この世界には、主人公が存在する。
主人公というのがどういう概念なのかを僕の考えで簡単に説明すると、「勝つことを宿命づけられた存在」だ。
逆境になるほど強くなる。倒した敵が味方になる。諦めない限り道が途絶えない。
そんなご都合主義じみたストーリーが運命として偶然に、或いは必然に起こるような人物、それが主人公だ。その力の前では、たとえ僕が1京のスキルを持とうが、全知全能であろうが、決して勝つことは出来ないだろう。
実際、僕は僕の言う所の主人公であるめだかちゃんに勝つことは出来なかった。
直接戦ったわけでは無いのだから負けたとは言わないかもしれないが、結局僕はめだかちゃんの味方になったのだから、それは彼女にとっての勝利と言って差し支えないだろう。
別にめだかちゃんの味方になったことに後悔はしていないけどね。
僕は以前人吉くんを主人公として育て、めだかちゃんに勝利させたことがあるけれど、その結果から見て、主人公には同じ主人公という属性を持つ人間しか対抗出来ないということが分かる。
僕が手を貸した人吉くんは兎も角、自然に生まれる本物の主人公なんて物は、数百年、数千年に一人しか生まれない。
それに主人公と言うだけあって、彼らは皆、人を助け導く聖人的な人物であり、世界にとってプラスになる者達ばかりだ。
だが、陳内間言――この男は違う。
主人公に近い存在ではあるが、めだかちゃんとはまた別種だ。
戦うことで人と分かり合おうとするめだかちゃんと違い、彼は戦う気も無いし分かり合うつもりも無い。ただ本能のまま女性を犯し、嬲りたいだけだ。
例えるならば、めだかちゃんが少年漫画の主人公とすれば、陳内は低俗なエロ漫画の主人公と言った所だ。いや、この場合漫画ではなく小説になるのかな?
そんな奴僕だって初めて見たが、実際問題めだかちゃんは彼に負け、服従させられている。
それはつまり、彼もまた主人公の資格を持つ者であるという証明にほかならない。
彼にとって女性は望めば手に入る玩具でしかなく、それに逆らえる者は居ない。放っておけば、目をつけられた女性は片っ端から襲われるかもしれない。
そんなの……許せるわけないよな。
◆
「まぁそんな訳で、君は僕がぶっ倒させてもらうぜ」
箱庭学園校舎の一室で、安心院なじみは陳内間言と対峙していた。
休日の校舎に他の生徒は居ない。鍵の閉められた校門や扉も、なじみのスキルを持ってすれば簡単に開けられた。
「休みだっていうのに突然学校に呼ばれたと思ったら、そんなことを言うために呼んだんですか、安心院なじみさん」
「僕のことは親しみを込めて安心院さんと……いや、君みてーな奴には呼ばれたくないか」
二人は初対面であるが、陳内はなじみのことを知っていた。恐らくめだかに聞いたのだろう。めだかの味方になる人物でもっとも警戒するべきはなじみであろうから、そのことが伝わっているのに不思議はない。
「なぜ自分が倒されるのか、その理由くらいは教えてあげようと思ってね」
「倒すって……、僕がその主人公って奴だからってだけでですか? 僕はただめだかと清いお付き合いをしているだけですよ?」
白々しく陳内は言う。
実際陳内に力の自覚は無いのかもしれない。だが、その力は明らかに異常であり、異変なのだ。
「やってることはスキル使って無理やり服従させてるのと代わりねーだろ。めだかちゃんがお前みたいな醜男と本気で付き合うとでも思ってんのかよ」
「ふひひっ、ヒドイこと言いますねえ。でも貴方の言う通りなら、貴方でも僕を倒すことは出来ないんじゃないですか?」
