やはり俺とヒロインたちの青春ラブコメはどこかおかしい。 作:SeroEden
1話
帰りのSHRが終わり、机の中のものを鞄に詰める。 教室を出ようとすると視界の端でこちらに向かってくる人影があった。そちらを向くと予想通りの人物がいた。
「ヒッキー」
俺をヒッキーと呼ぶ彼女由比ヶ浜結衣。でもその渾名大声で呼ばないでね。俺が引きこもりみたいに思われるから。でもよくよく考えると氷の女王と獄炎の女王の友達とか由比ヶ浜って実はすごいんじゃねと思う。
「あんだよ」
「今日、優美子たちと遊びに行くからゆきのんに部活行けないって伝えておいて。後ごめんなさいとも」
「了解。楽しんでこいよ」
「うん!」
由比ヶ浜の返事を聞き、教室を後にする。という事は今日は雪ノ下と二人きりなのかよ。まあ、特に何もないだろう。俺が罵倒されることを除いて。
だがこの時の俺は知らなかった。いや、知る由もなかったと言う方が適切だ。この二人きりという状況が、俺の今後を大きく左右するという事を。
* * *
「うす」
「こんにちは」
いつも通りの挨拶を交わし、雪ノ下の対面にある自席に座る。鞄からラノベを取り出そうと思ったが、そういえば伝言を預かってたことを思い出し雪ノ下の方を向く。彼女は相変わらず綺麗な姿勢で、手元の文庫本を読んでいた。濡羽色のツヤのある綺麗な黒髪に長く白い手足。あらゆる美を詰め込んだような綺麗な彼女に見惚れていると、彼女の方も視線に気づいたようで俺の方を向く。一瞬目があったが慌てて目をそらす。
「何かしら?」
「いや、あのその」
もう一年以上の付き合いなのに緊張してキョドッてしまう。仕方ないよね。相手は学校一の美少女、対する俺は学校一のボッチ。どっちが格上とかの◯太くんでもわかるよ。
「比企谷くん?」
「いや、今日由比ヶ浜は三浦たちと遊びに行くから部室に行けないって」
「そう.....」
「ごめんなさいだってさ」
「別に謝る事でもないでしょうに。そういうところは由比ヶ浜さんらしいわね」
「だな」
「それと比企谷くん。私に話しかけられたくらいでキョドらないでくれるかしら。うっかり通報してしまうところだったわ」
「それはすまんな。でも、俺のような非モテの非リアはお前みたいな可愛い女の子に話しかけられるとそうなっちゃうんだよ。許してくれ」
「ちょっ///比企谷くん」
顔を真っ赤にしてこちらを見る雪ノ下。何、どうしたの?
「だ、大丈夫か?雪ノ下。熱でもあるのか?」
「だ、大丈夫よ。だからこっちを見ないでくれるかしら」
真っ赤な顔を手で覆って目だけでそう言う。目も潤んでいてこんな雪ノ下雪乃を俺は知らない。見ないでと言われたので鞄からラノベを取り出し読み始める。雪ノ下も落ち着いたようで視線を本に戻す。誰も何も喋らないこの沈黙がどこか心地いい。
最終下校時刻まで後一時間ほどとなってきた時、沈黙が破られた。
「比企谷くん」
「.......ん?」
視線は手元に落としたまま返事をする。いやだっていま超いいところなんだもん。
「少し聞きたいことがあるのだけど」
「お前が知らないのに俺が知ってるとは思えんが、なんだ?」
「この本に書かれていることなのだけど.......」
「ディープキスって何かしら?」
ガサッと手に持っていた本が落ちる音が部室に響く。驚きで空いた口が塞がらない。だって普通の小説に『ディープキス』なんて単語は出てくるだろうか?いやない。通常の恋愛小説だっていってソフトキスまでだろうから彼女はもしかして............いやいや、俺の憧れた彼女が部室で官能小説を読むはずがない。そうだきっとたまたま出てきただけで彼女が官能小説を読んでる証拠なんてどこにもないじゃないか。
「なあ、雪ノ下。その本のタイトルってなんだ?」
「『溺れる二人。二人の歪んだ愛と行為』よ」
俺の憧れていた雪ノ下雪乃像が粉々に砕け散った。あの学校一の才女が、男と二人きりの部室で官能小説を読んでるなんて......夢ならば冷めてほしい。でも、いや待て。もしかしたら少しシリアスなだけの小説なのかもしれない。ヤンデレな彼女に監禁されてみたいな。行為は監禁された事を指してるだけでただのヤンデレ小説か。そうだよな。あの雪ノ下雪乃が官能小説なんて読むはずないよな。マジで雪ノ下さん疑ってすみません。
「それにしても、なぜディープキスとやらを終えた後男性が女性の胸に吸い付くのかしら?女性は妊娠しているわけではないから母乳は出ないはずよ。吸い付いてもつまらないでしょうに。どうしてかしら?比企谷くん?」
もう、無理だ。もう否定できる材料がない。完全に彼女の手元にある小説は官能小説だ。いや、でも間違えて買ってしまっただけで。それにまだ読み終えてなければ軽く指摘すれさえすれば読むのをやめるだろう。その後罵倒されるくらい安いものだ。清楚な彼女のことだ。間違って買ってしまっただけなのだろう。頼むからそうだと言ってくれ!
