やはり俺とヒロインたちの青春ラブコメはどこかおかしい。 作:SeroEden
えっと............雪ノ下さん今なんておっしゃられたの?頼むから俺の聞き間違いであってほしい。
「えっとごめん。今なんて言った?」
「だから、ディープキスからしてくれないかしら?」
よし、情報を整理しよう。先ず雪ノ下に今日いきなり質問された。質問の内容はディープキスとはなんなのかで彼女が官能小説を読んでいた。で、ディープキスやらセクロスのことを聞かれ、めんどくさいからAV見せたら自分も映像の彼女のようにしてくれと頼まれた。OK?いや全然OKじゃない。現実味がまるでない。
「えっと、どうしてそういう結論に至ったのか過程を教えてもらってもよろしいでしょうか?」
「何故敬語なのかしら?」
「いいからどうしてそういう結論に至ったんだ?」
「比企谷くん。百聞は一見にしかずということわざは知っているわよね」
国語学年三位の俺なのだ。それくらいは当然知っている。
「ああ。漢書、趙充国伝から人から何度も聞くより、実際に見たほうがいいってやつだろ」
「そうよ。でもスポーツにしても見るより実際に経験してみるとでは大きく違うわよね。だからよ」
だからよと言われてもイマイチ理解できない。確かに視覚や聴覚で得た情報より実際に経験した情報の方が明らかに信用度も高いし貴重だろう。
「いや、しかしな。経験しなくてもいい経験だってあるし、それにそれを経験するにはまだ俺たちの年齢じゃ早いだろ」
経験があるないなんてくだらない価値観って由比ヶ浜がクッキーの依頼してきた時言ってたじゃん。
「では、奉仕部の部員である比企谷八幡くんに依頼するわ。この小説のヒロインの心情が理解出来ないから理解出来るよう手伝ってちょうだい」
まさかのそうきましたか。ちょっとこれは予想外の対応だ。
「これはお願いじゃないわ。依頼よ。だからあなたは奉仕部の部員として受ける義務があるわ」
「しかし、俺が依頼拒否したらそれまでだろう」
「そんなの奉仕部部長の私が許すわけないでしょう」
めちゃくちゃだな。なに、俺には拒否権すら存在しないの?
「それにあなたに言ったはずよ。『いつか、私を助けてね』と。これも私を助けると思ってお願い出来ないかしら?」
それを言われると弱い。なんせ初めて雪ノ下が口にしたお願いだ。俺としては叶えてあげたい。
「............場所はどうするんだ?流石に学校でするわけにはいかないだろう」
「受けてくれるの?」
「......まあ、助けるって約束したからな」
「ありがとう」
そう言ってニコッと微笑み雪ノ下。ちょっと拒否権ないって言ったのあなたじゃないですか。その顔は反則だろう。
「場所は私の家を提供するわ。それと小町さんに遅くなるもしくは泊まると連絡しておきなさい」
* * *
部室を後にし、鍵を職員室に返却する。私は今緊張している。当たり前だろう。これから私は男の人と肌を合わせようとしているのだから。
きっかけは本当に些細なことだった。家にある本はほとんど読み終わってしまったので書店で本を吟味している時にあの本を見つけた。手にとって軽くあらすじを読んでみると主人公の男の子は捻くれていたりヒロインは主人公に悪口ばかり言ったりとどこか私と比企谷くんに似ている小説に気がついたら買っていた。
家に帰り早速読んでみたが知らない単語が多くて理解出来なかった。唯一わかったのは由比ヶ浜さんに貸してもらった少女漫画よりも濃い純愛小説ということだけ。
理解出来ないことがもどかしくて今日、少しだけ勇気を振り絞って比企谷くんに小説の中で出てきた単語でわからない単語を聞いてみた。その後いかに自分が恥ずかしい質問をしていたか思い知らされたけれど。思い出しただけで恥ずかしいわ。
昇降口を出ると比企谷くんはすでに校門の前に立っていた。
「比企谷くん、おまたせ」
「いや、別に」
「緊張してる?」
「............そりゃあな」
比企谷くんも言葉の通り緊張しているようで表情が硬い。私の家につけばあの動画と同じことをやるのだ。無理もない。
お互い極度の緊張状態で会話はない。常日頃から会話をする方ではないので仕方ないだろう。でも、自転車を押しながらもしっかり私を歩道側に歩かせてくれるのは嬉しい。
「小町さんにはしっかり連絡したの?」
「ああ、雪ノ下の家で晩飯ご馳走してもらうから帰るの遅れるってメールしたらこう返ってきた」
彼はポケットからスマホを取り出し私に見せてくる。そこには『えっ!?遅れるだけ?そのまま帰ってこなくていいよ(^_^)雪乃さんとお幸せに〜!』といかにも小町さんらしさに笑みがこぼれる。彼は家族に愛されてるのか少し疑いたくなるわ。
「じゃあ、今日は泊まっていくのね」
「俺はソファーでいいから寝る場所は別々で頼む」
「馬鹿ね。それじゃあ出来ないじゃない」
あ、と言いながら口をあんぐり開ける彼。私がクスクス笑うと真っ赤な顔してそっぽ向く。少し緊張がほぐれてきた。
そうこうしているうちに私の家のマンションが見えてきた。
比企谷くん、今夜は寝かさないわよ。