「それはどうだろうね。僕がめだかちゃんと殴り合ったりのバトルをしなかったのは、彼女がきっとバトル漫画の主人公だからなんだよ」
めだか自身は自分との戦いを避けるなじみに対して過大評価だと言ったが、なじみはそうは思っていない。
理屈はどうあれ、戦えば必ず負けるとなじみは信じ切っていた。
「でも、君は明らかにバトル系作品の主人公じゃない。エロ方面では最強かもしれないけど、戦闘力皆無のデブなんて僕の敵じゃねーよ」
「なるほどなるほど、確かに僕は殴り合いなんて出来ないし、バトルになったら簡単に倒されちゃうでしょうね」
陳内は諦めたように言う。
だが、その顔から不快な薄笑いが消えることは無かった。
「なら僕は、やっぱり僕の得意分野で戦うしか無さそうですねぇ」
そう言って、陳内は履いていたズボンとパンツを突然脱ぎだし、何も纏わぬ陰部を露出させ見せつけてきた。
男のソレは、既に目の前の少女の痴態を想像し、高く屹立していた。
「汚ねーモノおっ勃てて、なんのつもりだい? まさかそんなもん見せつければ僕がどうにかなるとでも思ってるのかな?」
なじむは見下すように、男のソレに冷たい視線を送った。
「めだかはこれ見えたらすぐに発情しましたよ。貴方は違うんですか?」
「ハッ、めだかちゃんは性への好奇心が強い方だったんだろうね。僕はキモいとしか思わないぜそんなクソチンポ」
男性器など所詮生殖のための器官としか思っていないなじみに、そんな奇策とも言えない愚行は通用しない。
頭が悪いとしか思えない男の行動を、笑って蔑む。
「へぇ……、その割には僕のチンポから目が離せないようですけどね」
陳内の言葉に、眉をピクリとさせて反応する。
冷やかな眼差しで睨みつけているのは確かだが、そこに視線が釘付けになっていると言えないこともない。
「君が見せつけてるんだろ、見られて恥ずかしいなら隠してろよ。吐き気がしてくるからさ」
なじみは顔を前に向け、陰部から視線を逸らす。その強気な姿勢を見て、陳内は笑いが堪えられなかった。
「くふ、くふふふ……」
「何が、面白いんだ?」
「いや、涎垂らしながら凄んでも、笑えるだけだなぁと。ぶふふっ」
「!!」
言われて気づく。
いつの間にか口内に唾液が溜まり、口端から垂れて、はしたない糸が引いているのを。
「なんだよ、これ……」
口元を抑え、自分の反応に困惑する。
「やっぱり僕のチンポが欲しくなっちゃったんですね。これを見て発情したんでしょう?」
「……ふざけるなよ。僕がお前みたいなキモデブのチンポで発情なんかするわけねーだろ」
なじみは陳内の言葉を否定する。あたかも自分の意思さえも否定するかのように。
そうしないと、飲み込まれてしまいそうだったから。
「ふーん、じゃあなんでさっさと殴りかかって来ないんですか? べらべら喋ってないでさっさと僕を殴り倒せば終わることなのに」
「それは、だから君にも自分の現状を説明してやってるだけだって言ってるだろ」
「そもそも、僕の目的が女を犯すことだって分かっているのなら、女の子一人でここに来るべきじゃなかったのでは? 集団でボコれば確実でしょ」
「……君程度、僕一人で十分なんだよ」
「主人公相手には自分では勝てないから他人を使う。そのはずなのにそうしなかったのは、最初から勝つ気が無いから、っていう風にしか見えませんよね」
「……黙れ」
なじみは、拳を握って敵意を抑え込む。
「なんで貴方が無防備にも一人で僕の前に現れたか当ててあげましょうか?
