やはりあたしの青春百合コメはまちがっている。 作:四月一日 今日
それからあたしは優美子の手を握ったまま、下足場を校内履きのままぬけた。そのままグラウンドから風で運ばれてきた砂の被ったアスファルトを駆けるも、綺麗好きな優美子はただ着いてくるだけで何も言ってこない。
逆にそれが不安を煽って、あたしは校舎裏まで一気に駆け抜けたところでようやく優美子の手を離した。手汗をかいていたのか風に当たるとすっとする。
「・・・あ、あはは、あの、ごめんね?」
一応振り返りはしたがあたしは優美子の顔を見ないまま、見れないまま、足元に視線を散らしながら言った。なんとも言えない嫌な沈黙が、優美子がゆきのんと言い合いになった時のようにあたしの胸をきゅっと締め付ける。
それから数分。互いに口を開かず、そしてあたしは優美子の言葉を急かすようにしてもう一度話しかけた。
「・・・えーっと、ね。その、」
喉につっかえてなかなか口から出てこなかった言葉は、やはりちらっと優美子の顔を窺うと上手く声になってくれなくて、あたしは痛む胸を押さえてなんとか、優美子から何か話してくれないか懇願するように優美子を見た。
我ながらずるいと思う。でも、前からそうで、今もそうで、これから先もあたしはこんなんなんだ。
逃げ続けてきたあたしは、今もまた仲の良い友達に「ごめんね」の一言すら言うことが出来ない。
つまりは、もうそこまで。仲良し友達同士の関係は。
あたしが臆病なばっかりに、自分の意見も言えないばっかりに、自分勝手に関係を切り離す。
あたしはそれ以上何も言うことが出来ないまま、優美子の隣をぬけて今来た道を戻ろうとした。―――その瞬間。
「ばかじゃん」
優美子は普段スキンシップをあまり好まないにも関わらず、その細い左腕をあたしの首にからませて、まるでどこかの青春漫画のワンシーンのように肩を組むようにあたしを抱き寄せた。それから右手をあたしの頭の上に置くとお団子も何も気にする様子もなくわしゃわしゃと撫で回す。
「えっ、な、ちょっと・・・」
「いいからこうされてなって」
あたしは驚いてばっと優美子の顔を見上げると、そこには綺麗な顔がくしゃっと清々しい笑顔になっていて。
それはまるで、「結衣のことは分かってるから」とでも言うようで。
「あーしら、友達っしょ?」
「・・・うぁ、・・・・・・ぁぁあああ!」
気がつけば、あたしは声上げて泣いていた。朝整えてきた前髪が崩れることなんて気にすることも無く、優美子の胸に額を擦りつけるようにして大泣きした。
「こ、こら・・・っ!」
「ごめ、ごめんね・・・・・・!・・・ごめんね・・・っ!」
ようやく、なし崩し的に、結局優美子のおかげて、あたしはようやく友達に謝ることが出来た。
心臓に刺さったかえし付きの罪悪感の針は痛みを伴いながら抜け落ち、優美子の優しさによって不格好に埋められていく。
「別にいいって!ほーら、結衣。せっかくの可愛い顔が台無しっしょ」
そう言いながら、優美子は自らの袖であたしの涙を拭ってくれた。
あたしの涙も荒い呼吸も収まった頃にはすっかり一限目は始まってしまっていた。
あたしはその場で段差に腰を降ろし一限目をサボることに決めた優美子の隣に少し間を開けて座ると、
「えーっと、・・・いろいろとごめん、ね?」
今一度謝った。たぶんこれは、いつものあたしの、間を保つような言葉だった。
前までなら優美子に責められていたかもしれない。「何が?」とか、「はっきりしゃべれし」とか。
でも、優美子はもう、というか、前からあたしの事を分かっていたみたいだ。由比ヶ浜結衣はこういう人間だって。
でも結局、あたしは変わらない。変われない。今もまだ自分がどう見えてるか考えてばかりで。それでも、―――
「女友達のキスとかノーカンっしょ」
続けて、
「結衣のことは好きだけどね」
彼女のこういう所に、みんな惹き付けられているのだと、あたしは改めて思った。
やはり三浦優美子の包容力はすごい。
随分長らくおまたせしました。もはやR18なの?とか何変態が真面目なこと語っちゃってんの?みたいなことを言われそうですが、すいません。久しぶりで、でも優美子編ラストはこんな感じで終わらせたいなって想いがありました。
では、改めまして、これからもよろしくお願いします!