「ウッ!ウッ!」
「アッ!アアッ!アア────ッ!!」
夜も更けつつある頃、都内マンションの部屋にあるベランダの一角で、若い男女の低い唸り声と、ハレンチな喘ぎ声が交錯する。彼の強烈な一撃を受けながら、私は心の中で
(ヤメテ、ヤメテ、こんなこと。誰かに見られたらどうしよう。外廻りの警官に見られたら捕まっちゃう)
と思いつつも、彼がもたしてくれる快楽が、ずっとずっと続けばいいのにと夢想していた。やがて私の背後にいる男の腰は、グリグリ、グリグリと、強烈な回転運動を始める。
「アア────ッ!!アア────ッ!!」
私がハレンチな声を上げる度に、ヤツはますます図に乗り、回転速度を自在に変えてくる。速く、遅く、右に、左に。
「ウ────ッ!!ウ────ッ!!ウア────────ッ!!ウア────────ッ!!」
彼が動く度に、私の口からは淫らな声が止まらない。
「おい、いいか?」
男が、私の耳元で囁く。どうやら限界に達したらしい。
もちろん、私も限界だ。
「イッテ────────ッ!!イッショニイッテ────────ッ!!」
と絶叫した瞬間、私の体の深いところに、ドクドクと彼の情熱が注ぎ込まれた。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」
浩二と私の淫らな感情をたっぷり含んだ呼吸音が、深夜のマンションのベランダで交錯する。私たちは、ついさっきまであられもない声を上げていたばかりだ。自分たちの快楽の世界に浸るあまり、自分たちのあられもない声と姿がのぞかれていないかどうか心配になるが「誰かに見られているかわからない」というキモチが、快楽をもたらすことになったのもまた事実だ。
「凛、よかったよ」浩二は私の耳元で囁くと、私の背中に腕を回しながら、唇に優しくキスをする。
「ずいぶん気持ちよさそうだったじゃないか」といいながら、私の乳房を優しく愛撫する。
「浩二、こんなことをしたら、私はメチャクチャ淫らなオンナになっちゃんだよ。アンタ、それでいいの」
と、私は穏やかな口調で抗議する。もちろん、本心からの抗議ではない。彼の愛情を感じたことに感謝をこめていっているのだ。
「かまわないさ。オンナの本性というのは『淫ら』なものだからな」
ニヤニヤしながら、浩二は答える。
アンタはオンナにそんなイメージを持っているのかと、私は内心呆れてしまった。世の中の女性全員が、そんなわけないだろうがと憤っていたら、急にゾクゾクッという感覚を感じた。そうだ、今は夜更けだ。日中は暖かくても、夜になったら急速に冷え込む。いくら浩二が私を抱きしめていても、寒いものは寒い。
「せっかく盛り上がってきたのに、カラダ、冷えてきちゃったじゃん」
私はやや棘の含んだ声で、浩二に言った。
「私に風邪をひかせる気?」
「ごめんごめん。気がつかない僕が悪かった。じゃあ中に入ろうか」
浩二は私の腕を引きながら、部屋の中に入った。
彼は部屋に脱ぎ捨ててあったパンツを部屋の中に入れ、私はバスタオルで素早くカラダを纏い、もう一つのバスタオルを彼に渡す。浩二はサンキュと小声でつぶやき、それを自分の腰に巻き、ベッドの上に腰掛けた。
「何か暖かいものあったっけ?もう夜遅いから、眠れるものがいいな」浩二が尋ねる。
「それだったらウーロン茶かココアかな」と、私が応じる。
「ウーロン茶がいい。ココアは口の中が甘ったるくなるんだよね」
「じゃあ、それにしよう」
数分後、私は2人分のグラスを持ってベッドルームに向かうと、浩二にグラスを渡した。彼はそれを受け取り、フーフーと息をかけて冷ますと、ゆっくりとそれを口に運んだ。
「おいしい。暖かい」
うまそうにグラスに口をつける彼を見て、私もゆっくりとウーロン茶を口に入れる。
「ああ、おいしい。おちつくわあ」
二人でベッドの上でまったりと過ごしていると、私のケータイの着信音が鳴った。
「誰から?」浩二は、私のケータイをのぞき込む。ちょっと、それはいくら何でもマナー違反だろ?
