四日目の朝
罰が当たったと言ってもいいだろう。
昨日は確かに調子に乗りすぎた。
羽目を外しすぎた。
自宅で目覚めると、すぐに体調が悪いことに気づいた。
ベッド抜け出て体を起こして体温計を計ると、三九度だった。
「まずすぎだろ、これは」
僕は指輪の数字を見る。昨日一日でだいぶ増えたとはいえ、八四/二〇〇だった。
後四日間でこの数字が二〇〇にいかないと、安城院先輩は先輩でなくなってしまう。
なのに、僕は……。
熱のせいか自暴自棄になりそうなのをこらえて、学校に電話し、先輩にLINKで熱のことを伝えた。
「今日は一日に休みにしましょう、お大事にね」と返ってきて、さらにスタンプのキャラクターも励ましてくれた。
僕はだるい体を起こして病院に行き、ただの風邪と診断されて薬をもらうと、ゼリー飲料を飲み薬を飲んで、とにかく寝た。
それだけが今の僕にできる最善だった。
うなされるようにして見た夢が先輩との淫夢だったのには笑うしかなかった。
起きると朝の七時三〇分だった。
昨日ほどの熱はないが、まだ下がりきっていないのはなんとなくわかった。
台所でスポーツ飲料を飲みトイレに行きどうしようか、と思うそのタイミングで、インターフォンが鳴った。
僕は確認もせずにドアを開けると、そこには制服姿の安城院先輩がビニール袋片手に立っていた。
「どうしたんですか、先輩?」
「どうしたのかじゃないわよ。何回連絡しても返してこないから、心配になって来たんじゃない」
そういえば昨日は朝先輩に連絡したタイミングで電源が落ちて以来、充電を忘れていた。
僕はこれ以上玄関でのやりとりするのもと思い、僕は先輩を家に通す。
先輩はソファーに、僕はベッドに座る。
「それで体調はどうなのかしら」
先輩はそう言って自分のおでこと僕のおでこをくっつける。
「まだ熱がありそうね」
「申し訳ないです。こんな時に……」
「大丈夫よ明日と明後日がんばれば……あんっ」
先輩は自分の言葉の意味を考えて短く喘ぐ。
「それよりそう。何か食べた? インスタントで申し訳ないけれど材料買ってきたからおかゆでも作りましょうか?」
「それじゃあ。お言葉に甘えます」
「川上くんはその間ベッドで寝てなさい」
有無を言わさぬ感じに僕はそのままベッドに潜り込む。
台所から聞こえてくる物音が先輩が立てていると思うと心地良かった。
僕はその幸福な音を聞きながら短いまどろみに落ちた。
再び目を開けると先輩の顔と目が合った。
「あっ」
「あっ」
声が重なった。
先輩は焦った様子で、顔を外す。
僕は体を起こして伸びをする。
「ごめんなさい。起こしちゃったかしら」
「いえ、寝るつもりじゃなかったので」
「おかゆできたけれど食べれそう?」
「お願いします」
「そうだ、川上くん。食べさせてあげましょうか?」
「いえ、自分で食べれますから」
「私がしたいことだから」
というようなやりとりがあり、僕は口元に運ばれるおかゆを少しずつ口に入れることになった。しかも先輩の息で冷ましたものだ。
皆の憧れの生徒会長にこんなことをさせている優越感に浸る反面、本当は単なるエロ神さまとの契約上の結びつきしかないことに意識が至る。こんな幸せもおそらく後三日なのだ。
「こういうのも悪くないわね」
先輩は僕の口元におかゆを運びながら、漏らすよう呟く。
「なんだけ餌付けされているみたいですけどね」
「そうかしら。愛がある感じで私は好きだけれど」
先輩は、愛と発音して、恥ずかしさを感じたのか、短く喘いだ。
「先輩、そろそろでないと遅刻しますよ」
「そうね。学校行くけど、終わったらまた来るから」
「鍵、そこにあるから持ってって下さい」
「わかったわ」