「黙れよ」
「僕に抱かれに来たんでしょう? 本当は」
「黙れって言ってるだろ!」
声を荒げ、怒気を露わにする。
ほぼ無敵であり、全能に近い少女の心をこうも乱すことが出来るのは、やはり主人公という属性を持った者にしか出来ないことかもしれない。
「なんだかんだ言っても結局はこれが欲しくてたまらないなんて、可愛いなぁ。親しみを込めて安心院さんって呼んでいいですか?」
「君なんかにそんな風に呼ばれたくないってのも言ったはずだぜ」
卑しい笑みを浮かべる男をキッと睨みつける。
「クソ餓鬼が調子に乗るなよ、僕の一京のスキルのうち戦闘用スキル一つ使うだけで、君程度殺すのは簡単なんだからよ」
なじみの保有するスキルの中には、戦闘用だけでも膨大な数のスキルが存在する。それこそ神を殺すような物までも。
故にこの脅しは虚言などでは無く、実際に「出来る」ことを言っている。
「出来るなら、やってみればいいんじゃないですか?」
「あぁ、やってやるさ。死んで後悔しな」
情けも容赦も無く、なじみは攻撃用のスキルを発動する。
発動――しようとした。
「な……!?」
だが、何も起こらない。
スキルが発動しない。
格闘系スキルも、刀剣系スキルも、生物系スキルも、精神系スキルも、魔法系スキルも、ラスボス系スキルも、およそ戦闘に使えるスキルの全てが自分の意思に反して効力を発揮しない。
「どうなってる……、君が何かしたのか……?」
相手のスキルを封じるスキル――そんな物を陳内が持っているのかとなじみは予想した。
だが、違う。
「いやいや、僕は何もしてませんよ。正しく言うなら、安心院さんが何もしなかったんじゃないですか?」
「どういう……意味だよ」
「安心院さんが本心では僕に攻撃なんてしたくなかったから、使いたくても使えないんですよ。……いや、使いたくないから使ってないだけ、ですかね」
「そんなことあるわけ……」
否定しようにも、男の言う通りスキルは依然として使えない。
そしてなにより、逸したはずの視線が引き寄せられるように再び肉棒に釘付けになり、それを見ているだけで心臓が早鐘を打ってしまっていた。
(女を強制的に発情させる力……こんなに強力なのかよ……!)
スキルとは違う、その者が持つ生物としての性質とも言える力。無意識すら操作するその性質に、畏怖を覚える。
恐らくなじみがスキルで陳内とめだかの交わりを覗き見た時から、こうなる様に深層心理が書き換えられていたのだろう。
牝の本能が、この牡を求めてしまっている。
「涎垂らしながら僕のチンポ凝視しちゃって、もしかしてしゃぶりたいんですか?」
言いながら、男はこちらに近づいてくる。
「いいですよ、僕のこれ安心院さんの好きにして」
男のペニスが近づいてくる。
「く、来るな……」
(まずい、まずい……、この僕が、こいつのチンポ欲しいと思ってしまってる……口いっぱいに咥えて舐め回したいと感じている……!)
蔑んでいたはずの汚いペニスに、傅くように奉仕したくなる。
にじり寄ってくる男から、逃げるように後ずさりして壁に背が当たった。
「どうしました、戦うんですか? それとも跪いて奉仕するんですか?」
「ぅ……あ……」
まるでただの小娘のように、怯えた表情を見せるなじみ。
人外であり悪平等である自分が、人間に屈服するなどあり得ないことだ。なのに、身体は勝手に動いて、男の前に身をかがめて膝立ちになってしまう。
「ほら、しゃぶれよ」
「ぅぐ……」
高圧的な命令に、胸がドキリと高鳴ってしまう。
眼の前に突き出された肉棒から漂う、牡の匂いが鼻を突いて、「フー、フー……」と荒い息を吐く。
「覚えてろよ、お前……」
上目遣いに男を睨みつけながら、なじみは震える舌を差し出した。
「ん……ぇろ……」
亀頭に先端が触れる。
嫌悪すべき行為なのに、それだけで下半身が疼き、秘所が濡れ始めてしまう。
「んれろ……れろ、ぺちゃ……ふむぅ」
舌を絡めるように亀頭からシャフトへと舐め回して、唾液を眩して馴染ませていく。
そして唇にペニスが触れ、口内へと侵入していく。
一度口に含んでしまえば、本格的な口淫になるまでは早いものだった。
「はむっ、れるれる……ん、んんっ、じゅぶ、じゅぶ……」
(なんで、こんなモノが美味しいだなんて……)
