※この作品はR-18です。

智花アフター   作:gajun

10 / 25
個人的にやや微鬱展開になります。


膨らみ過ぎた欲望

「えへぇ~……昴さーん」

 ベッドの縁に腰を下ろし、胸に飛び込んできた少女を優しく抱き寄せる。

 俺の胸に頬を擦りやせながら甘える少女の髪を無意識に優しく撫でつつ、さりげなく一抹の不安を感じてしまっていた。

 

 ……なんていうか、最近智花のことちょっと甘えさせ過ぎちゃってないか?

 あっさりOK出しちゃった俺も俺だけどさ。

 二日ぶりに再会した少女は、朝練が終わった後にさっそく恥ずかしそうにこの後抱いて欲しいとおねだりをしてきた。

 俺の方も彼女と会えなかったことに思っていた以上にストレスを感じてしまっていたためか、即答で快諾してしまう。

 その結果がこれだ。

 

「昴さん……温かくて、良い匂い……ふぁぅぅ……」

 智花はあまりにも無防備に男に全身を擦りつけるように体を押し付けてしまっていた。

 少しでも触れ合いたいと無意識に感じてしまっているのだろうか?

 

 とはいえ小学生の頃よりも過剰なスキンシップを行ってしまっているこの状況に少なからず危機感を抱いてしまっているのも事実。

 彼女自身が小柄で胸も小さいことを気にして嘆いてはいるものの、いつまでもそんなわけもなく日を重ねるごとに徐々にその身体は一層女らしくなってきていることを感じていた。

 小さいとは言っても、智花は世間一般的に見てもかなりのレベルの美少女だと思う。

 そんな子が俺に甘えること目的で無防備に体を押し付けてきてしまっているのだ。

 彼女の成長をその身体で感じながら、甘やかしているうちに俺自身の身体にも徐々に変化が現れ出してきてしまっていた。

 これまでにも何度か少女の甘い匂いや柔らかな感触に雄の本能とその象徴が情けなくも反応はしてしまっていたが、智花を膝の上で乗せて抱き合っている体勢というのが幸いし、自分の太腿で抑え込むことでギリギリで隠し通すことができていた。

 智花もまさか自分が座っている太腿の直下に危険物が潜んでいるとは考えもしていないだろう。

 

 

 しかし、ついに事件は起きてしまった。

 きっかけは何気なく行った行為だったのだろう。

 ほんの少しだけいつもよりも甘えたくなってしまい、より強く人肌の温もりを求めるために俺と体を密着させたいと思っただけの行為かもしれない。

 

「……ちょ、ちょっとだけ……失礼しますね」

 紅潮させた頬と不安に揺れている瞳でこちらを見上げている少女が小さな声で呟く。

 この状況でこれ以上なにかできることなんてあるんだろうか?

 不思議そうに彼女の様子を見ていると、直後の行動に思わずドキリとした。

 

「――と、智花っ!?」

 理性が今すぐ彼女から離れろと警鐘を鳴らしている。

 だが、あまりにも予想外で突然すぎる行動で体がぴくりとも動かない。

 いくらなんでも考えすぎだと思うが、そうとしか思えない。

 でも、なんでだ?

 あろうことか彼女は、両手を俺の背中に回すと、まるでわざと自分の胸を俺の胸板に押し付けるような動きをしながら抱きついていた。

 彼女のささやかだが柔らかな膨らみの感触が惜しげもなく俺に与えられる。

 突然の彼女の行為に激しく動揺しながらも、男の本能かその心地良い感触に意識の大半を奪われてしまう。

 

 ほんの数日前に見た夢が脳内でフラッシュバックする。

 まるで智花に甘えること以上の行為を求められているような錯覚。

 

――ダメだ。落ち着け。

 

 理性を総動員して、目まぐるしく暴れ回る心を必死に押さえつけ今の状況を整理する。

 俺自身のためでもあるが、何よりもそれ以上に何物にも代えがたい大切な彼女のためにもこの状況に流されてしまってはいけない。

 

 彼女のためにも窘めるべきだろうか。それとも――

 ……いや、下手な発言をして彼女に嫌われてしまうのではないか?

