三話の前書きに一話二話のあらすじが書いてありますので、エロから見たい方はそちらからどうぞ。
ちなみに日記形式はこの一話のみです
9月17日:サプライズの件
とても嬉しい事があった。少し長くなってしまうかもしれないけれど、今日の喜びをこの日々の日記の残しておきたいと思う。
今日は総合整備課に配属されてからちょうど3年目、そして私が19歳になる日でもある。業務内容はいつも通りで、故障した小型宇宙船の修理や艦隊内の機体の整備など。これは特別大事なことと言う訳では無いが、今日がいつも通りだったからこそ【あのサプライズ】が飛び上るほどに嬉しかったと言うことを覚えておきたい。
仕事が終わって自室で休んでいるときに、同期の女の子が私を呼びに来た。その子に付いて行きとある一室に案内され中へ入ってみると、そこには整備課の皆や整備課長のおじさん、果ては第一線で活躍しているパイロットの男の子までもが私を待っていた。
一斉にクラッカーが鳴りそこから飛び出た沢山の紙の雨が私に降り注ぎ、皆が口を揃えてバースデーソングを歌い始めた頃には、私の眼尻が熱くなっていた。
感動や嬉しさで号泣しそうになったのは生まれて初めてで、日記を書いている今でもあの感覚は鮮明に残っている。
この整備課に配属されてからは忙しく、正直言って最初の2年はあまりにも多忙で自分の誕生日すらも忘れていたので、3年目になってこんな風に皆が祝ってくれるなんて想像していなかった。
特に驚いたのは、日々強大な敵軍の精鋭と渡り合っているエースパイロットの彼が、わざわざ私の為に出向いてきてくれたことだろうか。
彼とは幼少期からの馴染みだったが、私と違って第一級のエリートになった彼にこんな形で再会できるとは思わず、嬉しさのあまり抱きついてしまった。それで照れてしまったのか固まってしまった彼や、それを見て彼を敬愛する同期の子が慌てたりと、見ていて面白かった。
まぁ他にもいろいろあったけど、とっても楽しかった。
今日はここまでにしておこう。すこぶる調子が良いし、夜はよく眠れそうだ。
明日からはいつも以上に頑張れる気がする。よーし、やる気だしていくぞぉ~!
☆
9月18日:敵機体回収の件
疲れた。とにかく疲れた。日記は短めに書こうと思う。
今日は私が搭乗しているこの艦隊の周辺に敵が現れた。敵自体は早々に排除されたけど、その後が大変だった。
まずは戦闘に使用されてボロボロになった機体の修理。次は攻撃を受けて損傷した艦隊の修繕。そして終いには倒された敵機体の回収で、回収用の機体に乗せられて宇宙に放り出された。
回収した機体に一つだけコックピットにダメージを受ける前に機能が停止されていたものがあったのだが、何故か中はもぬけの殻だった。搭乗席がそのまま脱出用ポッドになる仕組みの機体だったので、パイロットが居ないのならコックピットがそもそも空になってなければおかしい。
まぁそこら辺は謎だけど、整備課の私が考える事じゃないし。それに潰れた死体とか見つからなくて逆に安心したしー。
今日はここまで。ダルいし疲れたし眠いし眠い。
明日は周辺区域の廃材回収もあるし、もう寝る!
