DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
街のパトロールをしている間も、頭の中ではいろいろな思考が渦巻いている。
基本的に俺は1人で行動するようにしており、遊撃部隊の冬夜たちにも許可は取ってある。
美佐樹には心の安全を優先し、護衛の人当たりの良いデーモンをつけて加藤家に戻ってもらった。
本当ならば一緒に居る方が良いのかもしれないが、美佐樹と居るとあの日の夜のことで罪悪感に襲われそうになる。
幸い、街は今のところ平和だ。
デーモンの襲撃もなければ、悪魔特捜隊が行き過ぎた見回りをしているわけでもない。
1人で居ても何の問題もないわけだ。
路地裏に入り、1つの酒場の前で足が止まる。
まだ夕方だと言うのに、地下のバーでもう騒いでいるらしい。
「バー……か。確か、不動明がデビルマンになったのは……」
前世のデビルマン誕生を思い出しながら、引き寄せられるように地下に向かっていく。
人目を避けるためにフードを被って重いドアを開ければ、その光景を見て目を見開いた。
部屋は薄暗く、ピンク色のライトが辺りを照らしている。
そして、多くの全裸の男女が激しく入り乱れては理性のたかが外れたように暴れまわっている。
未成年だろう少年が酒を飲み、ステージでは激しいロック調の音楽が流れる。
その光景は、前世の記憶のそれと似ている。
理性が働かず、己の欲求に忠実に行動する人間たち。
これは……。
「サバトだ…!!」
この場から離れるどころか、目を離すこともできない。
バーの中に入り、様子を見る。
最悪の記憶だ。
前の世界と同じことが起きているというのか。
歩きながら周りを見ていると、大柄な男と肩がぶつかった。
「おいっ!!どこに目を付けてんだ、ゴラァ!!」
「それはこっちのセリフだろ。女の裸に目を奪われて、周りが見えていないんじゃねぇか?」
「んだとぉ、このガキっ……!!」
男が近くに居た舎弟に目で合図を送れば、そいつは紅いベルトを持ってきて男に手渡す。
それを越しに巻き、狂った笑みをする。
「どうやら、痛い目に合いたいようだなぁ…!!デビルっ!!」
掛け声と共に男はカニの甲羅のような鎧を装着し、右腕は巨大なハサミになっている。
周りからは野次が飛ぶ。
「おーおー、ビッグキャンサーがまた暴れるみたいだぜぇ!!」
「やれやれぇ!!面白い見せ物になるぞ!!」
こいつ、デビルマンだったのか!?
それなら、このサバトは何のための宴なんだ。
俺の知っている世界とは違うのか。
ビッグキャンサ―は右腕のハサミを振るい、俺をその上下の刃で挟もうとする。
その場で跳躍して回避し、顔面に向かって蹴りを入れるがマスクは硬くて効いていない。
やはり、本物なのか。
「隙だらけだぜぇええ!!」
足を掴まれ、壁に向かって投げ飛ばされる。
壁に両足を着いてから着地し、俺も腰に巻いているベルトを露わにして叫ぶ。
「デビルっ!!」
身体が白く発光し、俺もデビルマンに変身する。
その姿を見て、周りは一瞬の静寂に包まれた後に動揺の波が襲った。
「あ、ああ、あれはっ……!!」
「そうだ……間違いない!!」
「遂にあの方が我々の元にっ…!!」
ビッグキャンサーは状況が飲み込めていないようだが、俺がマスク越しに睨んだだけで一歩下がって怯んでしまう。
しかし、プライドが許さないのか俺に向かってハサミを振り回しながら突撃してきた。
「クソがぁあああ」
左手にオーラをまとい、そのハサミを掴んで軽くへし折った。
「何ぃ!?」
「まだやるか?次は腕をへし折るぜ?」
殺意を持って問いかければ、ビッグキャンサーは鎧の中で震えて金属の擦れる音が響く。
「ビッグキャンサー、そこまでにしておきなさい」
奥から女の声が聞こえ、姿を現した。
