DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
了がバアルの力を手に入れてから数日が経った日。
共存の園は黒崎の死をもって壊滅したが、彼が行方不明ということで警察は処理はしたらしく、巷で有名な悪魔特捜隊の出番はなかったみたいだ。
ジュンの容態は日に日によくなっており、病院に見舞に行く度に元気な様子を見せてくれる。
今回起きた、世界の命運と比べれば小さな事件は了に小さな事実を突きつけた。
「天界が動き出していたのか……。それならば、あいつがこの世界に降りてくるのも時間の問題と見て良いかもしれない……」
黒崎あおいが転生したのは、天使の仕業だということは彼の発言からして推測できる。
そして、人間を転生させる権限を持つ天使は大天使以外にあり得ない。
脳裏に浮かぶのは、自身とは容姿が同じであるにも関わらず正反対の心を持つ双子の弟。
デスクの横に立てかけてある鏡を見れば、不意に彼は呟く。
「ミカエル……」
その名を口にした瞬間、了は自身の背後から殺気を感じて振り向いた。
それと同時に窓が割れて赤い鎧の悪魔が部屋の中に入る。
「まさか、おまえがここに来るとは思っていなかった。とうとう、俺の命を奪いに来たか?……アモン」
『サタン……』
フルフェイスのマスクで表情はわからないが、アモンの声は落ち着いていた。
敵意は感じないが、こちらに友好的というわけでもない。
すぐに戦闘になるという殺伐とした雰囲気ではないので、了はアモンに問いかける。
「……何をしに来た?目的は何だ?」
『伝えるべきことを伝えに来た。大切なことだ、この世界にとっては重要なことだろう。このことを認識した瞬間、まず最初に貴様に伝えなければならないと思った』
アモンは了に鎧のきしみを鳴らしながら近づき、彼を見下ろしては静かに呟いた。
『バイオレンスジャックの魂が消えた』
視界が一瞬、黒にフェードアウトしたように感じた。
目を見開き、了は聞き返す。
「ジャックが……明の魂が……消えた…?」
『そうだ。……やはり、あの男が不動明だったのだな』
納得したように言うアモンだが、どこか憂いを残しているかのように唸る。
「何故、明がまた消えなければならない!?」
『落ち着け、サタン!!冷静になれ。俺は今、貴様への殺意を押し殺してここに居ることを忘れるな』
それは了が1度でもアモンの意にそぐわない行動をすれば、すぐにでも殺しに来るということを示唆している。
「……何故、明が消えたことがわかったんだ?」
『俺と奴の意識は常に繋がっていた。それで奴の指示を受け、俺は行動していた。精神体であるがためにこの世界に干渉できない奴の代わりに戦い、監視する者としてな。しかし、その繋がっていた意識が途切れた。最期に奴が俺に残した言葉は『了、すまない。明人に全てを託す』だった』
(明人に全てを託す……か。明、おまえは最後まで、この世界の自分のことを……)
明の消滅に憂いていると、アモンが言葉を続ける。
『内海明人は、不動明のことを知っているのか?』
「いいや、断片的にしかわからないはずだ。明がアキトに接触していなければ、知る由もないはずだ」
『そうか、それは幸運だったのかもしれんな。本来、会ってはならない存在同士だ。前世の者とこの現世の者が接触してしまった場合、何が起こるかは想像もつかないからな』
「しかし、何かしらの影響を世界に与える可能性は高い」
了が危惧していたことの1つだ。
そして、明自身も注意を払っていたのだと思う。
前世と現世で、同じ魂を持つ者たち。
その2つが接触することは、この世界も望まないだろう。
「伝えてくれたことには感謝する。しかし、もうおまえに構っている余裕がないことも理解してくれ。こちらも焦っているんだ」
『話せ。場合によっては手を貸さないでもない』
アモンの提案に、了は不信感を強める。
「何故だ?おまえは俺のことを恨んでいるはずだ。協力するなんて言い出すのは想定外だ」
『俺にも救わなければならない命があり、それはおまえへの憎しみにも勝る。それだけのことだ』
その命に対して、1つだけ心辺りがあった。
「アモン……おまえは、加藤美佐樹に特別な想いを抱いている。違うか?」
美佐樹の名前を出すと、アモンの方が一瞬震えだす。
『あの女は……加藤美佐樹は、牧村美樹の転生者だ』
「っ!?おまえが、それを知っているとは思わなかった。しかし、おまえと美樹ちゃんに何の関係があったんだ?」
『……裏切り者の名を受け、全てを捨ててでも戦って守りたかった女だ』
その声には悲しさを感じ、了はそれ以上は聴かないことにした。
しかし、これで実感した。
この勇者アモンは、了がこれまでに会ったどのアモンとも違う存在だと。
「おまえは知っているんだな?美樹ちゃんが前の世界で死んだことによって、黙示録が起きたということを」
『……どうだろうな』
はっきりしない態度を取るアモンだが、了はそれを肯定だと受け取った。
「聞ける機会があれば聞きたいと思っていたが、おまえはデビルマンなのか、それともデーモンなのか?」
本来ならば、デーモンの意識のまま人間の身体を乗っ取ったのであれば、その身体はそのデーモンの異形の姿になる。 しかし、
『誰も知らない。誰にも知られちゃいけないのさ、俺の正体はな』
「おまえの正体……だと?」
聞き返すと、『深入りするな』と言ってアモンは紅の翼を広げた。
『俺は加藤美佐樹を死なせないためにできることをする。その後は貴様と戦うことになるかもしれんな、サタン』
「わかっている。その時は相手になるさ」
『……しかし、時が来れば……おまえではなく、
翼を羽ばたかせ、窓から外に飛んでいく。
「アモン……今回は、俺たちの味方だと思ってもいいのか……?」
真剣な顔で了が聞けば、アモンはフンっと鼻を鳴らして静かに答えた。
『ふざけるな』
紅の悪魔はそれだけ言い、マンションから離れていき、その姿が見えなくなった。
了はその後ろ姿を捉えていた時に呟いた。
「勇者アモン……おまえは一体、誰なんだ?」
アモンの謎が深まる中で、了はスマホを胸ポケットから出して電話をかけた。
『もしもし、了さん?』
「ああ、アキト。急にすまない……。長期休暇は満足したか?」
『……まぁ、それなりに』
「なら、良かった。そろそろ、森の中のバカンスは飽きてきたんじゃないかと思ってね」
『え?じゃあ、もしかして……!?』
明人は察したのか、少し驚いたような声で呟く。
「戻ってきてくれ、アキト。そろそろ、運命を壊しに行く時だ」
もはや、内海明人をガーラの森で身を隠させるのも終わりだ。
これから、神への反逆を始める。
これで飛鳥了編は終わりです。
アモンさんが一体何者なのか、予想している読者さんも多いのではないでしょうか。
『ただの』アモンさんじゃないことは確かですねぇ。
そして、遂に次からは明人編に戻ります!!
多くの読者さん、お待たせしました!!
遂に!満を持して!形は違えど、『あのシーン』が出てきます!!
明人くんは黙示録の運命を変えることができるのか、どうぞご期待ください!!
(ハッピーエンドにするかバッドエンドにするか、アンケート取ってみようかなぁ……)