「それで、先輩は全部わかってるんですか。僕が聞いた試練とか、そういうのも全部」
先輩と向かい合うようにして座り直して僕は尋ねてみる。
「ええ。エロ神さまが川上くんに説明したことは、大体わかっていると思うわ」
「それじゃあ。その、どうしましょうか? 今日はもう……時間もあれですし」
「いえ……その。よかったら、一度だけ試してもいいですか? その、慣れておきたいから」
ごくりと、僕は自分が唾を飲み込む。
緊張、しないわけがなかった。
「ご主人様。それで私はどうしたらいいんでしょうか?」
「その呼び方もそうですし、僕に敬語を使う必要とかはないと思いますが」
「いえ。川上くんは今日から私のご主人様ですので、そういうことをする時は敬語で呼ばせていただきます」
先輩のその口調は有無をいわさぬ雰囲気で、
「私のことは雫と呼び捨てて下さいませ」
と続く言葉はさらにそれを強固にする。
僕は試しに、
「雫」
と呼びかけると
「はい、ご主人様」と先輩が返事をする。
その呼び方にも呼ばれ方にも照れてしまう。
あの、憧れの生徒会長にこんな風に呼ばれることも、呼ぶこともさすがに今の今まで想像すらできずにいた。
けれど、もちろん悪い気持ちではなく、それはどちらかと言えば逆の気持ちだ。
先輩は先輩で落ち着かない様子で、脚の開け閉じを繰り返している。
そして、不意に。
「あんっ」
先輩からは聞いたことのないような、短い声を上げる。
その声音は快楽がもたらしたものだ。
「その、もしかして先輩、恥ずかしいんですか?」
僕の言葉と同時に、
「ふあん、あんっ、あんっ」
先輩はこらえきれないとい言うように、その声を大きくする。
その頬を真っ赤にしながら、顔を俯かせ、手と足をもじもじとさせている。
感じているのは明白だった。
エロ神さまは恥ずかしさが快楽につながると言っていたが、それはこういうことなのだろう。
僕は左手薬指を確認する。
指輪の数字が一/二〇〇になっている。
その数字を確認すると僕は一度大きく息を吸って、吐いた。
先輩も僕と同じなんだと思うと、さっきまでの恥じらいが嘘のように消えていく。
同時に僕はエロ神さまの言葉を思い出す。
『欲望は表にだしてこそ』、僕はその言葉に従うことにした。
僕は自らの欲望を始めることにする。
「雫、始めようか」
「かしこまりました、ご主人様」
「ここから先は止まれませんからね」
僕が最初にして、最後の忠告をすると先輩がこくりと頷く。
その頬の赤らみのせいだろう。
先輩は命令を欲しがっているように見えた。
「雫、命令だ。まずは僕のものを取り出せ」
僕は座ったまま股を開く。
雫はおずおずと立ち上がり、僕の股の前に腰を下ろし女の子座りをする。
その戸惑ったような上目遣いが、僕の嗜虐心をそそる。
僕は促すように、雫を見る。
雫は首肯して、ゆっくりと僕のズボンのジッパーに手をかける。
その細く白い指は慣れない手つきで、そのままトランクスのボタンを外していく。
恥を感じているのか、雫は押し殺したような悦びの声を漏らしてる。
色のついた声。
その声に僕の快楽も刺激される。
僕のものが硬く、大きくなる。
それを指先で感じたせいか。
「あぁん。ふぁんっ。あああああん」
先ほどのまでの押し殺したものと違い、はっきりと音になる。
自らの喘ぎ声自体が恥ずかしさを増幅させるかのように、どんどんとその声が大きくなっていく。
僕は女の子のそんな姿を見るのはもちろん初めてだった。
それが先輩のものだということに、信じられないほど興奮していた。
「ああんっ、これ、気持ちいいっ」
それで雫は陥落だった。
雫は自らの快楽を自分で言葉にしてしまった。
身悶えるようなその声は、頂点にまで達するようにして、
「だめ。おかしくなっちゃう。だめなのに。あんっ」
そのまま雫は達した。
その脚は震えて、首は上下に軽く揺れる。一瞬視線が宙を見た。
僕は指輪のメーターを確認する。
三/二〇〇になっていた。
雫は落ち着くと、顔から火が出るようなに赤くなり、その目は涙目だ。
今日はこれぐらいで十分かと思い、ズボンを戻そうとする。
