DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
おじさんと共に玄関に行けば、軍服を着ている大柄な男が手を後ろで組んで俺たちを見渡す。
「近所の者から通報があった。今日、妙な2人組の男女がこの家に居ると聴いた。……確かに前に来た時とは違い、男女が増えているな」
俺と美佐樹を見て、軍人は目を細める。
おじさんが俺たちの前に立つ。
「この2人は私の娘とその友人だ。あなた方が怪しむ必要はないだろ」
「それを決めるのは我々悪魔特捜隊だ。悪魔かそうでないか、調べさせてもらおう」
部下がおじさんを押しのけて美佐樹の腕を掴んでは無理矢理連れて行こうとする。
「いや!あたしは悪魔じゃない!!」
「そう言うのであれば、我々に証明して見せろ!!」
悪魔か人間かを見分ける方法があるのか?
わからないが、嫌がる美佐樹を見過ごせず、俺は軍人の手を離しては彼女を後ろに行かせる。
「1つだけ聞きたい。あんたたちは、どうやって悪魔か人間かを見極めるつもりだ?拷問でもする気じゃないだろうな?」
「場合によってはそれも辞さない。しかし、こちらも手荒な真似はしたくない。ご協力を願いたいものだな」
「あんたたちの尋問の方法が安全であると言う確証がない。そんなので協力できるはずないだろ」
お互いを睨みつけながら牽制し合っていると、後ろから頭の悪そうな細身の男が割って入ってきた。
その男を見た瞬間、軍人全員が敬礼した。
見た所、こいつがこの場での最高権力者だな。
「何をしている?さっさと連行しないか」
「はっ!申し訳ありません、隊長。しかし、この男が強情で……」
隊長と呼ばれた男は俺を睨みつける。
「貴様、我々に抵抗すると言う事は悪魔だと見なすぞ?」
「そんな先入観で悪魔だと決めつけられたら、あんたたちの気に入らない奴らは全員悪魔ってことになるぜ」
「悪魔出ないと言うのであれば、その証拠を示すが良い」
「それはお互いにできないだろ。現にあんたが人間じゃない証拠もないはずだ」
言い返せないのか、隊長は睨みつけたまま黙ってしまう。
やはり、悪魔と人間を見分ける方法は無いのか。
数人の部下が、俺に一斉に銃を向けてきた。
「抵抗するのであれば、貴様をここで銃殺する!!」
「へぇ、悪魔かどうかもわからない奴を殺すんだな?」
「我々の意志に従わない者は、悪魔に決まっている!!」
こいつ、もはや正常な判断ができていないな。
誰が悪魔なのかを見極めるつもりが、自己中な偏見によるものになっている。
美佐樹たちを後ろに下がらせ、俺だけが前に出る。
変身しなくても、銃弾で死ぬほど柔な鍛え方はしていない。
今にも戦闘が始まりそうな雰囲気になっている。
すると、その前に「待て!!」と聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「この声……まさか!?」
軍人たちが後ろを振り返ると、そこに居る男を見て目を見開いた。
「兜遊撃隊長!?」
兜甲牙。
俺が1度だけ戦ったことがある魔神だ。
そして、今では人類の希望を背負っている戦士。
甲牙は俺と軍人の間に立ち、彼らを見て目を細める。
「この男の処遇は俺に任せて、あんたたちはパトロールに戻ってくれ」
「し、しかし、この男は我々に抵抗を……」
「聞こえなかったのか?他を当たれと言ったんだ」
「っ……!!りょ、了解しました」
甲牙の威圧感に押され、悪魔特捜隊は家から離れていった。
それを確認してから、俺は甲牙と共に加藤家を出た。
その時にみんなから心配されたが、こいつなら大丈夫だと言い聞かせた。
「人類の希望の象徴がどうして、こんな辺境の町に来てんだよ?」
「ただの散歩だ。この町に来たのも、おまえに会ったのも偶然だ」
「……まぁ、おかげで助かった。職権乱用のような気がしないでもないけどな。……元気にしてたか?」
「そうだな。……不思議だな、この前まで目の仇にしていた相手が目の前に居るのに、敵意が湧いてこない。おまえに完膚なきまでに叩き潰されたかもしれないな」
「あんなのが勝負の内に入るかよ……」
俺と甲牙は互いに笑い、空気が緩和される。
「英雄への道は順調か?」
「どうかな、わかんねぇ。だけど、大切な者は見つけた。今はそれを守るために戦っている。それだけだ」
「その結果が、悪魔特捜隊の遊撃隊長か」
「名義だけだ。遊撃隊長って言っても、それほど自由なわけじゃない」
「そうか。頑張ってるんだな、おまえも……」
「おまえに救われた命だ。その使いどころもちゃんと考えてる」
「……救った自覚はないんだけどな」
俺はただ、こいつの歪んだ正義を破壊しただけだ。
それが大層なことに肥大化しているに過ぎない。
「最近、視野が広くなったつもりだ。そして、事態が最悪な方向に進んでいることに気づいた」
「……何があった?」
甲牙は一瞬話すべきかどうか迷う素振りを見せたが、意を決して口を開いた。
「悪魔特捜隊は、最初はデーモンを殲滅するために動いていた。だけど、その権力が大きくなればなるほど、その思想が歪んで行っている。人間に対する疑心暗鬼が酷くなり、今じゃ誤認して人間を殺していることも少なくない。そして、それを権力で揉み消しているつもりになっている。今じゃ組織を疎ましく思っている民間人も多いって聞くぜ。それに……」
「それに?」
「悪魔特捜隊は1枚岩じゃないかもしれない」
「……何?」
目を細めて聴くと、甲牙は俺に近づいて小声で話す。
「上層部は人間だろうとデーモンだろうとデビルマンだろうと、捕らえた者は全員殺すか実験材料にしようとしている。悪魔特捜隊に仲間を殺され、本部に何度も悪魔が攻め込んできてはそれも皆殺しにしている。組織はもはや、デーモンを殲滅させるために動いているわけじゃない。自分たちに逆らう者は全て抹殺するつもりだ」
「……それを知って、おまえはどうするつもりなんだ?」
「俺は気を伺っている。悪魔特捜隊は強大だ、俺だけでは倒せない。だから、真相を確かめた後でどうするかを決める」
悪魔特捜隊の闇は深そうだな。
前世界の記憶では、不動明は悪魔特捜隊を壊滅させた。
そして、そこで人間に失望してしまったんだ。
「どうして、俺にそんなことを話したんだ?」
「……ただの気まぐれだ」
甲牙は両手をズボンのポケットに突っ込み、歩き出した。
「悪魔特捜隊には気を付けろ。それと……」
「……何だよ?」
「おまえは俺の目標なんだ。だから……死ぬなよ、内海明人」
「おまえもな、兜甲牙」
甲牙の表情は、どこか憂いを帯びていた。
もしかしたら、あいつも何か悩んで苦しんでいることがあるのかもしれない。
それにしても……。
「悪魔特捜隊……か」
人類を守るために組織された軍隊が、3つ全ての勢力を苦しめている。
これが最悪の事態を生まなければ良いが。
悪魔特捜隊の目的は、一体何なんだ。
誰の命令で動いているんだ。
魔神との再会を通じて、運命は変化し始める。
悪魔特捜隊の目的とは何なのか……。
全ては……もはや、言うまでもない。