※この作品はR-18です。

蘇る記憶   作:添牙いろは

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第2話

 それは、男の俺にとって、瞳に焼き付くほどの眩さだった。

 三葉の中にいたある雨の夜のこと――早く寝なくてはならないにも関わらず、俺はなかなか寝付けないでいた。湿度も高く、じめっと暑い。少しでも涼を得るために、コップ一杯の水を求めて一階へと下りてみることにした。

 しかし、喉を潤し、台所から戻る段になると――

「……っ!」

 いや、本来隠れる必要はない。居間の向こうの廊下に見えたのは、おそらく四葉だろう。どうやらトイレに起きてきたらしい。

 彼女は三葉の妹であり、肉親という関係ではある。が、俺にはどうしたって他所のコだ。用を足しに行く女子と鉢合わせるのはやはり気不味い。それで、不本意ながら俺は台所の陰に隠れてやり過ごすことにした。

 しかし――彼女はトイレに向かうことなく、居間の方へと入ってくる。四葉の用事も飲水であれば、より気不味いことになりそうだ。と、気を揉むも、彼女はそのまま軒の方へ。この辺りで、俺は妹の様子がおかしいことに気がついた。

 確かに、周囲は雨音に包まれている。だとしても――まったく足音が聞こえないはずがない。それはむしろ、すり足で気配を消しているような。

 居間を抜けた先は庭である。こんな時間にこっそり外出しようとしているのであれば、感心できない。彼女はまだ、小学生なのだから。

 それで、様子を窺うためにコッソリと顔を出したとき――驚くべき光景を目にしたのである。

 こんなところで……着替え……?

 だが、するりと肌蹴た背中はさておき、前屈みになって下ろしたズボンから現れたのは……闇夜に浮かぶ、丸いお尻。

 そして、新たな服を纏うことなく、彼女はピンクの傘をパッと開いた。そのまま、雨の中へと発つために。

 これは、何かの見間違いではなかろうか。俺もまた、身を屈めたまま這いつくばり、ガラス戸の方へとにじり寄る。

 そこで、俺の前で繰り広げられていたのは――

 立ったまま大きく足を開き、その間から迸るのは女子の雨。露煙の中でも、その一筋だけは異質なものだとはっきりと判る。

 自分に幼女趣味などない。しかし……幼子とはいえ、女のコが立ったまま、それも素っ裸で用を足しているところを目撃しては――忘れろという方が無理な話である。

 とはいえ――

 俺の中から三葉が奪われ、大切な思い出と共に、衝撃的な記憶も消え失せた。

 はずだったのに。

 

『雨の中だって傘だ(・)け(・)は差してたし。傘だ(・)け(・)』

 

 露骨な念押しによって、俺は思い出さずにはいられなかった。あの夜見た、非現実的な情景を。

 そして、その言い分は――あたかも、それを繰り返そうとしているように感じられた。性徴前の子供の身体ではなく、危うくも大人びてしまった今の身体で。

 何事もなければそれでいい。

 だが――

 何事かが起きて欲しい、と心の中で願っている自分がいる。

 日中、脱衣所で見せてくれたあの身体は――かつての三葉――入れ替わっていた頃の自分を彷彿とさせられた。

 それを、もう一度見たくはない――といえば、嘘になる。

 だからこれは、ある種の偽善なのかもしれない。

 そんな複雑な心持ちを抱えながら――明日は仕事だ。昨夜のように、泊まり込むことはできない。だから、夜明けを待たずに、俺は宮水邸を後にした。

 終電に合わせはしたのだが――俺がそれに乗ることはできない。何故なら、まだ雨は降り続いていたから。四葉が、子供のような凶行に及んでいないのを確認して――それからの帰宅となれば、タクシーを捕まえることになるだろう。

 俺は、駅に向かうフリをしつつも、そのまま区画を一周回って再び彼女の家の前へと戻ってきた。そして、恋人の妹の部屋を注視する。いまは明かりが付いているが、彼女が眠るのは午前一時と聞いていた。ならば、その時間に電気が消えれば問題はない。

 腕時計と窓を見比べること二〇分――

 

 ――消えた。

 

 念の為――更に一〇分。しかし、誰かが玄関から出てくる様子はない。どうやら取り越し苦労だったようだ。

 そう思うと……何のために終電を逃したのか、何のために大枚はたいてタクシーに乗るのか、少し馬鹿馬鹿しくなってくる。目的はこうして彼女の無事を確かめること。そして、それは達成されたのだから、ガッカリすることなど何もないハズなのに。

 ともあれ、もう充分だ。今度こそ俺は、駅へと向かって歩き出す。

 しかし――

 

「瀧君❤」

 

 一つ目の十字路に差し掛かったとき――直進しようとしていた俺は、電柱の影から自分の名によって呼び止められた。無意識に振り向くと――

 

「み……三葉……ッ!?」

 

 それは、俺がかつて鏡の中で見た姿――とも少し違う。

 だが、そうなろうとした姿だ。

 彼女の髪の編み込みは複雑で、何度か挑戦してみたものの、成功した試しはない。

 だから、その姿だけはよく覚えている。

 しかし、一つだけ違うとすれば――

 肩から下に、何も着けていないということ……!