すると雫は首を横に振る。
「ご主人様。その。大丈夫ですから。続けさせて下さい」
懇願するような上目遣いで請われては、続けないわけにもいかなかった。
それに僕のものは先ほどにもまして、欲望を高まらせている。
ここでやめるのは僕としてもつらかった。
「雫、命令だ。早く取りだせ」
雫は恥じらいを隠すように髪をかきあげた。
そして、その温かく柔らかな長い指で僕のものに触れると、丁寧に僕のものを取り出す。
僕のものはもうほとんど限界というぐらいに勃っている。
高く上を向いたそれは、ちょうど雫の顔の付近で、雫は興味深そうに暫し見つめると、再び淫らな声を上げ始める。
それに耐えるようにして、
「ご主人様。できましたよ」
という雫に対して、僕は意地悪がしたくなる。
「雫がいま取り出したもの何だ?」
「それは、その……」
雫は言おうとはしなかった。
もしかしたら発音したことすらないかもしれない。
僕は責めるように命じる。
「ほら、見ながら言ってみろ」
「……ペニスです」
やっと口にした雫に対して。
「違うっ」
僕はその耳元に、雫に呼ばせたい名前を告げる。
僕の言葉に雫は耳の先まで赤くする。
なんだか楽しくなってくるな、これは。
「ほら、どうしたんですか?」
雫は脚をくねらせ、モジモジしながらも紅潮していく。
「ああんっ。あああっ。恥ずかしい。恥ずかしいです、ご主人様」
「ほら言ってみろ」
雫の顔を僕のものを見るように固定させる。
向かい合うようにさせると、雫は覚悟を決めたように。
「おちんちんです」そう発音した。
その途端、また先輩の快楽のダムが決壊した。
「ああん。あんっ。ああ。ああ、だめ。だめ。さっきいったばかりなのにっ! あんっ。あん。あああっ!」
雫は顔を伏せて、少しの間、動かなくなった。
顔上げるとほとんど泣き出しそうだったが、その瞳はさらなる快楽を求めている。
僕はためらいなく続ける。
いい加減僕のものも限界だ。
「そうだな。手でしてもらおうか」
「申し訳ございません、ご主人様。やり方を教えていただけますでしょうか?」
「両手でしごくだけだ」
「しごく?」
雫はどうやら本当にこういう経験や知識がないようだ。
「手で上下に動かす感じだ。こういう風に」
僕は空中で手の動きをつくる。
「やってみます」
雫は言われた通りの動き、僕のものを上下に動かし始める。
人肌で温かいが、握り方があまく、不器用に触れるだけなのでその感触はまだ気持ちよくはないだ。
しかし、あの安城院雫に、自分の好きな人にそうされているという目の前の光景だけで、僕は達しそうになるぐらいに気持ちが良かった。
僕はさらなる快楽を求めて雫に指導する。
「雫、もっとしっかり握れ」
「かしこまりました、ご主人様」
雫はぎゅっと僕のものを握りしめる。
今度はその手からしっかり快楽が伝わる。
思わず声を上げそうになるのをこらえる。
「いいぞ。雫。もう少し早くしろ」
雫の吐息が僕のものにかかり、それによってさらに固くなるのが自分でもわかる。
次第に気持ち良さに、先端がぬるぬるとする。
「これは……?」
「我慢汁だ。気持ちよくなると出る」
「気持ちいいんですね、ご主人様」
それだけのことで、雫はなぜかパッと花が咲いたように笑った。
この人のこういう表情を初めてみたかもしれない。
普段感じさせる美しさというよりはそれと対極のかわいさそのもので、僕はその表情に思わず照れを感じる。
それを隠すために雫に命令を出す。
「雫、我慢汁を絡めて、根元から上下に激しく動かせ」
「はいっ。ご主人さま」
いい返事で雫が手を動かす。
潤滑油となったカウパーが腕の動きを滑らかにする。
くちゅっという音が響き、欲望を掻き立てる。
「熱いっです。ご主人様。それに何か」
「く、ああ」
思わず僕は声を上げる。
「気持ちいいんですね。ご主人様」
気がつくと雫の顔が、僕のものに触れんばかりの距離にある。
指使い、息づかい、声音、甘い匂い、その感覚のすべて僕のものを欲望を煽る。
大量の我慢汁が溢れてきて、むちゅりと音を立てた。
「ご主人様っ!」
ああっ。脳が蕩ける!