「なあ、雪ノ下。なんでその小説を買おうと思ったんだ?」
さあ、間違えて買ってしまっただけよって言ってくれ。頼むから!
「少しタイトルが気になって買ったわ。何度読み返しても知らない単語が多くてわからないからあなたに聞こうと思ったの」
「............」
「それで、比企谷くん。早く教えてくれないかしら?」
「............」
「仕方ないわね。こうなったら由比ヶ浜さん....は知らないだろうから小町さんに聞いてみようかしら?」
「おい、やめろ!わかった教えるから!」
『小町さん。ディープキスって何かしら。比企谷くんに聞いたのだけど黙り込んでしまって』とか言われた日には俺、家での居場所失いそう。
「では、ディープキスとは何かしら?」
「まずキスは知ってるだろう」
「魚のことかしら?」
嘘だろ。ディープなキスって深海魚かよ!なにそれ案外この目のお陰で仲良く出来そう。
「違ぇよ。カップルやら夫婦などが愛情表現のために唇同士を重ねる事を言うんだよ」
「愛情表現のためとは限らないのではないかしら?外国の方では挨拶にもなってたはずよ」
「唇同士にはしないだろう。つーか、キス知ってんのかよ」
「魚の方かと思っただけよ」
男女でやるキスで魚の方なわけなくね?何ゆきのんって天然なの?何それ可愛いじゃねぇか。
「まあ、その唇同士を重ねる際に舌同士も絡めたり歯茎をなぞったりする事をディープキスって言うんだよ」
「理解できないわね。相手の口の中に舌を入れることの何がいいのかしら?では、男性が女性の胸に吸い付くのは?」
「俺も女性じゃねぇし、そもそも経験がないから知らねぇよ。女性側としては気持ちいいんじゃねぇか?」
「では、このSEXは?」
ああもうめんどくさい。何で同級生の女子にエロ知識を教えなければいけないんだ。そうだ!もうめんどくさいから雪ノ下にAV見せよう。いかに自分が変態な事を質問しているか教えてやる。でも、同級生の女子とAV鑑賞ってどんな罰ゲームだよ!
「もういちいち説明するのもめんどくさいし、俺も経験があるわけじゃねぇから動画でみよう」
平塚先生に来られてもめんどくさいし、雪ノ下にはイヤホンしてもらおう。鍵を念のため閉めて雪ノ下にイヤホンを渡し、十五分ほどの動画を再生する。
〜ゆきのんAV鑑賞中〜
「これは予想以上に生々しいわね。興味深くはあるけれど」
「まあ、そんなもんだろう。もういいか?俺帰りたいんだけど」
「あら、もうこんな時間」
雪ノ下も帰り仕度を始める。といってもあの官能小説を鞄に入れるだけだが。じゃあ、部長様に挨拶して帰りますか。もう今日の出来事は忘れたいし。
「じゃあ、また明「ねえ、比企谷くん。もう一ついいかしら?」」
ええー、まだ帰っちゃ駄目なんですか?でもなんだろう。すごい嫌な予感がする。
「まだこの小説に乗ってる事柄であなたに聞きたいことがたくさんあるわ。それに映像や文字の女性は『気持ちいい』と言っていたけれど実際のところはわからないわ」
「だから、比企谷くん」
まさか............
「私も比企谷くんが教えてくれたことや映像の女性のようにディープキスからしてくれないかしら?」
一話目からこんなでいいのでしょうか?