 一瞬そんな恐怖が脳裏を掠めてしまった。

 自分が取るべき行動が選べず逡巡していると、

 

「…………はしたないことをしてしまって……ごめんなさい」

 消え入りそうなくらいか細い声だが、彼女は確かにはっきりと謝罪の言葉を俺に告げたのだ。

 彼女に自覚があるのなら、こんなこと今すぐにでも止めさせなければならない。

 

「智花。ダメだよ……こんなことしちゃ」

 意を決してゆっくりと絞り出すように声を出す。

 荒ぶる感情をおさえ、できる限り彼女を怯えさせないよう優しく声をかけるように努める。

 してはいけない事をしているという自覚がある彼女を激しく叱責することなんてできない。

 間違っても自分から進んでこんな真似をするような子じゃないことはわかっている。

 

「――!? ごっごめんなさいっ!! わ、私……実は……」

 ほんの少し軽く声をかけたつもりだったのだが、それでも彼女はびくりと身を震わせ怯えてしまっているのがわかる。

 俺の方も余裕なんて微塵もないが、俺よりもまずは彼女に落ち着いてもらうことが最優先だ。

 

「もしかしてまたみんなに――」

 俺を誘惑して来い。みたいにけしかけられちゃった? と軽く笑い飛ばすつもりで続けようと思っていたが、

 

「――違いますっ!! みんなは関係ありませんっ!! わ、私が勝手に…………私が……」

 驚くぐらい力強くはっきりと友達は無関係だと言い切られてしまった。

 さすがに完全に彼女の独断というわけではないだろうけど、自分の行いで友達を巻き込まないようにしているのだろうか。

 だが彼女がここまで切迫してこんな行為にまで及んできたということは、きっと何か事情があるに違いない。

 

「うん。きっと何か理由があるって信じてる。とりあえず、悪いんだけどちょっと離れよっか。俺もこんな風に智花に甘えられるとドキドキしちゃうからさ」

「ふぇ? ドキドキ……」

 言ってから心底後悔した。

 彼女のことにばかり気を向けすぎてしまい、今の俺と智花の体勢が致命的な状況になっていたことに、今更気づいたのだ。

 絶えず送り続けられていた少女の甘く柔らかな刺激が、俺の下腹部に血液を大量に送り込み固く膨張させ始めていた。

 たとえ衣服越しであろうと決して触れさせてはいけないものが、少女の内股に押し付けられてしまっている。

 

 ここで、一つの幸運と不運が同時に起きてしまった。

 幸運なことはまだ智花は今自分の脚がどこに触れてしまっているか気づいていないことであり、

 不運なことが、気づいていないため彼女はその触れている硬い物がなんであるかも考えず、何気なく確認するかのように自らの脚をこすり付けるように押し付けてきたことだ。

 程よい刺激と、その快感を与えてくれているのが智花だということ。それらの事実に俺の股間は更に硬さと大きさを肥大化させる。

 

 油断し切っていたタイミングで与えられた刺激に、反射的に股間をびくんと跳ね上げ彼女の内腿を押し返してしまうと同時に、自分の無意識の行為に一気に血の気が引いていくのを感じた。

 

「? ……え? この固いのって…………ふ、ふえぇぇえぇぇぇぇっ!?」

 ついに彼女が一体俺のどこに脚を押し付けてしまっていたのかに気づいてしまった。

 

「す!? 昴さん!? え? ……え!? …………ふぇぇぇぇぇぇっ!?」

 体を大きく仰け反らせて、すぐに密着状態から離れようと試みる。

 しかし俺の膝の上に座っている智花は突然の事態に脳の処理が追いつかなくなってしまったためか体が硬直しているかのように動けずに、ただ困惑混じりの悲鳴を上げることしかできなくなっていた。

 

 

 まずは緊急回避だ。

 これ以上智花を穢すような真似はできない。

 一刻も早く智花を引き離さなければ!!