 その装いは、まさに傘だ(・)け(・)。その他には、雨に濡れても構わないようスニーカーではなくサンダル履きのみ。あとは――強いて挙げるとしたら、姉に似せたその髪型を束ねるためのゴム紐か。

 街灯だけの乏しい光の中、傘の下でもその肢体ははっきりと判る。股の上に茂る黒々としたところは、もう小学生ではない大人の証。そして、脱衣所では両腕によって隠されていたふたつの膨らみは、まるで、恋い焦がれていたあの頃のように――!

 一瞬だけ戸惑ったものの――俺にだって、それが三葉ではなく、その妹の四葉だということは判っている。

 だが、たった一つの呼び間違いによって――彼女も彼女で、確信めいたものを感じたようだ。異常性を感じさせないしっかりとした歩み。そして、俺の目の前で少し見上げたその表情は――いつも見せている余裕の他に、羞恥による熱を帯びている。だから、ついその瞳ではなく、上からでも判る凹凸を見つめてしまった。それにひとたび気づいてしまえば、もう彼女を直視することなどできない。

 こんな格好で何を――と問うには、俺は彼女を知りすぎている。時期は離れているとはいえ、このような所業を目撃するのは二度目なのだから。

 しかし、それを知っている旨を伝えて良いはずがない。ならば、それを隠しながらその行いを諌めるには――冷静に思考を巡らせようにも、俺は平常心を保てそうにない。

 混乱する俺を尻目に、四葉は俺の胸へとしがみついてくる。そして――

「やっぱり瀧君、糸守にいたことあるでしょ」

「な――っ」

 それは、まったく予想外の解釈。

「で、当時から私がこんなことしてたの……知ってたでしょ?」

「どうして……?」

「だって、この髪型を見てお姉ちゃんの名前を呼んだもの。こっちに来る前に髪を短くして、それからはもうこんな結い方したことなかったのに」

 写真で見た――程度では、間違えたりしない――彼女は、そう言っている。だからこそ、己の業を隠したりはしない。何しろ、俺にとって四葉は恋人の妹である。容易に踏み込んで良い立場にはない。だからこそ、そこに信頼を置き――逆に、四葉の方から踏み込んできたのだ。

「私の秘密、知ってたんでしょ?」

 でなければ、こんな時間に、狙いすましたように引き返してくるはずがない。それは認めよう。だからといって、正直に告白できるかはまったくの別問題なのだが。

「まぁ……その……」

 言葉は濁してみたものの、はっきりと否定できなければ意味はない。完全なる肯定の意味と捉えた裸の少女は、遠慮なく俺を手玉に取る。

「それは仕方ないから……少し、私のお願い聞いてくれないかな?」

「な、なんだ……?」

 間違いなく、拒否権などない。それをお互い承知した上で、

「その……」

 四葉は、少しだけ言い淀む。だが、この姿は彼女にとって危険だということには変わりない。だからこそ、さほど時間を掛けることなく。

「瀧君にも脱いで欲しいなー……なんてね♪」

 冗談めかした口調ではあるが、決して冗談ではないことはご覧のとおりだ。とはいえ……

「い、いや……それは……」

 女が脱ぐのと、男が脱ぐのとでは……目撃された際の社会的ダメージが違いすぎるというか……。こっちは、一瞬で通報されてしまう身である。だからこそ、俺がごねるのも当然織り込み済み。

「いいじゃん! 私と同じ格好になれ、ってだけのことだし!」

 裸の女のコに言われて、男が脱げない……などと、どうして説得したものか。それが不可能であるからこそ、四葉は攻め手を緩めない。

「なんなら、ここで悲鳴あげてもいいんだけど?」

 それはまさに、伝家の宝刀。ひとたび抜けば無理心中は避けられない。

 最初から……解っていたはずだ。俺に、拒否権などないことを。

 