発信元を確認してから、私はいった。「青山先生だ」
ここでいう青山先生というのは、私の先輩であり、昨年まで私が担当していた作家だ。
「作家の青山ブルーマウンテン?」
「うん」
「今時分何の用だろ?」
「渋谷凛の連絡先を知りたいってさ」
「なんでまた?」
「今の担当さんが困っているらしい」
「理由はわからないかな?」
「その人が担当している別の作家の原稿が、〆切に間に合わないらしい。今回が初めてでないらしくて、最悪数回分はは青山先生の分で間に合わせ、それ以降は別の人に頼もうかということになったんだって。渋谷凛は、その候補の一人だそうだよ」
「ああ、その話は俺もあちこちで耳にしているから知っているぞ」
眉間にしわをよせて、浩二が返事をする。
「その作家って、望月友樹っていうんだろ?なんでもコイツは親がウチの会社の取締役だそうで、そのせいか本人も尊大な振る舞いが多く、あちこちでトラブルを起こしている」
「確かに、デビュー作が話題になったけど、その後はぱっとしないよね。ただの一発屋じゃん。いつまでチヤホヤしてるんだろうと私は冷ややかに思っていたけど、そんな事情があったとはね」私も、ため息交じりに答える。
「おまけに、その望月ってヤツを推しているのは、俺の元上司ときた。無能のくせに部下に尊大に振る舞うわ、上にペコペコするわで・・・」
その頃のことを思い出したのか、彼の顔は真っ赤である。
「アイツから受けた仕打ちを思い出したら、夜も眠れなくってさ」
そういうことがあったことは、今初めて知った。一時期荒れていたのは、それが原因か。
「噂なんだけどさ」私は一息置いてから、言葉を発する。
「アンタの元上司、いろいろと問題を抱えているみたいだね
「『みたいだね』じゃなくて、本当にいろいろと不祥事を抱えているんだよ。作家連中の恨みは買いまくっているし、代理店担当者とも金銭トラブルを抱えているし、さらにはフリー記者を顎でこき使い、アルバイトや契約社員の女性を片っ端から食いまくっているし」
「やりたい放題だね」私は唖然とする。
「よくクビにならないね」
「そりゃバックにいるのが、望月の父親だからね」
「じゃあ、そいつの行動はみんな・・・」
「そそ。あの取締役の意向を忖度してアイツは行動していると思って間違いない」
「青山先生からもいろいろ聞いたよ。その望月って作家を巡って、彼が連載している雑誌の編集部は大もめだって」
「そりゃそうだろう。編集長はあの男だが、ヤツはほとんどの編集部員から嫌われている。内部崩壊しないのは、二人の副編集長がなんとか部内をまとめているからだ」
「青山先生の彼氏も、何かある度に望月に振り回されて大変だって」
「イヤに内情に詳しいな、お前」浩二は、驚いた表情で私に問いかける。
「青山先生と同じなのよ、望月の担当」仏頂面で、私は答える。
「上郷?」
「うん」
「彼も災難だな。相当ストレスたまっているだろうな」浩二は憤慨した後、ああそうだ思い出したんだがとつぶやく。
「上郷、今青山先生と付き合っているんだってね?」
「みたいだね」
「いつの間にそんな関係になったんだろう?」
さあね?と、私は曖昧に答える。
「こういっちゃなんだが、青山先生の男関係は派手だからね。見た目おっとりしているけど、かなり肉食系らしいぜ」
学生時代から、かなり男関係が派手だったとは、あえて黙っておこう。
「どっちから口説いたんだろうね?」
「そんなこと、私が知るもんですか」付き合っていることは当人から聞いているが、どっちからコクったのかまでは聞いていない。
「それでさ」浩二がニヤリとする。
「今頃青山先生も、男とこんなことをしているのかなあ?」といいながら、彼は私に覆い被さってきた。私は言葉を発する間もなく、彼に唇を塞がれる。同時に、彼の両手が私の乳房に触れてきた。
浩二は私の乳房に触れると、力強く揉みしだきはじめる。そのたびに、ベッドがギシ、ギシと揺れる。
「アアッ・・・アアッ・・・」彼の大きく逞しいてのひらで、力強く乳房を揉むたびに、私の口から艶めかしい喘ぎ声が漏れる。
「ずいぶん感じているようだね」
「ねえ・・・お願い・・・お手柔らかにして・・・隣に聞こえちゃう・・・」
喘ぎながらも、私は必死に抗弁する。しかし彼は「フフフ」といったきり、さらにリズムを変えて、私の豊かな果実を揉みしだく。
「きれいだよ・・・そして、熱い・・・」
気が済むまで乳房を愛撫すると、浩二は時分の乳首を、私の乳首にこすりつける。彼の執拗だが愛情溢れる愛撫で、私の乳首は、硬く尖った。
「おやおや、ずいぶんカチカチになったじゃないか」彼は笑いながら、その熱い吐息を私の乳首に吹きかける。
「バカァ・・・イヤ・・・イヤ・・・」
息が荒くなる。だが彼が攻勢を緩める気配はない。自分の乳首を私の乳首にこすりつけた後、チョロチョロと舌でなめ回す。
「ウウ・・ウウウ・・・」私は歯を食いしばり、声を出すのを必死で我慢する。