やはりあたしの青春百合コメはまちがっている。 作:四月一日 今日
「――――――ちょっと由比ヶ浜さん。」
「んー?何ー?」
「どうして手をつないでいるのかしら。」
あの後しばらくの間待っていたあたしは、下駄箱に来るまでに制汗剤を塗ったのかさっきとはまた違うフローラルの香りを身に纏ったゆきのんに嬉しくて抱き着いたのだ。だって、あたしがくっついてくるって少しでも意識してくれると思ったから。
でも、すぐに引っぺがされたので、あたしはすかさず細くて夏なのに透き通るくらい白い手を握った。
「友達だもん。」
まぁ、恋人つなぎだけど。
これがヒッキーの手だったらな~...なんて、また無意識に考えちゃってる。
っていうか、ゆきのんの指と細いし長いしなんかすべすべするんだけど。え、なにこれずっと触ってたいから、何言われても帰る道で別れるまで離すつもりもなくなっちゃった。
「由比ヶ浜さん、最近それ言い過ぎじゃないかしら。」
あたしのこのフレーズにそろそろ勘づき始めたようなゆきのんが、あたしの顔を訝し気に覗き込んできたので、
「...嫌...だった...?」
あたしはしょぼくれた様に少し俯くと、ゆきのんは案の定、
「い、いえ!そ、そうよね、と、とと、友達だものね。」
と、慌てた様にあたしを肯定してくれた。まだ「友達」って言うのは恥ずかしいみたいだけど、そこがまた可愛い。
あたしはそう言ってくれるように仕向けたのにも関わらず何だか嬉しくなって、「えへへー」とどさくさに紛れて腕に抱き着いた。
あたしと違って二の腕にお肉がついてないのになんかすっごく柔らかい。髪からすっごいいい匂いがするし、何より、制汗剤でも隠しきれない甘酸っぱい汗の匂いに何だかドキドキする。あたしって、変態さんなのかな...。
ゆきのんは「ち、近くないかしら」と顔をあたしから背けたけど、最近こういうことしても嫌な顔しないのと、ちょっと口元がにやけてるのとか気づいてるからね?隠そうとするところも可愛いんだけど。
しばらくっていうか、目に見えてた校門に着くと、ゆきのんがいつも乗ってくるなんか高級そうな黒い車がその前の道路に停められていた。
一瞬、一瞬だけゆきのんが嫌そうな顔をしたと思ったら、中から見覚えのあるあたしもゆきのんも、それからヒッキーもっていうか奉仕部全員が苦手としている人が出てきた。あたしはすかさず繋いでいた手を離した。
「ひゃっはろー!雪乃ちゃん!それと由比ヶ浜ちゃんだっけ?もひゃっはろー!」
「陽乃さん、や、やっはろーです!」
あたしは別に悪い事をしてないのに、この人と話すといつもなんだかなんでも知ってる先生みたいで、なんか悪い事しちゃったみたいな気になるんだよな~...。
とりあえずあたしはいつも通り元気に挨拶し返すと、陽乃さんは何を納得したのかうんうん!と頷いてから、ゆきのんとの距離を詰めた。
「...。」
すっごい近い距離でゆきのんを見てる...。鼻とかくっつきそうなくらい。
それからいつもみたいに「ふ~ん」とつまらなさそうに目を細めると、
「雪乃ちゃん、何かあったでしょ。」
思わぬ陽乃さんの発言にあたしは胸をドキリとさせた。だって、すっごいタイムリーなんだもん。っていうか、見ただけでわかるとかこの人どんだけシスコンなの...。
あたしは思わず目を見開いたが、ゆきのんは微動だにせず肩にかかっていたさらさらの髪をファサっと払うと、
「言いがかりはやめて頂戴。そもそも何の用事でここへ来たのかしら。」
さすがこの人の実の妹さんだな、と思えるくらいに堂々と会話を紡いだ。
「可愛い可愛い妹の顔を見に来ただけだよ~。」
そう言って頭を撫でようとする手をゆきのんはパチンとはたくと、「もう帰って。」と一言。
「あ~ん、もう、つれないんだから~。」
陽乃さんはそう言ってツンツンとこんどは素早くゆきのんの頬をつつくと、「じゃあ、帰るね!」と、あのあたしも見とれちゃうような綺麗な笑顔をあたし達に向けてから車に乗り込んだ。
一瞬、あたしの方をちらりと睨んだ気がしたんだけど、ゆきのんが「行きましょう。」といってあたしの裾を掴んで引っ張ったのが可愛すぎて、そんなことなんかもう考える事が頭からすっ飛んでいった。
「仕方ないから今日は電車で帰るわ。」
しばらくここからまた一緒に帰れるなーなんて安心っていうか、心に落ち着きを取り戻していたのに。
もう、
数分歩いた後、改札を抜け、プシューと音を立てて目の前に留まったあたしたちが乗る予定の電車は、隣同士が密着するくらいに満員だった。
次週、微エロ始まります!