獅子の顔をしている。
その姿を見て、アトロシアスは距離を取る。
「何だっ……何なのだ、その姿は!?天使様からは、何も聞いていない!!そのような力があるなんて……知らされていない!!」
「当然だ。俺がデビルマンになるのは、この世界が初めてのことだからな。しかし、そんなことはどうでも良い。そんなことより……」
アトロシアスから了が消え、次の瞬間には背後から声が聞こえた。
「ジュンは取り戻させてもらった。あとはおまえに制裁を加えるだけだ」
後ろを見ると了が両手でジュンを抱えており、その背中からは4枚の青い翼を広げていた。
「サタァアアアン!!!!」
無数の尾が了とジュンに襲いかかるが、2人に触れる前に風化していく。
「今の俺はサタンではない。デビルマン・バアル!!新たなる神への反逆者だ。おまえの言う天使も、俺のことはもうわかるまい!!」
了には、アトロシアスの言う天使の正体がわかっていた。
サタンのことを理解している天使といえば、1人しかいない。
合わせ鏡のように生きてきたのだから。
バアルはアトロシアスに一瞬で距離を詰め、右腕の手刀で彼の身体を貫通させた。
「ぐがはっ!!……バ、バカなっ……!!」
貫通させた部分は高熱で溶けている。
発光している手が、アトロシアスの身体を溶解させたのだ。
「こ、これで終わると思うなっ……!!私は……私はぁあ!!」
「おまえはただの野獣だ。共存を謳っては信者を集め、俺を倒すために力を付けようとしたのだろう。人間を食い散らかした残りカスがあった。何が共存だ……ふざけるな!!」
床に青い魔法陣を展開させれば、中央からドクロの頭をしたコウモリが無数に出現する。
そして、アトロシアスに噛みついた。
それを見ては、バアルはジュンを抱えたまま後ろを向き、そのまま地上への階段に歩行を進めた。
「待て、飛鳥了!!私は……こんなところではぁあああああ!!」
「終わりだ。歪んだ愛を抱いたまま、この世界から消えるがいい」
バアルが静かに指を鳴らせば、コウモリが次々と爆発していきアトロシアスの身体が崩壊していく。
「ぶぎやぁあああああああ!!!!!」
その爆発は、アトロシアス……黒崎あおいの身体が灰も残らなくなるまで続いた。
「スカルバット・ボム……。ジュンを苦しめたおまえに対する、怒りを込めた鎮魂歌だ」
階段を上りながら、ジュンの顔を覗き見る了。
彼女の目と焦点が合う。
「……了……?」
「ああ、俺だ」
「……ごめん……なさい……。私……」
「謝るな、ジュン。君は悪くない……。君がどうなろうと、俺は変わらずジュンを愛している」
「……私もよ」
ジュンは脱力したまま了の胸に頭を預け、そのまま眠りについた。
デビルマン・バアル。
これはサタンではなく、人間として生きることを決めた了の新たなる力となった。
了さんが遂にデビルマン化したぁー!!!!
すっごく速足で終わらせてしまいました。
今回の飛鳥了編は、デビルマンレディーを読んでない人にはわからなかった話かもしれない。
次の話で飛鳥了編は終わりです。
そして、いよいよ、視点は主人公の明人くんに戻ります!!
今回の章で一番長い話になります!!