やはりあたしの青春百合コメはまちがっている。 作:四月一日 今日
答えを聞くまでもなく「それでさ」とあたしは再びゆきのんを抱きしめた。今度は首周りではなく左手は背中の肩甲骨辺りに、右手はゆきのんが着ている水色のサマーベストの切れ込みの辺りに。
ちょうど右の腕の当たりが、ゆきのんの控え目でありながらしっかりと女の子である事を主張する柔らかくなだらかな双丘に触れる。反対に、あたしの胸にはゆきのんの右腕が挟まった。
ただ当たっているだけなのに、その部分が熱い。胸がドキドキする。
さっきよりはゆきのんと距離が遠くなったけど、逆に今度はゆきのんのありえないくらい整った顔を一望できるようになった。
思わず見つめていると、ゆきのんは「あの...」と何だか申し訳なさそうに目を伏せた。
「そんなに見つめられては恥ずかしいのだけれど...。」
そう言いながら忙しなく左右に動く碧く大きな瞳。バサバサと激しく上下する長いまつげ。一瞬あたしをちらりと見るたびに頬を紅くするきめ細かい肌に、そして...プルンと艶やかで、尚且つ薄くかたちのいい唇に
「あ、あの、由比ヶ浜さん?ねぇ、ちょっと、ん――――――っ!?」
気づいたときには吸い込まれていた最低なあたし。
いつもみたいに心配そうにこちらを見た瞬間にあたしは少し、というかかなり強引に引き寄せその唇に生まれて初めて、所謂「キス」をした。
おんなじ女の子の唇とは思えないくらいに柔らかい。
初めてのキスの感想はこれだった。
びっくりしたからか、ゆきのんは一瞬目を見開いた後、身体をのけ反らせてあたしから離れようとする。でも、あたしはゆきのんがそうする事くらい、というよりいきなり同性にキスされたら誰もがそうすると分かっていたから、ぐっとゆきのんを抱く力を強めていた。さっきよりも唇の触れ合う面積が大きくなる。
ゆきのん、可愛いなぁ。あたしもゆきのんくらい可愛かったら...。
そんな過ぎ去ってしまった事を思い出しながら、あたしはそれからそのどうしようもない苦しさを紛らわす様に唇をさらにくっつけた。
しばらくキスを続けてたけど、こんな非日常でもゆきのんらしいというか何というか落ち着きを取り戻したのか、いつの間にか瞑っていた目を開けてトントンとあたしの腕を軽く叩いた。
あたしがすっかり「温かい」を通り越して「熱く」なった唇を離すと、そこが外気に触れて冷めていく。
「あぁ、やっちゃったね...。」
ここまでするつもりなんかなかったのに...と心の中で付け加えた。
「やっちゃったではないでしょう、まったく...。いくら由比ヶ浜さんでも、していい事と悪い事くらいわかるでしょ?いくら由比ヶ浜さんでも。」
「なんでそこ二回言ったの!?」
重要なことは二回言う法則ってやつかな。っていうか、あたしってどんだけバカだと思われてるんだろ。
思わず突っ込んでしまったあたしにゆきのんはさっきまでの事をなかったかのようにクスクスと笑った。笑ってくれた。
こういうさりげない優しさはあたしにはできないなぁ...なんて。ゆきのんのこういうところあたしは好きだなぁなんて。思っていると、
「今日はもう終わりにしましょうか。いつもより少し早めなのだから家にかえって頭を冷やしたら、一度冷静に頭の中を整理なさい。」
ゆきのんは机に置いてあったままの猫のブックカバーのされた文庫本をスクールバッグに入れると、「出て頂戴」とあたしを部室の外に追いやるようにしてからかちゃりと鍵を閉めた。
「私は鍵を職員室に返してくるから、先に帰って構わないわよ。」
「それと、」とゆきのんが何かを付け加えようとした時、ちょうどあたしは同じタイミングで、
「下駄箱で待ってるよ。」
一瞬、ゆきのんは目を見開いたけど「そう。」と一言、くるりと身体を反転させて少し離れたあたしのところにまでシャンプーの香りを運んでから、あたしとは逆方向の職員室へと足を向けた。
二人のイチャイチャをもっと書きたいです...。