妹に犯されたその日の夜、鈴梨はお風呂場で念入りに身体を洗っていた。
特に芽依の舌が這った場所をーー性器を重点的に。
まるで見えない穢れを落とすように何度も何度も繰り返し洗う。
「……」
無論、こんなことをしても無意味な事は鈴梨自身が一番よく理解している。
幾ら洗った所で犯された事実は消えないし、状況が好転するようなこともない。
だがそれでも洗わずにはいられなかった。
例え何も変わらなかったとしても、多少の気休めになるのなら今はそれで充分だった。
「……ふぅ」
泡を落とし湯船に浸かった鈴梨の口から自然と息が漏れる。
「あぁ。気持ちいい。お風呂ってどうしてこんなに気持ちいいんだろ」
鈴梨の身体を包み込むお湯には特別な力は籠められていない。
銭湯や温泉の様々な効能が宿るそれとは違い、このお湯はただのお湯である。
疲労という毒素がお湯に溶け出すような感覚を覚えようと、それはただの錯覚でしかない。
事実、ステータスを確認しても体力や魔力が劇的に回復してるようなことはない。
「ふぅ。極楽極楽」
だが、それでも。例えお湯に不思議な力が備わっていなくても。
元来お風呂好きの鈴梨にしてみれば、入浴という行為自体が極上の癒しで。
それこそ今この瞬間は妹に犯されたおぞましい現実すら忘れられる至福の時間だった。
「お姉ちゃん、芽依も一緒に入るね」
だがそんな安らぎの時間も長くは続かなかった。
何重にも魔法を施し厳重に閉ざしていた扉から魔法が解除され、扉が開け放たれる。
そうしてお風呂場に闖入者が姿を現した時、鈴梨の顔は見る見るうちに蒼白した。
わかっていた。わかっていたことだ。芽依がお風呂に来るだろうことは。
そしてどれだけ魔法で扉を固めようと、我が妹とは思えない程天賦の才に恵まれた彼女なら赤子の手をひねるように難なく突破してくるだろうことは。予想していたことだ。
「ふふふ~ん」
けど、どこかで甘く考えていた。言い換えれば期待していた。
入浴中や睡眠中、トイレの時ぐらいはのんびりさせてくれるのではないかと。
「それじゃー、お邪魔します」
身体を洗い終えた芽依が浴槽へ入ってくる。
足を伸ばせる広さはあれど、決して大きくない浴槽の中へ。
それも態々鈴梨の目と鼻の先に。向かい合う形で。
「ねぇお姉ちゃん。芽依、お姉ちゃんのあそこまた触りたいな。触ってい~い?」
拒否も拒絶もはなからさせる気ない癖に。
芽依は純真な笑顔を浮かべ、上目遣いで問いかけてくる。
狭い浴槽内に強姦魔と二人きり。
それが意味することはただ一つ。
この瞬間、浴槽という憩いの場は地獄と化した。