DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
街に戻ってから会うのを避けていたわけじゃない。
いつかは向かい合わなければならないことだと思っていた。
崩壊した世界の中で、あの人たちはどうやって生き残ってきたのだろうか。
美佐樹にも真実を伝えた今、まだ伝えられていない人たちが居る。
今日こそ、俺は……。
家の前について深呼吸をしていると、隣に居る美佐樹が首を傾げて俺の顔を見てきた。
「どうしたの?緊張してる?」
「ま、まぁな。……どんな顔して会えば良いんだって思うし、会わせる顔があるのかも微妙な所だし…」
「な~に言ってんだか。さっさと帰るよ」
俺の不安を気にも留めず、美佐樹は玄関のドアを開けた。
「たっだいま~!!」
元気に挨拶をすれば、リビングから懐かしの3人が出てきた。
「おぉ~、姉ちゃんおけぇり~!!」
久しぶりに見る姉を見て、孝ちゃんが抱きつく。
「お帰りなさい、美佐樹……明人くん」
「2人ともやっと帰ってきたか。心配していたんだぞ?」
おじさんとおばさんが美佐樹の次に俺を見る。
その目は温かくも優しさを帯びている。
今はそれがとても辛い。
「……お久しぶりです」
リビングに通され、お茶とお菓子を出されてこれまでの話を聞いた。
デーモンの襲撃はこの街では少なく、時々悪魔特捜隊が見回りに来る程度だと言うこと。
常に特捜隊が巡回しており、1日に多くの人間がデーモンではないかと言う疑いをかけられて連行されると言うこと。
その中には激しい尋問に耐えられずに死んでしまった人間も居ると言うことも。
「幸い、我々は疑われないように立ち回っていられるが、家族の中に1人でも悪魔が居るのではないかと疑われたが最後だ。外に出るにも細心の注意を払わなければならない、嫌な世の中になったものだ」
「悪魔が出て来てからは、みんなが自分以外の誰かがデーモンではないかと疑っているのよ。自分に気に入らないことがあると、すぐに相手のことを悪魔だと思ってしまう始末だわ」
誰かが悪魔ではないかという疑いに満ちている。
恐怖がまた別の恐怖を生んでしまっている。
それならば、俺がここに居ることは危険だ。
了さんの居る街とは違い、加藤家の居るこの町は悪魔特捜隊の力が強い。
俺がデビルマンであることを他の人間に知られた場合、言うまでもなく……。
運命の日が近い今、俺自身の行動も注意しなければならないだろう。
話を一段落聞き終え、次は俺から今までのことを話さなければならないと思ったその時、おじさんがソファーから立ち上がってリビングを出ようとする。
「明人、少し2人で話さないか?」
「えっ……あ、はい」
おじさんの表情は真剣だった。
俺はおじさんについていき、彼の部屋に通された。
その部屋には猟銃が置かれており、熊の毛皮や鹿の頭などが飾ってある。
「君と話すのは久しぶりだな。元気にしていたか?」
「ま、まぁ……それなりに」
「それなり……か。大事な娘を散々連れまわしておいて、その返答は聞き捨てならないな」
「す、すいません……」
ぎこちない俺の返答が気に入らなかったようだが、おじさんの厳格な表情は緩くならない。
「君が私の知る明人で安心しているよ。しかし、それで不安なところもあるがな」
「……何の……話ですか?」
「美佐樹との仲のことだ。隠そうとしていたみたいだが、この際はっきり言おう。私は君になら、娘を任せられると思っている」
「お、おじさん!?もしかして……いや、いつからぁ…」
「半年前から様子がおかしいとは思っていた。私の目も節穴ではないからな」
腕を組んで目を細めるおじさん。
その目からは強い信念を感じる。
「明人……私たちにもしものことがあれば、娘と息子のことを頼めるのは君だけだ。その時は、何があっても守ると誓ってくれるか?」
「もしもの時って……そんな物騒なことを言わないでくださいよ」
「ただの保険だ。そんなに気に病むな」
この人には、本当のことを言わなければならないだろう。
俺のことを信頼して、美佐樹と孝ちゃんのことを託そうとしてくれているんだ。
「あの、おじさん……。俺はあなたたちに伝えなければならないことが――——」
加藤家の人たちを死なせるわけにはいかない。
俺がデビルマンであることや、特異点の力を持っていること、そしてこれから起こるかもしれないことを全て伝えなければ――――。
俺が真実を伝えようとした瞬間、おばさんが血相を変えて部屋に入ってきた。
「あなた、悪魔特捜隊が来たわ!!」
「何!?まだ私たちは疑われているのか!?」
悪魔特捜隊……だと?
並々ならぬ不安が、頭をよぎった。
-----
廃墟のデパート内の一室に、多くの人間が集まっている。
いや、今は人間の姿をしているだけだ。
彼らは悪魔の身体を持ち人間の心を宿す者、デビルマン。
ツバサはその部屋に入り、皆に見えるように中央に立つ。
彼女の前には、白いタキシードを着た男が腕を組みながら立っている。
「君が戻ってきたということは、内海明人に接触できたのだろう?……話してみてどうだった?」
「……彼は私とは違うと言っていたわ。でも、それも揺らいでいる。悪魔の道を選ぶのも時間の問題ね」
ツバサの余裕な笑みを見て、男は心の中で笑みを浮かべる。
「内海明人は今、操られている。君たちも知る卑劣なサタンの野望のためにな。彼の洗脳を解くためにも、私たちは前世界のことを再現しなくてはならない。我らが真の救世主、内海明人の目を覚まさせるために…ね」
「わかっている。彼を惑わす毒牙を排除するためにも、私たちは計画を進めなければならない」
頭の中に美佐樹の顔が浮かぶ。
「邪魔だな、あの娘も、サタンも。内海明人は、私にこそ相応しい」
歪んだ愛が憎悪によって深くなる。
その憎悪を煽る者が居る。
そして、その者の掌の上で踊るデビルマンたち。
「全て、私に任せれば良い。君たちの救世主は私が解放するよ」
その男の顔はピエロの仮面で隠れている。
ツバサは男のことをこう呼んだ。
「頼んだわよ、ミカエル」
運命の日は刻一刻と迫っている。
デビルマンたちを利用して何かを企むミカエル。
加藤家に迫る悪魔特捜隊。
明人はある人物と再会する。