やはりあたしの青春百合コメはまちがっている。 作:四月一日 今日
あの後結局、ゆきのんとは何もなかった。
いや、嘘です。
何にもしないでおこうとは思ってたんですよ————
「—————どうしたの?姉さんに『呼ぶまで待っていて』と言われてたのだけれど。」
「い、いやぁ、何でもない!何でもない!や、やっはろー!ゆきのん!」
「今更だとは思うのだけれど、こんにちは由比ヶ浜さん。」
そうだったー。なんかてんぱっちゃって逆に怪しくなっちゃった。
むしろ陽乃さん、ゆきのんの実のお姉さんにあんな事言われた後に普通に接しろなんて無理。ゆきのんが変わっちゃったのなんてあたしが理由以外に絶対にないし。
ほら、ゆきのんも疑ってる...って、あれっ!?
「そ、その...、由比ヶ浜さん...。昨日の事だけれど...」
何故だかとてもしおらしい。胸の前で手を合わせてもじもじしてるし、なんだかちょっと頬っぺた紅いし。まあ端的に言えば、めちゃくちゃカワイイ。
だからあたしは、いつもの様に抱き着こうとしたんだ。なのに、
「ゆきのーん!—————」
「————私、真剣に考えてみたのだけれど、きっとあれは由比ヶ浜さんなりの愛情表現だったのよね。大丈夫よ、私、そういうのも十分に理解しているつもりだし、その、由比ヶ浜さんが真剣に私の事をずっと、その...、あ、愛してくれるというのなら...」
いつもよりはやくあたしの事をまくし立ててきた。
っていうより、さすがはゆきのんと言うべきか。あたしの事を少しも疑いもせずに単なる愛情表現だと信じてくれている。それに、なんだかそれを受け入れてくれている様だ。
そんな彼女を見て思う。
やはりあたしはズルい子だ。
確かに彼女に嘘をつくのは嫌だ。でも、それ以上に真実を告げて彼女を失うのはもっと嫌なのだ。実は「怒りに任せて、悲しみを紛らわそうとして...。」なんて、口が裂けても言えるはずがない。
ああ、本当にあたしはズルい。
嘘をついてでも、この美しく、可憐で、何処か儚い少女を手に入れたい、手放したくない、めちゃくちゃにしたいと思ってしまったのだから。
でも、彼女は、そんなあたしの汚い考えを「信頼」という二文字で拭い去ってしまった。壊れてしまったあたしを受け入れてくれた。
そんな可愛い顔で見つめないでよ...。
彼女はそんなあたしを露知らずどうぞと言わんばかりにゆっくりと目を閉じて、
「ずっと愛してね?」
囁くようにそう言った————
もう、我慢なんてできなかった。
ハグとかキスとかいっぱいした。
結局のところ付き合う事になった?のかな?あたしはゆきのんを前から好きだったけど、恋人として好きになった。ゆきのんもまた「好き」と言ってくれた。
だから今日は足がやたらと軽かった。もうスキップとかしちゃう勢い。
昨日やり取りしたメールとか、読み直すだけで思わずにやけちゃう。ゆきのんから「好きよ」とか可愛すぎて、もう、死んじゃう。
そう、あたしは今、幸せ真っただ中だった。なのに...、
今日はゆきのんの急な用事で部活がなかったから教室で優美子たちとしゃべった後、校門前で別れてすぐのところ、
「ひゃっはろー!ガハマちゃん!」
しばらく歩いたところに、あの高級そうな黒塗りの車が停まっていた。
後部座席の窓ガラスが音も立てずに開き、中からあの人が一つの絵画の様なあの美しい笑顔を覗かせる。
「や、やっはろーです...、陽乃さん...。」
ダメだ...。目を逸らせない...。
あたしを包み込むような、肌を刺すよなチクチクとしたプレッシャーが、身体が危険信号出しているにも関わらず目を背けることを許してくれない。
いや、これはもしかしたら、罪悪感のせいかもしれない。
全身から汗が噴き出る。動悸が激しくなる。
「今、私がどうしてここにいるのか分かってるよね?」
固まっているあたしに、陽乃さんはにっこりとまた笑顔を向けた。
に、逃げなきゃ...。
あたしは本能的にそう思った。
でも、陽乃さんは「私、言ったよね?」と続けると、またあたしのすぐ目の前まで近づいて耳元に口を寄せながら、昨日とは違い今度はあたしの首に右手の人差し指を突き立て、酷く冷めた声で、それでいてどこか熱のこもった声でこう言った。
「—————君の事、壊しちゃうから。」
結衣×陽乃、禁断のエロがいよいよ始まります!