DEVILMAN REBORN ~LOST DESTINY~ 作:カナト
了さんは饒舌に悪魔と人間の関係をテレビの中で話し出した。
『私は世界中の悪魔の伝承を調べ上げ、皆さんがその存在に気づく前からその対策を考えてきました。皆さんもご存じの通り、悪魔には人間の武器は通用しません。私は何度も悪魔を倒す方法を模索していましたが、その中でとんでもない存在と接触することになったのです。いや……私の友人の身体を通して接触したというべきでしょうか』
溜めながら話、1度目を閉じてから大きく見開いた。
『私は強大な悪魔と会い、その奴隷として生かされてきました。皆さんご存じでしょう、まだ記憶に新しいでしょう。あの白い巨大なカラスの悪魔を!!あの破壊を生み出した鳥は、人間の姿をして私に接触してきたのです!!私の親友である、内海明人の身体を乗っ取って!!』
モニターの映像が変わり、俺の姿が映る。
そして、学園で俺が暴走した時の映像がドアップで流れ出す。
『白カラスがその本性を現した時、私は夢中でカメラを回しました。その後の光景も、惨劇も、全ての元凶は悪魔なのです。悪魔は人間に憑依し、その人間に容易に成りすますことができます』
俺のデーモンとの戦いの映像が流れだし、その後に暴走状態のゼロが暴れまわる姿が映し出される。
『私はデーモンよりも恐ろしい存在と遭遇してしまいました。そして、皆さんも例外ではないのです。彼ら人間に憑依した悪魔、デビルマンはデーモンよりも凶悪です。悪魔特捜隊の目をかいくぐり、デーモンではないと証明されても不安は晴れないのです。悪魔はいつでもあなたの近くに潜んでいます。そして、あなたの身体を乗っ取ろうとしています。老若男女は問いません。全ての人間が悪魔の標的なのです』
映像が変わり、人間から異形の悪魔に変わる多くの人間の映像が流れる。
映像の中で、人間が殺されては食われるを繰り返す。
その中で響く悲鳴や断末魔の声は生々しく、見るに堪えないものだ。
これは違う……これはデビルマンではなくデーモンの方だ。
それも人間を襲うデーモンの愚行だ。
全てのデビルマンとデーモンの存在を、完全なる悪とするつもりなのか!?
了さんは不敵な笑みをしながらカメラを指さして言う。
『よ~く思い出してみてください。今日会った家族、友人、恋人は昨日とは違った様子はありませんでしたか?悪魔は嘘が上手いのです。少しでも違和感を覚えたのであれば、その正体は悪魔かもしれません。あなたの隣に、近くに、人間の皮を被った悪魔が居るのです。そして、今か今かとあなたを殺すタイミングをうかがっているのです。もはや、この世界に安全な場所はありません。信じられるのは自分だけ!!生き残りたいのであれば、殺される前に人間の皮を被った悪魔を殺すしか―――』
急に画面にノイズが走り、了さんの声が打ち消されてしまう。
ザーザーと言うノイズ音と共に画面が荒くなる。
そして、画面が直らない内から声が聞こえてきた。
『・・・————皆さん、その男の言葉を信じてはいけません。私の姿をする偽物の言葉に、惑わされないでいただきたい』
画面の嵐が治まり、映像が回復する。
その映像を見て、その場に居た全員が目を見開いた。
「どういうことだ……!?」
映っているのは了さんだ。
だけど、背景は先ほどの報道番組のそれではなかった。
別の報道番組のものだ。
時間帯が同じのニュース番組だ。
そして、そこには了さんだけでなく白衣を着た老人や兜甲牙が居る。
『緊急事態ゆえ、このような形で皆さんを混乱させてしまっていることにまずは謝罪いたしましょう。私が本物の飛鳥了です』
バーの中がざわついている。
前のどの世界でも起こらなかったことが起きている。
俺はこの場の状況だけでは正常な判断ができないと考え、バーを出て外を見た。
外に出ている人たちは、確かに疑心暗鬼の状況で誰かが誰かを痛めつけようとしていた。
しかし、皆その手を止めてはそれぞれの通信端末に目が釘付けになっているのだ。
もう1人の了さんは、テレビだけでなくスマホのラジオ機能も使ってこの報道を流しているのだ。
『もう1度言います、みなさん、その『人間の皮を被った悪魔』の言う事に惑わされないでください。それでは、本当の悪魔の思う壺です』
街中に響く了さんの報道を聴きながら、俺はジュンさんに電話をかけた。
「もしもし……ジュンさん、これは一体どういうことなんですか?何で了さんが2人も!?」
『明人……混乱しているわね、無理もないわ。片方は偽物よ、了と瓜二つの容姿をした双子の弟ミカエルのはず』
「じゃあ、最初の報道はミカエルの成りすまし……?」