 さすがに彼女とて、路上でひん剥くほど無慈悲ではない。多少は人目を避けられる公園に、俺たちは移動することとなった。

「こ……これでいいか……?」

 トイレで脱衣を済ませた俺は、恐る恐る四葉の元へと裸体を差し出す。だが、そんな俺の勇気に対して、彼女の目線は極めて冷たい。

「もっと堂々としたら? そうやって股間押さえてるの、超マヌケ」

 だから、脱衣所では俺に見られながらも、隠すのは胸だけだったのか。

 女子に堂々とされては、男として観念せざるを得ない。必死に押さえ込んでいた左手を、身体の脇へと力なく下ろした。

 すると……

「…………っ!」

 ガン見である。視姦とさえ言えるかもしれない。

「す……凄いね……そんなのが……お姉ちゃんの 膣内(なか)に 挿入(はい)ってたの……?」

「あ、あぁ……」

 そう改めて訊かれると、なんとも答えづらいものがある。だが、四葉の方はむしろ盛り上がってきているようだ。

「さ、触らせてくれる? いいでしょ? ちょっとだけだから。お姉ちゃんにも秘密にしとくし!」

 三葉のことを出されると、俺には逆らうことなどできない。四葉は足元に傘を置き――おそらく、間近で見るのは初めてなのだろう。おっかなびっくり、それでも退くことなく。血流の波に合わせてヒクつく肉の塊を、まるでバッタを捕まえるようにワッと両手で包み込んだ。

「わぁ……凄い……ホントに硬い……」

 こんなに股間をまじまじと観察されることなどなかったから、このように扱われると恥ずかしすぎる。俺はただ、四葉の身を心配して様子を見に来ただけのはずだった。なのに、どうしてこんなことに……

「と、ところで四葉。その……寝たんじゃなかったのか? 部屋の電気が消えたのを見届けてから帰ったつもりだったんだけど」

「タイマーで切れるようにしておいたんだよ。そのずっと前に、こっそり窓から抜け出した上でね♪」

 少なくとも、俺は四葉が外に出たのには気づかなかった。俺と三葉が別れを惜しんでいる頃にはとっくに外に出ていた、となると……

「ってことは……結構長い間外にいたんじゃ……?」

 ずっと全裸だった、ということもないだろうけど、服を着てても雨の夜は結構寒い。

「ん、ま、ね。だけど……」

 両手で包み込んでいたうちの片方が、彼女の屈んだ足元へと下りていく。

「 絶頂(イク)のは瀧君と逢ってから、って決めてたから。ずっと燻ってて。ドキドキして、熱くなってて。いいでしょ? ここでオナニーしちゃっても」

「え……?」

 もう、四葉は完全に開き直っているようだ。自分で慰めることすら恥じたりしない。こんな場所で、裸で肌を合わせている時点で、それ以上躊躇う理由もないのだろう。

「だってもう、ずっと触りたくて仕方なかったから。何なら、瀧君にもサービスしてあげるし!」

 そう言って、小さな唇で大きな塊を――

「むふっ、んむふぅ……むふぅ……❤」

 これはもう……完全に性行為……! 言い訳の余地なく、俺は不貞の域へと引きずり込まれてしまった。男の足にしがみついてのフェラチオ――柔らかな両胸はしっかりと押し付けられている。

「ふむっ、ふむんっ、んふっ、んふぅ♪」

 自身の股へと向かっている手は、上から見てもモゾモゾと忙しない。俺を 性感(カン)じさせるように、自身もまた、 性感(カン)じているのだろう。昂ぶるままに、興奮のままに、蹂躙していくのは乱暴な舌使い。それは純粋なる肉欲であり、男を求める剥き出しの女性性そのものだ。

 その様があまりに艶かしく――拙い唇にも敏感に反応してしまう。 絶頂(イッ)てはいけない――恋人以外の異性の前では――

 危ういところではあったが――四葉は俺を解き放つ。

「はぁ……アブないアブない……つい 絶頂(イッ)ちゃうところだったわ」

 どうやら、彼女も俺と同じ気持ちだったらしい。ただ……彼女は、 絶頂(イク)のは俺と逢ってから、と言っていた。ならば、ここで止める理由が解らない。

 股間の観察はもう充分なようで、四葉はふらりと立ち上がった。

「ねぇ、私、瀧君と相合い傘したい」

 そういうことなら、さっきからずっと一つの傘の中で、その……していただろうに。

 だが、彼女の言う相合い傘とは、向き合う形ではなく、ましてや横並びですらなく、同じ方を向いて、女のコが前に立ち――!

