長編小説『忍者の愛した露出狂』のワンシーンを切り取った番外編となります。
彼には中間というものがない。ただのヘタレか、強烈なヘタレ攻めか。どっちにせよヘタレであることには違いないけれど。
そのクセ――
「ね、ね、いいよね。雛菊可愛いし♪」
そうやって仔犬のようにじゃれてくるけど、振っているのが尻尾ではなくおちんちんでは可愛げのカケラもない。それも――本当に骨でも入ってるんじゃないかってほど硬く、それでいて大きく、ひとたび貫けば、
「も、もぉ……こんなところで……っ!」
学校までの道のりは徒歩一五分。恋人同士、じゃれ合いながらの登校なんて珍しくもない光景だ。
でも、事もあろうに――ふたりは全裸。
早朝で
でも、私の
そして、私も一緒に素っ裸になることで……その性欲ははちきれんばかりに膨れ上がると!
服を着てたり、ベッドの中では、ここまで彼を焚きつけることはできない。やめろと言えばやめてしまうし、いざ繋がり合っても……あんなものは、ただ撫で合っているだけだ。もう、そんな穏やかな抱擁では満足できない。
こうして、押し戻しても押し返してもしつこく絡みついてくるしつこさ。だけど、正直なところ、付き合い始めた当初のように力強く拒むことはできそうもない。どうやったって、気持ちが
それに――いくら強引だといっても、我を忘れて暴走しているわけではない。だから、本当に止めたいときには止まってくれる。
「清貴、人が来るわ」
「ひぇっ、どっちから!?」
さすがの彼も、肉欲を求めるあまり、誰かに見つかるわけにはいかない。
「そこの十字路を、右の方から。徒歩だから猶予はあるけど、あまりのんびりもしてられないわよ」
何故そんなことが判るのか――それは、自分でも解らない。でも、どうやら私にはそういう勘が働くらしい。こんな――彼氏と公共の場で全裸になってイチャつくときしか役に立たない才能なんて、いままでずっと意識してこなかったけど。
「うーん、じゃあ、そのアパートに隠れとこうか」
そう清貴に誘い込まれた先には、エレベーターもなければ、エントランスもない。集合郵便受けがあるだけだ。そこに清貴とふたりで無断侵入させてもらった。
建物内は……すっかり寝静まってるわね。部屋の中にも、起きている動きは見受けられない。だから安心して――少し物足りなさを感じながらも、私は清貴の隣に並んで階段に腰を掛けて外の動きを待っている。
接近者が直進してくれるのを見計らった時点で安全は確保されるというのに、その僅かな間すら清貴は我慢してくれない。
「ちょっ、も……やめなさいよ……っ」
あぁ、やっぱり……どうやったって抵抗する気力が抜けていく。だって……こんなに硬くて、こんなに大きい……❤ 私の
そんな私の肢体を前にすれば、清貴にだって遠慮はない。ここまで燻らせていたモノを私の中で一気に爆発させて――
「んんん~~~~~っ❤」
性感が全身を駆け巡り、気持ちよすぎて堪らないけれど……私は懸命に口を結ぶ。上にも下にも部屋があるから、こんなところで大声は出せない。
「ふーーーっ、んーーーっ!」
背中の下は、角ばった階段。当然、硬いし冷たい。だけど突き上げてくる衝撃に病みつきになっていて……何より、止めてくれ、なんて言おうものなら、代わりに淫らな吐息が溢れちゃう!
「んっ、んっ、ん……んふぅ……」
こんなのもう、清貴を抱き締めずにはいられない! とんでもなくヤバイ状況だけど……!
もう、接近してきた相手は、とっくにどこかへ行っている。でも……そんなの止める理由にならない!
「雛菊、
そんなことを耳元で囁かれたら……
もう少し、もう少しだというのに――
びゅるっ! びゅるるっ!
……ただ、なんか中途半端な感じになってしまった感は否めない。私の絶頂を目の前にして……自分勝手に満足したヘタレ彼氏が、私の上でぐったりしてやがるわ。
「ちょっと、背中痛いんだけど」
「うわっ、ごめん!」
重さを外そうとのけぞると、おちんちんも一緒に引き下がっていく。たったそれだけのことで……お尻の割れ目に伝っていく冷たさ。それは確かに、私の
子供が
かつての私は、清貴に振り回されっぱなしだった。
でも、いまの私は――悔しいけれど、もはや疑いようもない。
彼氏のために献身を続けてきた結果――自分から彼氏を求めるようになってしまった変態であると。
それを認めてから――彼の誘惑によって、認めさせられてから――気持ちはすっかり軽くなってしまった。悪い意味で。
私と清貴は、恋人の関係にある。
性を――身体を繋ぐべき関係にある。
それを、清貴が私に求めるのならば、
私にだって、対等に求めても良いはずだ。
こうして、
いまは少し疲れかけているけれど、こうして軽く擦ってあげれば……あは♪ やっぱり清貴は清貴ね。外で裸になると、どこまでも欲情してしまう淫らなおちんちん。隣に裸の彼女を連れているのならばなおさらのこと。
「もしかして……欲しいの?」
淫らな彼氏は、淫らなことを遠慮なく訊いてくる。
だから、淫らな私も遠慮はしない。
「ええ、欲しいわね」
本当ならば、今すぐこの場で寝転んで、清貴に上から抱きしめて欲しい。けれど、こんな道端じゃ――草木も眠る深夜帯ならともかく、そろそろ陽も昇りかけている。先程のようにいつ誰が通るか判らない。もちろん、近づいてくれば判るけれど……私たちにできるのは、鉢合わせる前にコソコソと逃げ回るくらいだ。そんなことで興が冷めてはつまらない。だから、少しは落ち着ける物陰で。
私のおまんまんはおちんちんを求めているけど、大好きなのはおちんちんだけじゃない。私を包み込んでくれる両腕も、受け止めてくれる胸も、柔らかな唇も、艶めかしい舌使いも……全部好き。早くそのすべてを味わいたいのに……公園なんかがあると良かったんだけどね。さっきみたいなマンションじゃ、廊下に声が響いてしまう。キスしてないときは、言葉で伝えたいもの。清貴のことが大好きだって。
そんな想いに耐えきれなくなったからか――そこはいわゆる、曰く付きの場所。
なのに、私はあえて。
「雛菊、そこは……誰か来たら逃げ場がないよ?」
さすが、野外露出の先輩ね。駐車場が意外と危険だってよく判ってる。私だって、この身をもって死にそうなほど思い知らされたもの。
でも――
それは、私ひとりだったから。
反省しているのは、その一点だけ。
清貴と一緒なら――誰かが来ても――!