その女に対して、激しく憤りを覚える。
「ツバサ‼こいつが俺に嘗めた真似をしやがったからっ……!!」
「力の差は歴然よ、おまえが勝てる男じゃない。彼は内海明人……デビルマン・ゼロなのだから」
ツバサの言葉で、俺に対する注目が多くなる。
変身を解除し、辺りを見渡した。
「これが……新しいデビルマン軍団か……」
「その通り。皆、あなたのことを待っていたみたいよ」
「何故、俺のことを知っている?俺の情報は伏せられていたはずだ」
警戒心を向けながら聞けば、1人のデビルマンが答える。
「我々には特殊な情報網がありましてね。失礼を承知で調べさせていただきました。あなたが、あの世界を混乱させた白カラスの正体であることも」
周りから、俺に対する待望と信頼の眼差しを感じる。
気分が悪い。
「おまえたちの目的は何だ?何故、デビルマン軍団なんて組織したんだ?」
「我々は明人様の情報を聞き、歓喜に震えました。あの巨大な白カラスの正体がデビルマンだと知り、あなたを希望だと思ったのです。あなたと一緒なら、私たちデビルマンが生きていける世界を作ることができるはずです」
俺への期待と言う名のプレッシャーがかかる。
それに対して、怒りが込み上げてくる。
「俺はデビルマンが生き残るために戦ってきたわけじゃない、それは白藤と同じだ。人間もデーモンもデビルマンも、互いを分かり合う時が来る。それを信じて戦っているんだ!!」
「そんな時は来ない!!それはあなたも知っているはず。私たちデビルマンは、人間の愚かしさとデーモンの恐ろしさを知っている。共に生きられる世界なんてありえない!!」
周りからも俺に対する苦情が飛ぶ。
しかし、こっちも引くわけにはいかない。
脳裏に大切な人たちの顔が浮かぶ。
「俺には大切な人たちが居る。共に戦ってくれる仲間が居る。おまえたちの勝手な思想を、今の俺に押し付けるな!!」
怒声によって辺りが静まり返った。
その中で、ツバサは静かに溜め息をついて俺に問う。
「この世界のおまえは、まだ人間は守るに値すると考えているのか?」
この世界の……だと?
疑問に思ったが、今はそこじゃない。
「勘違いするな。全ての人間がそうだとは思っていない。俺は自分の中で守るべき者とそうでない者を線引きしている」
「……そうか、よ~くわかった」
ツバサの口元は、一瞬だけニヤッと笑ったように見えた。
「今日の午後6時6分……。この日、世界は変わる」
「……何の話だ?」
ツバサが指を鳴らして合図を送ると、バーに設置されているモニターにテレビの映像が流れる。
それは報道番組で、そこには了さんとキャスターが映っていた。
『今日は考古学の分野で多大な功績を上げている悪魔研究の第一人者、飛鳥了さんをお招きしております。これからの悪魔と人間の戦争はどうなっていくのかを、評論家の皆さんと意見を交わしていただきます。飛鳥さん、今日はよろしくお願いします』
『ええ、こちらこそよろしく』
……え……?
これは……まさか……。
了さんは両手を組み、カメラに向かって目線を送る。
『私は長年悪魔の伝説、存在について研究を続けてきました。その結果が今の時代に役立つことになるとは、研究の成果を発表できる喜びと共に、誠に遺憾でもあります。しかし、私はみなさんに真実を話さなければなりません』
間を置き、了さんは重い口を開く。
やめろ……どうして……まだその日じゃなかったはずだ。
それに、了さんはもうこんな手段は使わないって……!!
俺は油断していた。運命の日は前世界と同じ日だと思い込んでいた。
だが、実際は違ったんだ。
現実を受け入れられない俺を置いて、了さんはその偽りの真実を告げた。
「我々が呼ぶ悪魔の正体は、悪魔が憑依した人間なのです!!」
突然訪れた運命の日。
この日の明人の選択が、戦いが、世界の命運を決める!!