『そう言う事になるわ。明人、了を信じて。彼はこの世界を救おうとしている、もちろんあなたの守りたい人間のこともね』
「了さんが……」
俺は了さんのことを疑いそうになっていた。
思いもしなかったんだ、偽物だなんて。
前世界の記憶が、了さんへの不信感を増幅させたのか……。
了さんの声に耳を澄ませる。
『今1度、誰かを傷つける前に思い留まる勇気を持ってください。あなたが殺そうとしているのは、人間の皮を被った悪魔かもしれない。しかし、本当に大切な人なのかもしれません。あなたは殺した後に後悔しませんか?本当は人間だったかもしれない、愛する者のままだったかもしれないという疑念と不安に駆られながら生きていく覚悟がありますか?私は悪魔の口車に嵌った皆さんに後悔してほしくないのです』
これまでの世界ではありえなかった報道はまだ続く。
『先ほどの偽物の言葉を訂正しましょう。確かにデビルマンは存在します。しかし、それは人間の皮を被った悪魔などではありません。悪魔の能力を手にした人間なのです。彼らも人間と同じ心を持っているのです。どうか、同じ心を持った者を否定し、人を殺す残虐な悪魔と一緒にしないでいただきたい』
画面に再度嵐が入り、もう1人の了さん……ミカエルの映るものがニュース画面の半分に食い込む。
まるでテレビ電話だ。
『みなさん!!その男こそ私の姿をした悪魔です!!どうか、その男の言葉ではなく私の言葉を信じてください!!……悪魔め、人間を惑わそうとしてもそうはいかないぞ!!』
『私を偽物と言うか。しかし、残念だな。私には私が本物であることを証明できる証言者が居る。ここに居るデーモン対策研究の第一人者である兜十蔵博士と、人類の希望の象徴である兜甲牙くん。この上なく信頼に足る人物だと思うがね?』
了さんが2人に視線を送ると、甲牙は気に入らないという顔をしながらも彼の隣に立って言う。
『みんな、心配しないでくれ。この飛鳥了は本物だ。俺と兜博士が全身全霊を持って保証する』
これは本人が何を言うかよりも説得力がある。
人類が全幅の信頼を寄せる者が信頼するのなら、それは本物であると言う心理だ。
この状況でどちらを信頼するかは、日の目を見るよりも明らかだ。
『私が偽物か、君が偽物かの議論をしていても意味はない。あくまでも、これは視聴者がどちらの言葉を信頼するかの問題だからな』
鏡のように同じ顔立ちをしながらも、一方は冷静でもう一方は焦っているように見える。
了さんは前世界の自分の手段を、今の自分が止めようとしているんだ。
少なくとも、これで暴動が起こる可能性は大きく低くなった。
この2人の主張は平行線だ。
しかし、それによって人間の疑心暗鬼ゆえの行動を静止させたんだ。
人間の暴走を未然に防ぎ、均衡を保ったのだ。
しかし、胸のざわつきが晴れない。
これで黙示録への未来は回避されたのか?
いや、違う。
何かを見落としている。
……何をだ?
拍手の音が聞こえ、後ろを振り返る。
「流石はサタン。念には念を入れていたってことね……だけど、もう既に遅い。ミカエルの目的はもう達成されている」
「……ツバサ、何を言っている?」
ツバサは不敵な笑みを浮かべ、俺の前に立つ。
「今の放送を見て、1つの疑惑が生まれた。それが小さなものだとしても、それを組織が見逃すはずがない。……どっちみち、おまえに相応しくない人間は前の世界と同じ運命をたどる」
「何……?」
急に電話が鳴るが、ツバサから目を離すことができない。
「……電話に出たらどうだ?」
嫌な予感がしながら、俺は電話に出る。
「もしもし……」
『明人、大変だ!!さっきの報道のせいで、加藤夫妻が悪魔特捜隊に連行されてしまった!!』
冬夜の焦る声が聞こえてきた。
そうか……俺がデビルマンになる映像が原因だ。
そして、この流れは……前の世界と同じ。
それなら、俺は一体……。
おじさんとおばさんを助けに行くべきか、加藤家に戻って美佐樹を守るべきなのか。
一体……どうすれば……!!
いや、それもそうだが、目の前に居る女は……。
「ツバサ、おまえは一体何者なんだ?ミカエルとは何なんだ?」
ツバサは俺に歩みより、真剣な目を向ける。
「私は牧村美樹とは違う…。おまえの側で、おまえと共に同じ痛みを味わうことができる…」
牧村美樹、美佐樹の前世の名前。
それを聞いた瞬間、1つの仮説が立った。
「おまえ……前の世界の記憶を持っているのか?そして、俺が不動明の転生者だと知っているんだな!?」
俺の問いに対して、ツバサは静かに頷いた。
前世界とは違う可能性を見出したが束の間、運命の修正が起きようとしている。
果たして、明人の迎える未来とは……。
次の話にて、報道が流れた後の加藤家に魔の手が迫る。