僕は先輩が出て行くのをベッドで見送ると、あの人の為にも今は寝なきゃとまた微睡みの中に落ちる。先ほどの先輩のやりとりの幸福感から僕はゆっくりと眠れそうだと思った。
「きゃ」という短い悲鳴のような声がして僕は目を覚ました。
その声の主はすぐに見当がついたけれど(先輩しかいるはずない)、そのシチュエーションは驚きを隠せなかった。先輩はソファーで貪るように僕のエロマンガを読んでいたのだ。
先輩は僕の視線に気づくと、
「きゃああああああああああああ」という悲鳴の後に、
今度はそれと同じぐらいの声で
「ぁあああぁぁっぁぁあああああ」という声で絶頂した。
その後の先輩は哀れなぐらいだった。
肩を落とし、涙目になってしかられた犬みたいにしょんぼりとして、僕が理由を尋ねる前に自らその理由を語り始めた。
「学校終わって看病に来たんだけど、まだ川上くん寝ていたから、部屋の掃除でもと思ったのだけれど。そのこの本が、ソファーの下にあったから気になって。こんなの読んだことないし。ごめんなさい」
先輩はほとんど土下座に近い感じだ。
「いえいえ。こういう時は僕が謝るのが普通な気もしますが」
「そうなの?」
「だと思いますけど。それでどうでした?」
僕は先輩に意地悪な質問をする。
「その……Hでした。あんっ」
なぜか先輩が敬語になっている。
「でしょうね」
「後、意外だったよ。川上くんドSの人だと思ってたから、これ逆だったし」
「それはそういうものじゃないですか。色々読むと思いますし、別に僕は普通だと思いますよ」
「それにしても、川上くんはこういうの見られても全然恥ずかしそうにしないのね」
「恥ずかしいですよ。でも、その先輩の行動がおかしすぎて、安城院先輩でもこんなことあるんだなって思ったら」
「なにそれ?」
「先輩は僕の中ではどこまでもかっこよくて憧れの人なので、その人が僕の部屋でエロマンガ読んでるって思ったら、ほんと可笑しくて」
僕は思わず吹き出すように笑ってしまった。
先輩は羞恥心で顔を真っ赤にしながら、同じように笑った。
「熱は大丈夫そう?」
「ええ。もう大丈夫そうです。汗かいたので気持ち悪いですが」
「それじゃあ、体拭いた方がいいわよ。ちょっと待ってて」
先輩はそう言ってキッチンからお湯に濡らしたタオルとお湯の入った洗面器を持ってくる。僕はそのタオルを受け取ろうとすると、先輩は意地悪く笑う。
「私が拭いてあげるわ。服を脱いで」
僕は先輩に言われるままに来ていたパジャマの上下を脱ぐ。
制服姿の先輩に対して裸でいることが無性に恥ずかしくなり、僕は先輩から顔をそらした。
先輩はそれに構わず足から、腰、背中と腹、脇と順番にタオルで僕の体を丁寧に拭いてくる。
心地よい温かさのタオルが触れると思わず声を漏らしそうになるのをこらえて、先輩になされるがままに任せる。
一通り終わると先輩は洗面器のお湯につけてぎゅっとタオルを絞った。
「川上くん、ちょっとばんざいしてくれる?」
さも当然のように言うのを僕は真に受けた。
蠱惑的な笑みを浮かべて、両手を上げた僕の両手をそのタオルで縛った。
「先輩っ!? なにするんですか?」
先輩は僕の言葉を無視して命令する
「ほら、手を頭の後ろにして」
僕はまだ意図がわからず、言われた通りにする。
「なんですかこれ?」
先輩は僕の言葉に応えずに、僕のはいていた下着ごとパジャマをずらした。
既に勃起していた僕のものが現れる。
「ご主人様、まだきれいにしてないところがありますので」
その台詞で僕は先輩のやりたいことを理解した。
さっき読んでた先輩のエロマンガ。
それにこれとそっくりの場面があったのだ。