口腔にペニスを納めれば、もう舌の動きを止められない。凄まじい牡臭と恥垢の味で吐き出しそうだが、身体はそれを求めているのが分かる。男のペニスを舐めしゃぶっていると、頭が熱に浮かされたようになり、どんどん興奮してしまうのだ。
「もっと積極的にお願いしますよ。エロく音立てて吸ってください」
「くっ……、んじゅっ、ずじゅ、ず、ずずず~っ、ン、ンぶぅっ……!」
悔しそうな表情を作るも、口は言われた通り従順に奉仕を激しくしていく。
全てを見下していたはずの少女を跪かせ、フェラを強制している事実に、男のペニスは更に硬度と大きさを増す。
「まだ、大きく……、はぶうっ、んちゅ、ちゅるるる……れろぉ……」
「うーん、気持ちいいけど、やっぱりめだかのほうが上手いなぁ」
(くそっ、こんなことやったことねーんだよ)
心の中で悪態をつき、それでも熱心に竿を舐め上げる。
「ちゅうぅ、はむ……ペロ、ぢゅぬ、ぷあぁ……、んじゅるる……っ」
こうしていると、男に抗うことが苦痛で、従うことが幸福だと感じてしまう。
己の身体が動きたいように自然に行動しているつもりが、いつの間にかこんな馬鹿げたことをさせられている。今はこのペニスを口で気持ちよくすることが、自分の一番したいことなのだ。
(キモいのに……もっと悦ばせてやりたくなっちまう……)
服従し、奉仕することの快感。それはなじみにとって初めての体験で、口に入れるのも大変な巨根を懸命に咥え込む。
「は、ぶっ……ぬちょ、ちゅぷっ、ン、レロレロ……ずじゅじゅ~」
たどたどしいが、次第に慣れ始めるフェラチオ。だが、それでも射精に至るほどでない。
「やっぱり、僕がちゃんとやり方を教えてあげるべきみたいだね。こうやるんだよ、こうっ」
男はなじみの後頭部を鷲掴みにすると、無理矢理にペニスを喉の奥にまでねじ込んだ。
「ぶぼおおぉお!? んんん、ごっ、んぐおおおお!?」
息が苦しく、えづきそうになるのも無視して、陳内は腰を振る。
喉を使ってペニスを扱き上げるような凄まじいピストンに、なじみは苦しみの呻き声を漏らしながらビクンビクンと身体を震わせていた。
「ほぎゅ、んぐぐ、ごぼぼおおお~~~」
なじみの身体など全く気遣わない強引なイラマチオだが、そんな苦しいだけの行為にも、発情した身体は秘所から蜜を垂らして悦んでいた。
いつまでも続くような激しい口淫に、気が飛んでしまいそうになる。
「これがフェラのやり方ですよ。これから何度も教えてあげるから、覚えていってくださいね」
「おぶ、おぶっ、ぐぶぷ……っ、ん、んぎゅうぅう……」
拒否したいが、頭をガッチリ掴まれ、口内にもペニスを突き挿れられて、話すことも首を振ることも出来ない。
何も出来ず、ただこの行為が終わるのを無抵抗で待つしかない。
「精液出しますよ、全部飲んでくださいねっ」
「んぐぅ!? ひゃ、ひゃめ……ふぐうぅぅん! ぶむ、ぅぶ、ほごおおおお!」
嫌がるなじみの顔を更に前後に振り、喉奥に何度も亀頭を打ち付ける。そしてペニスがドクンと脈打ったかと思うと、大量の精子が口内に吐き出された。
「ごぼっ、ぶぼ、んびゅぐうぶううぅうう!?」
「うぉ、くうう~~~!」
ペニスが脈打つ度に、ドロドロの精液が喉に流し込まれていく。
頭が固定されて逃れることも出来ず、強制的に精液を嚥下させられる。
「うげ、ぐふっ……げほ、うぷ……うぇぇ……」
呼吸するため必死に精液を飲み干し、ようやく口からペニスが引き抜かれる。
(不味い、臭い、気持ち悪い……!)
喉で粘つく精液の臭いが鼻腔へ伝わり脳にまで届く。
「どうです、ザーメン美味しかったですか?」
陳内は射精を終えスッキリし、ニヤニヤと笑ってなじみを見下ろす。
「はぁ……はぁ……げ……ゲロマズだぜ」
味も臭いも食感も吐き気を催すほどで、最悪としか言えない。
(なのに……なんでこんなに……嬉しいんだよ)
男を射精に導けたこと、子種をたっぷりと胃に流し込めたこと、陳内に書き換えられた脳内は、それらをどうしようもなく幸福に感じてしまっていた。
「くふふ……なら、もっと悦んでもらえるよう頑張らないといけませんね……」
「……やってみろよ。言っておくけど、僕はチンポなんかには絶対負けないぜ」
下卑た視線で身体を舐めるように視姦してくる男に、なじみは未だ反抗的な眼で睨み返した。