☆
9月19日:代理
この日記を綴っている同僚からの頼みで、代理として今日の分を記録する。
今日、宇宙空間の廃材回収作業の途中で、この日記を書いている私の同僚が戦闘に巻き込まれた。
彼女が運悪く遭遇した敵軍の機体はデータに無い新型機で、敵が行ってきた攻撃は【機体から発する特殊な光を浴びせ、対象の精神を攻撃する】という前代未聞のものであった。
救援部隊が間に合った彼女は一命を取り留めたが、精神攻撃以外にも物理的な外傷を負っていた。
かろうじて意識があった彼女は、搬送途中に私にこの日記を頼んですぐに緊急治療室へ搬送された。
未だに彼女は治療室から出ていない。
一刻も早く彼女の安否が知りたいが、私には待つことしかできない。
気の利いたことは喋れないタチなので、事実だけを書いて終わろうと思う。
付け加えるとすれば、戦闘に参加していたエースパイロットが、今も神妙な面持ちで緊急治療室の前で待っている事だろうか。
これを書き終わり次第、私もそこへ行くことにする。
夢乃、どうか無事でいて。
☆
9月20日:代理
夢乃が緊急治療室から解放され、安静用のベッドに移された。
医療担当からは命に別状はないと聞かされた。意識が戻るまではまだ数日を要するが、と静かに付け加えられて。
先日から彼女をずっと心配していたパイロットの彼は、付きっ切りで夢乃の容態を見ている。
数十時間前に戦闘を行っていた彼には極度の疲労が見えていたので、様子見を変わろうかと提案したが、自分が巻き込んだから彼女が目覚めるまでずっとここに居る、と彼は言った。
この艦隊の所属では無い彼が本体の作戦に参加せず此処に留まっていては上から文句が飛んでくるのは確実だ。
だが同僚、いや友人の為。ここは私が何とかしよう。
今は眠っている夢乃も、目が覚めて一番最初に会う人が彼ならきっと喜ぶはずだ。
☆
9月21日:代理
夢乃は未だ目覚めない。
心なしか、整備課の皆様も表情が暗い。
整備課の同年代の子から聞いた話では、彼女は整備課の中心的なムードメーカーだったらしい。
私は夢乃とは中学からの友人だが、所属している課が違うためそう言った話は初めて聞いた。
中学時代から底抜けに明るかった彼女だが、昔は殺伐としていたらしい整備課すら明るい雰囲気にしてしまうのは素直に驚いた。
やはり彼女の存在は必要不可欠だ。早く意識が戻ることを願う。
☆
9月22日:代理
未だ彼女は目覚めない。
今日は特筆すべきことは無く、良くも悪くも通常通りであった。妙に空気が重い事を除けば、だが。
普段から温厚で隊員とも距離が近い艦長が目に見えてイラついていることも関係しているのかもしれない。
艦長の気持ちは尤もだ。なにせ大事な艦隊内のメンバーが、むやみやたらに戦闘区域を広げた本体の実働部隊のせいで意識不明の大怪我を負ったのだから。
この日記でこういった話題を延々と繰り返すのは止そう。
これは本来、夢乃の日記なのだから。
☆
9月23日:回復した件
今日からまた自分が日記を書く。
自分は三日間眠っていたらしい。
聞いた限りでは新型による未知の精神攻撃を受けたらしいが、正直なところ気絶する前の記憶があやふやなので、詳しい事はあまり覚えていない。
自分が目覚めた時、なんかめっちゃくちゃイケメンの男の子が目の前に居た。
自分がその子に声をかけると彼は号泣してしまったので、少し悪い気がした。
彼は昔からの知り合いらしく、自分自身も彼の顔はなんだか馴染み深いと感じた。
記憶が混同していると医者に言われた。あと落ち着くまでまだ寝てろとも。
日記書くの疲れた、寝る。
9月23日:特に無し
ずっとベットの上だったので日記に書くようなことは殆ど無い。
強いて言うならパイロットの彼が元気無さそうだった、とかくらい。
9月24日:リハビリの件
医者に言われた限りでは、自分は脳の一部に深刻なダメージを受けたらしい。
それから指摘されて気づいたことだが、表情筋が異常に硬くなってることが分かった。
要するに自分はマグロ、無表情な女の子になってしまったらしい。
リハビリとして色々見たり話したりしたが、自分自身はとても楽しかったし驚いたりもした。
ただ他人から見たらまるで興味が無いようなそぶりに見えるらしく、笑い声も明らかにわざとらしいとのこと。
例を挙げると――
「な、なんじゃこりゃあ!?」
これが自分の感じている感触。で、他人から見た限りでは――
「なにこれ」
といった感じに見えるらしい。
確かに何だか声が出ていないような気がするし、体が妙に重い感触もある。
パイロットの彼はこの状況をとても悔やんでいて、いろいろと熱心に医者の人と話していた。自分の為に必死になってくれて、とても嬉しい。
過去の表情豊かだった自分の為にも、早くこれを直さなければ。
9月25日:休暇の件
意外にも外傷は少なく、また回復も早かった為直ぐにでも職場に戻れる状態になった。
ただ整備課長のおじさんがしばらく休めと怒鳴り込んできたので、あと数日はベッドの上だ。
あと少し良い事があった。いろいろな記憶が戻ってきたのだ。
この調子でちゃんと全快したいところ。
9月25日:特に無し
ネットって面白い。なんだか一日でネットの住民に染まってしまった気分だ。
以前はあまりパソコンを使わなかったが、暇つぶしにとネットサーフィンをしてみたらあら大変、20個くらいネットスラングを覚えてしまった。これはいけない。
早々に職場に戻らなければ、自分はネットから離れられなくなってしまう。
9月26日:打診した件
気が滅入ってしまうので少しでいいから職場に顔を出させてください、と医療担当に打診してみた。医療担当の女性は悩んでいたようだったが、整備課長をなんとか説得させて口添えを頼むと、許可が下りた。やったぜ。
職場を見学していると、例のパイロットの兄ちゃん(20)が顔を出しに来た。彼の話を聞くと、なんでも今回の作戦では敵機の撃破数がトップだったらしい。やりますねぇ!