「逃げ道は、貴方が作ってくれるのでしょ?」
私もう、我慢できない!
立ったまま清貴のすべてを抱きしめて、唇だって奪い取る!
欲しい。欲しいのよ。
でも、これじゃ足りない。
肝心のところに、足りない。
こうしてぎゅーってしながら……おちんちんが欲しいの!
その想いは、肌と肌のふれあいによって男のコにも伝わった。
単に劣情を燃え上がらせただけかもしれないけれど。
彼はもう、異論を挟むことはない。
私に手を引かれるまま――仮初の舞台裏へ。
ただ停まっているだけの車の裏――一応、外の通りからは目隠しになっている。
でも、もし誰かが車を乗りに来たら、
停めに来たら、
私たちはこれ以上ないほどの危機に晒される。
こればっかりは……賭けみたいなものだ。
それでも、私は賭けてみよう。
清貴が私と幸せを分かち合っている間――ふたりきりでいさせてくれる可能性に。
コロンと仰向けになった先はアスファルト。せめて少しでも楽なように、と白く塗装された線の上に転がってみたものの……はっきりいって、硬いし痛い。
だけど……欲しいから。
余すことなく気持ち良くなりたいから!
「ほらぁ……早くしてよ。おちんちん欲しい、ってゆったでしょ?」
欲しているところをパカリと開いて、私は清貴の愛を待つ。
朝の空気は冷たいけれど、そこは中でも一際冷たい。
だけど、すぐに一番熱くなる。
ヌルリと濡れたところで、ヌルリと抱きしめれば――
「あ、ん、はぅ……はぅぅぅぅぅ❤❤❤」
やっぱり……セックスはこれが一番好き!
清貴を全身で
「いいっ、いいのぉっ! 清貴……清貴好きぃ……❤」
目を閉じて切ない吐息をもらせば、清貴は男のコの唇でそれを受け止めてくれる。
そして、舌を差し出せば、男のコの舌で応えてくれる。
好きっ! 好きっ! 清貴……清貴ぁ……❤
無言の語らいは、息を止めていられる間だけ。私たちの顔は、酸素を求めてすぐに離れる。
「雛菊、可愛いね。気持ちいいよ!」
「清貴も…‥おっきい……大好きっ」
ズンっ、ズンっ、と一撞き一撞きが彼への想いに染み渡っていく。
指先まで余すところなく恋心によって熱く焦がされていく。
男のコの衝動によって、女のコの扉が開きかけた、その時――!
「んっ! 雛菊……すごく……締まってきた……っ」
私が察した危機感とは裏腹に、
この気配は――多分、車。
もし、この駐車場に停めるつもりだったら――
もし、この区画に停めるつもりだったら――!
一応、停車位置の中間で寝ているから、ギリギリ邪魔にはならないような気はする。
だけど、私たちを隠してくれるものは何もない。
ゆっくりとバックで入ってくる車を尻目に、私たちは正常位で――
ピーピーとバックブザーを鳴らしながら近づいてくる真横で、私はアンアンと喘ぎ続けるのだろう。
運転手は、扉を開くことができるかしら。そればかりは、車体の大きさによるからわからない。
ただ、出てきた人にじーっと見下されてしまったら……私はどうすればいいんだろう――!?
「
ビクッ! ビクンっ! ビクンっ! ビクン……ッ!!
「ん、ん……雛菊……
近づいてきていた車は、とうに駐車場を行き過ぎている。だからこそ、あんな妄想に耽る余裕もあった。とはいえ、それで
「わっ、雛菊、また締まってきてるよ?」
それは、膣だけでなく、両腕までも。早く学校に行かないと、本当に街が動き始めてしまう。だけど……!
「お願い……精子欲しいのぉ……
さっき
もう一度、熱く滾った男のコの激流を。
もし、また車が近づいてきたら――
今度こそ、駐車場に入ってきたら――!
きっと、清貴が私を守ってくれると信じてはいるのだけれど……
凛々しい彼の姿なんて、どうやっても思い描けそうにない。