DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
森を出る日、ガーラさんと子どもたちが見送りに出てくれた。
「世話になったな、ガーラさん」
<何、気にするな。子どもの面倒を見ることには慣れている。それが2人増えたところで大差はない>
「が、ガキ扱いかよ……」
頬をかきながら呟いて隣を見れば、美佐樹が寂しがる子どもたちをなだめている。
人間とデーモンでも、こうやって心を通わせることができるのだということは証明された。
共存するという考えが理想から現実に変わる時が来るならば、俺には一体何ができるのだろうか。
戦うこと以外に、デビルマンにできることがあるのだろうか。
ダメだな。そんな先のことを考えるよりも、今は目先のことに集中しよう。
電話で了さんも言っていた。
運命の日は刻一刻と近づいている。
世界の運命は修復され、前の世界と同じこと、あるいは似たような状況になる可能性は高いと。
それは前世界の美樹さんの悲劇が、美佐樹によって繰り返されるかもしれないということだ。
そのことは当然美佐樹にも話した。
正直、俺は美佐樹を森の中に残していくつもりだった。
だけど、彼女は俺と共に街に戻ることを決めた。
死ぬかもしれない覚悟を決めながらも、俺を信じて側に居ると言ってくれたんだ。
俺も生半端な覚悟では、この先の戦いを生き残れない。
「じゃあ、ガーラさん。そろそろ、俺たち行かないとなんで」
<うむ、また何かあったら来るが良い。サタン様にもよろしく伝えておいてくれ>
「はい」
俺と美佐樹は森を出て、迎えの車が来る合流地点に向かう。
正直、自我が無かったとはいえ俺が破壊した街を見るのは相当覚悟が要る。
ゼロの力が暴走したときの脅威を、自分の目では実際にはまだ見たことがないからだ。
それでも、受け入れなければならない。
例え誰に恨まれようとも、俺には守らなければならない者が居るのだから。
美佐樹が俺の手を握り、そのまま引いて歩いてくれた。
「行こう、明人。何があっても、あたしが付いてる」
「美佐樹……。ああ、とても心強いぜ」
何かを受け入れるには無意識に、大なり小なり覚悟が必要だ。
美佐樹だって俺以上に怖いはずなんだ。
俺は自分の運命と向き合わなければならないんだ。
そして、神によって決められた運命を破壊する。
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美佐樹のペースに合わせて休憩を挟みながら歩き、合流地点に到着した。
森と街の中間地点であり、見晴らしが良い場所でデーモンが来てもすぐに対応できる。
一応、腰にベルトは巻いてあるので瞬時に変身はできるようにしてある。
風が強く、髪とスカートの裾を押さえる美佐樹。
「風強いねぇ……お迎えって何時くるんだろう?」
「さぁな。まず、何で迎えに来るのかも聞かされてねぇし」
了さんからは『迎えを寄こす』としか言われていない。
誰が来るのかも聞かされていないし、何で来るのかも聞いていない。
了さんだったら車だろうけど、ジェット機で来ても驚かない自信がある。
もしかしたら、巨大なデーモンに乗ってくる可能性だって……。
変なことを考えていると車の走行音が聞こえてくる。
「迎えって、あれ?」
「あれって……そうだよな」
美佐樹と同じ方向に視線を向けると、白いリムジンがこっちに近づいてくる。
もしかしなくても、こんな所にリムジンに乗ってくる人なんて1人しか思いつかない。
車が止まり、中央の社窓が開いて了さんが「やぁ、2人とも」と爽やかな挨拶をしてきた。
「了さん、このリムジンの出迎えは何ですか?」
「我らがエースを迎えるのには、これでも御不満かな?」
「目立ち過ぎでしょ、敵に狙われたらどうするんですか」
敵とはもちろん、デビルマン軍団のことだ。
白藤が了さんをこのまま野放しにするはずがない。
了さんは俺と美佐樹を見ると、ドアを開けて中に入るように促す。
「その敵について、話すべきことがある」
リムジンが街に向かって戻る中で、サイコジェニーが紅茶を入れて俺と美佐樹に出してくれた。
了さんは俺と美佐樹を見る。
「君たちが森に居る間に世界は大きく変わったよ。最悪な方向にばかりな」
呆れ顔でタブレットを渡され、世界の情勢を確認する。
サタンに反旗を翻すデーモンの襲撃。
悪魔特捜隊によるデーモン狩り。
デーモンと人間の戦いの最中に発生する謎の黒い炎と巨大な三頭の猟犬の出現。
デーモンは日本だけでなく世界中で暴れており、その度に人間とデーモンの衝突は激化していく。
そこに愚かな者たちへの裁きだとでも言うように、デビルマン軍団が姿を現す。
「こんなことが起きていたなんて……」
「人間もデーモンもデビルマンも、互いのことを破滅させようと躍起になっている。この三つ巴の波を起こしているのは、おそらく……」
「神……もしくは、神の奴隷だ」
前世界の記憶を見た者と持つ者は、共通の結論に辿りつく。
前世界で神は人間もデーモンも破滅させ、世界をリセットしようとした。
特異点という異質な存在に気づいた今、再度リセットさせようとしているのだろう。
そして、この混沌はまだ始まりに過ぎない。
「特異点の力を持ってしても、運命は少しずつ前の世界のやり直しをしようとするだろう。逆にそれは、敵の一手がわかると言っても過言ではない。……奴ならば、神のシナリオ通りにことを動かそうとするはずだからな」
「……まるで、次の敵が誰なのかを知っているような口振りですね」
了さんは憂いを含む笑みをした。
「サタン……いいや、堕天使ルシファーの双子の弟、大天使ミカエル。敵は地上だけじゃないと言う事だ」
神の使徒、大天使ミカエル。
電話での了さんの一言から、この時が来ることはわかっていた。
敵はデビルマン軍団だけではない。
いや、もしくはデビルマン軍団とて真の敵の一部かもしれない。
本当の戦いへの序章が始まったことに対して、俺は息を飲んで受け入れた。
了の元に戻った明人は、新たなる敵の存在を知った。
ミカエルの策略とはいかに……。
運命への反逆者と神の使徒との戦いが、本格的に始まろうとしている。