やはりあたしの青春百合コメはまちがっている。 作:四月一日 今日
川崎沙希。
3年生になって違うクラスになったけど、あたしの知っている彼女の情報はそんなに多くはなくて、弟さんと妹さんが一人ずついる事とあたしよりはるかに頭がいいって事くらいしか知らない。
あ、あと、凄く美人さんだって事。
「急に押し掛けてごめんね。勉強の邪魔しちゃった?」
ヤンキー......と言われても仕方ない見た目(服装)をしているが、サキサキはそれを着こなしていてむしろそれが王道ファッションにも見えてくる。
しかし、そんな服装の良い意味での乱れからは想像もできないほど気を遣うことが出来る優しい彼女は、ゆきのんの「構わないわ」の一言で長机を挟んであたし達の前の椅子に腰を降ろすと、
「ちょっとね、相談があってさ......」
一瞬あたしとゆきのんを見てから長い睫毛を伏せてそう述べた。
「今お茶を出すわ。紅茶でよかったかしら?」
「あ、お構いなく。......ありがと」
「どういたしまして」
ゆきのんはそう返してからいつもの慣れた手つきで紅茶の準備をし始める。
その後ろ姿を見てサキサキはあたしの方へと顔を近づけると、ゆきのんへと聞こえないようにコソコソと話し始めた。
彼女らしい大人っぽい香水にも似たシャンプーの香りがすぐ側まで迫って来て、あたしは思わずまた変な気持ちになりそうになったが、
「......ん?どうしたの?」
無理やり質問で自分の思考を遮ってサキサキに尋ねた。
サキサキは一瞬の躊躇った様子を見せたあと、あたしの横の空席へと目をやってから言葉を放った。
「......あのさ、最近あいつどうしてんの?」
「......え?」
あえてはぐらかした。
「だから、その......比企谷だよ」
そう言えば、彼女もまたあの人の事を少なからず想っている女の子の一人だった。
彼女は3年生になってあの人とクラスが離れたので気になっていたらしい。その上、最近になって奉仕部にいるはずの放課後に下足場で見かけるようになったので、いよいよおかしいと思い立ったようだ。
正直、あたしは返答に困った。
何もかもがあたしのせいなのだから。
これはもはやゆきのんにも明かしていない。明かせない。明かしたくない。
もう、これで、このままでいたいのだ。何もかも忘れたいのだ。
でも、何故だろう。
少しの嫉妬と、大きな独占欲にも似た醜い感情は、あたしの口からこんな事を言わせていた。
あたしもまたサキサキの形のいい耳に口を寄せて、
「実はあたし、ヒッキーに告白したんだよね」
「え!?」
「声が大きいってば!」
ゆきのんがサキサキのあまりの大きさのリアクションに「何かしら?」と振り返ったが、あたしは何とか誤魔化してからサキサキの方をもう一度見た。
きっとこの前まで、あたしもこんな表情をしていたはずだ。
サキサキは、きっと「自分にもチャンスが......」だなんて思っていると思う。いや、絶対にそうだ。
だって、あたしもそうだったから。
「そっか......。なんか、ごめんね」
「いいよいいよ、別にもう終わったことだしね!」
あたしはあえて明るく振る舞って、でも、あたしより綺麗な子があの人に告白して、もしかしたら付き合い始めたりしたら。
そう考えると、あたしはサキサキにこう言わずにはいられなかった。
「でも、もう誰に告白されても絶対に付き合わないって言ってた。『絶対に』って」
別にいいでしょ?
我慢してよ。
あたしと違って、それだけ美人なんだからさ。
あけましておめでとうございます?ございました!遅れて申し訳ないです。
新年一発目がなかなかダークな感じですが、これからも精一杯頑張りますので今年もよろしくお願いしますね!