幼なじみの女の子が風邪をひいた主人公を同じように縛って、そのまま男の子をいかせるのだ。
「あら、川上くん、おちんちん勃起させてるけど何かして欲しいことあるかしら」
先輩は完全にその『モード』に入っていた。
「……」
「それとも。このままでいい?」
先輩は僕のものを強く握りしめながら問う。
「あああっ」と思わず漏れた僕の声を、
「あらあら、女の子みたいな声だして」先輩が咎める。
「それでどうかしら。私はこのままでもいいのだけど」
「お願いします」
「えっ?」
「そのしごいて下さい」
「何をかしら」
「雫先輩、おちんちんしごいて下さい!」
これじゃあいつもと立場が逆だと思いながらも、僕は自分の恥ずかしい言葉に興奮していた。
先輩が僕のものをしごき始める。その動きは竿だけでなくその先まで伸び、手のひら全体をかき混ぜるように鬼頭を責める。
「あら、川上くん。もう我慢汁どばって出てるわよ」
先輩は僕のものから零れた我慢汁を僕のものに塗りたくり、また強くしごく。
「ああああ。気持ちいい」
「そう良かったわ。でも、これじゃあ我慢汁できれいにならないわね」
先輩はそういってマンガの展開通りの行動を取る。
自らが身につけていたショーツを脱いだ。
黒いレースのショーツを僕の顔に掲げた。
「先輩、それっ」
「川上くんを今日は特別にこれできれいにしてあげる」
そういって僕のものにショーツをあてがう。
ショーツが僕の我慢汁で滲んでいく。
脱いだばかりのショーツのぬくもりで僕のモノは刺激される。
先輩は僕のものにそのショーツをかぶせてこすり始める。
「川上くんのおちんちん、私のショーツかぶっているわよ」
「ああ、気持ちいいです。雫先輩」
「ほらすりすりしてあげる」
「ああっ。ああっ」
僕が気持ちよくよがると先輩は手を離した。
「そんなすぐに達したらつまらないでしょう? 次は乳首いじめてあげる」
手を縛られて抵抗できない僕の乳首を爪で弾く。
これまで感じたことのない感触に僕は思わず声を上げる。
それが先輩の加虐心をそそったのか、さらに両手で乳首を転がしてくる。
僕は声を殺そうと我慢したが、それはすぐに崩壊した。
乳首を弄ばれる度に僕は嬌声が漏らしてしまう。
「縛った人をこんな風にするといけないことをしている気分になるわね」
「ああんっ。あんっ」
「川上くん、乳首犯されて気持ちいい?」
その台詞もマンガにあった台詞だ。
主人公の男の子はここで快楽に負けていた。
僕はせめてもの抵抗で首を横に振る。
「そう気持ち良くないんだ」
雫は意地悪く両乳首を指で弄り回してくる。
引っ張り、転がし、爪を立て、そうして乳首を舐めてくる。
温かい先輩の舌と淫靡な音が交錯して、僕は声を上げる。
「雫先輩、あん。あああ」
「気持ちよくないんでしょ」
乳首を舐められ、舌で転され、歯で甘噛みされると僕はもう限界を超えた。
「ああ。気持ちいい。雫先輩に乳首犯されて気持ちいいです」
僕が快楽を認めると、先輩は満足そう笑った。
「そう。それは良かったわ。それじゃあ。そろそろいかせてあげてあげましょうか?」
先輩はそう言って僕のものに被さってショーツを強く握る。
「ほらどうして欲しいかしら?」
「雫先輩。おちんちん、いかせて下さい」
「もっと」
「ああっ。僕のおちんちんを先輩のショーツで犯して下さい」
「いいわよ」
先輩は動かす手を早くする。
すれる箇所が多くなり、僕のものはさらに固くなる。
それにあわせて先輩が僕のものを握る手が強く、早くなる。
先輩はさらに僕の乳首をぺろりと舐める。
上と下のどちらもの快感に耐えられるわけもなく、僕は絶頂に至る寸前だった。
「ほらいきなさい。乳首弄られながら、ショーツで犯されていっちゃいなさいっ」