 

「ごめん智花!!」

 腰を思い切り後ろに引き、押し付けてしまっている固い物を彼女から引き離す。

 結果的に内股からひざ裏に掛けてを思い切り擦りつけてしまったが、この際仕方がない。

 そこでようやくハッとしたように慌てて俺から離れるが、すぐに顔を両手で隠すようにして俯いてしまう。

 離れていく瞬間に彼女は恐怖に目を見開き怯えている表情をしていた。

 

 ……智花に本気で嫌われた。

 その事実だけが俺の脳内を支配し、恐怖が精神を浸食していく。

 彼女が俺に向けていた表情をしっかりと見てしまった俺は、全身が凍りつくほどの恐怖に襲われ、思考が完全に停止してしまった。

 

 今も顔を覆い、体を縮こませ震えている少女に掛けるべき言葉が出てこない。

 いつまでもこうしたところで何の進展も得られないし、すぐにでもこの苦痛から解放されたい。

 苦し紛れにとりあえず謝罪の言葉を掛けてみることから会話を始め、そこから少しずつきっかけを見つけるしかない。

 

「と、智花、ごめん……俺――」

 ビクリと体を震わせながらも顔を上げてくれたが、一瞬俺を見たかと思うとすぐに表情を引き攣らせながら伏せてしまう。

 顔を上げた智花の視線は、今もなおズボン越しに存在を主張してしまっている股間を見てしまったことに気づく。

 くそ!! なんでこんなことにすら気づかないんだ。

 すでに手遅れなのはわかっているが、慌てて少女に背中を向ける。

 

「……怖い思いさせちゃって、本当にごめん」

「ご、ごめんなさい! ごめんなさい! 私なんて粗相を!!」

 必死に自分の感情を押し殺し、出来る限り優しく声をかけると、焦りや困惑混じりの物ではあるが、ようやく彼女の声を聞かせてもらうことができた。

 だが、やはり幼い少女にとってあまりにも衝撃的過ぎたのだろう。

 恐怖に声が上擦り、今にも泣いて逃げ出してしまいそうだ。

 

「智花が謝る必要はないよ。これは俺が完全に悪かったんだ」

「はぅぅ……」

 再び会話が途切れてしまう。

 後ろで、太腿どうしを擦り合わせているような衣擦れの音が聞こえる。

 やはりさっきの出来事が忘れられないのだろう。無理もないか。

 むしろあれだけの恐怖を与えてしまったというのに、それでも必死に俺との会話に応じようとしてくれているんだ。

 それなのに、これ以上俺はかけるべき言葉が見つからなかった。

 

――くそっ。

 内心で自分自身の不甲斐なさに舌打ちする。

 無理に口を開けばさらに余計な事まで口走っちまいそうだ。

 いっそ全てを吐き出せば楽になれるのかもしれないとも思ったが、その代償で智花をさらに怖がらせてしまったら、ますます嫌われてしまうのではないか?

 そう思った途端、声が出なくなる。

 すでに彼女の俺に対しての評価なんて0どころかマイナスだっていうのに。

 

「……智花。勝手なこと言っちゃって悪いんだけど、今日はこれで帰ってくれないか? ……お互いに少し頭を冷やそう」

 結局俺が選択できた手段は保留という逃げだった。

 

「は、はい……本当に失礼しました!! 昴さん、ごめんなさいっ!!」

「何度も言うけど、智花は全然悪くない。頼むから自分を責めないでくれ……」

 一瞬息を飲むような彼女の嗚咽が聞こえたかと思うと、慌てて立ち上げり逃げるようにドアを開けて出ていく音が聞こえ――そのあとは無音に包まれた。

 

 

「くそっ!」

 自分のやるせない気持ちと苛立ちを込めて一度、強く拳を握り床に叩き付ける。

 ドンという音と振動が床からわずかに伝わるだけで、気持ちは一切晴れない。

 口に出しても、心の中でいくら悪態をついても、状況も気持ちも最悪なまま変わらない。

 

 なんなんだよ、これ……まさかこんな形で俺と智花の関係は終わっちまうのか!?

 いつかは今の関係が終わってしまうことくらいわかってたし、覚悟はしていた。

 だけど……だけど、いくらなんでもこんな終わり方はないだろ!!

 考え得る限りどころか、それ以上に最低最悪な結末だった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。