「だっ、ダメだろ! その……これ以上は……!」

 股の間に俺を通そうとしたところで、慌てて引き抜き後退った! が、振り向いた四葉の視線は――夜の雨よりもなお冷たい。

「お願い。コレ聞いてくれなかったら、本気で瀧君の人生メチャクチャにするよ」

 それは、四葉自身も同じはず。

「ど、どうして……」

 今度はしずしずと胸と胸を合わせて。背中まで腕を回し、四葉は俺の心の中へと呼びかける。

「私が、外で立ちションして遊んでたの……知ってるんでしょ?」

「ま、まぁ……それは……」

 アレは、遊びだったのか……。確かに、あの頃の彼女はまだ小学生。それ以上の行為へと結びつける知識もなかったのだろう。

 しかし、今は――

「私ね、お水いっぱい飲んできたの。 絶頂(イッ)たら絶対、おしっこ漏らしちゃうと思う。だけど……そのまま撞き続けて欲しいの。もうお外でおしっこするだけじゃ満足できない。女のコで男のコを 性感(カン)じながら……おしっこしてみたいの!」

 大人のカラダと、子供の好奇心。結びついてはならないふたつの要素が、しっかりと結びついてしまった。

「で、でも……避妊は……」

 三葉からは、避(・)妊(・)を(・)止(・)め(・)ら(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)。だから、俺は恋人がありながらも、その手のものを持ち歩いていない。

 そして、それは四葉にも既知のこと。

「うっかり 膣内(なか)で 射精(だ)しちゃっても……多分、大丈夫。安全日だし。それに、危険日のお姉ちゃんにあんなに 膣内射精(なかだし)して、未だに 妊娠(でき)てないんでしょ?」

 ぅ……案外隠しきれないもんだな……

「ホントにお願い。それだけ叶えてくれたら、もうこんなことやめるから」

 彼女自身、その行為が許されざるものだと承知はしている。が、心残りがあっては止められない。それを夢見て、ついズルズルと引きずってしまう。

 それを断ち切るためには――その想いを満たすためには――!

「約束だぞ?」

「……うんっ!」

「但し――」

 ごめん、三葉。いまの俺は、四葉に逆らえないことには違いない。

 だが……その後姿は、当時の恋人を思い出してしまう。

 隔たれた時の中で、決して手の届くことのなかった想い人のことを。

 この行為は、言い逃れようもなく浮気である。

 それでも、俺の心は三葉と共に――!

「――抱き合っている間、キミのことは三葉、って呼ばせてもらう。それでも、良ければ」

 これに、四葉は――

「うん、全然構わないよっ!」

 何の憂いもなく――きっと、当時の三葉が笑ってくれたらこんな顔だったんだろうな。

 だから、俺はやり直す。三葉との、すれ違っていた時間を埋め尽くしていくように――

「あぁ……これがチンチン……これが……セックス……!」

 やっぱり、この姉妹はよく似ている。社会人として付き合い始めた三葉もこうだったし、仮に七年前に抱き合ったとしても、こんな感動を見せてくれたに違いない。

「大丈夫か? 三葉……動くぞ」

「うん! でも、私のおしっこが終わるまで、絶対に止めちゃダメだからね!?」

 さすがにコレは言わないかもしれないな……

 しかし、その初々しく漏らされる声は、やはり昔を思い出させる。

「あ、あんっ! これ……こんなのぉ……❤」

 傘からはみ出た髪の毛が揺れて、つやつやと振り撒かれるのは大粒揃いの水飛沫。その後ろ姿は――

「三葉……俺……俺……っ!」

 無駄に意地を張って伝えられなかったあの言葉。

 もっと早く告げていれば、何かが変わっていたかもしれない。

 七年も遠回りしなくて済んだかもしれない。

 それをいまさら口にしたところで、すべては遠い日のこと。

 だけど、それを少しでも取り戻せるのなら……!

「三葉のことが……好きだ……っ!」

 俺と彼女は付き合っている。だから、こんなものは何度も交わしあった挨拶のようなもの。

 だから、俺が告げた相手は、今の三葉じゃない。

 ましてや、四葉ですらない。

 俺が――俺が届けたかったのは――

「うんっ……私も大好きだよっ、瀧君❤」

 彼女は、こちらを振り向くことはない。

 ただ、三葉と――初めて恋した女のコと同じ髪を振り乱しながら。

 別人だと、頭では解っている。

 だとしても――俺の心が、

 そして、 性感帯(カラダ)が、

 すれ違っていたあの頃へと立ち戻っていく……!

