※この作品はR-18です。

ご注文は私ですか?   作:右野向左衛門

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#5

でも、もうそろそろ限界が近づいてきました。彼は一層激しくわたくしを攻撃してきたのです。

「モウ・・・ダメ・・・」

必死の思いで彼の耳元でつぶやくと

「イッチャウ──────────────────────────────ッ!!!!」

と絶叫すると・・・・そのまま力尽きてしまいましたわ・・・

 

「先生、朝ですよ。起きてください」

上郷さんは私を揺すって、わたくしを起こしてくれました。

「上郷さん、今何時ですか?」

「朝7時をまわったところです」

上郷さんは、すでに浴衣を羽織っています。それと対照的に、私はまだ裸のままです。

「チェックアウトは10時です。もうそろそろ準備しませんと」

上郷さんはそう言うと、顔を私の耳元に近づけて

「夕べの燃えっぷり、スゴかったですね」

と囁くではありませんか。わたくしは顔を赤らめると、思わず

「バカッ!!」

と声を上げ、彼をどつくという醜態をさらしてしまいました。にもかかわらず彼は笑って

「先生、かわいいですよ」

と応じます。続けて

「それじゃ、もうそろそろ準備してくださいね」

といってきました。

「わかりましたわ」

と私は応じると、ゆっくりと上半身を起こします。乳房を布団で隠すと彼に手招きをして

「わたくしと付き合ってみない?」

と、冗談めかして誘ってみました。すると彼は急に真面目な顔になり

「先生、本気ですか?」

「上郷さんこそ、夕べは遊びだったのですか?」

いいえ、と彼はクビを横に振ります。

「私は本気ですよ。あなたが大作家になるためなら、私はどんなことだってしますよ」

そして私を抱き寄せると

「先生、愛しています」

といい、私にキスをしたのですわ。

彼の熱意を感じた私は、彼と付き合ってみることにいたしました。

「わたくしを大事にしてくださいね」

「もちろんです」

この機会に、私は一つ彼に真実を話すことにしました。

「私の本名は『翆』と申しますの。だからデートの時は、本名で呼んでくださいね」

「わかりました。みどりさん」

・・・ここまでが、私と彼のなれそめの話でございます。

 

しばらくぼーっとしていたら、かなり時間が経っているのに気がつきました。いけないいけない、仕事に集中しなくては。

2人が帰ってからも、わたくしは甘兎庵で構想を練っておりました。

練っては消し、書いては消し、書き加えては消しということを繰り返しておりましたら、パソコンにインストールしているLINEが、メッセージ着信の表示をいたしましたの。

「今どこにいるの?」

送り主は彼氏様でございます。

「甘兎庵でお仕事。そっちは?」

「まだ会社だよー(T_T)世間は土曜日だというのに休日出勤なんて冗談じゃねー」

「何時頃終わりそう?」

「わからん(-_-)なるはやで片付けるようにするけどさ」

「がんばってね。じゃあ、なんかあったら連絡して」

「りょーかい!!」

通信を切り終わると、わたくしはしばらく甘兎庵で仕事を続けたのですの。

区切りがついたところで、わたくしはパソコンをしまい、お会計を済ませましたの。

「先生、今日はお仕事進みました?」

千夜ちゃんが、微笑みながら私に話しかけます。

「ええ、思ったより進みましたわ。収穫も多かったですし、新しい出会いもありましたし」

「それはよかったですわ」

私はお会計を済ませてバッグを手にすると

「それではごきげんよう」

と挨拶し、甘兎庵の外に出ました。

 

それから15分後、わたくしは「ラビットハウス」というバーにおりました。

このお店は、わたくしが学生時代から足繁く通っていたお店で、昼はオシャレなカフェ、夜はバーになっていますの。そしてわたくしの処女作に出てくる人物のモデルは、ここの先代マスターなのですわ。わたくしは学生時代からか決めた文章をマスターに見てもらっては、彼にアドバイスをもらっていましたの。わたくしが小説家デビューしたのも、マスターに小説投稿サイトに投稿してみてはどうか、と勧めてくれたからですわ。だからマスターは、わたくしにとっては恩人でありますの。スランプになったときに、わたくしはここで働いていたことがあるのですが、今もたまに、バータイムのお手伝いをしていますわ。でも、わたくしが青山ブルーマウンテンだと気づいてくれるお客様は、ほとんどいないのですけれど。

「いらっしゃい」

「こんばんわ、マスター」

今のラビットハウスのマスターは、先代の息子さんですの。娘さんがいて、昼間は彼女が中心になってカフェをやっております。

「いつもの席、あいているから」

マスターはそう言って、カウンターの席を勧めてくれます」

「ありがとうございます。ひょっとしたら後からもう一人来るかも知れませんが、よろしいですか?」

「かまいませんよ」

といって、マスターは「予約席」と書いた立て札を、私の隣の席に置きました。

「何か食べますか?」

わたくしが腕時計を見ると、もう19時半近くになっていました。そういえば、高校生カップルと一緒にお団子を口にしてから、なにも食べていないことに気がつきました。どうりでお腹がペコペコなはずです。なにがいいかしら?とメニューを見ていたら、本日のお薦めパスタセットという文字が目に入りました。

「それじゃマスター、今日は『本日のお薦めパスタセット』でお願いします」

「かしこまりました。少しお待ちください」

マスターが準備している間、私はスマホでネットニュースをチェックしていました。すると少ししてから、メッセージアプリにメッセージ着信の表示が出ました。

「やっと仕事が終わったよー。今どこ?」

「甘兎庵からラビットハウスに移動して、これから遅めの夕食だよー」

「りょーかい!あと20分くらいしたら、そちらに着くと思う」

「オッケー。待っているよん。」

「愛している」

「愛している」

フフフ。この調子では、今夜は長くなりそうでワクワクしますねー。

私がニヤニヤしているのを見て、マスターが話しかけます。

「楽しそうですねー。彼氏さんですか?」

私は若干照れながらも

「ええ、そうです。私の担当でもありますの」

と答えます。

「彼氏さんは編集者なんですか?」

「はい。私の担当になって1年以上になりました」

「付き合うようになったのも、ですか?」

「それは、私の担当になってから少したってからですねー」

「担当編集者と作家が恋人同士ってケースは多いんですかね?」

「どうでしょうかね~。でも私のまわりにも、そういう人はいますねー」

本当は、もっとドロドロした関係になっている人たちも多いんですけどね、あまり私の口からはいえませんね。逆にドン引きされるかもだし。

「プライベートで、時間を合わせるのって難しいでしょうね」とマスターがいいます。

「そうですね。お互いに忙しいですから、最近はデートもままなりませんわ。仕事では始終顔を合わせているのですが」

「恋人同士」としてきちんと付き合うようになってからというもの、一夜を共にするどころか、昼間ですらお茶することもままならない、という悲しい現実。顔を合わせて悩み事を聞いてもらえない辛さを、LINEやSkypeで紛らわすという日々が多いんですけど、マスターにそんな愚痴をこぼすのもどうかな・・・と。

「はい、お待たせしました。本日のお薦めパスタセットです」

今日のおすすめメニューは、ミートソースです。

「すいません、お飲み物を聞くのを忘れていました。なにがいいですか?」

「じゃあ、ダージリンでお願いします」

「かしこまりました」

私はセットについているスープをすすると、早速パスタに口を運びます。

「ううん、おいしい!」私は心の中で独りごちるのです。

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