欲望が昂まり我慢ができなくなる。
果てそうに時の独特の頭の中が真っ白になるような感覚が続いていく。
「ああ、雫。いくっ。あああ」
僕の雫にかけないようにと思ったが、雫は強引に僕のものを握って離さなかった。
結果、僕の欲望は雫の顔を汚してしまった。
僕はそれ謝ろうとしたが、少しタイミングがずれて、雫の様子が一変する。
「あああん。これは。ああ。さっきまでのと全然違う。ああん。あああ。だめ。あああん。ぜったいにだめなのにぃい。ああん、ごめんなさいぃぃ」
叫ぶような矯声とともに、
びしょーーーーー、というような水音が聞こえる。
先輩の下着から薄い黄色の液体が漏れ、床に広がる
「んあああ。ああぁぁぁああん、だめ、だめ、これとまらない!」
失禁の羞恥のせいだろう。
今度はびくんと体全体を痙攣させてまた絶頂を迎えたようだ。
「ああん、いや、いや、いや、気持ちいいぃの! だめなのに我慢できなくて! ああ!」
それから、およそ五回程でいったところで、雫はようやく落ち着いた。
流石に僕は雫の言葉を待つしかなかない状況だったが、雫はその場で動かず泣き出してしまった。
三/二〇〇だった数字は一気に二一/二〇〇になっていて、これはつまり結果オーライということでしょうか、エロ神さま。
「大丈夫ですから、シャワー浴びてきて下さい。先輩」
「それはだめ。そんなこと川上くんにさせたら、私、本当にだめになっちゃうから」
先輩がまた恥ずかしさで身悶えそうになるのを僕は止める。
「いいから、とりあえずシャワーです。これは命令です、雫」
その後のやりとりはもちろん、こんな感じで大変だったけれども、僕は先輩をなんとか説得して、先輩が広げた洪水をタオルで拭き取った。
先ほどまでの光景は夢みたいで、なんだか現実感がなかったが、先輩のシャワーを浴びる音がかすかに聞こえてきて、先ほどのあれは夢じゃなかったんだと、伝えていた。
僕は片付けを終えて、浴室へとつながるドアをノックする。
大丈夫かと確かめてから、バスタオルと買ったばかりの新しい下着、それから濡れた下着をいれておける袋を置いておく。
変に現実的なこんな行動もなんだか、夢心地だ。
そんなわふわした気分のまま、僕は先輩が上がってくるのを待った。
シャワーを浴び終えた先輩は、いつもの安城院先輩だった。
凜とした佇まいは、先ほどまでの出来事を想像すらさせなかった。
それでも、思うところはあるのか深々と頭を下げる。
「ごめんなさい、川上くん。色々と気を遣わせてしまって。下着もありがとう。洗って返すわね」
「いえ、その。大丈夫でしたか? さっきの。僕もやり過ぎてしまって」
「ううん。もう川上くんには何も隠してはおけないから言ってしまうけれど……」
先輩は転がっていたソファークッションを抱きしめて、口に当てながら。
「そして、こんなこと言ったら引かれるかもしれないけど、さっきの楽しかったわよ。最後のは、その。記憶からなかったことにして欲しいけれど」
先輩の口からそんな言葉が出ると思わず僕は呆気にとられていた。
「私って意外とHなのかもしれないわね」
こっそり呟くように言って、どうかしらとばかりに首を傾けた。
僕はまっすぐに答えを返すのが恥ずかしくなって、
「明日からどうしますか?」と話題を変える。
「基本的に放課後の時間をもらえるかしら。学校はできれば行きたいからね」
「わかりました」
「場所は……明日はうちにする? 私もここの近くで一人暮らししているのだけれど」
それは初耳だった。
しかも、まさか先輩の家にお邪魔できるとは。
「お邪魔していいのであれば」
「決まりね。それからそうだ。念のため連絡先聞いてもいいかしら」
言われるがままに先輩とアドレスを交換する。
その後も少し雑談をして、頃合いを見て先輩は「今日はこの辺で」と立ち上がった。
玄関まで見送ると、
「それじゃあ、明日からもよろしくお願いします、ご主人様」
先輩は言ってお辞儀をする。
さらに去り際にこちらを振り返って、それからそうだと付け加えた。
「それから。その。私も少しHの勉強しておくわ」
そんなことを平然と言ってのけて、先輩はいつもの少し早足な歩調で去っていった。
僕はその台詞に期待をしてしまうのを避けることはできなかった。