「三葉……俺……俺…… 射精(イキ)そう……っ!」

 だが、動くのをやめるわけにはいかない。抱き合う前に交わした約束は、三葉とのものなのだから。

「止めないで、って言ったでしょ!? もっと、もっともっとぉ……っ!」

  膣内(なか)が締まってきているのは、我が身をもって 性感(カン)じている。だから、共に高まりの中にいることは判っているのだが――

「三葉……もう……っ!」

 諦めかけた、そのとき――

 

「 絶頂(イク)…… 絶頂(イク)ゥ!」

 ビチャアアアアアっ!

 

 くっ、 絶頂(イッ)たからか……締まってる……っ!

「はぅんっ! あはぁっ、 潮噴(で)てるのぉっ❤」

 

 ビチャァっ! ビチャァっ! ビチャァっ!

 

 約束は、 潮噴(だ)し切るまで。

 これをすべて絞り終えれば、彼女は満足するはずだ。

 でも……こんなに絡みつかれては――

 

 びゅる……っ

 

「しまっ……」

 それでも、俺は腰をお尻へと叩きつけ続ける。その度に、びゅるっ、びゅるっ、と迸る不甲斐なさを止めることができない。

「あはっ、瀧君も……お漏らしぃ……♪」

 ここまで 射精(だ)せば、さすがに気づくか。ズッ、ズッ、ズッ、と 膣奥(おく)を求め続け……彼女の放水が終わった頃には……もう……

「熱い……どうしよ……熱いのぉ……❤」

「ごめん……俺……」

 これで孕ませてしまったら、どうして責任を取ったものか。四葉に対しても、三葉に対しても。

 だが、当の本人は驚くほどに楽観的だった。

「いいって。私が無理言ったんだから」

 何も考えていないようにも見えるが、元々肝も据わっているのだろう。何しろ、こんな所業をやらかすくらいの女のコだし。

 とはいえ。

「これで本当に、終わりにするんだよな……?」

 目一杯背中を捻り、こちらに向けられた彼女の横顔は――三葉とは、似ても似つかなかった。

「うん、いい思い出になったしね。これでこんなことは最後にするよ」

 少しガニ股になりながら、四葉は自ら俺を引き抜く。

「ホントにもう、思い残すことはないってゆーか……これ以上変態チックなことは思いつかないってゆーか」

「は……ははは……」

 これ以上ヤバイことをされたら、今度こそ警察のお世話になりかねない。

「だから、これで過去との因縁は精算できたかな。ありがとね、瀧君っ♪」

 彼女は傘を拾い上げると、ヨタヨタと公園を後にしていく。が、その前に少しだけ振り向いて、

「エッチしたからって、私に惚れちゃダメだぞ❤ これからも、ちゃぁんとお姉ちゃんのこと、大切にしてあげてねっ」

「当たり前だ」

 というか、その仲にヒビが入りかねないことを無理強いしたのは四葉の方なのだが……。とはいえ、もう彼女が俺たちの間に立ち入ってくる意思はないようで安心した。本人の言うとおり、これで過去の禊は済んだのだろう。

 だから、俺も帰ろう。ちゃんと現代人らしく服を着直し、そして――タクシーで。

 

       ***

 

 関東の夏は天気が崩れやすい。だから、毎週のように宮水邸の世話になっていれば、雨に降られるのも必然である。

 だが……あの日の夜に過去のすべては水に流すことができたはずだ。

 俺も、そして、彼女も。

 なのに、俺はまた戻ってきてしまった。例によって、タクシーを捕まえる覚悟で。

 三葉とは玄関前で別れて、そのまま区画を一周。簡単な見回りだけできれば、俺の気も済むと思っていた。

 しかし――

「また来てくれると思ってたよ、瀧君❤」

 アパートの軒下で雨宿りをしているツインテールの女のコは、傘を開くことはない。パッと路上へ飛び出すと、俺の傘下へと潜り込んでくる。

「四葉っ、も、もう……やらないって約束じゃ……!」

 相変わらず、彼女が持たないのは雨具だけではない。それを見越したように、濡らしてしまう服すらなく――秘毛の滴りは、空模様とは関係ないような気がする。

 半袖から伸びだした俺の腕に、柔らかな肌がクニュリと押し付けられる。ふたつの温かな塊で挟み込んで。

「うんっ、もうあんな髪(・)型(・)はしないよ! 面倒だし」

 髪型って……詭弁にも程がある!

 と、叱責したいところではあるのだが……

「でもさ、瀧君だってこうして戻ってきてるじゃん」

 それを言われると反論の余地もない。

 俺は、彼女を信じていなかった。

 彼女の、これで最後にするという誓いを。

 それを自分でも解っていながら、こんな無思慮に。

 むしろ、ほのかに期待して――

「だからぁ……もう少しだけ、私のお願い……聞いてくれないかなぁ?」

 

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