そのの言葉とともに、天国に至るような白い快楽が僕の頭に広がる。
「ああ、いく、いくっ。いくっ!」
ほとんど一瞬だったはずなのにずいぶん長く感じた。
僕は精子を安城院先輩の黒のショーツにすべて吐き出した。
「ああん。ああんっ。ああああんあああああ」
先輩は僕の快楽が伝わることを失念していたのか、無防備に愛液をまき散らして絶頂してへたり込ん
だ。
「ごめんなさい、川上くん。私調子乗ってしまって」
先輩はそう言いながら縛っていたタオルを外して、今度こそちゃんと僕の体を拭いてくれた。
「いえいえ」
「でも、川上くんの気持ちがわかったわ。いじめるのって愉しいわね」
そんなことをさらりと言いながら、
「下着、どうしようかしら」
と苦笑いをするのもまた安城院雫という人だった。
どうやら先輩はほんとにマンガの通りのことをしてみたかっただけだったようで、後先考えていなかったようで、汚れた下着を洗い終えると困った顔をした。
さすがにもう新品の下着はなく、かといって僕が使ったのも下着を貸すのも憚られたが、ともあれそのままで帰すわけにもいかないので、結局僕のジャージを貸すことで決着した。
学生服にジャージというのは安城院先輩らしからぬその格好はそれはそれでよく似合っていた。
「すっかり迷惑をかけてしまってごめんね」
「いえいえ。気にしないで下さい。それに、こちらこそ、ごめんなさい。明日には回復してると思いますから」
僕は指輪の数字を見ると八九/二〇〇となっている。
明日は土曜日だ。学校がない。
ともあれ朝から晩までしたとして、どれくらいの数字になるだろうか
「先輩悪いんですけと、左手出してもらっていいですか?」
「左手? いいけど」
先輩は疑いなくベッドに腰掛ける僕に白い手を差し出す。
僕はその手を取って薬指に収まる指輪を外した。
その、瞬間。
先輩の髪が銀色に変わる。
凍てつくような全身にオーラを感じて、僕は彼女の訪れを悟る。
その顔つきが先輩とはがらりと変わり、不機嫌そうにしている。
「なんじゃ、少年。わしに用か?」
「助けて下さいっ。エロ神さま」
僕は迅速に拙速に用件を述べる。
「それが用件だとしても、頼み方はもうちょっとないのかいな」
エロ神さまは息を吐いて、
「そもそもわしはお前さんの敵じゃ。わしは雫の体が欲しい」
「そういう建前とかいいので、ほら何か出して下さい。この間みたいの」
僕はドラ○もんに道具をせがむ男の子のように頼む。
「それにこの間のエロ神さまの要望だって、僕なりには聞いたつもりですよ。貸しがあるんだからそれを返してもらっても罰は当たらない気がします」
「神に向かって、貸し借りだの、罰だの言うお前さんはどうやら相当な恐れ知らずなようじゃの」
「それだけ必死ってことですよ。僕のせいで二日間、無駄にしてしまいましたから」
「そうじゃの。まあいいもの見せてもらったのは事実じゃからの、知恵を貸してやらんこともないけどな・・・・・方法は一つじゃ」
エロ神さまは指を一本立てて言い切る。
「雫とセックスしろ」
「……」
「ご奉仕奴隷セックスプレイなんてすれば一気に三〇ぐらいは貯まるじゃろ」
「それはあなたが見たいだけじゃ」
「もちろんそれもある」
「それしかないでしょう? 今までのやり方でやったってそう無理な数字じゃないですし」
「甘いな、少年」
チッチッチと舌を鳴らして首を振るエロ神さま。
「快楽には常に慣れが発生する。今までと同じことをやっても、初めての経験には遠く及ばんよ」
「そんな偉そうに言うことことじゃないような気もしますが」
「それに少年。お前さんは雫とそういうことがしたいんじゃろ」
