〜前章・物語の始まり〜
ナツキスバルは、突然、なんの前触れもなく、異世界——鳥獣魔人と人間、魔法使いやその他大勢が闊歩する、お決まりの中世風の世界——に飛ばされてきた。彼が突然この世界に来てしまった理由は今の所、謎のまま。
右も左も分からない状態のスバルは、とあるトラブルに巻き込まれるが、偶然通りかかった銀髪の美少女に助けられる。そして、その彼女を助けるために自らの命を落としてしまう。
だが、本人が言うところの『死に戻り』という能力により、命を落とすたびに、彼は任意の時点からのやり直しを繰り返すこととなる。まるで
瀕死の傷を負いながらも、なんとか目的を果たしたスバルは、銀髪の少女、エミリアが住む屋敷へ運び込まれ、手厚い介護を受ける。
その屋敷には双子のメイド・ラムとレム、禁書庫の司書・ベアトリス、屋敷の主人・ロズワール、ハーフエルフであるエミリアと、常に彼女と行動を共にするパックと呼ばれる猫にそっくりな精霊が暮らしていた。
目覚めたスバルは、ロズワールの「心からの謝礼を」という言葉に「ここで働かせてほしい」と即答する。そして、ラムとレムの下につきながら〈ロズワール邸〉の
屋敷の生活が始まり、だが、平和な日々が淡々と過ぎるわけもなく、謎が謎を呼ぶ事件が勃発。結局四度目の
後に、彼と彼女にとって、大きな大きな転機となる王都への出立前。
ある意味、一番幸せだった短い日々。
その日々に「もしかしたらあったかもしれない」このパラレルショートストーリーも、星の数ほどある虹系同人モノと同様、例の場所で例のシーンから始まるのだった——。
目が覚めた。部屋の結晶灯が、柔らかくベッドを照らしている。まだ夜中だろうか。屋敷は静まり返り、時折遠くから何かの鳴き声が聞こえる。心地よい気だるさの中、柔らかなベッドに体を起こす。と、ベッドの左で自分と同じシーツにくるまっている、もう一人のシルエットが目に入る。
肘枕をしながら、自分のすぐ隣で寝ている、可愛らしい顔をじっと見つめる。
はらりと垂れた前髪。長い睫毛。わずかに開いた唇から、軽く寝息が聞こえる。女の子らしい細くて小さな白い肩。左手で引き寄せたアッパーシーツの胸元から、こぼれそうな膨らみがちらりとのぞいている。白い布に隠されている体のラインがとても綺麗だ。右手が、まるで誰かに手を取ってもらいたがっているように、こちらへ伸びている。
――これ、この姿をこのままフィギュア化したら、めちゃくちゃ売れるんじゃないか?
ふと、どこか遠くにあるはずの世界のことを考える。いや、でも、このまま独り占めがいい。他人の目に絶対に触れさせたくない。自分だけのものにしたい。このまま自分だけのものであってほしい。
――迷うことなど、何もない。これからは、ずっと。たった一人の、この女の子だけを……。
そう。彼女だけを。あの時から、きっとそうだったのだ。あの日、ともに傷だらけになり、助け、助けられて。命をかけたのは最初ではなかったが、あの時の笑顔を守りたくて、あの笑顔をもう一度見たくて。
だから、一緒に歩こうと言った。だから、笑って未来の話をしようと語った。
本当の気持ちに気づいていなかった。でも、今はわかる。心が結ばれていくのを。
――って、かっこいいこと考えてるけど、俺! 柄じゃないんじゃないのか?
そもそも心がって……。いや、体だけじゃない。本当だ! 本当に心が繋がっていくのがわかるんだ! 本当なんだって!
誰に言い訳するでもなく、つい、自分で自分に突っ込んでしまう。苦笑いをしながら、彼女の顔を改めて眺める。心が穏やかになっていくのがわかる。
空いている腕を伸ばす。少し前に、苦しんでいる自分の手を握ってくれたこともある、柔らかくて小さな手。その手にやさしく触れる。細く綺麗な指に自分の指を絡めて優しく握ると、やんわりと握り返してくる。
「……起きて……いるのか?」
——返事は、ない。おそらく無意識に反応しているのだろう。心なしか微笑みながら、幸せそうに寝息を立てている。その愛おしい顔を見て、自分を好いてくれているこの青髪の女の子と体を重ねられたことを、スバルは心から嬉しく思った。
はじめまして。KuroMaruです。漢字で書くと黒丸です。初投稿です。
レム成分が足りなくて、自分であーだーこーだと想像しながら書きました。web版、小説版を最後まで読んでない段階で書き始めたので、色々変なところがあると思いますが、ゆるい目で見ていただければ嬉しいです。
※活動報告に最初に書いた「後書き」を転載させていただいています。