文化祭は酷いものだった。あっち(腐)方向にぶっ飛んだ妙が、何故かBLでの白雪姫を上演すると意気込み、真壁と朱里を主役に抜擢したのだ。もちろん周りからは、俺と妙の二人でやれと囃し立てられたが、俺は劇なんて出来る気がしないし、妙は恥ずかしかったのか、顔を赤くしながら断っていた。
それよりも何が酷かったって、真壁と安達垣がケンカしたせいで、クラス対抗戦にまで発展してしまったことだ。どうせくだらないことでケンカしたのだろうが、それでどうしてここまで話が大きくなってしまうのか。
そこに安達垣の婚約者とかいう、雅宗兼次って奴が絡んで来たもんだから、もうめんどくさいったらありゃしない。すっかりヘソを曲げちまった安達垣が、この雅宗と白雪姫を演じることになり、真壁が大慌て。そんなに慌てるくらいなら、お姫様のご機嫌くらい取っといてほしいものだ。
監禁だとかそんなことがあったらしいが、俺は屋上前の階段でサボっていたので、詳しい内容はあまり知らない。安達垣の取り巻きの一人、木場が真壁を拉致り、小岩井が雅宗を拉致っていたとか。何でお互いに潰し合いをしているのやら。
で、このまま不戦勝で終わるのかと思いきや、ここで真壁のお人好しスキルが発動し、何故か安達垣のクラスの方の白雪姫に出演。これ、ただのカップルの公開イチャイチャじゃん。しかも演技そっちのけでキスまでするんだから、俺としては堪ったものではない。
しかし、俺にとっての地獄はここからだった。
朝から体調不良だった真壁が、終演後にダウン。つまり俺達のクラスの白雪姫を演じる主役がいなくなってしまったのだ。主役不在なら、中止にすれば良いのではないかと思っていたが、脚本を担当した妙が中止にする訳にはいかないとか言い出したのだ。
お察しの方も多いだろうが、俺が何故か代役に抜擢されてしまったのだ。当然俺は断ったが、途端に妙が泣きそうな顔になるもんだから、断りきれなくなってしまった。流石に彼女の泣かせてまで断れる程、俺の精神面はタフではない。更にはサボっていたことが妙にバレていたことが決定打となり、やらざるをえなくなってしまった。
劇の内容は……思い出すだけで死にたくなる。
そして俺達は、打ち上げということでカラオケに来ている。何故か安達垣達も一緒に。
「どうして貴方達もここにいるのかしら」
「それはこっちのセリフだよ安達垣さん」
上演対決は、何か微妙な結果に終わったこともあって、またここで顔合わせになったことが不穏な空気を醸し出している。
「政宗、よくもまあ私の前におめおめと顔を出せたものね」
「おいおい、まだ怒ってんのかよ」
「うるさい! あんなところでキスされて、怒らない訳がないでしょう!」
「愛姫は照れ屋さんだなあ」
「ぶっ飛ばすわよ」
実際満更でもないくせに。とか思っていたら睨まれた。怖い怖い。
結局収拾が付かなくなりそうだったので、上演対決の決着を、このカラオケですることになった。お互いに歌って採点し、点数の高い方が勝利という至ってシンプルな内容だ。
「俺採点とか勘弁してほしいんだけど」
「ここまできて後には引けないよ! 大丈夫。別に成実君歌下手じゃないでしょ?」
「人前で歌うのが慣れてないんだよ……」
「私の前では普通に歌ってたじゃん」
「そりゃ妙一人だけだったからだよ」
「大丈夫大丈夫! そんなに変わらないって」
マジか……。あ、時間止めて、その間に歌ってしまえば良いだけじゃないか。みんなから何か言われたら、デンモクの履歴見てみろって言えば良いだけだし。
「変なことしたら怒るからね」
「ファッ!?」
何故バレたし。
始めは妙と安達垣の対決。どっちもプロ顔負けの実力だったが、採点結果では安達垣の勝利となった。てか俺の彼女、歌も上手いんだよな。本当に何かある度に気後れしそうになる。
藤ノ宮さんはアニメソング、小岩井は演歌と、多種多様な曲が流れていく。……何でみんなこんなに歌が上手いんだよ。
「ほら、次は成実君の番だよ」
「……帰りたい」
「もう何言ってるの」
――時間停止。
このまま帰ってしまいたい気持ちで一杯になりながら、とりあえず時間を止めて深呼吸。よし、リラックスがてら女の子に悪戯しよう。
目の前には、苦笑いしながらこちらを見ている妙。デンモクを操作している小岩井。にこやかに真壁と話している藤ノ宮さん。安達垣に熱視線を送る取り巻き勢。嫉妬の眼差しで真壁を見ている安達垣。みんな一向に動く気配がない。
まずは挨拶がわりに女の子全員にキスをする。中でも妙と小岩井と藤ノ宮さんにはディープなやつをお見舞いする。やっぱりこの三人には特にお世話になっているからな。妙だけついでに胸を揉んでおく。ああ、安らぐなあ。
――時間停止解除。
「せっかく来たんだから……んっ……ちょ、ちょっと成実君! ダメって言ったのに!」
「帰らせてくれなかった妙が悪い。でもお陰で気持ちが落ち着いたよ」
「……何か物凄く複雑」
気持ちは落ち着いたけど、逸物は落ち着くどころか元気もりもりである。後でその処理もしてもらうとしようかな。因みに俺が入れた曲は「茜空」。まあ、聴いたことはある曲だろうから、そこまでケガはしない筈だ。
「おい真壁」
「な、何だ?」
「曲入れてないの、お前だけだぞ」
「あ、ああ。そう……だな」
「何その反応。もしかして……お前あまりカラオケ来たことない感じ?」
「バッ! お前声でけーよ!」
イケメンが聞いて呆れる。いくらなんでも、カラオケくらいどうにかなるだろう。俺ですら何とかなったんだ。
「流石にこの場面で歌わない訳にはいかんだろ。せめてまだ俺が歌ってなかったら庇ってやることも出来たけど」
「……だよな」
「覚悟決めろって。高々5分弱の話でしょ」
「……分かった」
曲が流れ始める。曲名は「Elemental World」。これ、いい曲なんだよな。周りも盛り上がっている。さあ、真壁。舞台は整ったぞ。
真壁の口から声が発せられた瞬間、この部屋は地獄と化した。
「も、もう……ダメ」
俺の隣で妙が気を失う。妙だけではない、みんな次々と倒れていく。
「だ、誰か……止めて……」
最後の力を振り絞り、小岩井がフロントに電話を入れるが、内容を伝え終わるよりも先に小岩井は力尽きた。
――時間停止。
「歌うのやめろこのヘタクソぉ!!」
思いっきり蹴っ飛ばしてやった。
――時間停止解除。
「げふぅ!」
変な声を出しながらひっくり返る真壁。ああもうダメだ、俺も限界……。
そのまま俺も意識を失った。
明日学校で覚えとけよ……。そうだ。修学旅行、絶対にコイツに土産集ってやろうそうしよう。
ここまでお読みいただきましてありがとうございました。前回投稿時は、感想及び評価をお願いしていましたが、今回は自由で大丈夫です。酷い出来だったと思いますが、今後も作品を投稿した時には、少しでもお読みいただければ幸いです。
文章能力が上がっていれば言うこと無しなんですけどね……。