「そりゃあ、あの人としたくない人なんていないと思いますけど」
「そうじゃない、少年。お前さんが、お前さん自身が雫としたいんじゃろと聞いておるのじゃ」
僕は問われていることの意味を理解して頷く。
それでもと僕は付け加えて。
「でも、契約にかこつけてそういうことをするのは違うというか」
「違わんよ。したければすればいい。もちろん相手もあることじゃから、その意志をないがしろにするのはよくないがの。お前さんのそれは単に己で我慢をしているだけじゃないかの」
「……」
「安心しろ、少年。わしがついておるんじゃ。大船に乗った気でいるがよい」
信用なるものかと僕は疑いの目を向ける。
「ううん。お前さんわしを疑っておるのう? しかたあるまい。お前さんらを『楽園』に招待しようぞ」
「……楽園ですか?」
「ラブホの名前じゃ。わしが贔屓にしておる」
僕は近くにあったお盆で先輩の頭を叩く。
「いたっ。神を叩こうとするとは不届きなやつめ」
まったく、この人は。
どこまでも不真面目なんだから。
僕がそんなことを思っているうちに、エロ神さまは先輩の電話を使ってどこかに電話をかけ始めた。
それは本当に楽園という名前のラブホテルのようで、しかもこのとんでもないとんでもない手際でエロ神さまは明日と明後日の二日間貸し切りにしてしまった。
「諸々のことは安心せい。言ったろ贔屓にしておると、貸しも多いんじゃ。場所はここに書いてあるからの、後で調べておけよ、少年」
エロ神さまはそう先輩の携帯を使ってそのラブホのHPを見せてくる。
僕はラブホテルのHPを見たことはなかったが、一見するとそれは一流のホテルとなんら代わりのないおしゃれな雰囲気を醸し出していた。部屋の名前やらサービスやらがやはり、それはまさしくラブホテルというべきものだった。
「これで万事手はずは整ったというわけじゃ。いやあ、安泰安泰」
僕はもう一度、お盆で頭を叩いた。
「まじめにあなたに相談した僕がばかでしたよ、まったく」
「でも、お前さん行くんじゃろ、それとも行かないのかのう」
「それは……行きますけど。もうあなたが予約してしまった以上、行かないと迷惑でしょうし」
当然ながら、そんなところに行くのは初めてで、僕は内心どきどきしていた。
もちろん期待するものはあるわけで。
「ふんっ。いいわけがましいのう。まあ、人間にいいわけを作ってやるのが神の機能といいうわけで、わしもいい仕事をしたというわけじゃ。ははっ」
「なんか言いました、エロ神さま?」
「お前さん。ほんとわしに冷たいのう。まあ、いい。せいぜい。楽しむといいさ。いや、それと……わかっておると思うがの」
エロ神はそこで言葉をためる。
何を言おうとするのか察しがついた僕はお盆を構える。
「雫との奴隷奉仕セックス楽しみにしておるぞ、最高にエッチく頼む」
僕は三度目に頭を叩こうとするとその瞬間、エロ神さまは先輩に戻った。
お盆の軌道は止まらずに、僕はそのまま先輩の頭を叩いてしまった。
「あいたっ。何するの川上くんっ!?」
「すいません。先輩を叩くつもりじゃなくて。あんの神さまのせいで」
「神さま。そうか。川上くん。あの人に会っていたのね。で……てなにこれ?」
先輩はあの神さまに勝手に使われた自分の携帯を確かめる。
そこには確かに『楽園』が写っていて。
「ねえ、川上くん……」
先輩は何かを聞きたそうに僕の顔をのぞき込む。
僕はすべてを問われる前に先に何か言わなきゃと焦る。
けれど出てきた言葉、ほとんど最低の誘い文句だった。
「先輩は明日、僕とラブホテル行きませんか?」
突然の言葉に先輩はきょとんという顔を浮かべたが、重力に逆らうことなく自然に首を動かした。