話している途中自分の話し方が変だと言うことを彼に指摘されたが、これはネットの責任であって自分に非は無い。ネットスラングなんてものは作る方が悪いのだ。
9月27日:特に無し
ネットでは無く本を読む事にした。これならば健全、ハッキリわかんだね。
あと特筆すべきことは何もない。相変わらず自分は仏頂面だし、今日はお昼寝をしていたらいつの間にか一日が終わっていた。
9月28日:一時的な退院の件
過度な労働はしないといった条件付きで釈放された。
病室で眠っているのは楽なのだが、どうもあそこでは記憶が戻りそうもない。気持ち整備課の職場の方が落ち着くし、実際いくらか思い出したこともある。
あと明日は艦隊周辺の簡単な廃材回収に付き合わせて貰えることになった。しかも追加機能が搭載された最新式の工業用機体に搭乗していいらしい。ウレシイ…ウレシイ…。
9月29日:やっちまったぜ。
投稿者:整備課所属娘――そうじゃない。
現在の状況を要約すると、不規則に宇宙空間に出現するワープホールに吸い込まれ、知らない場所に投げ飛ばされた、と言ったところだ。
今いる場所は何処とも分からない小惑星の上で、周辺索敵のレーダーを使っても艦隊や宇宙船の反応は無い。
周辺には岩の破片がゴロゴロ浮いていて、下手に動けばそれに当たって機体が故障してしまいそうだ。
幸いにも自分が乗っている機体には非常用の食糧や水が多めに積まれていたので、数日の間は持ちそうだ。
とりあえず救難信号は常に発信しておいて、帰れる目途が立つまでは此処に居よう。
9月30日:ぬわああん疲れたもおおおおおおん
救助が全然来ないじゃないか(半ギレ) ふざけんな!(声だけ迫真)
辞めたくなりますよ~仕事~。
もしかしてこのまま救助は来ずに餓死してしまうのでは。やめてくれよ……(絶望)
心が弱るとネットスラングがどんどん飛び出て来るらしい。多少は気がまぎれるが、やはり気休め程度だ。
このままでは自分の記憶を取り戻すより先に来世の市民権を得てしまう。
馬鹿野郎お前俺は生きるぞお前(天下無双)
まぁなんにせよ、この日記が書けるスマホを持ってて良かった。暇つぶしならまだ困らない、はず。
10月1日:疲弊してきた
精神的に参ってきた。もう戯言を呟く気力も無い。
やはり身の安全が保障されていない空間に長い間滞在していると、心が不安に覆われていくらしい。
優秀な機体に乗ってはいるが、事故が起きれば直ぐにでも自分は御陀仏。酸素や食料はまだ少し余裕があるが、自分がまだ冷静でいられるのはきっとこれのおかげだろう。
問題が表面化してきた時、自分が落ち着いていられるか、不安だ。もっとも他人から見れば自分は遭難してからずっと仏頂面で、表面上は冷静に見えているわけだが。
10月2日:お腹痛い
非常食による栄養素の摂取は問題無いはずだが、暫く野菜を食べていない影響か腹の調子が良くない。野菜食べたい。お肉も食べたい(懇願)
早く救助が来ないものか。
10月3日:動けない
暫く前に此処に留まって救助を待つことにしたので、もう移動用の燃料は殆ど残っていない。
故障覚悟で移動して船を探した方が賢明だったか、自分にはもう判断がつかない。
10月4日:まずい
食料と水が少なくなってきた。食べる量を減らさなければ。
不安に駆られる。気分を明るくしたいが、そんな余裕も無い。
10月5日:
誰か助けて。頭が可笑しくなりそう。あの精神攻撃のせいで、自分は既にいろいろおかしくなっているのに、これ以上狂いたくない。
今にも泣き崩れたいのに、表情筋は微動だにしないし涙も出ない。泣きたい。涙を流して少しでも発散したい。
10月6日:
食料は明日まで。
もう自分は終わったかもしれない。
10月7日:
今日で食料が尽きた。怖い、怖い、こわい、こわい
10月8日:
水だけじゃものたりない おなかすいた
10月9日:
しんだかも
10月10日:捕虜になった件
絶賛地球人と戦争中の宇宙人に捕まった。
食事を与えてくれたのでいい人たちだ。やったぜ。
とりあえず眠いので、もう寝る。